102話・・・過去の扉2
作品を読みにきて頂き感謝です!
タブレットを条件付きで借りることが出来たエアル達は、一旦エマ宅へ帰ることにした。去り際、デウトは何回も感謝していた。自分達を呪った子孫にだ。それをエアルは異様な光景として見ていた。自分なら、呪った相手を許すことなんて出来ない。愛する人たちを殺されているなら、なおさら。デウトの許すという力を見せつけられた。
当主は感謝するのを止めるように言った。寧ろ、呪いが解けなくても申し訳ないとすら口にした。デウトの人柄を、信じたからなのだろうか。四百年の時を得て、たった二人だが。二人しかいないが、ネイサン家とアルフレッド家の和解が生まれたのだ。
(デウトさんは、本当に凄い…俺は、俺はこの人のようになれるだろうか)
守るべきものを守り、憎しみを許すという行為が出来る人間に。
車に乗り込むと、二人は緊張から解放され一気に空気が緩む。
「はあ…!心臓がまだバクバク鳴ってる」
「私もです」
「意外ですね。てっきり平気なのかと思っていました…。とにかく、借りられてよかったですね」
「はい。もう、どうなることか心配でしたが。これで少しでも現状が動けばいいのですが…。私だけしか見られないという枷がどうも邪魔ですね」
「モアさん達に託せない、という問題ですか?」
「そうです。託せてしまえばこちらの物なんですが…。一時的にでも私が研究に参加しないと難しそうです」
「次、テマノスですよね。暫く滞在することになりそうですね」
「えぇ。申し訳ありません。まさか、こんな条件で借りられるとは思っていなかったので。どうにかしてモア達だけでも上手くいけるように考えます」
デウトが申し訳なさそうに頭を下げる。
「気にしないでください。そろそろテマノスに顔を出したいって、思っていたんで」
「そう言っていただけると助かります」
車を走らせ、真っ直ぐ帰宅する。
エマが二人の帰りを待っていたらしく、エンジン音が家の前で止まると、窓から覗き見る。エアルとデウトが降りてくるのを確認すると、思わず駆け出し、玄関まで迎えに行く。ドアが開くなり、エマは叫んだ。
「どうだった?!」
「エマ姉、声がデカいって…勿論、無事成功したぜ」
エアルがピースサインを出すと、エマの表情も和らいだ。
「よかった…もう、どうなるか心配してたんだから!アンタ達が何しようとしているのかは知らないけど?!私の力を借りたいって時は大体危ない綱渡りすることが多いから!」
「悪かったって」
思わず、苦笑いしてしまう。
「喜んでいるところすみません。私は早速休みたいので、お部屋に戻らせていただきます」
「デウトさん…そうですよね、お疲れですよね。あの、あまり根詰めないようにね。お夕飯の時にまた呼びますから」
「はい。ありがとうございます」
エマにお辞儀をすると、デウトは二階にある客室へ戻っていく。
「デウトさんって、貴方と違って随分と大人びた人なのね」
「エマ姉、どういう意味だい?」
「だってそうじゃない。いつまでたっても子供みたいにはしゃいで、喜んだりして。あの人とは歳は離れているみたいだけど…。エアルもあの年齢くらいになれば落ち着くのかしら」
「どういう意味だい?」
思わず二回繰り返して訊いてしまった。
夜。夕飯も終えると、デウトはまた部屋へ戻ってしまった。よほど疲れているのか、何か作業をしているのかは解らなかった。その分、何も出来ない自分が歯がゆく、エアルは眉間に皺を寄せていた。
「エアル。一息つかない?」
「一息って…俺は何もしてないよ」
「何言っているのよ。眉間にふかーい皺寄せて。痕になって取れなくなるわよ」
冗談半分でエマが笑う。
エマの手にはグラスを二個と、いい酒を持ってきてゆっくりしていたエアルの隣に座る。デウトは、部屋に戻ってから夕飯を除いてずっと籠っている。疲れたのか、解析に夢中になっているのかは解らない。
「久しぶりに姉弟だけでお酒でもどう?」
「うぃん…そうだな。いいね、飲もうか」
エマが、グラスにお酒を注ぐ。氷がカラン、といい音を立てる。
「もうリアム達もお酒飲める年齢だよね。今度一緒に飲みたいな」
「今度はリアム達も連れて来るさ」
「きっと、逞しく成長したんだろうね」
「あぁ。心配ないくらい、リアムもミラも心身共に成長したよ」
「そっか。それが聞けて安心した」
静かな時間が流れる。おつまみに用意したナッツを頬張り、クラッカーを食べる。こうやって姉弟でゆっくりするのは本当に久しぶりかもしれない。
会話も懐かしい頃から、今、そして今後のことなどをはなしながら、明るい話題でいい時間を過ごしていると、二階から足音が聞こえる。
ひょこっと現れたのはアイリスだった。改めてみると、背も高くなり、顔立ちもエマに似てきていた。
「お酒、また飲んでるの?」
「おつまみ食べて良いから、アイリスもこっちに来たら?」
エマは立ち上がると、オレンジジュースを用意する。
「炭酸のほうがいい」
「はいはい」
甘味のついた炭酸飲料を用意すると、アイリスはぐびっと飲む。その姿に、仕事で疲れたあとのエマが酒を飲むときとあまりに似ているものだから、エアルは思わず笑ってしまった。
「何笑ってるの?」
「いや。エマ姉の娘だなって」
「当り前じゃん。私はママの子なの。変なこと言って、なんなの。それより…ヘスティアさんとマノンさん連れてきてくれた方が嬉しかった」
「悪かったよ。次は必ず一緒に来る」
「嘘ついたら許さないんだから」
「アイリス。頼み事なのにそんな口の利き方はないでしょう」
そう注意しても、アイリスはどこ吹く風か、おつまみを食べ始めた。エマが、すかさずアイリスのフォローを入れる。
「ごめんなさい。最近、あんな感じなの。大人ぶりたいっていうのか、達観しているというか…」
「それだけ成長してるって訳だろ。気にしてないよ」
「ありがとう。やっぱり、男親もいないと駄目なのかなって…思う時があるの」
「そりゃどうだろうな。ありゃ父親にも同じ態度取るかもしれないぜ」
「そうかな…」
「そうだよ、たぶんな」
大人しく聞いていたアイリスに着火したのか、大声を上げる。
「私、お父さんなんかいらないから!エアル叔父さんも父親面とかしなくて大丈夫だから」
「頼まれてもしないね」
エアルの言葉に、エマはどこか救われた気がした。アイリスには、父親が誰なのか言っていない。死んだとも、生きているかも言っていない。アイリスは賢いのか、父親という存在に興味が無いのか、父親について正体を知りたいとねだることは一度もなかった。もしかしたら、どこかで知っているのかもしれない。
「アイリスに、言わなくていいのか。父親の事」
「言えないわよ」
「そっか」
エアルは、お酒を一気に飲み干した。
それから一夜が明けた。
まだ人々が寝ている静かな朝に、エアルとデウトは出発することにした。
「エマさん、アイリスさん。お世話になりました」
デウトが深々とお辞儀をする。
「こちらこそ。今度は仕事とかじゃなくて、ヘスティアちゃんやマノンちゃん達と一緒に来てよ。待っているから」
「おう。そうするぜ」
「絶対だよ!約束破ったら針千本だからね!」アイリスが必死に懇願する。
「約束する」
車に乗り込むと。エアルが手を振る。そして発進し旅立っていった。
「アイリス。あんな態度や言動は失礼よ。直しなさい」
「だって…。急に久しぶりに帰って来るんだもん。どうすればいいか解らないよ」
「っ…それもそうね」
エアルが平気なら、これからは頻繁に里帰りさせようかと、本気で悩むエマだった。
車中にて。エアルは気になっていたことをデウトに投げかけていた。
「どうですか?この世界について何か解ったことはありますか?」
「いえ、まだです。古代文字の解析をしていて、そこまでは到達出来ていません」
「古代文字か…モアさん達も骨を折っているって言っていましたね」
「えぇ。文献が残っていないので…。ひとまずは、アマルティア…ナノスに対抗できる何かを見つけるのが先になりそうです」
これから。飛行艦に戻ったらテマノス…混血の村に向かう。デウト以外が見てはならないという枷があるなか、どうやって解析するのか、エアルは不安が尽きなかった。
飛行艦の中でも、デウトは解析に没頭していた。やはり、エマ宅でも解析に苦戦していたらしい。
「デウトさん、根詰めすぎじゃあないですか。少し休憩した方が…」
「いえ。マルペルトを見たら、そんな悠長にしていられなくて。少しでもヒントになる物を得るためです。どうってことありません」
何かにとり憑かれたように熱中するデウトに、ナノスが重なった。彼も、こんな風にデータを貪るように読み解き、クローンを生む技術を得たのだろうか。怖くなり、エアルは思わず口にした。
「まるで、ナノスを見ているようです」
「…っ、そう、ですね…。言われてみれば、そうかもしれません。休憩します。明日にはテマノスに着くので、解析はモアに頼みましょう」
「そうですよ。俺達に必要なのは今休むことです」
デウトを纏う空気が、いつもの彼のように優しい雰囲気で包まれる。正直、安堵した。これでまだ解析を続ける、と否定されたらエアルは狼狽えただろう。
「コーヒーを淹れましょう。エアル君はブラックでいいですか?」
「はい。ありがとうございます」
翌日のことだった。
一報が入る。――シヴィルノの国王がクーデターにより死亡――
その報告を受けて、エアルは腰が抜けた。この短期間で、国王が死亡する事件が立て続けに起きていることに。
「一体…世界はどうなってるんだよ!」
エアルは訳が分からず、思わず髪を乱暴に掻く。
「アマルティアの仕業でしょう。以前、ソイルが意味深な放送をしたと聞きましたが…それに触発されて暴動が起きている。それが事実かと」
「クソ!俺は、一体何やってんだ!」
「アマルティアに勝つために行動しているんです」
その言葉にハッとなる。そうだ。戦場に出ることが役立つだけじゃない。こうやって、どうしたらアマルティアに大きな一撃を与えるか行動することも重要な役割だ。それに、きっとリアム達が駆けつけているはず。それなら心配ない…。
「今出来ることを、我々はしなければなりません」
「はい」
その言葉に、エアルは深呼吸をし、落ち着きを取り戻す。
数時間もすると、テマノス付近に着陸する。
デウト達はどこにもよらず、一直線にモアの家へ向かう。
「モア、居ますか?」
インターホンを鳴らし続けると、物凄く迷惑そうな顔をしたモアが覗き出て来る。
「デウト…?帰って来るなら連絡くらい入れたらどうだい」
「すみません。そんな場合ではなくて」
「どういう意味だい?」
「シヴィルノの国王が殺害されました。裏でアマルティアが関わっているはずです。我々が持っている情報を皆に共有したい」
「またアマルティアかい。本当に厄介な連中だね」
煙草をふかし、火を消すとモアがコートを羽織る。
「ついてきな。これから集会所で話し合いの場を設けるから」
モアの呼びかけで、集会所には呪いにかかった人々が集まっていた。殆どが、モアと同い年くらいだった。
席に着くと、モアを中心に話が進む。
「それで。持っている情報ってなんだい?」
「実は…ゼーロの街に行き、タブレットを借りてきました。条件付きで、私のみが見ることが条件で」
ゼーロ、と出た瞬間、モア達がざわめきだす。
「ゼーロだと?!デウト、お前は四〇〇年前に何をされたか解っているのかい?!アイツ等がしたことは悪魔と変わらないよ!」
「タブレットってまさか、ネイサン家に頭を下げに行ったんじゃあないだろうな!」
アルフレッド家の血を引く皆が、烈火の如く怒り始める。その表情からも読み取れるように、彼等、彼女等は未だ根に持っている。いや、消したくても消えないのだ。怒りが。あまりにも腸を煮えくり返している彼等に、エアルは狼狽え、デウトを見守るしか出来ない。
「皆の言う通り、ネイサン家に行き、頭を下げてきました。それも、これも、全てはアマルティア殲滅の為です。そのためなら、私は恥を掻いてでも行きます。しかし、私だけが恥を掻いたわけではありません。現当主は、呪いを解いてやれなくてすまないと頭を下げたのです」
その言葉に、一同が言葉を詰まらせた。
「責めるなら、過去の王を責め、今はどうか…和解や許せとはいいません。ただ、必要な時は現当主に声を掛ける必要性があることを、覚えておいてください」
デウトの真剣な眼差しに、モア達は押し黙ってしまう。それだけ、デウトから覚悟を受け取ったのだ。
「…それで、どうするんだい?タブレットを、私達が見ることは許されないんだろう?」
「まぁ、そうですが。モア達は気にしないでください。とりあえず、今日はこのことだけを話したかっただけです。積もる話は、また明日話させてください。私も整理したいことがあるので。解散と言うことで。そして、モアは残ってください」
そう言われると、長老たちは皆帰っていく。モアだけが残り、先ほどの怒りも少々落ち着いてきた様子だった。
「モア、ありがとうございます。実は、明日皆に話す前にモアに先に知っていてほしいことがあるんです。飛行戦艦発掘所で会えないでしょうか?」
「それなら、夜からなら空いているよ」
「なら、その時間に合わせます」
「エアル君も、一緒に来てほしいんです」
「解りました」
エアルは少々緊張した面持ちで頷いた。このデウトとモアの関係性を考えると、自分が会話の中に入る…しかも飛行戦艦に関わるかもしれない会話となると、背筋が自然と伸びた。
デウトは、久ぶりに実家に帰って来て、窓を開けて空気の入れ替えをする。いない間の管理は、モアやその弟子がやっていてくれた。
「あの、デウトさん。デウトさんはモアさんを凄く信頼しているんですね」
「えぇ。彼女とは、呪いを掛けられる前から親交がありましたからね。モアには絶対的な信頼を寄せている同志です。今後のアマルティアの戦いにも必要な戦力になります。それに、今後の戦艦発掘がどうなるかは、彼女の指揮にかかっています。なので、一足先にモアに…モアだから話しておきたいことがあるのです」
デウトの真剣な話に、エアルは頷いた。
「確かにモアさんの力は目を見張るものがあります。ヘスティアを鍛え上げた実力…。若返ったり…まぁ、結局はばぁさんに戻るんですけどね」
冗談で笑うと、デウトに睨まれる。
「そういう事を言うから、アイリスさんに嫌われるんじゃあないんですか」
「あ、はい…無神経でした」
はぁ、と思い溜息を吐かれてしまい、エアルは失言を酷く後悔した。
「きっと、エマ姉は俺のこういうところを心配しているんでしょうね」
エアルの言葉に、デウトが首を傾げた。
「エマさんに何か言われたんですか?」
「まぁ。エマ姉に言わせれば、俺はまだ子供じみているらしいです。心当たりがありすぎて。ミニカーが本物の車になっていじったり、銃のおもちゃが本物になって銃を握るようになって。性格もこんな感じで。デウトさんくらいの年齢になれば落ち着くのかなって。小言と言うか、言われたんです」
その話を聞いて、デウトは思わず笑い声を上げてしまう。
「馬鹿にしてますか?!」
「いえ。流石姉弟らしい会話だと思いまして。それを言えば、モアから見たら私も子供じみているらしいですよ。正義のヒーローに明け暮れる少年らしいです」
「デウトさんにそんなこと言うんですか?!」
「言いますよ。四百歳を超えている私も言われるんです。あまり気にしなくて平気ですよ」
「はは…それを聞いて、なんか安心しました」
街中を、そんな何気ない会話をしながら歩いていると一人の子供が声を上げる。
「あ、デウトさんだ!」
「え、本当だ!ねぇ、また銃の扱い方教えてよ!」
「デウトさんが帰ってきた!久しぶりだね!」
一気に子供が駆け寄って来る。
子供達に囲まれる光景を見て、エアルはやっと心落ち着くのであった。
夜になり、発掘所へ向かう。早めに出たつもりだったが、そこには既にモアが待っていた。
「女を待たせるんじゃあないよ」
「すみません。待たせました」
「立ち入った話なんだろう?今日は発掘作業班の皆は帰した。中へ入ろう」
エレベーターに乗り込み、降下する。その間は長い沈黙が流れる。
エアルは何故か気まずくなる。勝手にモアはお喋りが好きな部類だと思っていたからだ。ヘスティアに随分と目を掛けていた印象があった。あーだ、こーだ話していた記憶があった。だから、エレベーターの中でもわいわいすると思っていたら沈黙だ。
(早くブリッジに着いてくれ…!)
やっと、ブリッジに着く。
「さて、何から話しましょうか」
「ゼーロの話はもうしなくていいからね」
「…解っています。条件付きでタブレットを借りられたと言いましたよね」
「名前を上げなきゃ話してもいいと言っていないよ」
モアはどこか、苦し気に言う。ネイサン現当主の話を聞いて、心が揺らいでいるようだ。
「聞いて下さい。現在我々はアマルティアに大分遅れを取っています。その切り札になるのがこのタブレットだと私は考えています。まずはこの戦艦を動かすために、タブレットの中身をインストールしようと思います。そしてこの飛行戦艦のブラックボックスを解析してこの大陸で起こったことを知れれば、私達が成すべき行動も自ずと見えてくるはずです」
「ちょ?!タブレットはデウトさんのみ閲覧するって約束じゃあ!」
慌ててエアルが止めに入る。しかし、デウトは平常だった。
「タブレットを直ではなく、画面に映せばいいでしょう」
「何を屁理屈みたいなこといってんですか…」
抜け穴を見つけ方に少々脳筋さが垣間見えた。
モアは呆れながら壁にもたれかかる。
デウトはブリッジからコントロールを探し出し、タブレットと同期させようと動き出す。少しすると見つかったらしく、そこにケーブルを差し込む。メインモニターが映りだし、室内が明るくなる。そして操作し、戦艦にシステムの一部をインストールする。するとルナールの言語が連なるが、読めない。
デウトは古代語をタブレットで現代語に変換できないか操作を続けるとシステムが現代語へと訳していく。
「デウトさん、やりましたね!」
「まだこれからです」
暫く静寂が続く。ピンと糸を張ったように、緊張が走る。
『システム認証。システム認証。オカエリナサイマセ、ランドルフ様』
「ランドルフだって?!」
「当り前だろう。これはメイヤーズ王女からランドルフ家に寄贈されたものなんだから。もう忘れたのかい?」
「いや、覚えてますけど…つい」
「全く。子供だねぇ」
モアの言葉に少しムッとする。
「ケンカをしている場合ではありません。これで過去の事が少しでも解るかもしれません。操縦できれば、無理矢理地上に引き出すことも出来るかもしれない」
「そんなことをして、故障や破損でもしたら私はお前を許さないからね」
「まぁ…大丈夫でしょう」
デウトは、そう言うとデータのコピーを終えていた。全てのデータをコピーしたのだ。ちゃっかりと。そして、ここはしたたかだった。モアにしか閲覧できないようにパスワードを設けたのだ。
「これで古代文字の解析もはかどるでしょう。ブラックボックスの解析もよろしくお願いします」
「アンタって男は…」
渋々と、どこか顔が引きつり笑顔を見せるモアであった。
原作/Aret
原案/paletteΔ




