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ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
107/113

104話・・・過去の扉4

作品を読みに来て頂き感謝です!

リアム達一行がティアマテッタへ帰路に着く直前の話だ。

リアムはエアルと会話を数分だけで出来た。


「エアル兄…。俺、正直言うと怖くなった。復讐するチャンスが、目の前にあって」


その声は少し上ずっていた。エアルは、優しく肩を叩いてやる。


「大丈夫。復讐するとか、考えるな。仲間と敵陣を攻めることだけ考えればいい正義のために戦え。そうすればいずれお前の目的は達成される。それがお前のやるべきことだ」


「…ありがとう、エアル兄」その言葉には不安が滲んでいた。


「気を付けて帰れよ」


エアルとリアムは握手をすると、リアムは飛行艦へと乗り込んでいった。

見送ると、早速デウト達が動き出す。


「皆さん、事を急ぎます。まず、モルガンさんですが、彼女は近いうちにアマルティアへ軍を率いて攻撃しに行くでしょう。もし拠点が正しければ、激戦は避けられません。しかも、今の軍事力、装備ではやられに行くだけ。無駄死にです」


「無駄死にって、そんな…!ティアマテッタは世界最高峰の軍ですよ!」


エアルが食って掛かるが、デウトに華麗に流されてしまう。


「空間移動が出来る時点で負けているんですよ。技術が伴っていない。過去の純正の高いマジックメタルを使われている武器で対抗されたら…そうだ」


デウトは何かを思い出したかのように、エアルに問う。


「エアル君の銃は、確か著名なマスタング工房の銃だとか」


「え、はい。マジックメタルを使用した銃ですけど…」


「私の銃はその前進となるプロトタイプの銃を使っています」


ホルダーから取り出し、エアルに見せる。確かに似ている箇所があるが、完全に瓜二つというわけではなかった。


「まぁ、それはなんとなく察していました。形も似ているし、何よりデウトさんが扱う武器だ。生半可な武器じゃあすぐ壊れちまう」


四百年以上も愛用されている、銃。マスタング家の恐ろしい技術の結晶に、エアルは唾を飲む。


「続けますね。この銃は化物と言っても過言ではありません。魔力を奪い取り貪り食うように消費していきます。並の人間なら三分と持たないでしょう。エアル君でさえ十分使おうものなら魔力切れを起こすと思います」


スキルブーストが十分耐えられ精一杯の時間なのに。通常魔法を扱うだけで十分とはなかなかにリスキーな武器を使っていると、変な汗が背中に流れる。しかし、その魔力をカバーし戦闘に立つデウトの強さが、最大限解る銃であることは確かだった。


「そこで頼みがあります。エアル君はヴェネトラに住むマスタング商会はご存じですか?」


「勿論ですよ。この銃を作ったのがマスタング三兄弟ですからね!」


「では話が早い。マスタング商会のお力を借りたいのです」


「きっと喜んで手を貸してくれると思いますよ。でしたらティアマテッタに来てもらう方が早いでしょう」


「いえ」


デウトの否定に、モアの眉がピクリと動くのを、エアルは見逃さなかった。


「テマノスに来てもらいます。そしてここを拠点とし、戦艦の発掘、武器や防具の製作をしてもらいます。商会よりは劣りますが、武器製作に必要な工場は小さいですがあります。もし無理ならヴェネトラで作ってもらっても構いません」


「ちょっとお待ちよ!」モアが怒鳴る。


「これ以上よそ者をこの町に呼び込もうって言うのかい?!流石のお前でも、町は不信感を抱くよ!混血児やその家族ならともかく…噂にならないとでも思っているのかい?」


モアの言う通りだった。

この町は確かにデウトに頼り切りなところがある。あるのだがデウトの意見を丸呑みするほど馬鹿ではない。ニコルの件も、大人達は不信に思った。追い出せという老人達もいた。

エアルは黙って、二人の意見を聞く。


「モア。もう、わがままを言っている時間が無いんだ。解ってくれないならそれでもいい。邪魔さえしなければな。皆にもそう伝えてくれ。私はアマルティア殲滅の為なら、手段は択ばないと」


悔しそうに、モアは唇を噛みしめた。


「エアル君。お待たせしました。ヴェネトラまでここから三時間ほどで行けます。時は一刻を争います。すぐにでも立ちましょう」


「…はい」


立ち尽くし、微動だしないモアを心配しつつ、エアルはデウトの後を追う。


「あの…少しはテマノスの皆さんの気持ちにも寄り添った方がよかったのでは…?」


「エアル君に心配されてしまいましたね。でも、私は信じていますよ。町の皆が協力してくれることを。確かに、過去の酷い仕打ちを忘れている訳ではありません。特に孤児や、親世代は。でも、来た人を見極め、どう行動するかは本人達の心の問題です。私の好き勝手に呆れたら、それでいい」


デウトは町の事を愛していると、エアルは思った。そして、いつでも見切りをつける覚悟も持っていることに、彼の冷徹な面を見た。


「…行きましょう。ヴェネトラへ」


エアルは進路選択をする。そして飛行艦はゆっくりと浮上し、空へと飛行する。



レイラ達が行方不明になって二年が経った。音沙汰もない状態に、ジョンは半ば諦め、そして希望を持って生きてきた。生きていても、辛い日々を過ごしているかもしれないと思うと、じっとしていられなかった。独りで捜したこともあった。消息が消えた場所を見に行った。しかし何もなかった。アマルティアとは、一体どこにあるのか。

今日も鍛冶を打っていると、ジョーイが駆け込んでくる。


「兄さん!エアル君が二時間後にこちらに来るそうです!」


「エアルがか。アイツとも二年ぶりか…」


タオルで滝のように流れる大粒の汗を拭う。

あれから、進展はあったのだろうか。

エアルはピッタリ…ではないが予定通り二時間後に飛行艦に乗り現れた。連れに、見た事のない男を連れて。


「ジョンさん、ジルさん、ジョーイさん。お久しぶりです。こちらデウトさん」


「ジョンだ。よろしく、デウト。お前さんの事はエアルから来る前に聞いたよ。四百年も生きているんだって?苦労が多いだろう」


ジョンが手を差し出すと、デウトが握手をする。


「改めましてデウトと申します。四百年生きていることを信じてくださった方が驚きを隠せません」


「お前さんの銃を見てな。画像でもかなり年季が入っていると解ったよ。それに、俺達が作った銃でもないこともな。さて…お前さん達が来た理由を、改めて聞かせてくれるか?」


ジョンの一言で、空気が一気に引き締まる。デウトは一歩前へ出ると、アマルティアの戦力、シヴィルノでの出来事。そしてティアマテッタの戦力の差を説明した。そしてテマノスに来てほしいという事を伝える。


「不穏だな」ジョンがぼそりと呟いた。


内心穏やかではなかった。アマルティアの現状を聞き、ますますレイラ達の身の安全を考えた。


「ナノスがそこまで力を付けていたとは…我々が想定したより進歩が早い」


ジョーイはタブレットを見つめ、情報の更新をしている。


「まだ憶測ですが…このタブレットをネイサン家から持ち出せたことはかなり大きいでしょう」


デウトは皆の前でタブレットを見せる。


「それが、ナノスがクローンを造りだしたきっかけのタブレットか」


「はい。この中には我々のルーツも書かれていました。起源…と言ってもいいのかもしれません」


少しピリピリとした空気が柔らかくなる。この会話で大方の説明が終わったからだ。


「はぁ、こういう話は堅苦しくて俺には似合わん!そうだ、エアル。お前の銃をメンテナンスしよう」


「え、今からですか?」


ジルの唐突さに、エアルが驚く。


「善は急げだ。な」


「まぁ…そうですね。しばらくちゃんと見てもらえなかったので。よろしくお願いします」


「エアル君、私達は早急にテマノスに帰らなきゃいけないんですよ」


「まぁまぁ、デウトの旦那。銃のメンテナンスは大事だぜ。それに、奇妙なベルトを着けているな…普通のベルトなのにゴツイ飾りだな。何かに使うのか?」


「いや、これは…」


変身できる、などと口を滑らせれば分解されそうで嫌だった。言葉を濁すが、ジョンも年齢を重ねている。デウトが何を思っているかはお見通しだった。


「なら、先祖が作った銃も見せてほしい」


「注文が多すぎます。我々には時間が無いんです」


デウトはピシャリと伝える。機嫌を損ねてしまったと、ジョンは苦笑いする。


「銃がいくら良くても、使い手がままならないと宝の持ち腐れだ。お前さんの銃を量産するのはきっと無理だろうな」


嘘だ。本当はエアルから到着する前に事前に聞いていたのだ。銃は四百年物のくせが強いこと。そしてベルトは変身し、体中を鎧のようなスーツが包み変わったアイテムであることを。

それを解剖はしないが、どういう作りになっているのか気になって気になって仕方なかった。リアムが訓練中に黒い靄を纏い暴走したことを、エアルを通して知っていた。変身が可能なら、リアムにもチャンスがあるはずだ。何か手掛かりになるかもしれない。…は置いといて、触れるだけでもいい。ちゃんとこの世に存在する最高峰の武器を見てみたかった。


「……では、交換条件はどうでしょうか」


デウトが折れたようだった。


「交換条件?」


「私の故郷であるテマノスに来ていただきたいのです。ここには劣りますが武器を生産できる施設もあります。そして飛行戦艦の発掘を手伝っていただきたいのです」


「ふむ。なるほどな。うーん、暫く時間をくれねぇか?」


「勿論です」


そう言うと、ジョンは事務所に行ってしまった。



マスタング三兄弟は事務所に籠り何やら話し合いをしているらしい。

暇そうにエアルとデウトが椅子に座っていると、リアムより年下くらいの青年が嬉しそうにこちらを見ていた。その視線に気づき、青年と目が合う。するとこれまた嬉しそうに跳ねて近づいて来る。


「エアルさんですよね!ヴェネトラ攻防戦の時に大活躍した!」


キラキラ光る眼差しにエアルは思わず視線を反らした。


「あー、そんな有名人になっちゃってるの?俺」


「そうですとも!かっこよくて、学校を中退してマスタング商会に入社したんです!僕も人を守る武器を作りたいと思って、居てもたってもいられずに!」


「へぇ。なんかレイラみたいな子って多いんだな」


「レイラさんはここではレジェンドです!女性を雇わなかったジョンさんを折らせた根性の持ち主だと!」


「…その言葉、いつか本人に言ってやりな」


少し、寂しげな声色が混ざる。

レイラ達は今、無事なのだろうか。

そんな落ち込みそうなムードを、青年が破る。


「ジョンさん監修のもと、いろんな武器を作ってみたんです!是非見ていください!」


「お、おぉ…」


「まずは大剣!あのコアという男から真似て作ってみたんです。大剣には大剣の方が太刀打ちできる可能性があると思って」


青年が銃に柄をはめ込むと、大剣が黄色く光る。


「どうですか?」


「良いと思うぜ。パワータイプに使ってもらうのがいいかもな」


その他にも武器がわんさか出てきた。竿並みに長い、使う側も一苦労な刀。ハンマー型の武器。コング砲二号と言った武器だ。この青年にレイラが重なる。なんだか、ここには似たものが集まるのかもしれない。



一方、その頃マスタング三兄弟は誰がテマノスへ行くか話し合いをしていた。


「どうする。俺が行くか?」


ジルが言う。しかし、ジョンの表情は晴れない。


「テマノスに…俺達の技術を教えるつもりで行きたい。俺達がいなくなった後でもちゃんと武器商人として成り立つくらいのだ」


「実質テマノス限定の後継者ですか」


「そうだ、ジョーイ。暖簾分けをするつもりで取り組みたい。そして発掘に関してだが、それはジョーイ、お前さんに頼みたい」


「私に、ですか?」


「そうだ。ジョーイなら波風立てずテマノスの住民達とも上手くやっていけるだろうからな」


「解りました。その任務、承りました」


ジョーイが頭を下げる。


「それじゃあ、後継者を育てたいならジョンが行くしかねぇだろ。ここは俺に任せてくれや」


「いいのか、ジル」


どこか心配気のジョンに、ジルは胸を叩いて鼓舞をする。


「ここの社長はジョンだろ。後継者を作りたいなら最も技術も、技量も持っているジョンが行くべきだ。と、俺は思う」


ジルの言うことも解る。だが、技術ならジルだって腕が劣らない。僅差だとすら認めている。人懐っこさで言えば、ジルの方がとっつきやすさがある。古臭い頑固おやじよりも、ジルの方が適任だと思えてくる。


――「ジョンについていけない奴は脱落すればいいのよ」


レイラがまだ入社して間もない頃に言った言葉が、今頭の中に蘇る。

ジョンの指導に嫌気がさして辞める従業員が毎年何人も出る。そのことを気にしていなかった訳ではない。だが、優しく教えることが出来なかった。危険が伴う作業。誰かの命を守り、奪う武器を生産することを解ってほしかった。そんなときにレイラのあの言葉だ。


――「着いてこれた人だけが、誰かを守る技術を継承すればいい」


思わず、振り返った。そこにレイラがいるんじゃないかと思って。

だけど、誰もいない。当たり前だ。

ジョンは、思わずクスリと笑う。


「俺が行こう。テマノスに」


ジョンの選択に、ジルはニッと笑う。


「そうこなくっちゃな!」


事務から出ると、若手の青年に絡まれているエアルとデウトを見つける。


「結論が出たぞ。俺とジョーイがテマノスへ行く」


「…!ありがとうございます」


デウトが頭を下げる。


「いつ出発する。少なくともこっちは時間が欲しい」


「勿論です。万全な準備ができ次第出発します」


「ありがとう。明日には出発できるようにする。今日はゆっくり休んでくれ」


ジョンの言葉に甘えることにする。デウトとエアルは眼が合うと微笑を見せあった。そんな二人の背後から、嬉しそうに微笑む青年が…。


「お泊りということでしたら、もっと武器を見せられますね!」


「いや、もう休憩したいっていうか」


「私も失礼します。では」


「ちょっと、デウトさん!逃げられた…!」


笑顔で作品と言う名の武器を喜々として見せる青年に捕まったエアルは、その日は深夜まで付き合わされることになったことを、デウトは知らない。



デウトは、夜風にあたるために屋上に来ていた。この掘っ立て小屋の増築側が社員寮や客室を兼ねているとは思わなかった。なかなかに子供心をくすぐられてワクワクした。

タブレットを開き、中身を読み漁る。返すまでに、少しでも情報を覚えておきたかった。――まぁ、テマノスにある飛行戦艦にデータが残っているので消失する心配はないのだが――自分の記憶にも残したいと思ったのだ。この膨大なデータを。

月が夜空に浮かぶのは四百年前と変わらないのに。街は姿を変えていく。そんな街を沢山みてきた。マルペルトの時も、昔はあんな国ではなかった。もっと質素で、身体に効く秘湯の里として慎ましく成り立っていた。自分達一族だけが時に残されていくみたいで、少し怖かった。

ナデアもいつか年齢を重ね、自分を残して永遠の眠りにつくのだろう。それが今、一番怖い事だった。


「よう、デウト。一杯どうだい?付き合わないか」


ジョンが酒瓶とコップを二つ持ち込み、現れた。


「嬉しいお誘いですね。お付き合いします」


コップに酒が継がれていく。夜風が気持ちよく頬を撫でていく。工場地帯なだけあり、深夜でも稼働している。その証拠の電気が夜景を美しく照らす。


「そう言えばまだお前さんに見せてもらっていなかったな。銃とベルトを」


「そうでしたね…。約束なので、どうぞ、見てください」


デウトが銃をベルトを渡す。ジョンは眼鏡を掛け、手に取るとまじまじと見つめる。


「変身できるんだって?全身鎧の」


「エアル君に聞いたんですね。鎧だと、どこか重たいイメージですね。スーツ…と言った方が的確かと思います」


鎧ではなくスーツと聞いて増々興味が湧いて来る。


「見せてくれないか?そのスーツの秘密が解れば、多くの人が防御面で安全に戦える」


「解りました」


デウトはベルトを装着すると、「トロープス」と唱える。ベルトから黒い靄がデウトを包み込むと、そこには漆黒のスーツを身に纏ったデウトがいた。


「こりゃすげぇ…たまげたな」


触ってみてもいいかと許可を取ると、ジョンはまるで壊れ物を扱うかのようにそっと触れる。鎧より確かに薄い素材で作られていることは解った。これはきっと、デウトの魔力が形にしている。他の連中にやらせたとしても、魔力切れで一分と持たないだろう。

作り手への尊敬と嫉妬が胸の中で渦を巻く。


「貴方のご先祖様が作ったものですよ、ジョン・マスタング」


「俺の、先祖が?ハハ、なんて技術なんだ…こんなものを作り出す技術が当時にはあったのか」


ジョンは、ある種の絶望に立たされた。スーツを纏おうとするなんて、想像もしなかったからだ。自分の未熟さが嫌になる。スーツではなく、盾を強化することしか頭になかった。


「俺もまだまだだ」


「いえ。この仕組みを解析して、ティアマテッタの軍人を守るのが貴方の役目でしょう」


「解析してもいいのか…?」


「バラされるのは難しいですが…何かヒントになるものがあれば」


「流石にその未知の魔法道具を解体する勇気はねぇな」


二人は同時に笑いあう。


「四百年前のマスタングも、貴方のような人でした。情に厚く、心配性な所があって。我々はルナールからテマノスへ移住するときに餞別として譲り受けたのもなんです」


「そうか…。四百年前なんて遠い過去のようで長い歴史の中じゃああっという間なんだろうな。なぁ、デウト。お前さんにとって四百年はどうだった」


難しい問いかけに、デウトは苦笑いをする。


「今思えばあっという間です。四百年経っていた、と言うべきでしょうか。きっとまた、気が付いていたら百年、二百年もあっという間に過ぎているのかもしれませんね」


それを聞いて、ジョンは申し訳ない質問をしたと後悔した。


――「デウトさんは、呪われています」


エアルから事前に教えられていた。

寿命があることが怖い。永遠に近い、寿命がいつ途絶えるのかも解らないことが怖い。

デウトは変身を解くと、ベルトを再び渡す。


「この武器は四百年間壊れずに相棒として使用しています」


「らしいな」


ジョンはルーペを出し、デウトの銃を隅々まで見る。

美しい造形だった。純正のマジックメタルで作られた、今では作ろうとしても無理な代物。


「リアムの銃のように、他属性の魔力をマガジンボックスに詰め込むことはできるのか?」


「えぇ。テマノスには属性関係なくいろんな人々が生活しています。それこそ、混血の人も」


「混血…?マノンだけじゃあなかったのか」


ジョンが驚く。そりゃそうだろう。混血自体がいることが珍しいことなのだから。


「そうか…なら、俺達が見えている世界は狭いんだな」


「狭い、ですか」


「見えている世界が全てじゃあないってことだ。この歳でも新しい事を知ると、驚くよ。頭は柔軟にしておくもんだな。そうだ、混血の子等に合った銃を作るのもありだな。それには協力してもらわんとならんが」


「きっと、喜ぶと思います」


夢が膨らむ。デウトは、童心に返った気分だった。



翌朝。

デウトと、眠そうなエアルは飛行艦の前で待っていた。


「エアル君、随分眠そうですね」


「あー、あの後武器紹介のオンパレードだったんですよ…」


エアルなりに楽しんだとかと思い、笑みを零す。そしてジョンとジョーイが商会から出て来る。工具に私物と多くの荷物を運んでくる。

その荷物を仕舞い終わると、ジョンはジルに向かう。


「頼んだぞ。何かあったら連絡をくれ」


「あぁ。兄貴達も見知らぬ土地で慣れねぇかもしねぇが、迷惑はかけねぇようにな」


「ジル兄さん…」


辛気臭い空気が流れて来る。それを払拭したのはジョンだった。


「さぁ!マスタング商会の更なる発展のための旅がこれから始まる!お前等も負けねぇように、頬叩いて頑張りな!」


おー!と血気盛んな雄叫びが響き、地鳴りのようになる。


「では、行きましょう。テマノスへ」


原作/Aret

原案/paletteΔ

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