2話 研究施設
前話で説明を後回しにしていた女性に関してだが、彼女は防衛省の研究者である。
新型武器の開発や情報解析などを主に行う。
彼女は改革によってできるようになった飛び級で入った名門大学を首席で卒業出来るだけの学力を有しておりその話は防衛省の私のところまで来ていた。
私はその当時士官学校にいた。
士官学校時代文系を選択していた私は、部隊運用のほうが向いているといったものの聞き入れられることはなく移動させられた。人事の人曰く、行けばわかると。
次の職場を確認したところ、特に何の変哲もない都内のビルだった。何度か住所を確認したがここで間違いない。
案の定入り口に行くと相応のセキュリティーがあり、ここがその施設であると感じさせる。
まずは警衛に挨拶をし、身分証を見せる。
通された先はたくさんの黒板とホワイトボード、実験用の机や電子機器の置かれたデスクなど、いかにも研究室のような場所である。黒板には小難しい数式などが長々と書かれているがやけに物静かだ。
不思議に思って見てみると、机にうつぶせになって寝ている少女がいる。茶髪を邪魔にならないようにボブにして、白衣を着たまますやすやと寝ている。
彼女以外に人はいないようだ。
私は奥の席で寝ている彼女に向かって歩き出し、彼女の後ろに立ち肩をたたく。
「あの~起きてください~」
「う~ん、あぁ来たのか」
「はい、本日より配属されました。中川大樹中尉です」
「うん」
新人が入ってくるのを知ってた癖に寝起きの歓迎には少し文句を言いたくなる。いや美少女の寝顔プラス寝起きを見れたと思えば得か?
しかしながら一つ問題がある、配属されるとき私は仕事内容も上司の名前も聞いていないのだ。もちろんそれは彼女も知ってるだろう、であるならばだ、説明してもらわないと困る、仕事ができない。
それを彼女に言わなければならない
「あのぉ~」
「ちょっと待って」
そういうと彼女は体を起こし部屋を出て水道に向かう。
水道から帰ってきた彼女は咳ばらいを一つしてから話始める
「ようこそ”新型空母研究所”へ」
「ちょっと待ってください、新型空母の研究をあなた一人でやってるんですか?」
「まぁ色々理由があってね、つい最近空母ができて、ここにいた人は私以外いなくなったんだよ」
「ではなぜあなただけ残ったんです?」
「日本の誇りとなる空母、そんなものを作った研究者はほとんどが出世コースだろう、私はその出世コースから外れた、ただそれだけ」
察した、つまり彼女は何かをやらかし出世コースから外れたというわけだ。
「その理論だと私も出世コースから外れたことになるじゃないですか」
「何か心当たりがあるんじゃないか?」
「...」
何も答えられない私を見かねた彼女は椅子から立ち上がり。こう言う
「自己紹介がまだだったね、私は梓川神子、よろしく」
「よろしくお願いします」
「とりあえず空母見に行こう、私も作った人間のひとりだ、進水式ぐらい見に行きたい」
「そういうのであれば私もご一緒するとしましょう」
私の仕事は警護、彼女についていかなくてはならない