表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETENITY00  作者: Aret
1章・・・旅立ち
23/113

23話・・・飛行艦

作品を読みに来て頂き感謝です。

「おはよー」

皆より少し遅れてマノンが起きてきた。昨日はティアマテッタへの行先登録や進路確認、操作確認、洗濯できなかった私服を洗濯機で回して干し、食材が何を用意されているかの確認。なんだかんだしていたら夜になり、夕飯食べて、それぞれの部屋でゆっくりして終わった。

今日は船内の探検を予定している。

マノンは朝の支度をしようと洗面所のドアを開けた時だった。

「おーマノン、おはよう」

そこには上半身裸で、濡れた髪を掻き上げて少し乱した、風呂上りのエアルがいた。

「っ?!?!?!?!?ギャー!!!!!!居るなら言ってよ!!」

「え?!ワリィ!!」

マノンは慌ててドアをドシャンと閉めた。

(えぇ…そんなに嫌がることかぁ…いや、でも、マノンの年頃なら俺なんかおっさんに見えて、おっさんの半裸なんか見せられたらそら嫌かぁ…)

ちょっと傷心していると、ふと過る。

(もしかして、娘を持つってこんな感じなのか?!?!?!?!)

エアルの脳裏には姪のアイリスが過り、成長したアイリスがエアルおじちゃん近寄らないで!とぷいっとそっぽを向く光景が想像される。そして姉のエマが、貴方、最近加齢臭するわよ、気をつけなさいと傷口を抉ってくる。

(…未来のために、気をつけよう)

エアルはキリッと顔を引き締めると、ドライヤーで髪を乾かし始めた。

一方、マノンはドアにしゃがみこんでいた。顔を真っ赤にさせていた。マノンは、男性の裸なんてちゃんと見たのは今回が初めてだった。孤児院に居た頃は、六才を過ぎたらもう男女別々に分けられて、異性の裸なんて見ることはなかった。メルカジュールランドでは、あれは男性がちゃんと水着穿いているから、そんな意識していなかった。でも、さっきのエアルは腰にバスタオル巻いただけで、ほぼ裸体と言ってもいい。しかも、しかも!

(は、はわわわわわわわわ!!!!)

マノンは顔面から火が噴きそうで、耳からは水蒸気が出そうになりながら、悲鳴を上げながらリビングへ走った。

リビングではミラとヘスティアが朝食の準備をしていた。料理はミラ、皿を並べるのはヘスティア。リアムは庭で銃の練習。リビングには、スクランブルエッグとトーストの香りが漂う。

「皆さん、紅茶でいいかしら」

「はい!マノンは兎も角、リアムとエアル兄は毒じゃなければ何も文句言わずに飲みますよ!」

「そ、そう」

ヘスティアは、レンから餞別に頂いた白と青を基調としたティーセットを用意し、紅茶を蒸し、ティーカプに注いでいく。

「わうあああああ!ミラ、ティア姉!朝から酷いモン見ちゃったよぉ!」

「どうしたのです?」

「洗面所に行ったらエアルが全裸でいたぁ」

それを聞いたヘスティアは頭を抱えた。

「もう、エアル兄ったら…だから昨日、お酒飲む前にお風呂入ったらって言ったのに。マノンになんてもん見せるのよ」

「朝シャワー浴びるから平気と言ってアホみたいにお酒を飲んでいましたからね」

「ヘスティアさんは?二日酔いとか大丈夫ですか?」

「私は嗜む程度でエアルに付き合っただけですから、全然。マノン、後でエアルにデリカシーについて説教しておきますから」

「うぅ…ありがとう」

マノンがシクシクと泣き真似をする。

「マノン、キッチンでも良ければ、顔洗って。あれ、顔赤い…もしかして、熱ある?」

ミラはマノンのおでこに手を当てようとすると、マノンが慌てる。

「熱は無いよ!本当!」

「そう?ならいいんだけど…」

朝から騒がしく始まった。リアム一行のティアマテッタへの旅、二日目の出来事。


「まさか、ついにエアル兄が女の子に全裸見せるとは思わなかったぜ。良かったな、飛行艦の中で。ヴェネトラでやらかしたらラードナー家に捕まって私刑だったかもな」

「全裸じゃないって。ちゃんとパンツ穿いた上にバスタオル巻いてたから」

「パッと見全裸だろ」

朝食後、リアムとエアルは食器を洗いながら今朝の出来事について話していた。女性陣は洗濯物を干している。

「さて、洗い物終わりっと。リアム、俺は格納庫に行くけど、お前も来るか?」

「いや、俺は部屋に戻るよ。ちょっと調べ事もしたいし」

「そっか」

エアルはウィンクをすると、軽快な足取りで格納庫へと向かった。

(後でヘスティアさんから説教されるのに、呑気だなぁ…)

エアルは頼れる兄貴分だが、どこかマヌケというか、適当な所がある。

庭の方を見ると、洗濯物を干し終えた女性陣が晴れた中、楽しそうにお喋りをしていた。

リアムは幼い頃を思い出す。母、クロエの手伝いを何でもしたがった。料理をするときも邪魔をして卵を割りたがった。洗濯物を干すときも、バスタオルが引きずれているのを気にせず干そうと届かない物干し竿に背伸びをした。ありがとう、って褒めてほしくて。

今思えば、足手まといだっただろう。でも、母はありがとうと微笑んだ。

「リアム、お皿洗いありがとうね!」

ミラの声に、我に返る。

「おぉ…ミラ達も、洗濯物お疲れ」

「これからヘスティアさんに格闘技や体力作り教わるんだ!しばらくはそのメニューで、ティアマテッタについて落ち着いたら銃の訓練も始めるって!それに、ティアマテッタって銃の射撃訓練教室もあるんだって。何かあったら、国民全員が戦うらしいよ」

ティアマテッタは軍事大国。世界に何かあったとき、軍隊も戦争に出るが、国を守るため国民が一丸となり敵襲と対じする。しかし、ティアマテッタを狙った襲撃や戦争は過去の記述では、全て情報戦の末、先に制圧され未遂に終わっている。

「あんま気張りすぎるなよ」

「ありがとう。あ、お昼はちゃんと作るからね!」

そうだ。ここの調理担当はミラに全てがかかっている。何故なら、残りの四人は料理が下手くそ、もしくは壊滅的だからだ。


マノンは、船内を探検していた。ドアを開けては一つ一つ確認しては満足していく。

誰もいないリビングで冷凍庫を開け、アイスを発見するとこっそり食べた。

失礼だと解っていたが、皆の部屋もこっそり覗いた。全部同じデザインで変り映えしなかった。ちょっとつまらなかった。

リアムの部屋を覗こうとしたが、鍵がかかっていて開かなかった。たぶん中にいる。

道場に行くと、運動着に着替えたヘスティアとミラが手合わせをしていた。手ほどきを受け、実践し、ヘスティアに投げ飛ばされては受け身を取るがちょっと受けきれていない。

「初めてにしては動けていると思います」

「あ、ありがとうございます」

「では、サンドバッックを使ってやってみましょう。私が指示を出しますので、遠慮なく、渾身の力で挑んでください」

「はい!」

サンドバッックにはマノンが描いてあげたコアの似顔絵が貼られていた。

(ちゃんと使ってくれてる!)

マノンはシシシと笑うと、次へ向かう。

最後にやって来たのは、格納庫だった。こっそり覗くとエアルが車を見つめ、ニヤニヤと笑いながらマジックウォッチを操作している。

「いやぁ…ジョーイさんのチューンナップメニュー…最高だなぁ…はぁ、キスしたいくらいだぜ」

マノンはさっきのドキドキを忘れ、ジト目でエアルを見届けると、そっとドアを閉めた。

「はぁ~。殆ど見おわっちゃったなぁ…暇になっちゃった」

マノンはとりあえずリビングに戻ることにした。


リアムは部屋に籠り、固有スキルについて悩んでいた。発動条件が解らない。父は発動条件については教えてくれなかった。アイアス自身が固有スキルを使用できるまでに到達していたのか、していなかったのか、それすら解らない。

(Aクラス…発動条件の一つは満たしている。だが、それだけじゃ足りないんだ。一体何が足りない)

エアルは守りたいという一心で発動した。自分にはまだ覚悟が足りないのか…?

(…なら、アーレント家の子孫なら、エマ姉も使えるのか?いずれアイリスもAクラスまで成長すれば可能性があるってことか)

リアムは考える。コアに勝つためには固有スキルは絶対必須だ。それはエアルを見て解っている。それに、自分が全属性のスキルを使えるなら圧倒的な有利にも立てるかもしれない。

「あー!父さん、なんで…せめてヒントでも残していってくれぇ…」

リアムは頭を掻くと、ベッドに寝転がった。


エアルは、格納庫にまだ留まっていた。

マジックウォッチでミラから送ってもらったコア戦の映像を見返していた。確かに、コアに大剣で斬られる寸前で無属性魔法を浴びせていた。もうこの時には記憶が無い。そして、気絶しているコアの口に銃口を入れ、さらにもう一発撃っている。口に銃口を突っ込むのは、やりすぎではないかと自分が怖くなった。そして、自分の記録映像を見ると、コア戦はとにかく(コアのアップの顔が殆どだった)、爆発が起きると、吹き飛ばされかけたリアムをしっかり助けていた。ただの戦闘野郎ではなく、ちゃんと守る対象も判別できていたことは幸いなのか。

固有スキル…今まで、発動できるような変化や僅かな反応も無かったのに、どうして急に。そして、また発動するにはどうすればいい。

「固有スキル…どうしたらいいんだ」

マジックウォッチを弄っていると、固有スキルに反応したのか、アーレントと書かれた文字と、紋章が現れクルクルと回っている。

「なんだ、この紋章…。そういやぁ、ヘスティアは発動するとき唱えていたな…クラス・ブースト!」

なんとなく真似して唱えてみた。すると

『オンセイ認証、カンリョウ。クラス・ブースト発動。三十、二十九、』

エアルの腹、心臓、頭から魔力が湧きあがり爆発しそうに体内で暴れ出す。

「っく!!なんだ、これっ!」

エアルは倒れる。頭が割れそうなほど痛く、手は震え、痙攣の末鼻血が垂れる。

「キャ、キャンセル!無し!無し、ストップ、ストップ!終わり!クラス・ブースト終わり!」

エアルは思いつく限りの終了の言葉を口走る。

『クラス・ブースト、キャンセル』

マジックウォッチが終了を知らせると、爆ぜる寸前だった魔力は風船が萎むように静まっていく。

乱れた呼吸を整え、大の字になり、鼻血を手で拭う。満タンだった魔力が一瞬で消失したみたいで身体全体が怠く、腕を上げるのも億劫だ。

「はぁ、はぁ…覚醒したら、次使うのは音声認識で簡単に出来るのかよ…恐ろしいな。魔力の底上げが必要だな、身が持たん…こりゃリアムも特訓させるか?」

エアルは思わず、声を上げて笑った。


夕飯も終わり、風呂の順番で譲り合いが始まっていた。

「昨日俺が先に使わせてもらったんだから、今日はミラが先に入れよ。特訓して汗かいたんだろ?」

「私は大丈夫だよ、後からでも。なら、ヘスティアさんかマノン、先に入ったら?」

「いえ、私は後からでも…」

「なぁ、俺にも声をかけてくれよ」エアルがごちる。

「ならさぁ!ミラもヘスティアも、私と一緒に入っちゃおうよ!」

マノンがグッドポーズをする。

「昨日、お風呂一人ずつ入ってたら遅くなっちゃったじゃん?なら、三人一緒に入れば時間短縮にもならないかな?」

確かに風呂は少し広めに作られていた。三人で入っても手狭にはならないだろうが。

「なぁ…そうします?」ミラがヘスティアに訊く。

「そうね。そうしましょう。明日にはティアマテッタに着く予定ですし。夜遅くなるのは避けたいですしね」

「決まり!それじゃあ、入ってくるね!」

三人が風呂場に向かう。

マノンには、作戦があった。実は、ヴェネトラを出発するとき、レンから可愛い袋に包まれた餞別を貰ったのだ。

『初日に渡した一着だけでは足りないでしょうから、これも持っていきなさい』

その台詞で、マノンは袋の中の物がなんなのか、一発で解った。

そう。レンから貰ったのはセクシーランジェリーなのだ。紫を生地に、白の刺繍が施されている。そしてブラのアンダーにはシフォンレースがあしらわれている。パンツはゴムの部分にシフォンレース。

『あれ、マノン、いつの間にか大人っぽくなったんじゃない?』

『まぁ、見間違えたわ。出会った頃はまだ子供だと思っていましたが…ここに来るまでに、成長したのですね』

マノンには手に取るように想像できていた。ミラとヘスティアが自分を褒める光景が!

マノンはお風呂の準備を終えると、ふふふと笑い、浮足立って風呂場に向かった。


女性陣が風呂場に入ったのを確認すると、エアルがリアムに近付いた。

「なぁ…気にならないか?」

「何が」

リアムがツッケンドンに返すと、エアルは声を潜めて力説する。

「ミラ達がどんな会話するかだよ!ガールズトークだぞ。それを聞いて、彼女達が求める男になるんだよ!」

「ただ覗きたいだけだろ」

リアムのゴミを見るような目付きに、エアルは挫けそうになるが、弟分に負けてはならない。

「リアム、お前ももう少しは乙女について勉強しろ。いつ何が起こるか解らないんだぞ」

「何って、何」

「それは…ミラがデートしよ♡とか、一緒に寝たいなぁ♡とか言われたらどう対処すんだよ」

リアムはメルカジュールの記憶を蘇らせる。デート紛いなことも、一緒に寝た紛いなこともあった。だが、どれも大変なものだった。女の買い物は時に時間泥棒、そして、一緒に寝ると言う事は、何が気に入らなくて怒るか解らないギャンブルでもあり、腹を殴られる覚悟がないとならない。

「…俺はもうこりごりだ」

「え、何?もうミラとなんかあったのか?」

「近寄るな!つうか、そんな風呂覗きしなくても…その、好きな奴とはちゃんと話せばいいだろ」

するとエアルはわざとらしく眩暈を起こす仕草をする。

「はぁー!リアム君はピュアだな!純情恋愛を楽しむのか!そりゃ十代までの話だぜ、二十歳過ぎたら恋も愛も駆け引きよ。つうことで、お兄さんは女性達の情報を収集してくる」

「あ、おい!止めとけってば!」

リアムは止めるが、エアルはスキップ気味にルンルンしながら行ってしまった。

「…久しぶりにエマ姉に連絡しようかな」


エアルは洗面所のドアに耳を当て、聞き耳を立てる。風呂場から入浴して会話が反響しているのが確認できた。

エアルは酔っぱらったフリして風呂場を覗く作戦に決め、ドアを開いたその瞬間。

「ブースト!」

「へ?ギャン!!!」

確かにヘスティアの声がしたが、透明人間に思い切り顎を蹴飛ばされた。そして思い切り壁に頭を殴打する。

「い、いてぇ…」

「この変態が!貴方ねぇ、出会ってから二年も一緒にいますけど、ほんっとうにそういう所が変りませんよね!大体、妹分で兄と慕っているミラの裸まで覗こうとするのはどういうことなの?!恥ずかしいとは思わないのですか!!」

「なんでいんの」エアルから鼻血が垂れる。

「貴方の行動なんかお見通しですよ!リアムが止めても、どうせ来ると思いましたからね!弟分が止めるなら、少しは改心するかと思いましたが…私の感を信じてよかったわ、全く」

ヘスティアはエアルを簀の子巻きにすると、格納庫へ放り込んだ。

「おい、ヘスティア!ここまでしなくても!」

「朝まで反省するか、リアムが気づいて助けに来てくれるか…どっちの方が早いかしらね」

そう冷徹な顔で言い放つと、ヘスティアはドアを閉め、鍵をした。

「おい、ヘスティア!リアムは多分来ない!呆れてたもの!朝になってもお前覚えていてくれるか?!俺を閉じ込めた事!!おーい!」

哀れな男の悲鳴が、格納庫で虚しく響いていた。


女性陣はゆったりと湯船に浸かっていた。ミラは髪留めでまとめ上げ、ヘスティアはヘアトリートメントを髪に馴染ませるために蒸しタオルを巻いていた。

「ねぇねぇ、ミラはさぁ、なんでリアムの事、好きになったの?」

「ブフォ!」

まったりとしていた空間が一気に変わる。

「へ…私、リアムの事が好きって、言ったっけ?」

「いやぁ、言われてないけどさぁ。解るじゃーん!たぶんリアムも解ってるってぇ!だからミラのこと邪険にしたりしないんだよ」

「まぁ、確かに昔から一緒にいるけど、邪魔だとかあっち行けみたいな事は言われなかったかな…」

子供の頃、近所の子供達に確かに一緒にいることを揶揄われることは毎日と言っていいほどあった。でも、リアムは相手に怒るだけで、ミラに対して冷たい態度になったり、距離を置くことは無かった。寧ろ、いつもミラが追いかけたり、押しかけたりしても、受け入れてくれていた。

「で、いつから?リアムが初恋?」

「マノンも結構ぐいぐい来るよね…そうだなぁ」

三、四才だったか。ミラは遊具の対象年齢六才からの滑り台に、チャレンジしたくて、母の制止を振り切って階段の昇って行ってしまったのだ。そしたら、思ったよりも高くて、滑り台もうねっていて、怖くなって戻ろうとしたが、階段も高く見えて、しかも後ろには年上の子供達が並んでしまっていたのだ。

どうしたらいいか解らず半べそになり、母がキャッチしてあげるから滑っておいで、という掛け声にもイヤだと駄々をこねていた。その時、

『怖いなら一緒に滑ってやるよ』

それがリアムだった。ミラは、リアムの前に座り、抱えられるようなかたちで滑り台を無事滑り終えた。その時は、もう怖くなくて、リアムがヤッホーと叫ぶのを、必死に真似していた。

それから、母はリアムにお礼を言っていたと思う。もう、この時にはミラにとってリアムは王子様みたいだった。それから、家も近所だと知り、交流が始まった。

「こんな感じかなぁ」

「えー!一途じゃん!ヒューヒュー!」

「もう、からかわないでよ。そういうマノンは?」

「へ?わ、私は…まだ…」一瞬、エアルが過ったが、それは今朝の洗面所での事件のせいだろう。

「ティ、ティア姉は?好きな人とかいないの?」

「あ、誤魔化した」ミラがボソリと言う。

ヘスティアは微笑ましい話から、まさか自分に振られるとは思っていなかった。ここで、別にいない、と答えても良かった。だが、なんとなく、話してみたくなった。ずっと言えなかった恋のお話し。

「いましたよ、好きな人…でも、もう死んだと思っています」

「それって、いなくなっちゃったってこと…?行方不明、とか?」

「忘れたんですか?私は、色々なゴタゴタに巻き込まれて現国王に殺されかけた人間ですよ。人との交流も、山あり谷あり、生死ありです」

「そっか…ごめん、ずかずかと聞いちゃって」マノンが謝る。

「いいえ。話そうと思ったのは私の判断です。私が好きになった人のこと、忘れないでいてくださいね」

「うん!名前も顔も知らないけど、忘れないよ!」

「私も!」

ヘスティアは微笑むと、ありがとう、と礼を言った。


風呂から上がり、マノンは早速パンツを穿く。おしりの部分は若干の透け感。

「あれ、マノンもナイトブラする派だったっけ?」

「え?あ、ううん!間違えてブラも持ってきちゃった」

マノンは慌ててブラを私服の中に隠した。

「えー、それ、新しい下着だよね!大人っぽいじゃん!レイラとレンに選んでもらったの?ねぇ、ちゃんと見せてよ」

「え!う、うん」

ミラが前に立つ。ミラのパンツは、もう可愛いに振り切ったものだった。ピンクの生地と、センターは水色と白のストライプ、花のレースが付けられていた。

そして、花柄のナイトブラをしている。

マノンはナイトブラとは無縁であった。だって、固定するほどの胸が無いから、今まで気にしたことがなかった。

「マノンは大人っぽいデザインが好きなんですか?」

ヘスティアも会話に参加してくる。レイラといい勝負のおっきなお胸、そしてワガママなおしり。鍛えられた美脚。その美脚に挟まれて死んだ人は多分幸福だと思う。そのおしりと美脚を自慢するかのように、見せつけるかのように真紅のTバック。ナイトブラも、スポーツブラではなく、左右のレースから乳を固定しフックで留められるタイプのものだった。

きっと、明日身に付けるブラも今のパンツに負けず劣らず可愛くてセクシーなモノだろう。

「わ、私もナイトブラ考えようかなぁ…あはは」

「ナイトブラは胸が固定されて安定しますからね。お勧めしますよ」

「ねぇマノン!折角だからブラも着けてみてよぉ!普段、お互いの下着見る事なんてないからさ、ファッションショー!」

なんかミラがノリノリである。

マノンは言われた通り着けてみる。サイズもぴったりだし、少し盛れている。

「可愛い!やっぱ下着だけでも雰囲気変わるね」

「似合ってますよ、マノン」

「あ、ありがとう」

嬉しさ半分、スタイルバツグンのミラと、鬼スタイルのヘスティアに褒められても、なんかしょんぼりな気持ちになったマノンは、難しいお年頃になってきたのかもしれない。

頑張れ、マノン。


格納庫から助けを求める声がする。

「リアム!助けてくれー!」

「今エマ姉と電話してるから。助けていいよって許可でたら助けるわ」

「は?!エマ姉に電話とか、やめろ、絶対に助けなくていいって言うから!リアム、リアム!!!」

こうして、二日目の夜は更けていった。

「そういや、アイツ等、風呂なげぇな…何してんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ