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ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
98/113

96話・・・アマルティア/ティアマテッタ軍

作品を読みに来て頂き感謝です!

中庭でジェイとノエミを遊ばせている時だった。

外がやけに騒がしいのだ。騒がしいと言うか、賑やかしいというのが近いだろう。雄叫びが飛び交うのを。レイラは眉を潜めた。


「何かしら。物騒な事じゃなきゃいいんだけど…」


「様子を見てきます」


傍にいたマイラが膝立ちから立ち上がる。もうこの時点で、マイラはレイラの世話係兼護衛という立ち位置に自然となっていた。行こうとするマイラをレイラが止める。


「自分の眼で確かめてくるわ。二人の事、お願いね」


そう言って廊下に戻ろうとした時、丁度一人の兵隊が外へ向かうためか走って来る。それをレイラが止めた。


「ちょっと待って!」


兵隊はレイラの声と判るとすぐに止まり、行儀良く振り返る。


「これはレイラ様方!どうされましたか?」


「外の方が騒がしいから、気になったの。何かあったの?」


この質問に、兵隊は眼を輝かせ、そして意気揚々と答える。


「エルド様がついにマルペルトを滅ぼしたのです!自らの手で、ついに復讐を果たされたのです!」


「……え?」


理解が追いつかない。

エルドがマルペルトを滅ぼした?

国を?

人々を?

滅ぼしたって、どういう意味だったっけ。


「エルド様がご帰還なされたので、兵士たちが集まり歓喜に満ちているのです。私ももう行きます。気になるなら顔を出されるといいですよ。エルド様もお喜びになると思います」


レイラが思考停止をサポートするように、マイラがそっと隣に立つ。


「ありがとうございます」


「では」


兵隊は走り去っていった。


「…やってしまったのですね」


「滅ぼしたって、滅亡ってことだよね…?人も、殺したんだよね?」


「おそらく」


母親が放心状態なのをしり目に、双子は楽しそうに笑い合っていた。戦争と平和が入り乱れた空間だった。

マイラは動揺を見せずに、またジェイとノエミの下へ戻る。

しかし、内心は違っていた。子供達に語り掛ける優しい声に震えが乗る。

マイラは正直に言えば、エルドは口だけだと思っていたのだ。

いつか故郷を滅ぼすと言っているが、故郷だからこそ滅ぼさないと高を括っていた。ナノスやソイルが命令する国や軍を襲撃し、世間を騒がせ、本来のナノスの目的達成の為に尽力すると思っていた。思い込んでいた。しかし実際は違った。やってのけたのだ。故郷を滅ぼした。虐殺をおこした。


「二人は優しい子に育って…」


外の世界で恐ろしいことが起きたなんて知らない双子は俯くマイラを見てきょとんとしていた。すると優しく、肩に手が回る。レイラだ。


「大丈夫?マイラ、結構エルドと話したりしていたでしょ」


「大丈夫…なのかな。でも、不思議とエルドさんが怖いとは思わないんです。マルペルト滅亡はエルドさんの悲願だったので、あぁ、ついに成し遂げたんだなって」


「そう」


この時、レイラはマイラもついにアマルティア側に付いてしまったのかと心が痛んだ。マイラは、エルドと行動することが確かに多かった。この二年間一緒にいて、恋人になっていないことが不思議なくらい、戦闘を教わり、戦略も教わっていた。プライベートでも二人でいることが多々あった。それに、レンが一番…


「そうだ。レンは?こんな時にどこにいるのよ、あの子」


「レンさんならナノス様の所へいるかと。また研究の手伝いをしていると思います」


「…ナノスに変な事されてなきゃいいんだけど…」


レイラの不安は的中していた。レンは。レンの心はもうナノスに支配されていた。



レンはナノスの研究室にいた。テーブルに座り、足を組み、マルペルト滅亡の報告に来ていたエルドとコアの話を興味無さ気に聞いていた。

エルドはどこか興奮しつつ、子供のように目を輝かせナノスに起こった出来事を話していく。


「ナノス様から頂いたこの力のお陰で憎き故郷を滅ぼすことができました!なんと感謝すればいいのか…!」


「いいんだよ。君の悲願なんだから、力を貸すのは当たり前だよ」


「タナスなんかは、自分が死ねば国民の虐殺を止めると言っているのに、自分の命を優先して逃げ回るんですよ。信じられない男でしょう。それに…私を嵌めたあの糞医者…アイツを殺した瞬間は剣術を習っていてよかったと思ったことはありません!今でも掌に感触が残っています…。腹を刺し、裁き、切り刻んだ感触が!命乞いなんてするのですよ?助ける訳ないのに、片腹痛い話です」


「いいね、いいねぇ。もっと聞かせておくれよ。そうだ、妹は殺せたのかい?」


マーガレットの名が出ると、エルドの表情が少し険しくなるが、また笑顔に戻った。


「はい。自らの罪を自白し、火刑にしてくれと懺悔されたので言われた通り火炙りにしました。彼女の行いは聖女として扱われるか、遠い未来、真実が解った際に悪女として扱われるか…楽しみです」


「なら、今の君は戦犯だけど将来英雄になる可能性もあるってことだね」


「おやめください!自分が英雄だなんて…。ナノス様のおかげでここまでこれたのですから。英雄はナノス様にこそ相応しい称号かと」


「あははは!嬉しいことを言ってくれるね。でもそれは君が僕を信じて実験に協力してくれたお陰なんだよ?君の強い復讐心が、力があったからこそ成功したんだ。生半可な覚悟邪出来ない事だよ。成功者の陰にはたくさんの協力者と犠牲がある」


「ナノス様のために犠牲になれるのなら、私は喜んでなりましょう」


エルドは恍惚とした微笑でナノスに陶酔しきっていた。エルドがナノスを急に崇拝し始めた訳ではない。この二年間で、レンと同じようにナノマシンの実験体として体を捧げていたのだ。そして国を滅ぼすほどの力を得た。もう、エルドはナノスを完全に信頼しきっていた。

レンは嬉しそうに語るエルドにちょっかいをかける。


「どうだった?自分の故郷を滅ぼすって。どんな気持ち?」


キッと睨まれた後、すぐに微笑みに変わる。


「最っっ高だよ。ゴキブリ退治をしていると言えばわかるかな。この感覚。害虫を殺した後の達成感と安堵感に近いよ」


「ふーん。解りやすい例えね」


しかし、急にエルドは表情を歪ませる。地雷でも踏んだかと思ったが違うようだった。


「アイツ等が来なければもっと殺せたはずなのに!」


「アイツ等?」


「ティアマテッタ軍とクソ女だよ!」


エルドが言うクソ女とはヘスティアしかいない。つまり、ティアマテッタ軍にはリアムがいたはずだ…。聞いても、レンの心には何も響かなかった。たった二年でここまで変わってしまった自分。ヴェネトラ攻防戦で一緒に戦った仲なのに、全然、なんとも思わなかった。自分が常識からズレ始めていることを自覚していた。エルドの話を聞いて、自分もどこでもいいから一つの街を潰したいと思い、昂ぶっていた。


(あのリアムはどこまで強くなったのかしら)


闘えるなら、戦ってみたい。

そこにコアがすかさず割り込み、リアム達に付いて語り始めた。


「リアム達は確実に強くなっていたぞ。もっと鍛えれば俺も本気を出して戦える!」


それを聞いたナノスがふむふむと、指先を顎に当て頷く。


「なら、次の計画に移ってもいいのかもしれないね」


「次の計画とは?」


「それは今お出かけ中のソイル君が帰って来てから話すとするよ。そろそろ解散としようかな。エルド、コア。お疲れ様。今日はゆっくり休むといいよ。休息も戦士には必要なものだよ」


ナノスが両手を振ると、エルドとコアは姿勢を正した。


「はっ。では、これで失礼いたします」


「失礼する。………レン。これからレイラの下へ行くがお前は戻らないのか?」


その台詞にカッとなるが、冷静を保つ。


「私はこの男に頼んでいた銃を受け取りに来たのよ。そしたらアンタ達が報告に来たから一緒に聞いていてあげただけよ。早く戻るなら行きなさいよ」


「なら待っているから早く、」


「ごめんねぇ、コア」


コアの話しを遮ったのはナノスだった。ナノスはレンの近くまで寄る。


「レンには僕の研究のお手伝いもしてもらっているんだよねぇ。だから暫く借りるね?銃の調整もあるし、すぐ終わる話じゃないんだよ」


「…解った。では、俺は失礼するぞ」


エルドとコアが出ていき、二人きりになる。

これから。レンはまたナノマシンを注入される。そう考えると体が疼いて仕方がない。

レンは先に奥の部屋へ向かう。この部屋には四姉妹と双子がカプセルの中で眠っていた。更なる強化のためにだ。金属性のメイラとティーシにはレンの血液が輸血されている。あの時はムカつく姉妹だと思っていた。だが今ではメイラを除く三人は子猫のように可愛く思える。特にティーシには自身の血液を輸血しているせいか、特に可愛がってしまう。ティーシもまた、懐いてくれている。「レンお姉様♡」といつも後ろをくっついて歩く姿は、昔の自分とレイラを彷彿とさせた。


「お姉様…。お姉様は強引に押し倒せば、私に身体を許してくれるのかしら。ティーシは許してくれたわよ…。いいえ。許してくれなくても、滅茶苦茶にして差し上げますわ」


いつか、いつか絶対にレイラを犯したくて堪らなくなる。

そう考えると胸の奥が熱くなる。

レンは実験台の上に座ると恥ずかしげもなく股を開く。太ももには赤紫へと変貌した薔薇のタトゥーが刻まれている。

後を追うように、ゆっくりと入ってきたナノスが喉の奥で笑う。


「クックック。そんな期待されちゃうと僕も興奮しちゃうよ」


タトゥーを愛撫し、しゃがみ込むと舌で柔らかい太ももの肉を舐めていく。そしてタトゥーを執拗以上にねっとりと嘗め回す。


「ッ…早く、アレを打ちなさいよ!」


最初こそ気持ち悪かったこの男の愛撫が、今では気持ちよくて感じでいる自分に嫌悪する。もしかしたら無理矢理や強引にされる方が好きなのかもしれないとさえ、レンの思考を可笑しくさせる。ナノスに感じているのをばれないようにするが、見れば一目瞭然なのでナノスはほくそ笑む。


「アレは逃げやしないよ。性急だなぁ、いつも君は、本当に」


にんまりと笑うと、ナノスはナノマシンが保管されている冷蔵庫から瓶と注射器を取り出す。その注射器が見えた瞬間。レンの子宮が疼くのが解った。どんな男のモノよりも、ナノマシンを打たれる注射器に興奮する女がどこにいるだろうか。もう下腹部が熱くて仕方がない。


「早く、頂戴、それを!」


「女王様の仰せのままに」


ナノスは注射器をタトゥーに挿す。

ジンジンと熱くなり、レンの身体は快楽で満たされていく。


「はぁぁあっ!」


ドクドクと鼓動が早くなり、絶頂の波が押し寄せては引いての繰り返しでレンを犯していく。終いには大きな吐息を零しながらレンは快楽に負けて気絶した。

それを見たナノスはご満悦そうに独り言をこぼす。


「レン。君はやっぱり最高だよ」


ナノスはレンの股に股間を押し付け、気絶しているレンの耳元でしゃべり続ける。


「ミラの美しさには勝てないけれども…娼婦としては最高に美しいよ。いいねぇ。汚れを知らない純白の女神ミラと、快楽を貪る麗しき淑女。僕だけのおもちゃ…レン。君たちは対のようだ」


腰を動かし、レンの敏感な部分を刺激していく。


「もっと、もっともっと壊してあげるよ、レン。僕専用の戦士になるんだよ。あともう一歩なんだ。あと一歩で君は完成する…楽しみだなぁ。なぁ、レン」


無抵抗なままのレンの身体を弄りながら、ナノスは笑うのであった。



ティアマテッタ軍指令室

モニターに映し出された写真や映像はマルペルトの惨状。

それを見ていたリアム達は一切喋らず、ただ見つめていた。いや、発言する元気さえ無いのだ。


「以上がマルペルトの現状です。報告は以上です」


ブラッドで〆られた報告会では、リアム達とマノンはがっくり来ていて意気消沈していた。そんな後輩を横目で心配の眼差しを向けるユーリとローラ。そして堂々としているのがエンキとブラッドであった。

いつも。いつもは敵を一掃するのが。今回は国が離れているとはいえ一夜にして滅ぼされたのだ。あの後、生き残りを捜したが見つかった方が奇跡だった。あとは非難した国民のみ。

ある種、初めての作戦失敗と言っても過言ではなかった。


「報告ご苦労。しかし…完全に我々の敗北だな。今回ばかりは…」


モルガンも映像を見て溜息を吐く。


「今日は解散。体を休めるように。食事もちゃんと食べろ。いいな」


モルガンが指示をすると全員指令室から出ていった。



リアムは。いや。リアム達はアマルティアと互角に戦えるくらい強くなったと勘違いしていた。互角に戦えたのは一般兵であろう奴等だった。エルド、コア、クローン四姉妹とはチーム戦でやっと互角に戦えるということ。それが何よりショックだった。


「俺等さ、もう少し何か出来たと思わねぇか?」


そう口にしたのはブレイズだった。


「僕は…指示しか出せなかった。それが的確なのかもわからない。戦闘に出ていれば、何か変わったのかな」


マシューがぼやく。

より、空気がまた重くなる。


「なぁ」


呼びかけたのはリアムだった。


「いっちょで飯食って一時間だけ訓練しないか?」


「その話、乗ったわ」ゾーイが言う。


「僕は…モルガン大佐に話したいことがあるから先に行ってて」


「解った。先行って待ってるからな。マノンも行くだろ?」


自分は蚊帳の外だと思っていたマノンが「え?」と声を漏らす。


「一緒に行っていいの?私後輩だよ?」


「後輩だけど、部隊は一緒だろ?」


「うん、行く」


マノンが落ち込んでいた理由に、マルペルト崩壊の他にももう一つある。

クローンでエリーニュ達が復活していたことだ。いや、正確にはもう一体創られたということにショックを受けていた。まるで物みたいで、スペアなんてたくさんいるのだぞとナノスに喧嘩を売られているようで。命で遊んでいるように感じたのだ。

なにより、メイラが心配だった。あの中で唯一の生き残り。自分より後に生まれたクローンを姉として慕うのか、妹のフリをしているのか解らない。でも、自分だったら耐えきれないだろう。死んだはずの最愛の姉達と同じ性格、顔を新しく用意されたら。


「いっちょで針金食べるぞ!」


マノンは、若干自棄にたっていた。そうじゃないと、やっていけなかった。


「じゃあ俺はラーメンとチャーハンと餃子だな」


ブレイズの舌はもうラーメンで占められている。早く食べたくて腹が鳴った。


「僕も、お腹空いてきたかも」


落ち込んでいたマシューがお腹をさする。


「どうせお腹が空いていなくても食え!て大佐なら言うわよ。食べて強くなれってね」


「解る。想像できるから面白いよね」


ゾーイにシレノが同意する。

そんな後輩達の背中を、ユーリとローラが見守っていた。


「大丈夫そうだね」


「意外とタフよね、あの子達」


「大佐に訓練したこと、バレないといいですね。ブラッド大尉」


ユーリが釘を刺すようにブラッドに言う。


「そうだな」


その言葉を聞いたユーリは、ニコリと笑ってみせた。



指令室に残ったのはモルガンとデウトのみ。

部屋が静まり返ると、ドン!とモルガンがテーブルを殴る。


「クソ!何のために作った部隊なんだ!」


憤ったモルガンの拳は力が込みすぎて震えていた。


「落ち着いて下さい、モルガン君」


キツめの声に、モルガンもハッとなり冷静さを取り戻す。


「すみません。いい歳なのに…怒りがコントロール出来なくて」


「この惨状を見れば誰もが怒りに満ちるでしょう。自分を責めないように」


モルガンは居た堪れなくなり、視線を逸らす。


「何しろ、問題なのは彼等が所持している時空移転装置です。映像を見る限り、完成の域に達しているでしょう。これさえなければ我々にも勝ち目はあります」


「どうにかして空間移転を克服しないと…次にどの国が狙われるか解ったもんじゃないぞ」


モルガンは思わず爪を噛む。


「それに、敵一人一人が強すぎる。コア・クーパー。エルド・エマーソン…エアル達三人がかりでも相打ちだった男…下手したらこっちが殺されていた可能性さえある。手を抜かれていたのか…?いや、そう考えるだけでも恐ろしいことだ。本気を出されたら、彼等は…」


「殺されるでしょうね」


デウトの発言に、また指令室に静寂が訪れる。


「今度は、我々も行きましょう。これでは、本当に部下を失う…!」


モルガンの焦っている様子に、デウトが宥めるように話しかける。


「終わってしまったことは仕方ないことでしょう。未来を見据えなければなりません」


「あぁ、そうだな。これからティアマテッタ軍は生き残ったマルペルト国民を全力でバックアップする予定だ。少しでも早く復興し、王が亡き今、選挙制を導入させるつもりだ」


「それは私も考えていました。過去のエルドのような人材がいればいいのですが…」


「いざとなったらブレイズ氏を立てましょう。彼は兄上や過去のエルドの意思を受け継いでいる男です。それより…何か空間移転の弱点を捜さなければなりません。私はこれから解析班の所へ行きますが、デウト氏は?」


「実は…心当たりがあるんです。空間移転装置の弱点に」


「それは本当か?!」


思わずデウトに詰め寄るが、デウトの顔は浮かないものだった。


「弱点になる可能性は…低いです。ですが賭けてみる価値はあります。それに、そのためには一旦テマノスに帰らなければなりません」


「まさか…飛行戦艦にヒントが?」


正解、と言わんばかりにデウトがニヤリと笑う。


「そうです。発掘の進捗と研究の状況も気になりますからね。そうとなれば早速帰る支度をするのでお暇します」


デウトはタブレットを持つと部屋を出ようとセンサーにマジックウォッチを掲げようとする。


「今回は一人で帰るのかな?ナデア女史は?」


「私一人で帰るつもりです…いえ。エアル君を連れて行きます」


モルガンはデウトの返答に豆鉄砲を食らったような顔になった。てっきり、連れて帰るならナデア、次点でリアムだと思っていたからだ。


「そうか…解った。エアル氏にちゃんと確認するんだぞ」


「えぇ、勿論しますよ」


そう言うと、デウトは指令室から出ていった。



自宅にて。エアルとヘスティアも意気消沈していた。どう足掻いても空間移転装置がある限り、自分達が出遅れる。向かっている途中でさえ殺戮が起きているのに止められない。悩みの種で二人を暗くさせていた。

ティロンと、エアルのマジックウォッチが鳴る。


「はい、エアル」


『エアル君、よかった。これからテマノスに一旦帰るのと、ゼーロの街にも行きたいのでご一緒していただけませんか?』


テマノスは判るが、何故ゼーロの街にまで行こうとしているのだろうか謎だった。デウトにとっては切り離したい場所だと思っていたからだ。


「ゼーロの街には、何故…」


『空間移転装置の弱点を見出せる可能性が僅かですがあるんです。テマノスに帰って進捗。そしてゼーロではネイサン家当主に会おうと思っているのです。是非君の力を貸してほしいのです』


「そういうことなら、喜んで」


電話を切ると、エアルとヘスティアの表情は明るくなっていた。


「ゼロでも、一ある方がよっぽどマシだわ。いってらっしゃい、エアル」


「あぁ。必ず成果を持って帰って来る」


颯爽と準備をすると、エアルはアルフレッド邸へ向かい車を走らせた。



一方、モルガンも解析班へ行き、そしたら寮に帰ろうと思いながら出ると、シレノが扉の横に背を持たれながら立っていた。


「うぉ、吃驚した」


「すみません。待ち伏せして」


浮かない顔の奥に、秘かな怒りが見えた。多分、コアの事だろう。


「みんなと戻らなかったのか?」


「コアが、いたのを…知っていたので。何か情報があれば聞こうかと思ったんです」


「そうか。言っておくが、目新しい情報は無いぞ。解ったのは手を抜かれている可能性があるということくらいかな」


「やっぱり…」


シレノが苦虫を噛んだような表情を見せる。


「心当たりでもあるのかい?」


「ありすぎますよ」


コアはいつも孤独だった。自分より弱い相手しか周りに居なかった。反国集団に潜んでいた時も、シレノに稽古をつけていたのも最強の、自分に見合う戦士を育成するためだとシレノは考えていた。そんなコアに懐いていた自分を、シレノは恨んでいる。そのせいで父を死に追いやってしまったのだから。


「僕がコアを殺します。その為にも、強くなります。また明日からよろしくお願いします」


それだけ言い残すと、シレノは帰っていった。

彼の背中を見つめながら、モルガンが一人ごちる。


「リアム氏より復讐心隠さないのはいかがな物かなぁ」


こうしてマルペルト国崩壊は終焉した。復興し、採取発するのに何年、何十年かかるか解らない。長い道のりをこれから彼等は歩いていかねばならない。

原作/ARET

原案/paletteΔ

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