93話・・・マルペルト4・崩壊
作品を読みに来て頂き感謝です。
ゾーイ達が四姉妹に遭遇する少し前の出来事に遡る。
エンキは焦っていた。話には聞いていたが、このコアという男は只者ではない。こいつとリアムやエアルはやりあったのか?よく無事で生きていられたな。と痛感するほどに。
そして思考を巡らせる。考えるのを止めればこっちが負ける。
コアはただ剣を構えているだけだった。攻撃して来いと挑発するように。だが奴の間合いに入れば死ぬ。それだけは確実だと言える。強いがための隙。エンキには使命がある。部下であるリアムとマノンを生きて帰すことだ。それだけは絶対に守らなければならない。
頭の中でいくらシミュレーションをしても、自分一人だと引き分けが良い所。最悪、自分が殿になりリアム達を逃がす策が最適だった。だが、今コイツ等を信じてやれないほうが上司として失格だ。
賭けと覚悟が決まると、エンキからは汗が一筋流れ出る。
「リアム、マノン、戦闘態勢!」
「はっ!」
「了解!」
リアムとマノンはζモードへ銃を移行させる。
「テメェを倒して、レイラ達の居場所を突き留めてやる。そしてアマルティアを滅ぼす!」
「私だって、許さないんだから!覚悟しな!」
コアは一目見た時から解っていた。リアムとマノンが二年前よりかなり力を付けていることを。
「随分と成長したみたいだな。高みを目指すこと戦士。弱者に用は無い。さぁ、始めようじゃあないか!俺は証明したい。唯一無二の無属性を倒してこそ最強と謳われる力を!」
コアが瓦礫に剣を刺すと地面から木々が生え襲撃してくる。この木は幹を揺さぶり生い茂った葉を手裏剣のように飛ばしてくる。マノンとエンキが作った盾に隠れながら相殺をするが無数の葉を一枚ずつご丁寧に撃ち落としていたら八つ裂きにされる。
エンキはマノンに氷でドームを作るよう命じた。
そして一旦作戦を練り直す。
「あの刃物同然の葉っぱなんぞ相手をしていたら埒が明かない。足止めなのか、ただの攻撃なのか…どう思う」
突然の質問にリアムは驚いたが、これを足止めだと仮定すると考えられるのは一つ。
「タナス国王の殺害がまだ済んでいない?」
「そうだ。国王達のことはエアル達に任せている。そうなると時間稼ぎが正解に近いだろう。こうなったらお前達はエアルと合流しろ。そしてエルドを」
その瞬間、幹がドームを叩き割り偶然にもエンキはリアムとマノンと別方向へ咄嗟に避ける。
(チャンスだ!)
ここで運良く二手に別れたのを見過ごすわけがない。
「リアム、マノン、お前達は二人で行動しろ!絶対離れるな!行け!」
「了解!」
「…了解!」
リアムは即座に受け入れるが、マノンは後ろ髪を引かれる気持ちのままリアムと供に行動を開始する。
エンキはコアと剣を交えるが骨にまで響く重い一撃を食らう。ただ交わっただけなのに。こんなにも重いのか。
「お前、相当鍛えてんな。鍛えて、力を持って何になる?世界征服か?それとも世界平和か?」
「お前に言う必要はない。それより、この二年で力を付けたのだろう?リアム達は。期待外れにならないよう願う」
そのままエンキは吹き飛ばされ、背中を強打する。衝撃が思った以上に大きく咳き込む。
コアが咳き込んでいるエンキを眺め何かを考えていると、背後から微かに魔力を感じ、根を盾にして相殺する。
「惜しいな。リアム、小娘。リアムだけなら俺に気付かれず当てられただろう。しかし小娘の魔弾には僅かに気配が乗っていたぞ。まだ甘い」
何故かまだここにいるリアム達にエンキは驚きを隠せない。
「命令を無視する気か?!」
「虫の知らせって信じます?エアル兄達と合流する前に、大尉と一緒にコアを倒さないと嫌な予感がしたんですよ」
「罰なら後で受けます。だから一緒に戦わせてください!」
その声色からして、エンキがコアに負けるから居るのではなく、エアルとヘスティアなら必ずエルドを止め、タナス達を救うと信じているようだった。
思わず、こんな状況なのに笑みがこぼれる。
「作戦変更。三人でコアを倒し、即エアル班と合流する!」
はい!とリアムとマノンの返事が返って来る。
「マノン!」
「オーケー!」
「うぉおおおおおおお!」
「はあああああ!」
銃を構えた二人から、放たれた黒い雷がコアに向かい不規則な移動をし、命中する。根が盾になっても裂き、コアへ向かう。よく見ると、突破口を開くのがマノン。攻撃がリアムのようだ。
「いいコンビネーションだ。先ほど肩に当たったがなかなかに痛い…この痛みが更に強くする!俺は嬉しいぞ、リアム!お前にも見せてやろう!」
更に剣に力を籠めると、地面が揺れ始める。
「何?!」
「マノン、離れるな!」
「逃げろ、二人共!」エンキが叫ぶが間に合わなかった。
コアの上空に黒ずんだ樹皮は逆立ち、そして血のような赤い目。モルガンの美しい花のドラゴンとは違い。シレノの若草のような龍とは似ても似つかない邪悪な樹だった。逆鱗に触れた。意味は違うが龍が怒りを露わにするときは目の前のように凶暴なのだろう。見ているだけで足が竦む。
こんなのが敵だなんて、嘘みたいだ。
龍が暴れたことで瓦礫や土が舞い降り落ちる。エンキは樹の根を生やしガードできたが、リアム達の安否が解らなかった。判断ミスだ。マノンが居るから氷のドームを作って難を逃れたかもしれないが、どうする。救出に行かないと二人が本当に死ぬ。
一方リアム達も惨状は変わらなかった。龍が出現したとき、リアムはマノンの腕を引っ張り走り出した。
「ねぇ!あれってモルガン大佐やシレノと同じだよね?!」
「同属性だからな!今まで隠していたのか知らねぇが嫌なタイミングで披露しやがって!」
「反則だ!私だって龍出したい!」
「馬鹿言っていないで走れ!」
しかし龍の尾がビタンと叩きつけられリアム達は吹き飛ばされ、瓦礫の下敷きになる。マノンの咄嗟の水魔法で氷のドームを作ったので潰れはしなかったが、危機的状況なのは変わらない。
「助かった、マノン…サンキュー」
「エンキ大尉、大丈夫かな」
「あの人は大丈夫だ。それより、俺達は自分の心配をしなきゃならねぇ立場だ。この状況をどう突破するか…」
ドームの外ではまだ龍が暴れており、ドームにも物が落ち、当たる音がゴツゴツと響く。
「そうだ。このまま氷の塔を形成するから脱出しよう」
「あぁ。それであの龍を攻撃する。なるべくエンキ大尉の負担を減らすぞ。この場合…勘だけど、銃よりかは剣で立ち向かった方がいいと思う」
その言葉を聞いたマノンは、眼を丸くし不利な状況なのに目を輝かせた。
「うん!解った!転送だね!」
二人は転送装置を起動させる。マノンもわがままを言い、入隊祝いに同期させたのだ。そして今この瞬間が初めて転送出来た瞬間であった。
だが、それが功を奏した。二人分。ちゃんと武器を揃えられる。
「初の戦闘だぜ…ソーレ」
「ソレイユ!私だけの剣!」
リアムとマノン専用にデウトがマスタングに特注した剣。ソーレとソレイユ。これはデウトの門下生と認められた者だけにデウトから独り立ちの祝いとして贈られる。型は訓練中に使用していたものの強化版だ。
ふと、デウトの言葉が過る。
――『これはソーレ。ソレイユ。どちらもマスタング商会で作られました。百年、二百年もすれば名刀と呼ばれる一級品です。意味はどちらも太陽という意味です。二人は…軍にいる理由はそれぞれでしょう。ですが、絶対にその剣に恥じない行いを、道を歩んでください』
改めてデウトの言葉が重く圧し掛かる。間違えるな。この剣に相応しい道を。この復讐は、いずれ世界のための戦闘になる。
「行くぞ、マノン!」
「了解!」
マノンが一気に氷を塔のように高く伸ばし、上空へ上る。
龍と同じ高さまでいくとリアムとマノンがドームを割り、同時に剣を振る。バッテンの形に交差した黒の光が龍を攻撃し、身を削ることに成功するがすぐ再生される。
「無事に生還したのか。だが俺の龍は少々タチが悪くてな」
ニヤッと笑うコアに、エンキが衝突する。剣と剣が交じりギリギリと鳴る。
「タチが悪いのはこっちも同じだぜ。うちの新星を舐めんなよ」
一瞬でもリアム達の安否を疑った自分を恥じた。自分が信じてやらなくてどうする。リアムとマノンなら、あの龍をどうにか出来るかもしれない。
「コア、俺達と勝負だ!」
リアムとマノンは、龍に飛び乗り、ここから連続攻撃を繰り返していた。ブーストを使い龍の背中に飛び乗る。そしてそのまま攻撃をし続ける。再生しても再生しても、ブーストの速度にはついていけないようで再生スピードが遅れてきている。
「このまま首落としに行くぞ、マノン!」
「ガッテン!」
三十秒が切れ、龍の首を斬り落とそうとした時だ。
背中から槍状の木がハリネズミのように逆立つ。上手く避けた、いや運良く避けられたリアムとマノンは思わず唾を飲んだ。あと一歩踏み出していたら即死だった。
それを地上から見ていたエンキが思わず叫ぶ。
「リアム、マノン!」
「だから言っただろう。タチが悪いと」
「笑えないな」
二人からの通信は途絶えていない。生きている。
安堵したエンキは剣を構えるとコアに素早く接近し攻撃を開始する。
コアの優勢が見られるがエンキも劣ってはいなかった。しかし、それはコアが龍に魔力を供給しての話。龍を出さず、一対一であったら遅かれ早かれ死んでいただろう。
ガタイの良いコアの隙間をくぐるようにエンキは隙を見つけては魔力で気を生やし急所を狙うがあの大剣を突破するには難しい。硬直に根を生やして刺そうとしても、柔らかく根を動かし足止めをし、首を絞め上げようとしてもコアは斬り、引きちぎる。
自分もコアの攻撃から逃げるのに精一杯だ。コア・クーパーと言う男がここまで強いとは思いもしなかった。
「お前も面白い男だが、エアルにはまだ足りない。貴様はもっと強くなれる」
「民間人に負けるとは俺も落ちぶれたな」
「さぁ、終わりにしよう。リアム達もお前の後を追うだろう」
コアが両腕を広げると、地面から木の枝と茨が大量に生え、まるで鳥籠のようにエンキに迫って来る。
「この技…!」
この技を扱うもう一人の人間が脳裏を過る。
「シレノ…」気が付いたら声に出していた。
思い出した。シレノをどこかで見たと思ったのは気のせいではなかった。ダビンはイグドラヴェでは在り来たりな苗字だから気づかなかった。ダビン率いる反国集団にいた少年だ。あの少年が、シレノだ。
一瞬コアの魔力が弱まった。その隙を突いて鳥籠を切り裂き、コアに斬りかかる。しかしコアは馬鹿みたいに物思いに耽ったりなどしない。すぐにスイッチを切り替え、エンキの攻撃を受ける。そして問いかけ始めた。
「エンキ。お前もイグドラヴェ出身なら判るだろう。あの優しさに殺されていく感覚が」
「知ってるから軍に来たんだよ!」
「お前なら感づいたろう。俺は一時期を反国集団と共にしていた。シレノに指導したのは俺だ」
「だよな…なんかお前の戦い方を見ていたらシレノが過るわけだぜ。だがな、敵である以上、シレノとどういう関係だろうが俺は容赦しない」
エンキも地面に剣を刺すと、龍の頭部が五頭地面を割り出現する。しかしモルガンやシレノ。コアとは違い地面から生えたままである。そう。自立し、自我を持つ樹の龍、ドラゴンを生み出すのは木属性でも最高クラスの魔法。
「まだ生物を形成が出来ていないのか」
「俺は土からの力を借りないと生成出来ねぇ…。悔しいさ。シレノなんか、龍も、狼だって生成して見張り、偵察などをやってのけやがる」
「…部下にまで越されたのか」
「シレノは自慢の部下だよ」
その瞬間、エンキの龍がコアを飲み込んだ。
エンキの考えはビンゴだった。あの鳥籠を見た時、シレノと関りがあると疑った。しかし確証はもてなかった。しかしシレノの名をだしたら一瞬の隙が生まれた。やはりコアとシレノは昔出会っていた。しかもコアの弟子と来た。少なからず、シレノへの想いがあることは確かだろう。それが隙を生み、今こうして龍の頭部に飲み込まれているのだから。
コアが龍の頭部を撃破し中から脱出し現れる。体中に傷を負いながら。
「中は鋭利な棘のようだな。摺り潰して敵を殺すためか。なら、こちらもお遊びは終わりにしよう」
コアが上空を見上げる。
エンキは咄嗟の判断で一頭の龍をコアの龍の首元を噛ませる。
「リアム、マノン、気を付けろ!コア、お前は俺と勝負の続きだ」
「部下を助けながら俺と勝負か…貴様の実力でどこまで出来るか、見ものだな」
皮肉交じりなのか、純粋な言葉なのか。エンキはただ腹が立ち、思わず笑った。
リアム達は龍の背中に生えた棘を斬りながらダメージを当てようと躍起になっていた。
「リアム、このままじゃまあ力の無駄遣いになっちゃうよ!」
「解ってるけど手を止めるな!止めたら刺されて大怪我か死ぬぞ!」
暴れまわる龍に振り落とされないよう必死に棘を掴み、棘に殺されないように斬る。いたちごっこだ。永遠に終わらない。
(一旦銃に戻すか?いや、この場合剣の方が…クソ!武器すら何を使えばいいか解らなくなってきた!)
「リアム、また何か転送できないかな?!」
「…砲弾がある。龍の弱点は顎の下のはず…頭部ごと吹っ飛ばせばどうにかなるかもしれない!」
「わかった!てわぁあ!」
武器転送したくてもそれを龍が許すわけがない。暴れてはまた街を破壊し、リアム達を振るい落とし、飲み込もうとしているのだから。
(なんとか再生を遅らせることが出来れば…)
今ブレイズがいないことが悔やまれる。
いや。いる。日には劣るが木の天敵!
「マノン!棘を斬ったら氷漬け、或いは霜にしろ!そうすれば再生が遅れるかもしれない!」
「承知!」
リアムの予想通り、マノンが氷るように斬ると、再生がピタリと止んだ。しかし完全に止まった訳ではない。冬が終わり春へ向かい芽が出るように、棘もまた自発的に芽を出そうとしている。棘の攻撃も弱まり、リアムが砲弾を転送する。そして首を狙い打とうとしたその瞬間だった。頭が急に尾に向かい噛みつこうとしているのだ。
何事かと思い振り向くと、尾の方にマノンが立っていた。そう、龍は長い胴体を利用して自分の尾ごとマノンを食らおうとしていたのだ。
「マノン!」
「ブースト!あれ、ブースト!」
ブーストが出来ない非常事態。引き金が引けないような感覚の気持ち悪さにマノンも焦る。
「マノン!こっちまで走れ!」
唯一の肉親なのに。ネストとイノ…会ったことのない叔父夫婦の忘れ形見。守らなきゃいけない一人。仲間。家族なのに。
手を伸ばすが、間に合わない、その時だった。グラッと大きく揺れると、エンキが出した龍の頭部が首を噛んでいた。
「リアム、マノン、気を付けろ!」
リアムは、全身の力が抜けた。パニックになり、自分もブーストが使えるのに使えなかった。まだまだ自分が甘いと痛感した。二年で成長したと思っていた。思い込んでいた。
守りたい…守りたい。一緒に戦う仲間を、従妹を。そして、最愛のミラを。
「アウェイクニング!」
気が付いたら叫んでいた。
すると身体から煌めく虹のような光がリアムを包み込む。まるで全属性がリアムを助けるように輝き放つ。
一歩踏み出せば、ブーストが発動しマノンを救出していた。そして尾がリアム達を叩き潰そうとすれば、ディフェンスとアイズを駆使して防御する。尾を跳ね返し、砲弾を構える。
そして首を狙う。
ドン!と大砲音が響くと、魔弾は項に当たり龍が悲鳴を上げる。かなり抉られており、そこのエンキの龍が引きちぎった。
「マノン、離脱するぞ!」
「うん!」
リアムはそのまま地面へ着地する。それと同時に龍の胴体が落下し、瓦礫や土埃を舞い上がらせた。
スーッとリアムから輝きが失われていく。
「…あれ、リアムが全部やったの?」
茫然としているマノンが訊く。
「俺も、正直驚いてる。こんなこと出来たんだって…。全属性の技が、助けてくれたみたいな感覚だ」
ポカンとしていた二人だが、じわじわと現実が押し寄せる。
「リアム、リアムすごかったよ!中二みたい!」
「中二って…褒めてるのか?それ。好きであんな色に発色していたわけじゃねぇよ…」
「でもかっこよかったよ。助けてくれてありがとう。これは本当に思ってる」
「お前が無事なら、なんだっていいよ」
龍を倒せてホッとした二人に温和な空気が流れるが、エンキの声で我に返る。
「まだ終わってねぇぞ!死にてぇのか!」当たり前だが怒るエンキ。
「そうだ、コア!」
二人も剣を構えエンキに加勢する。
後ろには五頭の龍、エンキとコア。今まで、自分達をかばいながらコアとも戦っていたと知ると驚愕する。この人は頭の後ろに目でもついているのだろうか。
「リアム、お前はⅤと書かれた龍と。マノンはⅣと書かれた龍と共に戦え。いいな」
よく見るとエンキの龍の額には英語数字でⅠからⅤと書かれていた。
「了解」
ここから三人の怒涛の反撃が開始する。
ここで説明するが、決してエンキがシレノより劣っている訳ではない。寧ろモルガンからエグイと称される魔力量で龍を操っている。モルガンは真似出来ないと言う。
エンキは基本、多頭の龍を地面から放さず出現させる。それは魔力と土の力を借りて魔力供給の回転を速くさせているのだ。そして五頭分の龍に均等に魔力が行くよう計算されている。そして一頭ずつ、自我を持っている。さらに凄いと称するとすれば、シレノと同じく個とした偵察用の犬、或いは狼を出現させることが出来ることだろう。
エンキは三匹との連携が抜群でコアを追い込んでいく。先ほどよりもコアの懐に入れる回数が格段に上がった。しかしそう簡単に斬らせないのかコアだ。そこにリアムとマノンが攻撃を仕掛ける。コアの大剣に吹き飛ばされるが何回もトライする。諦めたらそこで負けだ。絶対に足を止めなかった。
「素晴らしい、素晴らしい連携だぞ、エンキ!お前は一人よりも複数人で戦った方が戦闘能力は高くなるらしいな!俺は今、最高に喜んでいる!」
するとまた鳥籠が出現し、今度は狩りのように追い込むのではなく、もう囲い、棘の中に閉じ込められていた。
「ぐあぁあああああああ!」
「いたああああああい!」
「リアム、マノン!マノン、氷で!リアム、無属性魔法で片っ端から斬れ!」
言われた通りマノンは剣で氷魔法、リアムは無魔法で切りかかると相殺は出来ないものの脱出できた。木は霜げて威力を落とし、無属性魔力で魔力が吸い取られ栄養が吸い取られたかのように衰え枯れる。
「エンキ大尉!」
ただ、木でしか身を守る方法が無いエンキはリアム達と同じようにはいかなかった。
リアムが助けようとすると、木の根がじゃまをする。
「そう慌てなくても殺しはしない。奴は新しい力を見せてくれた。チームワークだ。俺はまたエンキとも戦いたい…。今日はここで撤退する」
そう言うと、時空に歪みが現れその中へ入り、消えていった。
「エンキ大尉、大丈夫ですか?!」
駆けつけたマノンに、棘の繭の中にいるエンキと救出する。救出するさいに無属性魔法と氷魔法で棘や枝を枯らしていかないといけないくらいキツく締め付けられていた。
救出したエンキは、肉が抉れ見ていても痛々しいものだった。
「大尉、大丈夫ですか?!」
「俺は大丈夫だ。お前達も怪我をしているだろう。急いで帰還しろ。俺はエアル達を捜し合流する」
「そんな…」
「大尉も一旦帰りましょう。俺達より重症です」
リアムはエンキの言葉を無視し、背負い歩き始める。
「また命令違反するのか」
「後で怒られますから。手当してから捜しに行きましょう。俺も同行します」
「私も行きます。ティア姉の事、心配だし…」
勝手に話を進める二人に、エンキは思わす溜息を吐いた。
「俺はお前達みたいな部下を持てて嬉しいよ」
解ったのは。三人がかりでも今のコアに傷を付けるのは厳しいという現実だった。悔しくて、三人は言葉にはしなかったがいつか一対一でも勝てるようになると誓ったのであった。
一方、マシューとブラッドはドローンから見守っており、コアが帰還したことに安堵の息を吐いていた。
「よかった…三人とも無事で」
「後でランドルフ従兄妹は説教だな」
ホッとしたのも束の間。問題はエアルとヘスティアだった。ドローンが撃ち落とされどういう状況下把握できなくなったのだ。ジャミングもされているのか通信も入らない。
「無事ならいいんだけど…」
相手はエルドだ。ブラッドは待機していたブレイズに声を掛ける。
「ブレイズ。エアル達と合流しろ。捜し出せ」
立ち上がると、ブレイズは一呼吸を置く。
「解りました」
原作/ARET
原案/paletteΔ