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ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
108/113

105話・・・過去の扉5

作品を読みにきて頂き感謝です!

デウトとエアル。そしてジョンとジョーイは商会や他の工場の社員から見送られながらヴェネトラから旅立った。ここから数時間でテマノスに着く間、軽く町の説明をする。


「皆、外部から来た人間に警戒するものや、歓迎するかの二パターンに別れます。まぁ、お客様としてならともかく、長居するなら話は別になってくるような連中です」


「過去を聞く限り、疑い深くなってもしかたねぇ。そこは俺達が歩み寄るつもりだ」


ジョンが心強く言うと、ジョーイも頷く。


「ゼロから信頼を作ることも、武器職人では常にあることです」


「ありがとうございます」


そして雑談や今後のスケジュールを話し合っているうちに、テマノスが隠されている結界に近づく。そして荷物を下ろし、テマノスへいざ入らんとしているときだ。デウトのマジックウォッチがけたたましく鳴る。


「どうしました、モア」


連絡の相手はモアだった。しかし本人の声色からして、穏やかとは言い方だった。


『デウト!帰ってくるのを見たよ!いいかい、すぐに会館へ来るんだよ!いいね!』


あまりの五月蠅さにデウトはマジックウォッチを耳から出来るだけ遠ざける。


「デウトさん。モアさんはなんて?」


エアルが心配して尋ねて来る。


「いや…あまりいい出来事があるとは思いませんね」


「そうですか…」


はぁ、と二人で重たい溜息を吐く。



会館に行くと、何か賑やかな声が聞こえ漏れていく。長老達が主に盛り上がっているようだ。襖の隙間分だけ開けると、そこから覗く。


「ニコルちゃん、良い飲みっぷりだねぇ!」


「そぉですぁ?うれしいれすぅ」


「もっと飲んで、ニコルちゃん!」


「あぁい♡」


「ブーーーーーーーーー!」とエアルが噴き出す。


お酒を飲みすぎてべろんべろんに酔っぱらっているニコルが、カーディガンをはだけさせ、ノースリーブから白い腕がすらりと伸びる。白いワンピースが眩い。ブイネックから、胸が寄せられているせいで谷間が見える。ロングスカートを履いているため、パンチラは回避できている。


「コラァ!ジジィ共!何をじょうお…ニコルにしこたま飲ませてるんだ!こんな姿…帰ってくるデウトに見せられないよ…」


そこに居たのはニコルの愛らしさに骨抜きにされただらしないおじじ達であった。もうこの時点でデウトは面白くて入っていくのを止めた。


「揃いも揃って…どうすんだい」


「だってなー」


「なぁ」


おじじ達は顔を見合わせ、仕方ない、という雰囲気を醸し出す。だが仕方ないで若い――と言っても目上なのだが――娘を酔わすなんて人としてどうなのかとモアは腹を立てる。そして進まれるままに飲むニコルにも、頭に来ていた。


「なぁ、じゃあないよ!ニコルもマジでいい加減にしなさい!飲まされるまま飲むんじゃあないよ!」


ニコルはグラスを片手で回す。からんと氷が鳴る。


「なんれすぁ?もあしゃー♡」


グビッとグラスに入っている酒を一気に飲み干す。


「ニコル!」


「いい飲みっぷりだね!ニコルちゃん!ささ、いっぱい、もっと飲んで!」


「はぁい」


「はーいじゃあないよ…」


とろんとした瞳で、舌なめずりをする姿に、じじい達が息を呑む。


「アンタ達ね!見た目に騙されてるけど、ニコルは千歳以上なんだよ!私等より年上!そんな年上相手に、みっともないことしているんじゃあないよ!」


長老同士が顔を見合わせる。


「そう言われてもなぁ」


「ニコルちゃんの方が若く見えるし…なぁ」


モアはかなり呆れた。カチーンと頭の中でゴングが鳴る。結局見た目で、若い女の子をいいように酔わせて自己満足の欲求を満たしているのかと。


「トロープス」


モアは魔力を最大限に回転させると、みるみるうちに若返る。


「…これでどうだい?私も若いよ。それでもニコルにまだ酒を飲ませる気かい?」


これ以上野放しにしているとモアがブチ切れると判断したデウトが乗り込んだ。


「皆さん、一体何をやっているんですか」


「デウト、エアル。帰ったのかい」


「帰りましたよ。で、皆さんは一体何をしているのでしょうか」


デウトの圧と、エアルのジトーッとした表情で拍車をかける。


「これは、その。ニコルちゃんの歓迎会を」


「そ、そうそう…歓迎会」


みるみるうちに長老達が小さくなっていく。


「ニコルさん」


「はぇ、でうとさんらぁ。ふたりいる、ふふふ」


ニコルは指をさしてふははと笑う。


「陛下」


「あへ、今の私は御用じゃあないってことへ、はいはい」


ニコルは杖を持つと、淡い光が先端から放たれる。


「ヒール!」


初めてヒールを使う人間を見た。デウトを始め、エアルもモアも、口を開けて驚きを隠せなかった。


「ふぅ。これで意識回路は正常です。どうやらお見苦しい姿を見せてしまいましたね」


さっきまでのでろでろのニコルはいなかった。ヒールの使い方…無駄遣いだ。


「さ。我々は今後について話し合いがあります。まずはマスタング商会からお二人をお招きしました。テマノスで技術の教えを乞うことになりました」


酔っ払い、浮かれていた長老達が一斉に覚め、気難しい顔をする。


「デウト。お前がしようとしていることは解る。しかしこれ以上何人もよそ者を迎え入れることは…正直受け止めきれん」


「我々が嫌う理由を知っているだろう。忘れてはいないはずだ、デウト」


「解っています。ですが…金属性は我々と切っても切れない縁があるんです。それはおいおい話しましょう」


デウトはジョンとジョーイを室内に手招く。


「初めまして。ジョン・マスタングです。そして弟のジョーイ・マスタング」


「よろしくお願いします」


長老達も、モアも驚いた。だって、その風貌は自分達が住んでいたルナールの頃、そこで武器屋を切り盛りしていたマスタングとそっくりなのだから。


「恐らく私のベルトや銃を作り出したマスタングの子孫です。テマノスも外からの情報や技術を入手しないと今後痛手を追う可能性があります」


地下から見つかった戦艦、そしてコールドスリープから目覚めたニコルを考えるとこの村に大きな秘密…世界にとって分岐点になるモノがあることを嫌でも自覚する。そして長老達は険しい表情から、柔らかい顔付に変わる。


「解った…。ただし、変な行動や言動をしたら、わし等は許さない」


「ありがとうございます」


デウトが頭を下げると、マスタング達も頭を下げる。


「さて。次はニコルさん。貴女から過去の事をお聞きしたいのです」


ニコルに、皆の注目が集まる。ニコルは困ったように、視線を反らす。


「それは…構いません」


「嘘偽りなく、お話しできますか?我々には必要なのです。必要な歴史なのです」


「…解りました。私が知っている範囲でお話しします」


そうと決まればテレビ通話をするために準備が入る。モルガン達と繋ぐのだ。そして参加するのはアマルティア殲滅作戦部隊。つまり、リアムやブレイズ達も参加するのだ。


『繋がったぞ』


モルガンが返答する。


『久しぶりね、エアル』


「ヘスティア!お前も参加するのか?」


『えぇ。貴重なお話を聞かないだなんて人生の損だわ』


静まり返ったところで、ニコルが静かに話し出す。


「私が知っている過去を、お話しします」



ルナールは、月の民だった。月に住んでいたのだ。もうこの時点でデウト達は信じがたかった。我々の先祖が、月の住人だったことに。


「我々の祖先は月から、この惑星に移住することに決めたのです」


ルナールの民は、広い円盤に乗りデメテール大陸に着陸した。だが、この惑星は汚染が進んでいた。住むには到底無理な話だった。そこで編み出したのがナノマシンだった。ナノマシンは空気に溶け込み汚染物質を分解し、浄化することに成功したのだ。

デメテールでの生活が始まったのだが、次に困ったのが人手不足…世話役がいなかったことだ。そして考え出されたのが奴隷として人を作ることだった。奴隷が誕生し、快適に過ごせるようになると、また問題が出て来る。完璧に見えた奴隷だったが、結婚を許した時、赤ん坊を身籠った女性が死産、流産、そして母体が死亡することが判明したのだ。この事態は奴隷を大きく減らす要因となった。困り果てた結果、奴隷にも魔力を…魔法を使えるように力を与えた。そして誕生したのが火、水、木、土、金の五つの属性だった。ルナールの民は無の力を誇り、頂点に達していた。



『それって…俺達もクローンってことかよ』


ブレイズが口火を切る。


『落ち着けよ、ブレイズ』


エアルが宥めるがブレイズの怒りは止まらない。


『今までリアム達と同じだと思っていたのに、実はクローンと同じだったって知って、冷静になれるかよ!』


『それは僕も、同意するよ…』


マシューまでもが項垂れ、表情が見えない。


『落ち着きなさいよ!』


そこに喝を入れたのは、ゾーイだった。


『最初は確かにクローンで、ルナールとは違ったでしょうよ。でも今は、人間として生きてるじゃない…誰が私達に不自由を押し付ける?誰が私達を迫害しようとする?今は、リアム達と同じ土俵にたっているじゃない』


シレノも何か言いたげだったが、ゾーイの喝を聞いて口角を上げ、何も言わなかった。


『ゾーイはショックじゃないの?』


『あんまり実感がないわね』


『でも、苦しいなら無理しなくてもいいよ。話は僕達が聞いておくからさ』


シレノの言葉に、ブレイズとマシューは顔を見合わせる。


『いや。頭に血ィ上ったけど落ち着いてきたわ…後で自分なりに考えてみる』


『僕も、そうする』


落ち着いた二人を見て、マノンは内心安堵する。ここで殴り合いの喧嘩なんて発展したらどう止めようか悩んだからだ。まぁ、モルガンにブラッド、エンキがいるから大丈夫だろうが。


『すまない。続きを聞かせてくれ』


モルガンが謝ると、ニコルは首を横に振る。


「いいえ。怒りが湧く気持ちも解ります。では、続けますね」



魔力を与えると、クローンたちの容態は安定し、同じ属性同士なら赤ん坊を無事に産むことが成功した。しかし、他属性同士だと魔力が反発し合うのか、或いは上手く生成できないのか、受精自体が上手くいかなかった。上手くいっても死産だった。そしてそれはいつしか他属性での結婚を禁忌とするようになっていった。

問題は次々に現れる。魔法を与えて年月が経過すると、他属性同士で戦争を起こすようになったのだ。これを制圧するために作られたのがルナールの民が常に身に着けていたマジックウォッチだった。これの簡易版を生産すると無理矢理にでもつけさせ、制御し、管理するようになった。



人口が多くなり、次に編み出された考えは移住だった。この時は既に清浄化が世界の九十パーセント完了していた。狭い国に収まっているよりも、各地に散らばることを選んだのだ。先駆者としてメイヤーズ王家、お付きのランドルフ家、アーレント家、アルフレッド家が同行し、希望する者を集い、彼等は新たな旅路に着いた。そして到着した土地がエウロパ大陸のルナールと呼ばれ…のちにティアマテッタと呼ばれる土地だった。そこで移住者はよりよい生活を送るべく、汗水垂らし、土地を開拓し、家を建て、街を作り、作物を育て、木々を周りに植えた。そうして数年が経つと、街はある程度完成された。

その報告をするため、メイヤーズ家と家来御三家はデメテール大陸へ久しぶりの帰郷をしたのだが、ここで問題が発生した。



ネイサン家が暴徒ともとれる政治、奴隷化、国民を無視した政治、実験を行い、我慢の限界を超えた住民達が暴動を起していたのだ。

これには仕方なく、メイヤーズ家の指示のもと鎮圧化に成功した。しかし住民の半数以上を犠牲にする大きな事件となった。

それからネイサン家取り潰しの案も出たのだが、ネイサン家の必死の請いを見て、よりよい環境を作り上げることを約束に、ネイサン家と残りの住民をティアマテッタへ移住する決まりとなった。乗って飛来してきた円盤は暴動の際に破壊されていたため、円盤での移動は不可能。飛行艦での移動となった。そしてここがアマルティアと名付けられる。



しかし、ネイサン家が大人しくしている訳がなかった。数十年する間、結局はメイヤーズ家と同等の立場として政治に加わったのだ。



そして四百年ほどたったころだ。エウロパ大陸。

ついにニコルが誕生し、女王としてネイサン家と両立しルナールを納めていた。上手くいっていると思っていた。だが、内容は違った。この時、メイヤーズ家で固有スキルを使えるのはニコルしかいなかった。そこに目を付けたネイサン家が魔力を理由に徐々に政治を握るようになっていった。その結果、再び住人に不満が溜まっていたのだ。この頃でも奴隷として他属性は働かされていた。ネイサン家が暴虐の限りを尽くしたのだ。

苦しい仕事は全てルナールから押し付けられていた。そしてついに不満が爆発し、ルナールに対し戦争を仕掛けたのだった。



蓋を開ければ、それは自分勝手なものだった。ネイサン家は自分達以外のルナールの民を排除したかったのだ。そして結果、クローン達の感情を逆なでし、ルナールの民を殺すように仕掛けたのだった。

独裁国家を作りたかったのだ。

一回目のデメテール大陸での暴動は予期せぬ事態だったが、運よくメイヤーズ家と御三家が帰ってきたお陰でなんとか生きながらえた。だが、この惑星を掌握したかったネイサン一族は、支持を集めるメイヤーズ家が目の上のたん瘤、邪魔だったのだ。正確に言えばニコルが邪魔だった。ニコルには御三家が使えていたのだ。この御三家も面倒だった。そして考えついた答えが、ニコル殺害だ。ニコルとその取り巻きを排除しようとしたのだ。

抹殺は失敗したものの、ニコルと何名かの支持する御三家を排除することには成功し、ネイサン家の独裁国家が始まったのだった。



ニコル達が命の危機に瀕した時、助けの手を差し伸べた属性がいた。金属性だ。

金属性は自分達の危険も承知で、ルナールの民を自分たちの国…ヴェネトラに避難させた。しかし、逃げる際にニコルが乗っていた戦艦は不時着した。

こうしてヴェネトラに逃げることに成功し、安寧を取り戻したルナールの民は感謝としてモノづくりが得意だった金属性にあらゆる文化、そして工業、産業の知恵を与えた。これをきっかけに、ヴェネトラは物作りが得意とする文化を歩んでいくことになった。


・・・

「以上が私の知っている歴史です」


ニコルが語り終えると、皆が静まり返っていた。長老達は黙ったままだった。


「タブレットとほぼ同じことを語られたので、改ざんなどは無いのでしょう。ニコル君がコールドスリープをした後の歴史を、少し補足させてください」



そしてティアマテッタでの独裁国家が完成し六百年経った頃。デウトが誕生し、ネイサン家に見切りをつけた。そしてネイサン家は更に窮地に立たされた。

その際にネイサン家に仕えていたランドルフ家の手引きにより、隠れ蓑となれる場所を探し、街を作るために開拓をし、ルナールの民と共にゼーロを作り上げた。

そしてルナールの民は、自分達が表舞台に居ると災いをもたらすと考え、金属性の一部を除いて関わらないようになっていった…。ゼーロには結界を張り、それが現代でも続いている。


「以上が歴史の流れです」


ドン!とモニターの向こうからテーブルを叩く音がする。


『やっぱり、納得できないよ!僕達はクローンで、しかも金属性は、人が良すぎるよ…』


そう発言したのはマシューだった。ブレイズもまだ納得いっていないようで。こちら側を睨んでいた。


「他属性について補足します。貴方達の先祖は確かにクローンだったかもしれません。でもそれは初期だけで、テロメア――寿命――が短かったようですが、現在はナノマシンの空気を吸い、我々と同じ…」


『それは、無属性だから言えることじゃないですか』


ブレイズの言葉に、デウトは言葉を無くしてしまう。確かにそうだ。最初から違う。年月が解決したとはいえ、彼等には残酷な真実なのだ。どう、話を続けるか困っていると、モルガンの豪快な笑いが聞こえてくる。


『ハッハッハッハ!確かにこの真実はショックを受けるだろう。今は無属性と変わらない肉体、寿命、精神であることは確かだ。だがそれがなんだと思うかもしれない。しかし、我々がクローンだと思えば、それはそういう事実になる。未来永劫だ。クローンとして生きるか、人間として生きるか。君達はどっちの選択を取る?』


『僕は…人間として生きたいです…!』


『俺も、人間だって、胸張って生きてぇ…です』


『うん。命があり、脈打つ限り、我々は人間なのだ。と、私は思うぞ!』


情けないかもしれないが、マシューはぽろぽろと涙を流し、必死に手で拭う。


『そうだよ。クローンでも生きていれば人間なんだよ。生きているんだよ…』


そう言ったのはマノンだった。マノンは言い聞かせる。あの四姉妹も、双子も、生きていた。だが、ナノスの扱いのせいで死を迎えただけだと。まるでおもちゃのように、使えなくなったら捨てられて。新しく誕生するクローン。

命を弄ぶナノスを、余計許せなくなっていく。


『あの!』


次に声を上げたのはミラだった。


「あら、ミラさんじゃあないですか」


ニコルは花が咲いたように笑顔がほころぶ。


『ミラ。メイヤーズと申します。私、固有スキルが発動しなくて…ずっと、訓練しているんですけど、どうしてもダメで…。だから、何かコツやヒントでもいいんです。私を指導してくださいませんか?!』


ミラの必死な願いに、ニコルは微笑む。


「勿論です。私の頃でも、私以外使える者がいませんでした。その結果、ネイサン家に政治を握られたのですから…。私でよければご指導しましょう」


『ありがとうございます!』


『よかったな、ミラ』リアムが微笑む。


「うん」と嬉しそうに答えるミラに、デウトも思わず頬が緩んだ。


「では、短いですが今日はここでお開きとしましょう」


デウトの一言で、周りは気を引き締めた。



ブレイズは帰路に着く。今日は一人で寮に行く。独りになりたい気分だった。

ゾーイとシレノが、すんなりとクローンが祖先にもつことを受け入れていることに驚いた。もっと、抗い、否定すると思っていた。マシューが辛うじて自分と同じ意見だったが、モルガンの言葉でどこか納得しているようだった。


(俺も納得しているんだ。していらぁ)


しかし、心は正直だ。まだ信じたくないと叫んでいる。


「ブレイズさん」


声を掛けられ、前を見るとクレアがひょっこりと現れた。


「クレア、こんな所で何してるんだよ。シアに見つかったら叱られるぞ」


「大丈夫です。それより、私の勘が言うんですよね。ブレイズさんに何かがあったって」


「はは…。お前の勘は怖いな」


思わず苦笑いをする。


「とうことは、何かあったのですか…?」


クレアの表情が曇る。それを見て、慌てて手を振る。


「違う!いや、違わない…うん。言えない事なんだけどよ。ちょっと、受け入れがたい事実があったとしたら、クレアならどうする?」


「受け入れがたい事実、ですか…そうですね」


クレアはブレイズの手をそっと取る。


「私は、貴方がいればどんなに恐ろしい現実が待っていても、平気です」


ブレイズの心臓がドクンと強く脈打つ。そして思わず、クレアから離れる。


「お、お前!それっ、は!好きな奴に言うやつだぜ!」


ブレイズの反応に、脈ありなのか、ただ女性に弱いのか解らず、クレアは口をヘの字にする。


「ブレイズさん、モテないでしょう」


「うっさいやーい!」


そんな二人のやり取りを、リアムとミラが後ろの方で微笑ましそうに眺めていた。


「クレアさんはブレイズの事が好きなんだねぇ」


「難儀な男に惚れたもんだ」


「ねぇ、リアム。私達も、付き合っているんだよね?」


その質問に、リアムは眼玉が飛び出しそうになった。


「あ!当たり前だろう…何急に、変なこと言ってんだよ」


「……そろそろ、その、シたい、じゃん」


視界が真っ白になり、耳に熱が集中する。ここは、リアムがミラを誘うべきだったのか解らないが、ミラにこんなことを言わせてしまったことに申し訳なさが生まれる。だが、ミラの可愛い顔が見れたので、これはこれでよかったのかもしれない。


「そ、そうだな…こ、子供も欲しいもんな」


「え、ちょっと待ってよ。子供はまだ早いよ!私、やりたいことがまだあるの!仕事だって遣り甲斐あるし!」


「でも万が一とかあるだろう?!」


「リアムは慎重すぎるんだよ!」


そんなこんなを話しているうちに、ヘスティアとマノンが後ろに立っていた。


「ほら。やるのかやらないのかは家に帰ってから議論しなさい」


「ニシシ、ティア姉に怒られてやんの。いい歳してぇ、まだ童貞と処女だもんねぇ!」


「マノン!」と声が重なった。


原作/Aret

原案/paletteΔ

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