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ETENITY00  作者: Aret
2章・・・代償
25/113

25話・・・ティアマテッタ・軍入隊

作品を読みに来て頂き感謝です。

ここから2章に突入します。

ヴェネトラを立ってから三日目の早朝。

リアムはエアルに起こされ、言われるがまま操縦室へと連れていかれる。

「なんだよ…こんな朝早くに…まだ五時過ぎたばかりじゃん」

「まだ寝ぼけてんのか?ほら、あれを見てみろ」

エアルが顎で方向を指すと、リアムの眼は輝き出した。

軍と大都市が折り合う、世界を守る中心の国…

『目的地、ティアマテッタまで約一五分で到着予定』音声案内が入る。

「俺、着替えてくる!」

「はは、まだ子供だなぁ」


「あー、ゴホン。停泊場に着陸の許可を貰いたい」

エアルが操縦席に座り、着陸に向けての通信を始める。それを後ろからリアム達がじーっと穴が開きそうなほど見つめてくる。

(やりずれぇ)

『こちら、ティアマテッタ東地区飛行場、そちらのナンバーを照会したい』

「了解。ナンバーZX32589…ランドルフ。着陸を求めたい」

『ナンバー照会…ナンバー一致、確認しました。ランドルフ様、ようこそティアマテッタへ。ガイドビーコンに従って十五番へどうぞ』

「ありがとう。ガイドビーコンに従い十五番に着陸します」

通信と着陸許可が終わると、今まで息を顰めていた後ろにいた奴等がは~と声を上げ始める。

「ついに来たぞ、ティアマテッタ!やっと、念願の…!」

リアムは窓に張り付き、景色に釘付けになっている。マノンも窓にくっつく。

「すっごー!高層ビルだらけ!軍隊国なのに変なの!攻撃の目印じゃん!」

「何物騒な言ってんだよ。ここは軍隊国家だからかもな。俺達が着陸するここはオフィス街、そして少し走れば住宅街だ。オフィス街って言っても、IT企業が殆どで軍と共有して情報提供を組んでいる」

エアルが説明すると、マノンはちょっと静かになり「へぇ」と小声で納得した。

「それに、唯一マジックストーンが採掘できる場所でもあるからな。向こうに見える山の方へ行けば採掘業者がある。ここは貿易も盛んだし、武器職人もいる。マスタング商会には劣るがな」

「なんか色んなものが混ざってる国なんだなぁ」

着陸するに従って、どんどん高層ビルの高さがさらに巨大に見えてくる。ミラとヘスティアが見上げて感心している。

「ほえ~…すごい…」

「ティアマテッタにも、こんな場所があったのですね」

「ヘスティアさんもティアマテッタに来るのは初めてなんですか?」

「いえ、何度か。ただ…その、私の場合は王室対応でしたので、軍事基地内に直接着陸し、国賓待遇でしたので…。王室や政治家が集う専用住居地区に通され、軍内での会議参加や来賓の往復ばかりでしたので、こういう高層ビル街に来るのは初めてです」

「ほ、ほへ~」

違う意味でもミラは圧巻された。

「おいおい女性陣。ここで驚いてたら、中心街に行ったら度肝を抜かれるぞ~?」

「え、もっと凄いの?!」

「はは!行ってのお楽しみだな」

無事着陸し、エンジンが自動に切れる。リアム達は荷物を持つと、外へ出る。


リアム達は入国手続きを無事に終え、正式にティアマテッタの地に足を踏み入れた。

『ランドルフさん、以後は飛行場十五番をご自由にお使いください』

「りょ、了解です」

リアムのマジックウォッチに管制塔から連絡が入り、リアムはちょっと緊張した。

「さてと。ジョンさんから教えてもらった住所は…ここから車で十分ってところだな。リアム達はタクシー拾って先行してくれ。俺は後ろから車で追うから」

「了解。じゃあ、俺達はタクシー拾いに行くか。エアル兄、また家で」

「おう」

リアム達とエアルは二手に分かれ、アイアスが所有している住宅へ向かった。

到着した一向は、静かに歓声を上げた。予想していた家の規模より、デカイのだ。

「すごい、金持ちの家…」マノンが言う。

「実家よりデケェ」リアムがちょっと複雑そうに呟いた。

白の外壁を基調とした家。インナーガレージ付き、庭付き。リアムが玄関の完備システムにマジックウォッチを接触させると電子音が鳴る。

『リアム・ランドルフ、帰宅ヲ確認。鍵ヲ解除イタシマシタ』

「インナーガレージを開けてくれ」

『カシコマリマシタ』

ガレージが自動に開くと、そこにはアイアスが乗っていただろう車が止まっていた。

「父さん、ここで乗ってる車の方が高そうだな…」

「こ、これは!セブンじゃないか!」エアルが興奮し始める。

「こんな綺麗な状態で…この美しい曲線、フォルム、はぁー!アイアスおじさんは解ってるなぁ!」

その様子を遠目で見ていたミラが、リアムにボソリと呟いた。

「あぁいう車も独身のうちならいいけどさぁ…家族が増えたらちょっと乗りにくいよね。趣味にしては結構なお金かかりそうだしさぁ」

「あー…まぁな」リアムも、エアルの気持ちが解らないでもないので、曖昧に誤魔化した。

リアムもいつか、エアルが所持するような車が欲しいと思っていた。だけど…

『あなた!もうクラシックカーだかスポーツカーだか解らない高級車は売って、ファミリーカー購入するわよ!もうこの子もいるし、二人目も出来たんだから!』と未来の想像の妻が怒ってくる。

「…ファミリーカーと二台持ち出来るくらい稼ぐか」

「えっ」

この時、ミラが自分との将来のためにリアムが車所持のことを考えてくれていると誤解したのは言うまでもない。

「エアル兄、家ン中…いこう…」

リアムが声を掛けるが、エアルはもう駐車した自分の車とアイアスの車を眺め、その光景に見蕩れ興奮し、一人で騒いでいた。

四人はもうエアルをほっといて家の中へ入って行った。

室内もまた凄かった。二十畳のリビング、アイランドキッチン、大型テレビにL字型のソファ。美しい景色の絵画。

「すごい…リアムの家って、お金持ちだったの?」

「いや、まさか!一般的家庭だよ」

「ゼーロの街の給料や価値基準が高いとかじゃなくて…?」マノンが疑いの眼差しを向ける。

「いやいや!俺んちもミラんちもエアル兄の家も本当、普通だったから!こんな凄い豪邸所持してたたんて、ここに来て初めて知ったくらいだし!」

「ふーん。ねぇ!探検してきていい?!」

「はぁ?あー、まぁいいけど…荒すなよ、散らかすなよ」

「わかってるって!」

了承を貰ったマノンは廊下に出ると手あたり次第ドアを開けては何やら歓声を上げている。リアムが呆れながら頭を掻くと、室内を見回していたヘスティアが声をかけてきた。

「ティアマテッタにこんな別宅をお持ちなのに…何故リアムさんには教えなかったのでしょうか」

「まぁ、仕事の事は家に持ち込まない人だったし…まさか、出張の時はホテル住まいだと思っていたから、こんな家があるとは思いもしなかったけど」

「マスタング商会に映像チップを遺したほどの方ですよ。なのに、別宅を最後まで教えなかったのは何故なんでしょうね…。それに、この家の大きさや設備を見ても、軍のトップクラス、私が使用していた要人クラスの人間が集まる専用居住区域でよく見る家そのものですよ」

「はぁ?!いや、待ってくれよ…」

「お気づきになりませんでした?お隣さんや、他のご近所の住宅は一般的な建築物でした。これは私の仮説ですが…リアムさんのお父様は、ティアマテッタにとって重要なポストにいた方なのではないでしょうか」

「いや、そんな。父さんは普通にバイヤーの仕事してて、仕入れとかでティアマテッタに出張行ったり、たまにジョンさん所に行ったり…」

ヘスティアの思わぬ発言に、リアムは混乱する。父が要人?ゼーロで見せた姿は普通の父親だった。朝になれば出勤していたし、夜には帰ってくる。残業だってしていた。仕事でミスして上司に怒られたとか、ミラの父親と酒飲みに出て酔っぱらって玄関の外で寝落ちしてたり、とても要人とは思えない。

「まぁ、私の想像です。あまり気になさらないでください」

「あ、いえ…すみません」

少し気まずい空気の中、二階に上がっていたマノンが駆け下りてリビングに戻って来た。

「聞いて!二階凄かったよ!小さいけどバスルームがまたあったし!寝室なんて五部屋もあんだよ!そのうち一部屋はダブルベッドでぇ、後はシングルだったよ。ねぇ、シングルベッドの部屋でいいからさ、一室貰っていいでしょ?」

「貰っていいでしょって、お前。ここに一緒に住む気かよ」

「え?!」ミラが思わず声に出た。

「だってさぁ、行く宛て無いし、バイトも見つけてないし部屋借りるにしてもまだ先になるじゃん?」

「そうなるわな。ミラ、マノン達もしばらく一緒でもいいか?」

突然ふられて、ミラは慌てる。

「えぇ?!う、うん!もちろん!」

「あはは!ありがとう、リアム、ミラ!ちゃんとお手伝いするし、バイトも見つけてお金入れるからね!」

マノンが無邪気に喜ぶ姿を見て、ミラは益々追い出そうとは思えなくなった。最初から追い出すつもりも無かったが、楽しそうにするマノンを見ていたら、ずっと一緒に住もう、なんなら先生だって呼んでいい、このランドルフ家からお嫁に出たっていいんだからとさえ思った。

(ちょっと夢見すぎちゃったかな。家族って訳でもないのに。皆だって、いつまで一緒にいられるか解らないのに…)

すると、マノンが思い出したかのようにリアム達に話し始める。

「そうだ。なんかエレベーターあったよ。二階じゃなくて、地下にしか行けないエレベーター。でも地下に通じる階段も無いの。そのエレベーターでしか行けないっぽい」

「なんだそりゃ」

「まさか、マスタング商会みたいに無力化する兵器があるんじゃ…」

「怖い事言うなよ、ミラ…」

三人が、廃墟に出るお化けの真相を確かめようとする子供達みたいで、思わず微笑んだ。

「三人で確認してきたらどうですか?私は紅茶でも入れて、休憩の準備をしていますから」

「リ、リアム。確認しよう。もし、無力化兵器だったら、この家、ヤバイよ」

ミラが顔に影を落とし、唾を呑みこみながらリアムの不安を煽る。

「お、おう…そうだな。確認は、大事だ…」

「うし、行こう!」

マノンを先頭に、三人はエレベーターに乗り、地下へと下りていった。


随分長かった気がする。マジックウォッチで確認すると、地下百メートルまで下りたようだった。

「かなり下に作ったんだな」

エレベーターから降りると、玄関程の広さの場所に出る。そこには、厳重な扉があり、暗証パスワードを入れないと開かない仕組みになっていた。

リアムが画面に触ると、スイッチが入り起動する。

『アンショウパスワードヲ入力シテクダサイ』

「暗証パスワードって言われても知らないんだけど…」

「えぇっと、クロエ!」

『認証失敗。アトニカイ』

「え?!回数制限あるの?!」

『認証失敗スルト二十四時間後マデシヨウ不可。明日モ失敗シタラ爆破サレマス』

「えー!ごめん!」

「いや、大丈夫。後二回だろ?よく考えて…」

リアムとミラの後ろで、マノンが顎に手を添え探偵ごっこに浸っていた。頭の中ではいらんことと無意味な数字が巡っている。そして電球がピンと光る。

(妻の名前、クロエが失敗ならそれはクロエさんから恥ずかしいからやめてって言われた証!そして、アイアスなんて自分の名前名乗るのはきっといい大人なら恥ずかしいはず!夫婦で忘れない絶対無敵のパスワード!それは!!)

「わかった!リアム・ランドルフ!」

マノンがビシッと画面に向かい指をさす。

「は…?開く訳ないだろ」リアムが思わず零した。

『パスワード承認』

「え?」

ガチャンと重たい鍵が開く音がする。

「嘘だろ、開いた…」

リアムは開いた口が塞がらなかった。マノンは嬉しそうに親指を立てた。

「やったね!」

重厚な扉が開き、中へ入ると、そこは武器庫だった。全てマスタング産、火器類、剣類、戦うには十分な装備が備えられていた。

「すげぇ…。父さん、ここにも武器を備えていたのか」

「おじさん、本当に色んなことを見据えていたのね」

リアムとミラが武器庫内を見渡す。

「ねぇ、パネルがある」

壁にはめられているパネルをマノンがタップすると、リアムのマジックウォッチが反応する。

『転送システム。同期シマスカ』

「え?!します!」

突然マノンのせいだが話を進め始めるマジックウォッチに慌てるリアムだった。


三人がリビングに戻ると、紅茶とクッキーの香りがふわりと鼻を掠めた。ソファにはエアルがどっかりと座り、嬉しそうにマジックウォッチから写真を浮かべてニヤニヤとご満悦そうだった。

「地下に行っていたんだって?どうだった?」エアルが尋ねる。

「あぁ。父さんが残した武器庫だったよ」

「なるほどなぁ。いざって時はシェルターにもなるだろうな。すぐ入れるように、リアムとミラは同期しておいたほうがいいかもな」

「え、なんで私も?」ミラが不思議そうに訊く。

「なんで、て。未来のランドルフ夫人だろ?」

エアルがウィンクすると、数秒遅れて意味を理解したミラが「!“#$%&‘?!?!?!?!?」と訳の解らん悲鳴を上げる。

そこにマノンがリアムを肘で突く。

「そこんとこ、どう思ってんだい。ランドルフの旦那」

「どうって…どう、でしょう…」

「歯切れワルゥ。もたもたしてると、知らない男がミラに一目惚れとかして猛烈アタックして告白とかしちゃうよ~?告白ふっ飛ばしてプロポーズされちゃうかも~?なあなあな関係のままだとぉ…いつかミラに捨てられるかもぉ~?」

ミラはもう何も言っていないエアルに向かって永遠に言い訳を羅列しており、リアムはマノンの精神攻撃に痛い所を着かれ過ぎて反撃できずにいた。

そんな四人にヘスティアが間に入る。

「はい!将来のたられば話はここまで!エアルも、マノンも揶揄い過ぎです」

「はーい」

「それより見てくれよ、この写真!おやじさんと俺の車のツーショット…最高だね。圧巻、圧巻。思わず撮りまくっちまったよ」

エアルの態度に、ヘスティアが小バエを見るように睨むと、舌打ちをした。

「それよりエアル。今後私達はどう行動する予定で?リアムさんは軍隊入隊に向けて動くにしても、私はミラさんの面倒を見るにしても、ただここで呑気に過ごす訳でもないでしょう」

ヘスティアの言葉に、エアルはマジックウォッチを閉じ、真剣な顔付きになりソファから立ち上がった。

「その事だが…。黄昏の正義は事実上壊滅したと考えていいだろう。ティアマテッタの軍のメスも警察内部に入る。そして…。ジョンさんがヴェネトラを立つ前に教えてくれたんだ。アマルティアを追えってな」

「アマルティア…?」ミラがリアムを見るが、リアムも肩をすくめる。

「聞いたことの無い国…?ね」

「アマルティアはゼーロの街より伝説級の名前だよ。知っている奴の方が珍しいくらいだ。俺も警察時代は架空だと思っていたし、眉唾だとも思っていた。だが、ジョンさんに言われた以上は確かめなきゃならねぇ。ジョンさんが言うんだ、多分、ネストとナノスが関わっていのかもしれない。だから、ここでの生活が一旦落ち着いたら、俺は一度ゼーロに帰るよ。何か手がかりがあるかもしれないし、ナノスの父親にも話を聞いてくるつもりだ」

「そっか…」

ミラが複雑そうに呟いた。

「ナノスお兄ちゃん、復讐なんか考えていないで、どこかの国で平和に役立つ研究しててほしいな」

「ミラ…」

「ごめんね!私も、ナノスお兄ちゃんがどんな罪で追放されたかも解ってる。追放されるまで、どんな酷い事をされたかも知ってる…復讐したくなる気持ちも、解る…。でも、やっぱり身内だからさ、信じたくない気持ちが半分はあって」

リアムは、何て言葉をかければいいか解らなかった。ナノスがした研究は禁忌だ。倫理に反していると思う。ミラがナノスの身内ではなければ汚い言葉で罵っていたかもしれない。でも、そんな汚い人間に成り下がらなくて済んだのも、ミラが傍にいてくれたからで。

正直、ナノスの考えは理解しがたいが、追放されるとき同情したのは本当だ。

ナノスはミラを大切にしていた。なのに、どうして禁忌を犯したのか。ミラを思うなら、何故思い留まらなかったのか…

「ミラの気持ちは、私も解ります」ヘスティアが静かに語る。

「きっと、先に進めば傷つく結果に辿り着くかもしれません。それでも、自分の中の正義と正しさを忘れないでください」

「わかりました」

「さ、お茶にしましょう」

ヘスティアの柔らかい声に、一同は席に着く。


夜。ベッドに寝転んだリアムは考えていた。

ただ強くなり、ミラを守って、両親の復讐をするだけじゃダメってことを。精神的にも強くなり、精神面もミラを支えたいと、強く思った。あの時、声をかけてあげられなかったことが凄く悔しく思えた。ミラが安心する言葉なら、なんだって掛けてやればよかったじゃないか。

「強くなりたい、かぁ」

なんだか、強さがなんのかあやふやになりそうだったけど。ミラの笑顔を思い出す。その笑顔を守るための強さが欲しい。

リアムの芯になる強さが固まり始めた。

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