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12話 人助け

 九尾の狐姿となった玖音は、背中に凛を乗せ、近くの町へと走る。


「いやー、移動にも使えて便利だわ。玖音ちゃんが仲間になってくれて大助かり」


 玖音が乗せて行ってくれるとのことで、村で馬車を待つ必要がなくなった。

 今後の移動も、玖音を使えば、自由に好きなところに行ける。


「……ちゃん付けは止めとくれ。これでも一端の神じゃから、そのように呼ばれると威厳が無くなる」

「えー、可愛いのに。玖音って、モンスターじゃないの?」

「誰がモンスターじゃ! 失礼にも程があるぞ」

「私に負けるくらいなのに?」

「それは主がおかしいのじゃ……。神の定義は神格の有無で決まる。主からしたらモンスターにしか見えないのかもしれないが、儂は神格を得ているから、神に分類される存在であることは確かじゃぞ。新参ではあるがの」

「へー、本当に神様だったんだ。なら、聞きたいことがあるわ。私、稀人なんだけど、元の世界に戻る方法探してて。神様なら戻る方法知ってたり、戻すことが出来たりしない?」


 こちらでは、異世界から来た人は稀人と呼ばれていた。

 凛達が初めての稀人ではなく、五十年ほど前にも異世界から来た人間が居たという記録が残っていたのだ。

 ただ、その時に飛ばされて来た人達は、皆、戦争や事故などで亡くなっており、現在は一人も残っていない。


「稀人か。道理で薄っすらと神の気配がすると思ったのじゃ」

「神の気配って?」

「この世界に引きずり込まれたのじゃろ? そんな芸当できるのは神ぐらいしかおらん。それも、かなり高位の。悪いが、儂にそんな力はないから、戻すことはできん。方法があるなら儂も知りたいくらいじゃ」

「そっかー」

「残念じゃったの」

「いいわ。私個人としては、別に帰りたいと思ってないから。寧ろ、ずっと留まっていたい、みたいな?」


 この世界に飛ばされたのは、神の仕業であることが判明した。

 戻る手掛かりはなかったが、凛はこれから、この世界で好きに楽しもうとしていたところだったので、特に残念がることでもなかった。




 そんな話をしながら町を目指していると、二人は前方が何やら騒がしくなっていることに気付く。

 視線を向けると、そこには一台の走る馬車と、それを囲む山賊らしき集団だった。

 山賊達は馬で追いながら馬車を攻撃して、停めさせようとしている。


「あれって、よくある救助イベじゃない? 玖音、助けてあげましょ。もしかしたら、お金貰えたり、可愛い女の子が感謝してくれるかもしれないわよ」

「金も感謝もいらんが、彼奴らに近づけばいいのか?」

「ええ、私が助けるわ」


 助けることに決まり、凛を乗せた玖音は、襲われている馬車へと接近する。




「おらぁ! さっさと止まりやがれ」「有り金、全部寄越せや」


 必死に逃げる馬車を、山賊達は執着に追い続けていた。

 そこに、玖音に乗った凛が後ろからやって来る。


「は!? 何だ、お前は!?」


 モンスターに跨った女子が突然現れ、山賊達は困惑して凛へと視線を向ける。

 だが凛は山賊達を無視して、馬車の中にいる人へと喋りかけた。


「突然すみませーん。お助け致しましょうかー?」


 すると、中に居たふくよかな男性が顔を出す。


「誰だ!? いや、誰でも構わない。早く助けてくれ!」


 馬車の中には、その男性しか乗っておらず、さり気なく中を覗いた凛は内心がっかりしたが、救助願いは引き受け、馬車を助けることにした。



「この女、いきなり出てきて俺達を相手にしようってか?」

「気をつけろ。こいつの従魔、結構強そうだぞ」


 凛自体は丸腰の小娘にしか見えなかったが、跨っている玖音はなかなか厳つい風貌だったので、山賊達はそちらに警戒して身構えた。


「やるのは私よ」


 凛は両手を山賊達の足元に向ける。

 すると直後、その地面が爆発するように隆起し、馬ごと山賊達が宙に舞った。


――――


 無力化した山賊達を、馬車の御者が縛り上げる。


「いやはや助かりました。近場だったので、護衛を付けずに来たのですが、運悪く山賊に襲われるとは」

「災難でしたね。丁度、通り掛かって良かったです」

「ええ、襲われたのは不運でしたが、貴方に会えたのは幸運でした。若いのにお強いのですね。従魔もなかなか立派なのを従えていらっしゃる」


 玖音のことを従魔だと思われているが、凛は訂正しない。


 捕獲して従えたモンスターを従魔という。

 モンスター扱いされて、玖音もあまり気分が良さそうにはしていなかったが、目立たせない為には必要なことだと理解していた。


「私は近くの街で事業を営んでいますので、良かったらそこで、お礼をさせて頂けませんか?」

「はい、是非っ」


 行き先は目指していた町とは違ったが、期待していた謝礼を貰えるとのことで、凛達は遠慮なく、ついて行くことにした。

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