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ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
109/113

106話・・・過去の扉6

作品を読みにきて頂き感謝です!

長老達は先に帰り、残ったデウト達はまだ残っていた。デウトが何か作業をしているとので、エアルは声を掛ける。


「俺、ジョンさん達を宿舎に送ってきますね」


「いえ。その必要はありません」


デウトの言葉に、エアルもジョン、ジョーイも頭の上にはてなマークを付ける。


「まだ何かしようって言うのかい」


モアがぶっきらぼうに訪ねると、その質問に答えるように、モニターがまた映し出された。


『やぁやぁ。デウト氏。また呼び出すとは思わなかったぞ。しかも軍の機密暗号を使ってまで…。今度は一体どんな話を聞かせてくれるのかな』


現れたのはモルガンだった。


「度々すみません。そちらに残っているのはモルガンさんとブラッド君、エンキ君のみですか」


『あぁ。他のメンバーは先に帰らせたよ』


「よかった…まだ続き、いや、補足があるのであるのです。それを…あの子達に聞かせるとしたら、相当酷なものになる」


だから一度会議を終わらせたのだった。


「え、まだあるんですか」エアルが眉を顰める。不安しかないからだ。ただでさえ先ほどの歴史だけでも頭がパンクしそうだというのに。まだ補足が入るとなると、一体どんなん隠し玉を持っているのか。


『まぁまぁ、聞いてみようじゃあないか』


エアルは、嫌な予感がしていた。これ以上踏み込むと、自分まで傷つく気がした。


「では、話します。補足、と言いましたが実は…」



全て話し終わった時、その場はしんと静まり返っていた。誰も言葉を発せなかったのだ。

ニコルは俯き、悔しそうに瞳を閉じた。

この静寂を切り裂いたのはエアルだった。


「マジかよ…」やっと振り絞った声だった。


この言葉がやっと出て来る程度だった。

モルガンも表情が険しくなっていた。おちゃらけて励ます様子もない。


『…解った。この件は私とブラッド、エンキの三人のみで共有する。他言はしない。これでいいだろうか』


「はい。よろしくお願いします」


『いいな、二人共』


『はっ』二人の声が重なる。



翌日。

デウトはジョンとジョーイにテマノスでやってほしいことを伝えていた。


「ジョンさんは武器製作。ジョーイさんは飛行戦艦の発掘作業をやっていただきたいのです」


「おう。俺もここに暖簾分けさせるために来たぜ」


「発掘作業…初めての事ですが、全力で努めます」


「モア。後は頼みます。暫くは帰ってこれないと思うので」


「任せておきな。あ、あと。エンキとか言う若造。隠密のやり方を仕込んでおくんだね。部下の女の方が見込みあったよ」


「伝えておきます」


ジョーイはモアと。ジョンは指導を受けたいと願い出た面々と一緒に工場へ向かった。

そして近くで様子を見ていたエアルに、デウトが駆け寄る。


「現状で出来ることはやりました。我々もティアマテッタに帰りましょう」


「うおぉ!やっと帰れる!」


久しぶりの我が家に、エアルの心は踊りだす。そんなエアルを見て、デウトは微笑むのであった。


「帰る我が家があるのはいい事ですね。私も早くナデアに会いたい」


「そうっすよねぇ!俺も早くリアム達に会いたいです」


二人は荷物を纏めると、飛行艦の場所へ歩き出していった。



場所は変わってティアマテッタ。

昼休み。リアムを囲むブレイズ、マシュー、ゾーイ、シレノがいた。


「おいED野郎」


「なんだよ、彼女無し童貞野郎」


リアムを殴りかかろうとするブレイズをシレノが羽交い絞めにし落ち着かせる。


「まぁまぁ。僕達は喧嘩をするために来たんじゃあないでしょ?いきなりの悪口大会はよくないなぁ」


「突っかかってきたのはブレイズの方だろ。俺は事実を伝えたのみだ」


リアムは口をヘの字にする。


「もしかして、クローンのことか?…それなら俺が前向きな言葉を言ったところで、俺は元々人間だったんだ。ただの偽善になるだろうよ。それでもいいんだったら、慰めることは出来るぜ」


リアムも、どう声を掛ければいいのか解らなかったのだ。下手に励ましたところで自分の祖先は人間で。クローンではない。綺麗ごとを羅列したところでブレイズ達の心が晴れるわけがない。

前に、寿命の話が出たことがあった。無属性は百年。他属性は八十年が平均寿命だということを知った。この時は無属性がまた特別なのかと思った程度だった。しかし、実際はクローンの影響があったのかもしれないと、今は思う。


「ごめんなさい。貴方達を困らせるためにきたんじゃないのよ」


ゾーイが言う。


「そうだよ。ほら、ブレイズ君」


マシューが助け舟を出す。


「おう…」


まだ何かすっきりしないブレイズの代わりに、マシューが話し出す。


「やっぱり、昨日の事はショックだったんだよね。モルガン大佐に言われて、一度は落ち着いたけど、夜眠る時とか、不安になって…でも、それでも、前に進まないといけないんだなって。もう、クローンで命を弄ぶナノスをどうにかしないといけないんだなって」


「マシュー…」


「勘違いすんなよ。俺達はまだ心の整理がついてねぇんだ。変な同情見せたら殴るからな」


ブレイズがリアムを指さす。


「解ったよ」


「やっほー!皆おそろいで何しているの?!」


そこに訪れたのはマノンだった。ご機嫌なのか、どこか雰囲気が違う。


「あら、マノン。何か雰囲気が違うわね…リップでも変えた?」


ゾーイの指摘に、マノンは眼を輝かせる。


「解る?!ラルタァ、あ!ラルタァは同期ね、今度紹介する!その子からリップ借りたんだよね。めっちゃ発色良くて可愛いから!」


「似合ってるよ」マシューが褒める。


「えへへ、ありがとう!あれ…なんか辛気臭かったところ?」


マノンの言葉に、ブレイズは頭を抱えた。


「辛気臭かったけど、お前が来たからどっかに吹っ飛んだわ」


「あらそう?なら良かった!じゃあ、戻るね。ばいばーい!」


元気に手を振ると、マノンはラルタァの下へと帰っていく。ラルタァに唇を見せる姿に、マシューが微笑む。


「マノンは、混血なんだよね」


「そうなるわね。でも。あの子を見てると悩むのってアホらしくない?」


ゾーイが言うと、マシューは頷いた。


「そうだね」


談笑するゾーイとマシューを見て、シレノは内心安堵する。

シレノ的には、クローンが祖先とかどうでも良かった。ただコアを倒すという目標があればいいと。だからこそ、同期が心配だった。ゾーイはさっぱりとした反応を見せたが、意外にもマシューとブレイズがダメージを受けていたのだ。だが、マノンを見て、皆が考えるだけ馬鹿らしいと思えたことは、よかったのかもしれない。


「マノンは不思議な子だね。僕達を明るくしてくれる」


シレノが言うと、ゾーイが頷く。


「そうね。あの子も、人間とクローンの混血になるのよね…」


「あー!もうややこしい話は終わりだ」ブレイズが言う。


「話がそれちゃったね。リアム君。これからもよろしくねって、言いたかったんだ」


マシューがリアムの手を取り握手をする。


「マシュー…、やっぱりお前は強いよ」


「え、そうかな…」


「自信を持ちなさい」ゾーイが言う。


「っしゃあ。じゃあ、アマルティアやっつけるぞ」


リアムの言葉に、ブレイズ達も頷いた。


・・・

アマルティア・ナノスの研究室にて。

「そろそろだねぇ」


ナノスは至高の笑みを見せながら言った。


「何のこと?」


診察台に横たわっていた全裸のレンがナノスに訪ねる。


「なんでもないよ。君は何も考えずに僕の物になってくれればいいんだから」


「ふん、なによ。偉そうに」


レンは頭に来たのでそっぽを向く。

ナノスは仕方がない、困った猫をあやすように言葉をかえる。


「そうだ、レン。そろそろ実戦に出る気はないかい?毎日訓練ばかりで退屈だろう。何なら君の妹分のティーシ達を連れて行ってもいい」


その言葉を聞いたレンは起き上がり、まるで乙女が新しいおもちゃを貰った時のような笑みで答えた。


「本当に?!やっと実戦にいけるのね…マイラとお姉様にも伝えなきゃ…」


乙女の表情から、妖艶な笑みへと変わる。

レンの心は、ナノマシンの注入と催眠療法で完全に壊れ、歪んでいた。それでもレイラとマイラのために、レンは日々を過ごしていた。


「戦闘服を新調してあげよう。君にぴったりな戦闘服をね」


「嬉しい…それなら、お礼をしなくてはなりませんわ」


レンは自身の武器である鞭を持つと、ナノス目掛けて撓らせる。そしてナノスに鞭が絡み、レンが寝ていた診察台の上に寝かされる。


「お礼よ、ナノス」


服の上から、愛撫をし始める。前に比べて、かなり上手になっている。そしてズボンのチャックを下ろしレンがナノスのものを取り出した。


「今日の私は機嫌がいいから、サービスするわ」


レンは股の間へとナノスのものをあてがうと、ゆっくりと中へ押し込んでいく。そしてそのまま騎乗し、腰を動かし始める。


「あぁ!」


「レン、君はなんてはしたなく、美しいんだ!」


「は、したないなんて、酷い、こと言わないで!」


(お姉様…マイラ…。私、ついに実戦に出るの。きっと、人を殺すと思う。数えきれないほど。これでいいのよね…お姉様、マイラ…レン。レンこれで、いいのよ…)

どうしてこうなったのか、もう判らない。レンは快楽を求め、腰を動かし続ける。


「はぁ、はぁあ!あぁ!」


ナノスはほくそ笑む。あともう少しだと思いながら。


・・・

レイラの自室にて。

ナノスに呼び出されたレンが、戻ってくる頃よりいつもより遅いのでレイラは心配していた。


「遅いわね…何かあったのかしら」


「きっと大丈夫ですよ。迎えに来たのがエルドさんでしたから」


マイラの表情を見て、レイラは笑みを零した。


「あら?マイラ。あんなお坊ちゃんのナルシストがお好みなの?」


「え?!」


マイラはぽぽぽと頬を赤くし、俯いた。そんな可愛い反応を見て、レイラは久しぶりに鬱屈とした感情が晴れて二年前の、懐かしい心や感情が蘇ってくる。


「ごめんごめん。揶揄う気はなかったのよ?」


「もう、レイラさん!」


二人で笑いあっていると、レンが戻ってくる。


「レン!大丈夫だった?ナノスに何かされなかった?」


「何もありませんわ、お姉様。それより…ナノスがおよびですわよ、お姉様」


「ナノスが…?」


「さ、参りましょう!」


レンはレイラの腕を組むと、さっさと部屋から出ていく。


「あぁ、ちょっと!マイラ、子供達のことお願いね!」


「はい」


残されたマイラとジェイ、ノエミは何事もなかったかのように遊び始めた。またすぐ帰ってくる母を待ちながら。



ナノスの研究室に来たレイラは、嫌悪を露わにする。


「レン、ありがとう。ひとまず下がって良いよ。二人っきりで話がしたいんだ」


「……」


レンは何も言わないまま下がっていく。


「レンに何をした」


「何もしてないよ。疑り深いね。あぁ、でも実戦に出ないか、とは言ったよ」


「実戦ですって…!そんなの止めて!」


「でもレンはやる気満々だよ?それを止めるなんて酷なこと、私には出来ないよ。それに、ティアマテッタが攻撃を仕掛けてくるからね。優秀な人材で対処しないと」


その言葉を聞いて、レイラは首を傾げる。


「攻撃?ティアマテッタが?どこからそんな情報を得たのよ」


訊いても、コイツが答えるとは思わなかった。その通りで、ナノスはただニコニコとしているだけだった。


「話はそれだけ?」


「まぁね。言いたいことは言えたから好きにしてくれていいよ」


レイラはそう告げられると、さっさと研究室から飛び出る。廊下にはレンが待っていてくれた。


「レン。ナノスから貴女が実戦に出るって聞いた。ねぇ、そんな人を殺める様な所に行かないで。私達の傍にいてほしいのよ」


「お姉様。これはお姉様やマイラ、そしてジェイとノエミを守るために必要なことですの。きっと解ってくれないでしょうけど…私は行きたいの。殺すためじゃあないわ、守るために行くの」


「レン…」


レイラは、思わずレンを抱きしめた。


「ごめんね、ありがとう…」


「お姉様たちのためですわ。謝る必要なんてありませんわ」


いつの日から、レンが何を考えているか解らなくなった。一体何をしようとしているのか。何をしようとしているのか。

ただ、知らない間に、気づかない間に遠くへ行ってしまったのは確かだった。


・・・

その日はリアムとミラ以外、誰もいなかった。

ヘスティアはナデアと食事をした後泊まりに行くと言っていた。マノンは夜勤。エアルはデウトに同行しているので留守。二人っきりだった。

昨夜にシたいを言ってしまった以上、ミラは覚悟していた。そしてリアムも、女の子が誘ってきたのに、断るなんて弱気な事を出来なかった。リアムも、するつもりで帰ってきていた。


「ミラ…その」


リアムが言葉を濁すが、頬に熱が集中しているのを、ミラは見逃さなかった。最後まで言われなくても、解ってしまった。リアムが何を言おうとしているのか。

だって、今まで見たことも無いような色っぽい表情をしているのだから。


「シ、シャワー浴びて来るね」


「お、おぉ」


ミラは風呂場に逃げ込むと、まずはムダ毛が無いか確認した。


(おし。大丈夫)


初めてなのだから、何が正しいか、何が必要か調べて、履歴がセックス関連ばかりになったくらいだ。

シャワーを浴び終えると、次はリアムがシャワーを浴びに入る。

ここでリアムは気づく。男が女の子に出来る最大限の優しさや我慢、必要なものは何なのかを。


(コンドームはある。潤滑油も準備した…これでいいはず、いいのか…?ピル!万が一があったら…いや、その時は結婚しよう)


もう考えるだけで熱が集中する。

浴び終え、リアムはミラに声を掛ける。


「ミラ。俺の部屋に行かないか」


「うん。行く」


二人は移動し、リアムの部屋へ行く。そしてベッドに座ると、どちらから解らない、キスをしだす。そしてリアムが勇気をだしてミラの胸を優しく触った時だった。感触だダイレクトに伝わってくる。


「えへへ、もう脱ぐかと思って…」


「ッ…反則だぞ」


リアムは服を脱ぐ。そしてミラの服を脱がせ、横に寝かせる。頬を触り、首、鎖骨、臍、そして蜜が溢れる場所へと、丁寧に丁寧に愛撫をする。


「ふぁ」


「大丈夫か?」


「うん…平気」


指を一本入れると、とても窮屈だった。本当に自分のものが入るのか解らないくらいに。


「ミラ…いくぞ」


「うん。きて」


そして二人は、やっと結ばれる。



翌朝。

マノンがクタクタになりながら帰ってくる。


「ただいまぁ。あれ、誰もいない感じ?」


それにしてはバスタオルがソファの上に置きっぱなしだったり、コップもテーブルの上に片付けられていないままだった。


「なにしてんだ?」


二階に行くが、シンと静まり返っている。マノンは真っ先にリアムの部屋をノックする。


「リアム、いる?」


ドアの向こうから、女性…ミラの起きる声が聞こえてきた。つまり、とマノンは悟る。


(昨日は、お楽しみだったということですか?!?!)


マノンは真っ先にヘスティアに連絡をすると、女子だけで作ったグループチャットに報告を入れる。リアム、ミラ無事卒業と。

マノンは急いで一階へ戻ると、コップやらバスタオルを片し始める。


「ふふふ、今日はパーティーかなぁ。早くエアルも帰ってこないかなぁ」


するとピコン、とチャットの返信が来たことを知らせるベルが鳴る。誰かと思い、マジックウォッチに話しかける。


「誰から?」


『ブレイズ様からです』


「え?!何の用だろう」


『先ほどのチャットのお返事です』


「え、私女子グループに送ったんだけど」


『アマルティア殲滅部隊のグループに送られております』


マノンは噴き出し、急いでチャットを消すように指示をする。しかし遅く、皆がこぞって食いついて来る。


「あー…メンゴ、リアム、ミラ」


ブレイズからは血の涙を浮かべさせる怨念が籠った返事が来ていた。もう呪うも同然だろう。後は茶化すような内容ばかりだ。

洗濯物を回し始めた頃、インターホンが鳴る。朝から誰だと画面を覗くと、血眼なブレイズと、ゾーイ、マシュー、シレノが立っていた。


「あれ、今日休み?」


『今すぐ出ろ』ブレイズが濁声で言う。


『皆で相談してささやかなお祝いを持って来たのよ』


「ありがとう、ゾーイ!まぁ、一人可笑しいのいるけど、今開けるね」


マノンはブレイズ達を招き入れる。

そしてヘスティアがいつも愛用しているカップに紅茶を注ぎ入れる。


「すぐお暇するから、お気遣いなく」


マシューが皆で選んだというお菓子を手渡す。中身はティアマテッタ軍紅白チョコ入り餅だった。


「ごめん。この時間帯だとお店開いてないから、軍のお土産屋さんで買って来たんだ」


「それでも嬉しいよ!ありがとう」


まるで自分の事のように嬉しがる…いや、面白がっているマノンにつられ、シレノはニヤニヤとする。


「出勤してもアマルティア殲滅の訓練だし…モルガン大佐だから遅刻した理由を言えば許してくれるでしょう」


「そうかもね」


紅茶を頂いていると、車が外に停まる音が聞こえる。


「エアルとデウトさんかも!」


「あら。大所帯になってしまうわね」


マノンが玄関を開けると、見慣れない車が止まっていた。そして降りてきたのは、モルガンとブラッドだった。


「チャットを見たぞ!!!!なんとめでたい!」


「マノン!!!!!!」


モルガンが現れると同時に、リアムが大激怒しながら玄関まで追いかけて来る。


「ぎゃあああああああ!大佐助けて!」


「なんだ、朝から賑やかだな」


ブラッドが言うと、モルガンの後ろに隠れたマノンをとっ捕まえようとするリアムの人相が更に悪くなる。


「マノン、お前何してくれたんだよ!何で皆や大佐達がいるんだよ!」


「いやぁ、女子トークの方に送ったつもりだったんだよぉ。リアムとミラが初夜を迎えたことをさぁ」


初夜と聞いたリアムは耳まで顔を赤くさせ、マノンをとっ捕まえようと前に出るがモルガンに止められてしまう。


「そしたら間違えて殲滅部隊に送っていたんだよね」


「やっぱり許せねぇ」


そして次は、タクシーが自宅前に停車する。その中からヘスティアとナデアが降りて来る。


「丁度よかった!リアム、貴方ついにミラを抱いたって本当なの?!」


「ヘスtぇいあさん!!声がデカい!」


リアムがヘスティアの声をかき消すように声を張る。


「もー!出遅れちゃいましたね」


「仕方ないわ。気づいたのが朝食の後だったからね。さ、中に入りましょう。紅茶をご馳走するわ」


「ありがとうございます。お邪魔しますね」


ヘスティアはナデアを連れて家に入っていく。


「じゃあ我々も中に」


「駄目です」


リアムの態度に、モルガンとブラッドはつまらなさそうな表情を見せるのであった。

家の中ではそれはそれで、ミラにダメージを与えていた。


「な…なんで皆がいるの!」


やけにリビングが賑やかだと思った。マノンが帰ってきてテレビでも観ているのかと思った。しかしそこはブレイズ達がわんさかやっているのだ。


「ミラさん!!俺は、俺はぁはーんはー」


「いつまで泣いているのよ、女々しい奴ね。ミラはもうリアムと付き合って二年も経つんだからいつ何が起きてもいいように覚悟をしていなさいって」


めそめそ泣いているブレイズにゾーイが説教を垂れている。マノンは頂いたお菓子を茶菓子にと出し、シレノ達はまったりとお菓子を食べながら談笑していた。


「ミラ、おはようございます」


「へ、ヘスティア!お帰りなさい」


「ティア姉、お帰り!ナデア姉もお帰りなさい!あ、お茶淹れるから座ってて」


「ありがとう」


ミラにとって、特別な朝になるはずだったのに。なのに、なんだこの大所帯は。本当なら、朝微睡ながらピロートークをして、まだリアムとイチャイチャするはずだったのに。マノンが帰って来ても、まさか起こしに来て、察してそっとしといてくれると思ったのに。何がどうして、こんな大勢から紅白チョコ入り餅を貰わなければならないのかと。

帰って来て頭を抱えたのは、エアルだった。

弟分が好きな人と結ばれたことを知った。知ったが、それはそれとなく気づくことであり、言いふらされて知るものではないのだ。そして帰ってきたら、皆がワイワイと騒いでいるではないか。


「俺達の家が…」


「心中察します」


「うぅ、デウトさん…!」


俺の家が…リアム達との家がたまり場になってきているとに、不安が募るばかりであった。


原作/Aret

原案/paletteΔ

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