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ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
113/113

110話・・・アマルティア激突4

作品を読みに来て頂き感謝です!

シレノが起きると、そこは森の中だった。胸騒ぎを覚えながらも立ち上がり、銃を構え、一歩一歩、慎重に進む。昔の記憶が蘇る。地面に罠を仕掛けた記憶。もし敵が罠を仕掛けていたら。恐らく地形はアマルティア軍に有利なものだろう。じゃないと、ナノスがわざわざ飛ばす理由が解らない。

ガサッ、と音がするので銃を素早く向けると、両手を上げたエアルが立っていた。


「エアルさん!」


「シレノ、よかった無事で…」


シレノが駆け寄ると、エアルは仲間と合流で来た安堵感から溜息が出る。


「見られる範囲を探索していたんだが、どうやら俺達以外はいなさそうだな」


「そうですか…」


マジックウォッチを操作しても電波が悪いのかエラーが出てしまう。仲間と連絡を取る手段は絶たれているようだ。


「……おそらく、敵はコアだと思います」


「俺もそう思う。飛ばされる直前に、コアが俺の事を見ていたんだ。アイツなら戦う相手を目で追うだろうからな」


そう聞いて、シレノは内心穏やかではなくなる。飛ばされる前に、コアを殺そうと銃を構えていた。後は引き金を引けばいいだけ。しかし、コアは自分の殺気に気付いていなかった…違う。気づいていても見向きもしなかった。狂戦士と言っても過言ではない男が、自分に向けられる殺気に気付かない訳が無い。シレノは悔しくなり、木の枝を折った。


「シレノ、大丈夫か?顔色が悪いぞ」


「あ…はい。大丈夫です」


シレノの様子が可笑しいことに、エアルは気づいていた。恐らくコア関連であることも見抜いている。もしコアが本当にここにいるとしたら、シレノは恐らく暴走する。その暴走を止めるか、上手く使うか…エアルは決めあぐねていた。


(どうしたらシレノの復讐心を晴らしてやれる…リアムを見ているようで、ほっとけねぇ)


その時だ。鳥の大群が一斉に飛び立つ。バキバキと木をなぎ倒し、現れたのはコアだった。コアは魔弾を撃ち、巨大な樹がシレノ達に向かい伸び立つ。エアルはシレノの腕を掴み走り出す。


「エアル!会いたかったぞ!再び相まみえるのをどれだけ数えたか!」


「俺は二度とごめんだったけどな!」


樹木から逃げるが、速度が速く追いつかれる。そこにシレノが魔弾をうち、木のドラゴンが空中を舞う。


「ナイスだ、シレノ!」


「コアもこの程度、やろうと思えば出来るはずです。やらないのは…接近戦を好むから」


「なるほどな。なら、俺達は二人で挑む」


ドラゴンが大量の葉を吐くと、コアは降ってくる葉を斬る。上空を見上げるとまだドラゴンは飛んでいる。目を凝らしてみるが、違和感が残る。その勘は正しかった。両側からエアル、シレノが剣で攻撃をしてきたからだ。コアは大剣をエアルに、サバイバルナイフをシレノに当て、攻撃を阻止する。


「なっ?!」


屈辱だった。こちらは魔力を送り込んでいる剣で戦っているのに、かたや相手はサバイバルナイフで受け止めたのだ。そして自分より実践を経験しているエアルには大剣を…


「クソが!」


「シレノ、自棄になるな!」


エアルの言葉なんて聞こえやしなかった。シレノは剣を握りなおし、一方的に振るい続ける。コアは表情すら変えずにサバイバルナイフで相手をする。そしてシレノの剣を弾くと、腹を殴り、むせ返ったシレノを更に蹴り木にぶち当てた。


「カハッ…!」


「シレノ!」


エアルは焦る。この状況をどう上手く利用するか。シレノがどこまで戦えるか。精神的ダメージをどこまで食らったのか。


「エアル、小童の心配ばかりしていると足元を掬われるぞ!」


「うるせぇ!」


コアとエアルの激しい激闘が繰り広げられているのを、シレノは呼吸を荒げながら睨みつける。そしてまだ手はある。


「行け!」


樹で出来た狼の群れをコアに差し向ける。剣で斬ったところで、狼の群れは消滅しない。復活し続ける、シレノが魔力切れを起こすまでだ。そして魔力で操れるため、エアルとの連携だって取れる。そしてシレノは剣を地面にさし、木の根を生やす。エンキの十八番である地面を通しての魔力供給を行うためだ。


「俺を見ろ、コア!」


狼の群れが一斉にコアに襲い掛かる。振り払われ、地面に着地しまた襲う。そして斬られても根が生えくっつきなおす。エアルは自由に剣を振るった。動きはシレノが合わせてくれる。ちまちま気にする必要は無かった。


「お前が小童だと侮った少年は、もうお前が知っているような子供じゃあねぇんだよ!」


エアルが叫ぶと、シレノは木と木を蹴り上げ、コアに降りかかり項を目掛けて剣を突き立てる。が、コアが生やした根に足を取られ、振り回された挙句気に地面に叩きつけられる。背骨が折れて良そうな程の音がギリリと響く。シレノは吐血をするも、すぐに体勢を整えコアに襲い掛かる。


(いいペースだ!このままの勢いを保てればいける!)


シレノの魔力消耗量が心配だが、今は全力を出さなければコアには勝てない。


「スキルブースト!」


エアルの剣が黒く光り輝く。銃の時のように光線が伸びる訳ではない。剣に大量の魔力を纏いコアに襲い掛かる。


「面白い!」


コアは大剣を腕に当て、エアルと対峙する。エアルの剣が当たった場所から魔力が大量に吸収されていくのが解る。コアはエアルを跳ね飛ばすと、根で応戦する作戦に変更する。木の根を切り裂き、エアルはコアに向かい走り出す。


「エアルさん!」


シレノがまた何かやらかすのかと思い、コアの気がシレノに移る。そこで、初めて目が合った。コアの瞳にシレノが映る。そこには自分が知っている子供ではなく、戦士として成長した青年がドラゴンに乗り、立っていた。


(囮か…?!いや、違う、どちらも本命!)


エアルに斬られ、シレノからはドラゴンが魔弾を吐き、直撃する。シレノは着地し、コアに更なる追撃をするため走り出す。


「ぐあぁああああ!」


斬られた場所から魔力が漏れていく感覚。二年前、初めてエアルと対峙し、スキルブーストで敗北した日を思い出す。あの時と同じ感覚。忘れもしない。しかし、今は違う…

まだ魔力が残っている。


「うおおおおおおおおお!」


コアの雄叫びが森を揺らす。鼓膜が破れそうなほどの声量、シレノとエアルは思わず耳を塞ぐ。


「確かに強くなったようだな。シレノ。だが、まだ甘い」


「な、」


目で追えなかった。気が付いたら胸部から腹部にかけて、斬られていた。


「は……?」


身体に激痛が走る。叫ぶことも許されず、コアに蹴飛ばされ戦闘の中から放り出される。


「コ、ア…!」


「シレノ。お前はそこで寝ていろ。エアル。邪魔者はいなくなった。二人で戦いの果てまで行こうじゃあないか!スキルオフェンス!」


邪魔者…?その言葉を聞いたシレノは愕然とした。床が底抜けし、転落していくようだった。コアはただ、シレノとリアムの実力を計っていただけだと気づかされる。


(クソ、クソ!体が動かないし、意識が遠のいてく…!)


味方だった狼とドラゴンは、シレノが気絶したことで土へと返る。


「コアァ!お前の戦闘脳にはこりごりなんだよ!昔とは言え、教え子半殺しにして楽しいのかよ!」


「甘い考えだな、そんなことでは最強の戦士は生まれない!お前もリアムのことを甘やかしていると、いずれ腕が訛るぞ!」


エアルの剣とコアの大剣が火花を散らしながら衝突する。何度も何度もぶつかり合うたびに、速度が上がっていく。


「リアムは今俺の手が届かない場所で、死に物狂いで鍛えてんだ!俺がいなくてもアイツは強くなる!それこそ俺の手が届かなくなる場所に到達するだろうよ!」


「それは面白い!その頂点に達したとき、俺がリアムの相手をしよう!」


ジリジリとエアルが後ろに押し出しされ始める。このままではコアの餌食になると判断したエアルは距離を取り、剣から銃へと変える。距離を取っての攻撃へと戦略を変える。そしてこのまま何とかシレノからコアを引き離したかった。


「エアル、逃げてもここは俺に有利な場所だぞ!無駄だ、無駄だ!」


エアルが引き金を引くのを見て、コアは木を生やすが、魔弾が当たり相殺されると思ったら、木が腐り果てていく。


「……ほう。無属性の特性を生かしたのか」


当たったのは、水の魔弾だった。エアルは誰と対峙するか解らなかったはずだ。だが、どうやら水属性――おそらくブラッドあたりから――魔力の供給を得ていたのだ。そこはエアルの賭けが勝った、と言うべきなのだろうか。これだから戦いは止められないと、コアは思う。その賭けすら、この魔法の世界では命取りになる。


「流石はエアル!俺の期待を裏切らない!」


「そりゃどうも」


エアルの内心は焦っていた。ブラッドに供給してもらった魔力は残り八発。この八発でどう決着を着けるか。そもそも、残り八発に頼ってもいいのだろうか。上手く使って行くしかない。

うかうかしていると、木の枝がエアルの周りを囲んでいた。


「ッ!しまった!」


木の枝…それはまるで鳥の巣のように密集し、エアルを嬲り殺そうと接近してくる。こんな形で水の魔弾を使いたくない、しかし逃げるには使うしかない…一瞬迷った隙に、鳥の巣はエアルを殺そうと急接近していた。一瞬の油断も許さない戦いだということを、エアルはミスをした。

その時だ。

エアルの胴に木が巻きつけられ、上へと引っ張りあげられていく。


「まに、あった…」


「シレノ、大丈夫なのか?!」


息を切らし、剣を地面に差し込んで言えるシレノがそこにはいた。


「大丈夫です。サポートくらいなら、こんな傷へっちゃらです」


しかし傷は深いのか、今でも出血しているのか、隊服にも滲んでいた。これ以上無茶をさせると貧血、あるいはそのせいで悪化するかもしれない。


(俺が守ってやらないで、誰が守るんだ)


エアルは頬を叩くと、シレノが生やした木を伝い、着地する。


「シレノ、サンキューな。動くと出血する。休んでな」


「まだ、出来ます…!」


「出血だけじゃなくて、身体に受けたダメージも俺より相当だろ?まぁ見てろって。お兄さんがなんとかしてやるから」


シレノの頭をポンと軽く叩く。シレノは悔しそうにしていたが、仕方ない。ここは嫌でも休んでもらおう。

エアルの目付きが変わる。そしてコアに向け発砲する。


(エアルの雰囲気が変わった…?シレノを守るために腹でも括ったのか?相殺も持ち運べれば…)


しかしコアの読みは甘かった。木の壁を作って相殺に持ち込もうとしたが、それは破壊され、コアに衝突する。それは魔力が消費するのと同時に、ジリジリと体を裂くような痛みだった。跳ね飛ばされ、コアは樹木に衝突する。


「グハッ…!」


どういうことだと、混乱する。そして気が付く。無属性の魔弾には無い痛みの正体に。


「まさか、水の魔弾と無の魔弾を合わせたのか」


「ご名答だな。まさかこんな早く見破られるとは思わなかったけど…計算が狂ったな」


鼓動が激しく鳴り、強く脈打つ。楽しい、楽しい楽しい楽しい楽しい!こんな戦いを心の底から楽しめるなんて、なんて幸せな事なのだろうか!相手の知恵に対し、こちらも知恵を働かせないと負けてしまう!勝つためには知略も必要!あぁ、なんて今、俺は至福の頂点にいるような気分にさえなっている!コアは高ぶりを見せる。

その異様な感じに、エアルは距離を取る。


「この一瞬一瞬さへ愛おしく思うぞ、エアル!己の出せる最大を常に更新し続ける!それが礼儀!見るがいい!俺の力を!」


コアが叫び、地面に魔弾を放つと、ぐわっと勢いよく樹が生え、そして地面から根っこが離れていく。コアがドラゴンを二体も発生させたのだ。


「…マジかよ」


「俺の本気を受け取るといい!」


ドラゴンは口から魔力の光線を吐き出していく。

こんな状況でドラゴン二匹相手にすると貴重な水の魔弾がいくつあっても足りない。エアルは走り出し、光線から逃げる。二匹はシレノなんか全く相手にせずエアルのみを狙ってくる。これは幸いな事だった。エアルの逃げる先をマジックウォッチで把握するシレノが逃げ道をこじ開けてくれるお陰で木々に邪魔されず走れる。


「シレノ、上へ上げてくれ!」


上へと聞き、シレノは戸惑うが、エアルの指示に従う。生い茂る葉の上へ出ると、エアルは銃をドラゴンに向け、引き金を引く。


「スキルブースト!」


「来い、エアル!」


しかし、黒い光線は現れなかった。思わずコアは呆気にとられる。不発、或いはハッタリかと思ったが、違ったようだ。エアルは不敵に笑う。スキルブーストが、銃の先で黒い弾になり留まっているのだ。


「俺のとっておき、見せてやるぜ!」


その弾はエアルに纏い、黄金に輝く。


「これでSSSだ!お前と真正面からやり合ってやるぜ!」


コアはマジックウォッチでエアルの魔力量を計ると、言った通りSSSランクに到達していた。思わず、笑みが出る。


「その力業、気に入った!」


「お前に褒められるためにやってんじゃあねぇんだわ!」


エアルはランドルフ邸と接続し、太刀を転送する。そして突進してくるコアに向かい打つ。

――本来だったら、ナノス戦まで取っておきたかった秘蔵の技だった。スキルブーストを自分に向けて撃つことで可能になる魔法ランク、魔力量の増加。一時的にだが底上げする力を持っていた。その隠し技が解ったのも、ネイサン家から借りたタブレットから得た情報だった。


(あくまで一時的!これで決着を着けねぇと俺もシレノも死ぬ!)


マガジンボックスに入っていた水の魔法を太刀に流し込むイメージをすると、刃が美しい青色へと変化する。エアルは可能性が成功したことに、プラシーボ効果もあるのか、さらに力が湧く。

コアの大剣がどんどん衰えていくのが解る。魔力が底を尽きそうなのだと。それはエアルも同じだった。どちらが先に魔力を失うかで勝敗が決まる。


「うぉおおおおおお!」


「素晴らしいぞ、エアル!俺は猛烈に昂っているぞ!」


「俺も今清々しいほど何もかもがクリアに見えるし、聞こえるぜ!お前を倒す未来すら見えらぁ!」


二人の攻防戦は風を切るほどだった。シレノは起き上がり、フラフラとエアルの方へと歩き出す。


「エアル、さんの援護を…して……勝つんだ、コアに…!」


しかし貧血が酷く眩暈がし、また倒れ込んでしまう。こんな視野ではエアルの援護など無理だ。だが、何も出来ずただ寝ころんでいるだけなんて、虚しすぎる。


(何か、何かエアルさんに加勢できる何かを…!)


エアルはシレノが倒れているのを、目の隅に入る。


(シレノ、お前は良くやっているよ…!だから復讐だけで生きようなんて考えるな)


エアルは、デウトに呼ばれた日の事を思い出す…



コンコン、とノックをすると、朗らかな返事が返ってくる。中に入ると、デウトが出迎えてくれる。アマルティアに突入する数時間前の出来事だ。


「よく来てくれました、エアル君」


「これから作戦があるっていうのに…。一体どんな用事ですか」


「軍人ではないのに、随分気合が入っているようだね」


そう言われ、エアルは溜息を吐く。


「俺は……リアムに憎しみで人を殺してほしくないんです。だから、ナノスは俺が差し違えてでも、殺します」


「そうですか。…これから話すことは、吉報だと思ってくれて構いません」


「え…」


「アーレント家の固有スキルについてです」


「ッ!」


デウトはとりあえず座るように、エアルを促す。ソファに座ると、デウトが話の続きをする。


「どうやら、スキルブーストには補助的な使い方もできる様なんです」


「補助…?どういうことですか」


「そのままの意味です。クラスブーストを放った相手の魔力を奪ってしまうだけの能力かと思いましたが、それは発動者自身の意思で消耗か、補助か解れるようなんです」


「それって、俺がリアムを強くしたいからスキルブーストを撃ったら強化される…ってことですか?」


「そうです。恐らく、マジックウォッチが関係あるかと。しかし、味方でもSS+以上無いと効果は得られません」


「なるほど」


SS+となると、相手が限定される。


「このスキルはそれだけではありません。発動者自身にも同じ付与をもたらすんです。君ならぶっつけ本番でもいけるでしょう。アマルティア侵攻前に、伝えられてよかったです」



デウトにカッコつけた手前、こんなところで負ける訳にはいかなかった。こんな所で負けるようじゃあ、ナノスなんか殺せやしない。殺すんだ、と意思が体中を巡りだす。頭のてっぺんから指先までに力が、魔力が沁みわたっていく。


「お前に負けるわけにゃいかねぇんだよ!ナノスを殺すのはこの俺なんだからな!」


「面白いことをいうじゃあないか!しかし俺もここで終わるような男ではないことを、貴様も知っているだろう、エアル!」


コアが叫ぶと、宙にいた二匹のドラゴンが一体化し始める。そして禍々しい姿を曝け出すと、吠え、存在を主張する。


「これで終わりだ、エアル」


「おぉ、来いよ!テメェなんぞぶった切ってやるよ!」


龍が上空からエアル目掛けて低空飛行を開始する。エアルは太刀を構え、ドラゴンを真っ二つにしようとするが、それは予想以上に開いた口に飲み込まれ、失敗に終わった。エアルはドラゴンの中で擦り潰され、吐血する。


「エアルさん!」


コアはまだ意識のあったシレノに、サバイバルナイフを投げると、腹に刺さる。


「コ、ア…絶対に、許さな…い」


シレノが気を失ったので、死んだのかと思い呼吸を確認するが、息はまだあった。ナイフを抜くと、血がどぷりと溢れ出る。


「殺しはしなかったが、ナノスはこれでいいのだろうか」


コイツ等を実験体にしたいと言っていた。どういう扱うかは知らないが、こんな素晴らしい戦闘要員をただの実験体に陥れるのは勿体ない。コアは出来れば、洗脳でもしてエアルを同志にしたくて仕方なかった。ナノスに頼めば受け入れてくれるだろうか。

その時だった。メキメキと木が裂ける音がすると、水の柱が空に向かい立つ。ドラゴンの中から、エアルが出てきたのだ。そして間髪入れず、引き金を引く。コアは油断しきっていたため、大剣を構えるのを一瞬遅れた。その一瞬で、エアルの火事場の馬鹿力に負けた。被弾したのだ。


「グッ…ハァ!」


呼吸を荒くし、撃たれた個所を触る。魔力はもう、ゼロに近い。これ以上エアルと戦うとなると、こちらが負ける可能性がある。コアはもう一度睨むが、エアルは仁王立ちしたまま、動かなかった。警戒しながら近づくと、エアルは立ったまま気絶していたのだ。


「最後まで面白い男だ…」


エアルを担ぎ上げ、瀕死状態のシレノの下へ向かう。そして合図を出すと、白い光の柱が現れる。そこに入ると、コア達は姿を消した。



・・・

レイラは双子をマイラに任せて、部屋を出ていた。アマルティア兵に、今何が起きているのか聞くためだ。運悪く、部屋の前に兵士がいなかったので、今こうして捜しているのだ。歩いていると、「レイラ様」と兵士が声をかけてくる。


「丁度よかった。今ナノス達が何をしているか気になっていたの。皆出払っているようだったから…不安で」


レイラの言葉を素直に受け取った兵士は、気合を入れながら答える。ここで女と言えば、レイラ達くらいしかいない。クローンの四姉妹はイカレテいるので近づきたくない。中庭に行けば親子とマイラの微笑ましい光景が見られる。それだけレイラ達は貴重な存在として扱われていた。


「今、ナノス様はティアマテッタ兵と戦闘を行っています」


「ティアマテッタ兵と…?」


リアム達だ。


「そう…ありがとう」


レイラは急いで部屋へ戻ると、マイラの手を取った。


「マイラ、今なら逃げられるチャンスかもしれない。レンも呼んでこないと」


「逃げるって、ここからですか?でもどうやって…」


「解らないけど、行動しないと一生をここで過ごすかもしれない


のよ。ましてやナノスが私達をずっと生かしてくれるなんて思えない」


その言葉に、マイラは息を呑んだ。


「解りました。レンさんは私が捜してきます。レイラさんはジェイくんとノエミちゃんとここで待っていてください」


「ありがとう、マイラ」


マイラは微笑むと、部屋を出て行った。レンがいるなら自室か、ナノスの研究室のどちらかの可能性がある。しかし、どの部屋を回っても、レンの気配はなかった。


「……まさか、まさかね」


マイラは冷汗を掻く。ここに居ないということは、戦闘に出ているのかもしれない。


「…レンさん、どうしよう」


ついに、後戻りが出来ない場所にまで来てしまったことを、マイラは悟るのだった。


原作/Aret

原案/paletteΔ

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