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ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
110/113

107話・・・アマルティア激突

作品を読みにきて頂き感謝です!

「ナデア…今までありがとうございました」


デウトが礼を言うと、一人の女性と子供と共に先へと歩き出す。


「ま…待ってください!デウトさん!私、好きなんです、デウトさんのこと…」


溺れたような感覚から、急に酸素を取り入れたように、ナデアは起きた。胸の上下が解るほどの呼吸。息苦しかったのだろう。頭を抱え、夢を思い出す。


「デウトさん…」


まだ。デウトの心にはナナリー親子がいるのだ。四百年経った今でも、愛しているはず。ナデアは深呼吸をしながら時刻を確かめると、午前三時半だった。


「まだ朝には早いか…」


布団に入る。

デウトの事が好きなのだ。私も好きだと、ナナリーに言いたい。素敵な人を好きになったよねって。恋バナを楽しむ友達のように。


「私は…デウトさんの大切な人のことも、大切にしたい」


ナデアが一歩踏み出せない理由は、ここにあった。



そして届いたのがミラとリアムがついに結ばれたという、マノンからの報告だった。これにはナデアも焦った。ティアマテッタに来てからというもの、ミラより年上ということで姉と妹のように相談事をしたり、なんでも話し合う仲になったのだ。その会話の中には恋バナだって含まれており、なかなか手を出してくれないリアムの相談にも乗ったことだってある。

正直、恋愛なんてずっとデウトだけを想っていたナデアにとって、妄想や共感、恋愛小説で読んで経験値があるようなことを言っていただけなのだ。

恋愛に関しては、何故かヘスティアが真っ先に出てきた。エアルと付き合っていると思っていたのだが、本人は否定していた。それに


「男なんて色仕掛けしておけばいいのよ」


何とも安直なアドバイスを受けたことがあった。


(はぁあああ、きゃあああ!ミラちゃんが、ミラちゃんがついに…!)


そうしてヘスティアを送るついでにミラとリアムの冷やかしにいったのだった。



「はぁ」


口から出るのは、溜息ばかりだ。朝食の準備をしていても、これが新婚だったら…彼氏のために頑張る私だったら…とデウトとの妄想が止まらない。


「ナデア」


「は、はい?!」


「大丈夫ですか?昨日から溜息ばかりが多いようですが…何か問題でも抱えているんじゃあないんですか?食事の準備、代わりましょうか?」


「い、いえ!大丈夫ですよ!」


あぁ、ここで「デウトさんの事で胸がいっぱいです」と言いたいが、その言葉を飲み込む。


「そうですか。朝食の後に、話があります。聞いてくれますか?」


「勿論です!」


ナデアは一体どんなことを話されるのか、ドキドキしながら朝食の準備を手際よく済ませていく。

しかし、期待していたような内容ではなかった。


「本日からアマルティアとの戦いのため、作戦、訓練が始まります。作戦次第ではナデアにも出兵してもらうことになると思います」


「はい」


デウトは目元を緩め、微笑むと、険しい表情になる。


「本来なら、ナデアも…リアム君達若い子達を戦争なんかに行かせたくないのが本音です。迷惑をかけます」


「でも。でも私には戦う力があります。守る力もあります。覚悟のうえで、デウトさんについてきたんです」


「ありがとうございます。では、そろそろ行ってきますね」


「いってらっしゃい」


玄関までデウトを玄関まで送るルーティーン。いつ、会えなくなるか解らなくなるから。



「うーん」


戦争、と言われ、ナデアは更に焦燥感に襲われていた。

もし自分に何かあった時、デウトが傍にいるとは限らない。逆もしかり。心残りの無いようにしたい。デウトに、好きを伝えたいという気持ちが膨れ上がるのだ。


「ミラちゃん…?いやいやいや。今までお姉さんぽく相談に乗っていたのが急に相談する側になるなんて、ちょっと私のプライドがなぁ…。マノンちゃん?いやいやいや!年下の子にこんな重い恋愛相談なんてきかせられないよ!」


モルガンは…論外。ゾーイ?彼女の恋愛観が解らない。


「はあああああ。ナナリーさん…。私の空想でしかないけれど。どんな人だったんだろう」


大人の余裕や、色気があったのだろうか。それとも聖母のように優しさに溢れる人だったのだろうか。


「ナナリーさん。私に、デウトさんに告白するチャンスをください」


どうしてもこのモヤモヤを晴らしたくて、ナデアが連絡を入れたのは…


『はい、ヘスティアです』


「ヘスティアさん、私の恋愛相談に乗ってくださいぃ」


何とも情けない声に、ヘスティアは思わず笑ったのであった。



「デウトさんは最近夜遅くまで帰ってこないので、好きなだけ話せます」


「お邪魔します」


ヘスティアはアルフレット邸に来ていた。ランドルフ邸でも良かったのだが、マノンが夜勤のため寝ているし、エアルもいるので、二人でゆっくりお喋りが出来る場所となったら、アルフレット邸が一番いいとなったのだった。


「さっそくだけど、本題に入る?何か別のお話をしてからにする?」


「いえ、もう私の気持ちを聞いて下さい」


「えぇ。ではどうぞ」


ナデアは、一呼吸おいてから話し始める。その声は上ずり、どこか震えていた。


「私…デウトさんが好きなんです。どうしても振り向かせたいって思うのに、ナナリーさんのことや、デウトさんの呪いの事を考えると私…どこまで出しゃばっていいのか解らなくて。フラれてもいいって思うけど…でも、どうしていいのか解らなくて」


一気に喋り終えたナデアは、もう涙目だった。ヘスティアは、そっと背中を撫でてやる。


「確かに。ナデアは今、難しい人に恋をしているのね」


「うぅ、私…デウトさんと同じ所に立ちたいだけなのに、難しくって、ヒック、好きなのに、好きって言いたいだけなのに…なんでこんなに考えちゃうんだろう…!」


「辛いわよね。解る、気がする。私も、好きな人がいるけれど…きっと、いえ。叶えちゃいけない恋だと解っているから」


「ヘスティアさん、好きな人がいるんですか…?」


ヘスティアは微笑むと、ナデアをぎゅっと抱きしめた。


「えぇ。いるわ。幼い頃からずっと慕っていたの。でも…もう私の知っている彼ではなくなってしまった。だから、彼を止めるために私は今も、これからも戦うわ」


なんとなく、ヘスティアの好きな人がエアルではないことが理解した。そして、その彼と言うのが、敵と言わざる得ない立場にいることも解った。


「お互い、苦難な恋をしていますね」


「そうね。自分でも馬鹿って解っているけれど、止められないんだもの」


えへへ、とナデアは笑うとヘスティアを抱きしめ返す。


「ナデア。難しい事は考えないで。ただ、貴方が好きって気持ちを違う形で表したらどうかしら?」


「違う形?」


二人は離れる。


「そうよ。例えば…そうね。料理で胃袋でも掴むとか?」


「料理で…あ、それなら。四百年前の料理を作って、懐かしい気持ちになってもらうとか?!」


「いい案ね。そうと決まれば、調べましょう」


四百年前のレシピを調べると、図書館にデータが残っている事を知り、二人は図書館へと出かける。

図書館はティアマテッタ軍が管理しているだけあり、まるで映画のワンシーンに出て来るスタジオのようだった。

レシピブックを呼んでいくと、なかなか近代ではみないようなレシピが出て来る出て来る。


「どれがいいんだろう…。これなんて大豆オンリーで作られてるし?!」


「最近にも通じるレシピがあるはずよ。だから落ち着いて」


「は、はい…」


読み進めていくと、デウトの胃袋ではなく、ただ歴史のレシピに興味が湧いてきて、二人してあーだこーだ言いながら読む。もう研究しに来たのかと思うほど、別の歴史レシピの本を読んでいる。


「あ、これなんかどうかしら」


ヘスティアが見つけたのは、シチューに似たレシピ。


「えぇっと。材料も現代にあるものだし。作り方もほぼシチューと同じですね!あとは当時の味かぁ。うぅんと。出汁を使うんだ…出汁は…」


ナデアは夢中になり読んでいく。そんな横顔を見て、ヘスティアは微笑む。

――お兄様?

呼びかけても、本に集中していて。そんなエルドの事が好きだったから。隣一つを空けて椅子に座るのだ。そして自分も本を読みながら、エルドの横顔を盗み見ていた。


「解りました!この本借りてきますね」


「っ!えぇ、解ったわ」


ナデアは素敵な笑みを見せると、カウンターに向かう。


「私もまだまだね」



ナデアは帰りに野菜と肉を購入する。

まずは出汁を取り、そこに牛乳を入れる。そして別の鍋で煮て、焼いておいた食材を一気にスープの中に入れる。

これで完成である。

一口食べてみると、出汁が効いていて美味しかった。しかし…


「これで、あっているのかな」


レシピ通り作ったから、間違うはずはない。だが、レシピには書いてあったのだ。それぞれの家庭の味が出る品物だったと。

デウトは、アルフレットの家庭で作られていた味を求めるのだろうか。それとも、ナナリーと食事をしたときに食べた味を求めるのか。

だんだん解らなくなる。


「もう少しアレンジしないと…デウトさんの好きな味を、どれがいいのか」


美味しいと言ってくれた料理を思い出すが、デウトはいつも美味しい、また作ってほしいと頼んでくる人だということを忘れていた。


「あーーーー!デウトさんの好きな味が解らない!いつもなんでも美味しいって言ってくれるから!出来た大人すぎる、好き!あ…そうか。好きだって言ってくれたレシピ、メモに残っているかも!」


マジックウォッチに、デウトが好きだと言われた時に、嬉しくて残しておいたのだ。チェックすると、和風出汁が聞いた味のものを好きだと言っていることが多かった。


「和風出汁かぁ…。四百年前のシチュー…和風でも合うのかな」


ナデアはカツオ、シジミ、ワカメなど和風と呼ばれる出汁を取るだけ取った。そしてシチューと合わせ、何度も味見をする。しかし、だんだんと味が解らなくなる。

もう、何が美味しいのか、不味いのか解らない。


「私の舌…限界だよ」


周りを見れば、片付けられていない食器類。更によそったままの四百年前のシチューと呼べるもの。ナデアは、力が抜けて座り下手る。そしてヘスティアに電話を掛ける。


『もしもし?』


「ヘスティアさん…私、無理かもしれない」


『…そう。でも、今から作る時間はあるの?』


「え…?」


時刻を見ると、時計は午後九時半を指していた。


「うそ、もうデウトさん帰ってくるよ」


『落ち着いて、ナデア』


「急いで片付けなきゃ!」


「ただいま、ナデア。大丈夫ですか?声を掛けても、出てこなかったので心配しましたよ」


まさかのタイミングで、デウトが帰ってきた。デウトの表情には焦りが見えたが、ナデアがヘタレ込んでいるのと見て、ますます心配が加速する。


『ナデア?大丈夫なの?』


「だ、だいじょうぶじゃないけど、切りますね」


ヘスティアとの通話を終わりにする。


「ナデア、何があったんですか」


「デウトさん…私、デウトさんに食べてほしかっただけなのに…」


握りこぶしを作り、震える。泣きたいのを我慢する。こんなことで泣くなんて、情けない所を見せる訳にはいかなかった。


「夕飯にしましょう。今日はシチューの食べ比べですね」


「ふぇ…」


デウトは、歓声しているシチューをテーブルに並べ始める。そして、自分とナデア用の皿を取り出し、席に着く。


「さ、ナデア」


「は、はい…」


デウトは一口食べると、驚いた。最近では食べていなかった和風出汁の効いたシチューだったのだから。四百年前には、普通に食されていたのが、時代が進むにつれて味も風味も変わっていった。なんだか懐かしい思いでが溢れかえってくる。


「懐かしい味ですね。どうしてまた、作ろうと思ったんですか?」


「で、デウトさんのために、です!」


「私のため…ですか?」


「はい。私…私、デウトさんから見たら生まれて二十年ちょっとしか生きていない子供かもしれませんが、私は、私だってデウトさんを想う気持ちは誰にも負けないって、思いたくて…」


「ナデア…ありがとうございます。私も、ナデアをいつも思っていますよ」


それは、弟子としてだと、ナデアは知っていた。

ナデアは泣きたい気持ちに蓋をして、思いっきり可愛い笑顔を見せた。

そして片付けはデウトと二人で行ったので、いつもより早く食器類が片付かった。



「おやすみなさい、デウトさん」


「はい、おやすみなさい。ナデア」


ナデアは微笑むと、二階へ上がっていった。そしてデウトは、首に下げていたネックレスを取る。そこにはロケットペンダントが。蓋を開けると、ナナリーとパーシーの写真があった。


「ナナリー、パーシー。二人が亡くなってから、四百年が経ちます」


二人への想いが駆け巡って売る。

そっちはどうですか?

幸せですか?

こちらはそれどころではありません。それどころか、混沌を極めようとしています。

私がやってきたことは、正解だったのでしょうか。

わからない。

それでも束の間の平和はあったんです。


「今日はナデアという私の弟子が四百年前のシチューを作ってくれたんですよ。失敗を沢山したようですが、どれも美味しかったですよ」


はぁ、と溜息を吐く。


「そろそろ。前に進まないと二人に失礼になってしまうのでしょうかね。いつまでも、後ろ向きだと、二人に怒られそうですね」


そう呟くと、デウトは自室へ向かう。そしてテーブルの引き出しにロケットをしまい込んだ。大切に、大切にしまい込んだ。



ナデアの部屋からは、泣き声が響いていた。


「ヘスティアさん!私、失敗しちゃった…!変な気を起こさなきゃよかった!デウトさんに無理させちゃった…!」


『今すぐにでも、貴女を抱きしめてあげたい』


「私も会いたいよ…!でも、今出るとデウトさんが心配するがら、できなんだ…!」


『明日まで、大丈夫?』


「うん、もう。寝るから大丈夫」


『よかった。それじゃあ、明日会いましょうね』


ナデアはそのまま泣きつかれて寝落ちするまで、ずっと泣いていた。

その声が漏れて聞こえていない、なんてことはないのだ。デウトにもナデアの悲痛な思いは聞こえていた。


(今の私では、君の想いに答えることはできなんだ。すまない、ナデア)


この呪いがある限り、デウトは誰かを愛することはしないだろう。モアを見て、それは強く思っている。彼女が、不老の呪いにより愛する人を何人も見送ったことを。

デウトはそのまま、布団に入る。

ナデアの好意に気付いていながら、応えることの出来ない自分を呪いながら。



翌日、作戦指令室にて。

ここにはモルガン、ブラッド、エンキ、デウトの四名が集まっていた。

遂にアマルティアに攻撃を仕掛ける時が近づいてきているのだ。

四人である程度話をまとめた後、ブラッドが挙手をする。


「作戦の指揮ですが、私が取る方針でいいでしょうか」


ブラッドが確認すると、デウトが手を上げる。


「どうした、デウト氏」


「その事ですが、私が現地指揮をとってもよろしいでしょうか」


いきなりのデウトの申し出にモルガンは戸惑った。デウトなら攻撃に徹すると思っていたのだ。それに、デウトはあくまでも特別顧問であって、所属していない。


「い、いやいやいや!デウト氏は仮にも所属していない、民間人だ。協力関係を築いているだけなのに、万が一のことがあっても我々は保証できないぞ」


流石のモルガンも慌てる。


「そうだぜ、旦那。アンタに何かあったら、同居しているお弟子さんも泣くだろう」


エンキもモルガンに続き、デウトを宥めようとする。


「いや。ナデアにも協力させます」


この発言に、三人は押し黙った。彼は、使えるものを駆使し、アマルティアを殲滅させる気なのだと。


「あはは…本気だね、デウト氏。解った。現地での指揮は任せるよ」


「いいのですか」ブラッドが尋ねる。


「あぁ。彼は本気だ。止めたところで抜け穴なり、強行突破をするだろう」


「ありがとうございます」


こうして現地指揮官はデウトで決まった。


「そして民間から召集する件ですが、それはナデアとエアル、ヘスティアを含め何名か呼ぼうと思っています。それについてはいかがでしょうか」


デウトが尋ねると、モルガンも笑みを見せる。


「あぁ、問題ない。それじゃあ、次に部隊を決めようか」



午後。

リアム達は演習場に集まっていた。

舞台にはモルガン、ブラッド、エンキ、デウトが立ち、全員が来るのを待っている。


「ついにアマルティア殲滅作戦を実行に移すのか…」


「緊張してきた」マシューは胸元に手を当てる。


「流石に、緊張するわね。空気に飲まれそうだわ」


集まっている面々は数々の戦場を経験してきた強者達だ。


「集まってくれてありがとう。これからアマルティア殲滅作戦のために集まってもらった。知っての通り、アマルティアは世界に混乱を起こし、恐怖の原点になっている。ここに選ばれた以上、全てを根絶やしにするつもりで覚悟をしてほしい。では部隊分けを発表する」


モルガンの説明が終わると、次にブラッドが声を張り上げる。


「作戦指揮、デウト。アルフレッド」


指揮官を発表されると、周りがざわついた。


「静粛に!」


全員、モルガンが指揮官だと思っていたのだ。まさかデウトが指揮官と知った面々は、内心複雑だった。信じ切って良いのかと。


「ティアマテッタ防衛。モルガン・ハンプシャー大佐。マシュー・ハンプソン上等兵。ラルターナ・ネイチャー一等兵。ナデア・フォルトーナ」


「え」


ラルタァは吃驚し過ぎて声が出なかった。が、マノンに肘でツンツンとされると、我に返る。


「はい!」


(うそ、私…てっきり戦闘部隊だと思っていた…!)


ラルタァの表情が強張る。


「続いて指揮者護衛。リアム・ランドルフ上等兵、マノン・ミナージュ・ランドルフ一等兵。エアル・アーレント……以上二十名」


そして続く。


「続いて第一部隊。ブラッド・ウォーカー。ユーリ・ゼス少尉。シレノ・ダビン上等兵。ゾーイ・グレイス上等兵……以上二十名」


「第二部隊。エンキ・スタイン大尉。ローラ・ベイリー少尉。ブレイズ・ボールドウィン上等兵。ヘスティア・エマーソン……以上二十名」


「第三部隊…」


全員の名が読み上げられる。そして最後にモルガンが大声を上げる。


「アマルティア殲滅初期部隊を中心に編成している!各自よろしく頼む!」


リアム達が演習場から出ると、モニターに改めて部隊編成が映し出されている。


「やっと、この時が来たんだ…」


リアムは武者震いを起こす。ついに、両親を殺したナノスに辿り着く…!

リアムの異様な雰囲気に、マシューは気づく。声を掛けようと思ったが、見たことも無いような表情で、まるで黒いオーラを纏っているように思えた。


「マシュー」


「ゾーイ。どうしたの」


「心配だったけど、モルガン大佐と一緒なら大丈夫ね。ナデアさんもいるし」


「なんか頼りにされてない気がする…。ゾーイも、気を付けてね」


「大丈夫よ。ブラッド大尉達がいるんだもの」


ブラッドと聞いて、マシューは苦い思い出が蘇る。


「強いもんね…」


「もしかして、入隊したばっかりの頃のゲリラ訓練、まだ気にしているの?」


「実は、うん。皆には内緒にしておいてね」


「わかったわ」


ゾーイはマシューの背中をバシンと叩く。


「うわぁ?!何?!」


「アンタはモルガン大佐が付いているんだから。…死なないでね」


「…!うん」


そんな二人を、シレノとブレイズが眺めていた。


「青春だね」


「アイツ等、入試試験の頃から馬が合うみたいでさ。なんだかんだつるんでるんだよな」


「そっか。ブレイズ君達は入試試験の頃からの知り合いなのか」


「まぁな」


ブレイズは、必ずマシュー達は守りたいという気持ちが強く芽生える。ずっと絡んでいるメンバーだけでも、必ず。


「ブレイズ君、アマルティアに行く前にクレアさんに挨拶しに行ったら?」


「え?なんでまた」


「僕の言うこと聞いておいた方がいいよ」


「解ったよ」


ちょっと腑に落ちないが、ブレイズはクレアに会いに行くことを約束する。

こうしてアマルティア殲滅部隊の戦いが幕を落とされた。

原作/Aret

原案/paletteΔ

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