表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
102/113

100話・・・シヴィルノ・戦闘3

作品を読みにきて頂き感謝です。


ついに100話まで行きました。

読んでいただいている皆さんのおかげです!

これからも書き続けていきます。

応援よろしくお願いします!

マノンは城内を慎重に駆け抜けていた。どこでクーデター軍と遭遇するか解らないから。この先にソイルがいると思うと緊張のせいか、心臓の音が耳にまで響く。

一旦足を止め、深呼吸をすると外から爆撃が多発する。


「なに…?!」


大窓硝子から外を見ると、百メートル離れた所で人影が見える。ゾーイとマシュー。そして戦っている相手は…四姉妹だ。


(四姉妹までいるの…!?どうする、リアムはブラッド大尉に合流しているはず…ここで私も合流すればソイルにかなり有利になる。ソイルを殺せば、四姉妹も戦いを止めるかもしれない)


迷っている時間は無い。マノンは歯を食いしばると再び足を進めた。



ゾーイとマシューは窮地に立たされていた。二人で四姉妹を相手にするには不利だった。ゾーイはライフルを解除し銃にし、射撃に徹底する。


「こいつ等狙いが定まらない!」


「落ち着いて!」


マシューはピアノ線で攻撃を謀るが、金属性の姉妹が次々に円盤の付いた棒を出現させ、逃げる姉妹が雑技団のようにしなやかに円盤の上を回転し、クルクルと降り、登りを繰り返し引っかからない。


「そんな目立つ太さのピアノ線で攻撃なんかしても私達にはお見通しですよぉ」


ゾーイが落下時を狙い地面に兼山のような氷を張り巡らせるが、棒の上に居る姉妹が落ちてくることは無い。レイラ達の時とはレベルが違うことを、二人は知らない。ただ、一般人であったレイラ達にも倒せたという情報だけで必死になっていた。


「オメェ等自分のことで必死過ぎて術中に嵌ってるの気づいてる?」


エリーニュは種明かしが出来た子供のようにはしゃぐのを、メイラが鋭い視線で見つめていた。


(この姉妹…特に大剣を持っている子は不和を覚えてる…)


残りの三人に何かしらいい感情を持っていないのだ。つまりは、メイラを追って行けば逆転できる可能性が僅かにある。


「ゾーイ、一旦ここから離れよう」


「でもどうやって?!私達彼女達に囲まれちゃったわよ?!」


「諦めなかったから、勝利の女神が来てくれたよ」


マシューが可笑しくなったと思ったが、どうやら勝利の女神はまだ采配を決めあぐねているようだった。


「マシュー!ゾーイ!」


マノンが崩壊した建物から飛び出すと、黒い雷が四姉妹に落下する。


「キャー!」


「ガッ…?!」


痙攣と魔力量がお幅に減少した姉妹たちはスタンしたまま動けないでいる。


「今のうちに!ブースト!」


マノンは二人を抱えると、円の真ん中に居たマシューとゾーイを外側へ連れ出す。


「マノン、無事だったのね!」


「じゃあ、王女救出は?!」


「大成功だよ!」


グッ、と親指を立てると、二人は力が抜け、地面に座り込む。


「よかった…足止めしようと、必死で」


「じゃあ、遠慮なく行こう。もう守る者は守られているから」


マノンの一言で、二人の瞳に光が宿る。


「何が足止めだ…?何が遠慮だよ!負け犬がよぉ!」


その瞬間、エリーニュの胴体が真っ二つに切断される。吐血し、辛うじて意識のある中で必死に考える。


(なんだ?何が起きたんだよ…!なんで私の身体が…下半身が目の前に堕ちてんだよ)


「お姉ちゃん!」アレークが叫ぶ。


エリーニュを切断した正体はマシューの人を切断できる最小限の細さに、ゾーイの水の威力を兼ね備えたものだった。その威力は目に見えなくても、見えたとしても気づいたらよけきれないほどのものだった。


「マノン!」


「オッケー!」


マノンが最大出力の魔力を銃に込め、引き金を引くと氷山が残りの姉妹を閉じ込めようと襲い掛かって来る。


「いやぁ!助けて、ティーシ、メイラ!」


逃げ切ったティーシとメイラに助けを求めたのはアレークだった。両足が巻き込まれ、身動きが取れないようだった。


「いや…死にたくないよ!死にたくない…!」


「どうしよう、ティーシ…」


メイラが狼狽えながら支持を待つ。急がないと、マノン達の攻撃がまた来る。


「メイラ、酷な事言うけど、頼める?」



マノン達が捉えてあるであろう側面に来た時には、下半身と氷山に残された両足だけが残っていた。


「四姉妹はどこ…?」


「多分、撤退したんだと思う」


マシューが足に触れると、まだ生暖かさはあった。綺麗な切断面からして、メイラが切断したのだろう。


「一応、時間稼ぎはできた…でいいのかしら」


「多分」マノンが神妙な面持ちで言う。


「ここ周辺を探索しよう。これだけの出血量がここくらいしか垂れていないから、空間移動装置で撤退した可能性はあるけど…二人だけ残っているかもしれない」


「そうね」


ゾーイとマシューが銃を構え歩き出す。マノンも二人を追うが、モヤモヤが払拭出来なかった。メイラのことだ。死んだ姉妹がまたクローンとして蘇り、記憶を共有されていない姉達をどう思っているのか。これは可能性だが、メイラは過去に対峙した時とは変わっているだろう。姉妹たちにですら、残酷な判断が出来るようになっているかもしれない。


「マノン、大丈夫?」


ゾーイが心配そうに尋ねて来る。


「ごめん、ちょっと考え事してて…」


「先にモルガン大佐の所に戻る?」


「ううん。私も一緒に行く」


その後、いくら探しても四姉妹は見つからなかった。



嫌な過去を思い出した。一度、コアから大剣を借りて振り下ろそうとしたことがあった。その剣は重く、まだ子供だったシレノは逆に自分が尻もちをつく展開となり、恥ずかしかったことがあった。剣こそ使えど、大剣を選ばなくなった。


(なんで今こんなこと思い出してんだよ!)


鳥の巣…枝の壁がじわじわと迫ってくる中、コアは大剣を振りかざし、振り回しシレノの攻撃を全て跳ねのける。シレノは意地でも剣を離さなかった。剣が手から離れたら死ぬしか道がないのと、プライドの問題だった。


「余裕が無いみたいだな!」


「わぁ!」


満身創痍なのに、またコアに押されて吹き飛ぶ。無数の枝がシレノの背中に傷を付ける。深いものから浅いものまで。回転し、シレノを飲み込んでいく。


(クソ!ここから出ないと…!)


剣で枝を切り、何とか外へ出る。


「こちら側に戻って来るのか。逃げようと思えば外側へ行けたはずなのに」


「はっ。ここで尻尾撒いて逃げた方が面白くないだろ?それに…仲間が責務を果たしてくれているから。俺はここでアンタを足止めするんだ」


「その心意気…幼き頃より成長したな」


「何父親みたいなことほざいてんだよ!」


シレノが指笛を吹くと、上空から鋭利な樹木がミサイルのように降って来る。コアはそれを大剣で素早く切り身の安全を確保していく。上空にはシレノが作り出した龍が飛んでいる。


「うおお!」


少しでも勝率を上げるために、シレノは木が降る中コアに立ち向かっていく。こちらの相手をすれば、樹木を切る暇もなくなる。

しかし、コアは怪物だ。シレノを相手にしながらも木を切っていくのだ。


(クソ、ふざけんなよ!化物か、こいつは!)


「シレノ、お前が軍に入ったのは俺への復讐が目的だろう。だが今はそれが感じられない。一体お前をここまで奮い立たせている物はなんだ?」


「復讐が感じられない?それはお前の勘が衰えただけなんじゃあないのか!」


シレノは、エンキ動揺、地面に剣を刺し龍の頭部を無数出現させる。コアを食い、中で摺り潰す作戦に出るが、コアを飲み込めたと思うと、頭部が破壊されコアが無傷で出てくる。その繰り返しだ。


(復讐心が足りないのは、今俺がこの作戦に従っているからだ。コアは知らなくていい、知られたら不味いくらいに重大な任務なんだ!)


反撃…会心の一撃を食らわすなら、コアが頭部を破壊し無防備になった瞬間だろう。シレノは剣を構え、龍に食われたコアが出てくるタイミングを見計らう。


そして


「何度も同じ手を使うと見極められるぞ…、?!」


コアが目にしたものは、シレノが間近におり、自身に向かって剣を刺そうとしている光景だった。しかし、簡単に攻撃を許す男ではない。コアは拳でシレノを殴ると、シレノの顎に当たり、脳震盪を起こす。気絶したシレノは鳥の巣の中へ消えていく。


「…ここは剣で立ち向かうべきだっただろうか」


シレノの魔力が尽きたのか、龍も、鳥の巣も枯れて脆くなり、ぼろぼろと崩れ落ちる。コアは倒れているシレノに近づく。

ボロボロになり、丹精な顔には無数の傷跡。いくら頑丈な軍服と言えども、千切れ、出血していた。それまでにあの鳥の巣は殺人に特化した技だと、コアは思った。



モルガンはうろうろと、らしくないことをしていた。


「ブレイズ達はまだか?!」


「GPSによるともうすぐ着くかと」


部下がモルガンの苛立ちに怯えながら答える。

すると、ブレイズが手を振る姿が目視でとれる。


「ブレイズ氏!クレア王女は?!」


居ても経ってもいられず、モルガンは思わず駆け出し、ブレイズに尋ねる。


「いますよ、ちゃんと」


ブレイズの後ろに、ローラに手を貸すクレアと、エンキに担がれたユーリがいた。

つまり、第一の作戦が成功したのだ。


「クレア・クレークと申します。助けていただいた御恩、決して忘れません」


その言葉に、作戦会議場はどっと沸いた。


「よかった…!本当にご無事でなによりです。そうだ、貴女に会いたがっている人物もいるのですよ」


「私に、ですか?」


不思議そうにしていると、テントから現れたのはシアだった。マノンを送った後、戦っていたクレアたちより先に着いたのだった。


「クレア様!」


「シア!良かった、無事で、本当に…!」


ローラが、クレアの背中をそっと押す。意図を汲み取ったクレアは、シアに駆け寄り抱擁した。


「よかった…もう、家族と呼べる人は貴女しかいないの…貴女に何かあったら…私」


「何があっても、貴女の下へ帰ります」


その言葉が嬉しくて、ぎゅぅっと強く抱きしめた。


「後はブラッド達がソイル殺害を成功させれば…。誰だ!?」


モルガンの突然の叫びに、緊迫が走る。しかし、怪しい人物はいない。いるのは、気絶しているシレノだけだった。


「シレノ!」ブレイズが慌てて駆けつける。


「ブレイズ氏、待つんだ!顎に怪我をした痕跡がある。脳震盪を起こしているかもしれない。救護班!」


駆けつけた救護班が、慎重にシレノの手当と状態を見ていく。


「今の彼の状態では一人でここまで来られません」


救護班が困惑する。


「あぁ…おそらく、誰かがここまで運んだのだろう」


「報告が、大佐」ブレイズが小走りで隣に立つ。


「どうした?」


「アマルティアに、見た事の無い顔の女がいました。高慢そうで、高飛車というか…空間移動装置から現れたので、ナノスに近い人間なのかと…」


「解った。報告ありがとう」


マルペルト及びシルヴィノにおいて。マルペルトの時は雑魚兵を空間移動装置に送り込み、悍ましい出来事を起こした。戦力になりそうな兵士は飛行艦で到来。シルヴィノでは空間移動装置のみで、市民と私営軍隊に頼った戦法を取っていた。

予想するに、空間移動できる者はある程度の力を持っていないと死ぬ…ことだろうか。

ブレイズがナノスに近い人物というのは凡そ合っているだろう。


(気配はあった。だがすぐに消えた)


モルガンはシレノが置かれていた場所を凝視していると、木片があった。


「これは…私のでもシレノの物でもない。コアだ」


「コアが?!コアって、入隊試験の時に…」


もの言いたげなブレイズだったが、思い出したように黙る。あの時自分はその場にいなかったが、マノンの父・ネストが殺害された際は悼むように撤退したとエアルが言っていた。そして過去、シレノがコアに懐いていたことが解った。

シレノは敗れた。しかしコアの何かに触れて殺されずに魔力により運ばれてきたのだ。


「おーい!」


重い空気を破った明るい声は、マノン達であった。


「よかった、クレア達無事に来れたんだね。戦うって言われた時焦ったけど…」


「マノン女史、それは事実かな?!エンキも含め後で会議室に召集しよう!」


モルガンが血管を浮かばせながら大笑いする。ブレイズに肘鉄を食らうマノン。思わず睨み返す。


「三人とも、大きな怪我が無いようで安心したよ」


「マノンが来てくれたので。なんとかなりました」


マシューが笑顔で答えるが、頬に出来た傷が響いたのか、頬を押さえ痛がる素振りを見せた。


「私達が相手をした四姉妹のうち二人は死亡、或いは重傷です。辺りを捜したのですがいませんでした」


「そうか。おそらく空間移動装置で帰った…たぶんな。後はリアム氏とブラッドが帰ってくればいいのだが」



ソイルは玉座に座り、国王の生首を置かれたテーブルを眺めていた。

国民を騙すのは簡単だった。王妃を慕っていた嘘と、国王が他国を攻めてマジックメタルを確保しようとした事実。その二つを意味深に話せば、印象操作は驚くほど上手くいった。


「呆気ないな、王よ。次は私が王になろう。国民は鎮圧されているが関係ない。私が王となればまた強き国になる」


満足気に笑うと、異変に気付くが遅かった。

天井から射撃が行われる。それは数秒、数分、十数分だったかもしれない。辺りは硝煙弾雨となり視界が悪くなる。

リアムとブラッドだ。ブラッドの合図でぽっかりと空いた穴からソイル殺害を成功させるため、ブラッドがゴーサインを抱いた瞬間だった。

ウゴオオオオオオオ

腹の底に響くようなうめき声と、地鳴り、そして城が破壊され巨大ゴーレムが出現する。


「残念だったな、ティアマテッタ軍!」


外へはじき出されたリアムの首根っこを掴んだブラッドは氷の橋を生成しそこに立つ。


「作戦変更だ、まずはゴーレムをどうにかする!」


「了解!」


「私が足場を作る、行けるか?」


「行けますとも!」


「甘いぞ、若造共!」


ソイルが叫ぶと、無数の人間サイズのゴーレムが城内からわんさかと溢れ出てくる。


「クソ!これじゃあ市民が!」


すると氷柱張りが空から降り、ゴーレムを攻撃していく。上空を見上げるとマノン、ゾーイ、マシューの三人が、モルガンが生み出したドラゴンに乗り応援に駆け付けたのだった。


「ちっこいのは任せて!」


「リアム君と大尉は巨大ゴーレムに集中してください!」


「軽傷の私達が駆けつけたんだからちゃんと倒しなさいよ」


「ありがたい応援だな」リアムは思わず笑みが出た。


「行くぞ、リアム!」


「はい!」


ブラッドが氷の道を作りだし、リアムがゴーレムに向かい走り出す。ゴーレムがリアムを潰そうと腕を振るが、大きさのせいもあり俊敏には動けない。リアムが避ける間に新しい道を作るのは造作もない。振り下ろした時には誰もいない道。破壊される氷の道。


「おっせぇんだよ!」


頭部に向かい魔弾を放つ。当たっても一発二発では消滅しない。それも想定のうちだ。


「貴様等に負けるなどあり得ないのだよ!」


ソイルが巨大ゴーレムの肩に乗る。


「それは勝利の女神が決めることだ!」


ちょこまかと動くリアムに、苛立ちが募るソイルは、ゴーレムから土の砲弾を発射させる。


「うわぁ!」


吹き飛んだリアムを、透かさずドラゴンがキャッチする。


「大丈夫、リアム!」


「サンキュー!マノン!」


「大尉を一人にしないで、早く行きなさいよ」


ゾーイが毒づく。


「はいはい」


リアムは肩を竦めると、ドラゴンの手から飛び降りる。


「いっけぇえええええ!」


空に向かい魔弾を放つと、雷が落ちる。


「ぐあぁあああ!」


「まだだ!」


ブラッドが叫ぶと氷山が巨大ゴーレムの胸部分を貫通する。これで身動きが取れなくなった。リアムはすかさず銃から剣へ変え、腕を切り落とす。再生する前にブラッドが切り落とされた部位を氷漬けにする。


「あの二人、意外と良いコンビかもしれないわね」


「どうだか」マシューがどこか妬くように言う。


「先輩方、お喋りもいいけど手を動かしてね」


「はぁい」


「了解だよ」


マノン達も人サイズのゴーレムに向かい銃弾の雨を降らせる。

そんな姿を見ていた市民たちが、徐々に正気を取り戻していく。


「俺達…間違えていたんじゃないのか?」


「ソイルに騙されたってこと…」


「ティアマテッタ軍だけに守ってもらっていて良いのか?」


「自分の国だぞ。戦えなくても…戦うしかないだだろ!」


銃を持つ市民たちが立ち上がり、ゴーレムに向かい射撃を開始する。


「嘘!皆どうしちゃったの?!」


「正常な判断が出来るようになったんじゃない?」


ゾーイがニヤッと笑う。


「このままリアム君達の援護するよ!」


「了解!」


リアムが走る氷の道を作りながら戦うブラッドも、市民の力がこちら側に向いていることをすぐに把握した。


「リアム、お前はソイルを狙え!」


「え、でも!」


「大丈夫だ、行け!」


ブラッドの睨んだ通り、ソイルは国民が目を覚ましティアマテッタ側に付いた光景に髪の毛を搔き乱しながら怒り狂っていた。


「何故だ!ただ茫然としていればいいものを!こうなったら市民もろとも死ね!」


「そうはさせねぇよ!」


リアムが切りかかると、ソイルも剣を盾にし、刃同士がキリキリと鳴る。


「どうだ、裏切られた気分は?!叔父の仇…絶対に取る!」


「まだネストのことを引きずっていたのか!腹を抱えて笑えるな!」


「殺された側は、ずっと忘れられねぇで生き続けるんだよ!簡単に人を殺すお前等には分からねぇかもしれねぇけどな!それでも生きて、いつか裁きを受ける日を待っているんだ!叔父と…国王の裁きを、今俺が下す!」


「片腹痛い!」


ソイルに弾かれ、リアムが落下する。が、ブラッドが道をまた作る。


「部下だけに全てを押し付ける上司だと思うなよ!」


最大の魔力を込め、ブラッドが巨大ゴーレムに引き金を引く。するとゴーレムが徐々に固まり始め、霜が発生する。


「リアム!」


「はい!」


剣を掲げると、雷が落ちる。落ちたゴーレムは、霜で柔らかくなっていたためボロボロと崩壊する。


「なんだと?!」


ソイルは道を作ると城内へ逃げていく。


「逃がすか!」


巨大ゴーレムが崩壊すると、歓声が上がる。その声が更にソイルを苛立たせる。


「クソ!」


ソイルは三発の魔弾をゴーレムの群れに撃ち込む。


「私に構うより、時限爆弾式のゴーレムを捜すんだな!」


「ふざけるな!戦え、ソイル!」


「クハハハハ!」


ソイルは空間移動装置を発動させ、姿を消す。


「待て、逃げるな!」


リアムが斬りかかろうとするが、遅かった。ソイルは最悪の置き土産を残し消えていった。


「大尉!」


「あの逃げだし野郎め。マシュー!」


ブラッドが叫ぶと、マシューが身を乗り出す。


「ゴーレムの群れの中に爆弾を仕掛けられた奴が三体いる!音で解らないか試してほしい!」


「解りました!」


「リアム、特定出来るまで虱潰し出行くぞ!マガジンボックスを貸せ。水属性の魔力で氷漬けにしていくぞ」


「はい!」


銃に変え、リアムとブラッドがゴーレムを撃っていく。上空からゾーイとマノンも狙撃する。撃たれたゴーレムは氷漬けになり止まっていく。


「爆弾付きのゴーレムの見分けがあればアイズでもいけるのに!」


ゾーイが焦りを見せる。

そもそも、何分で爆破するか解らない。タイムリミットが見えない。今爆発するかもしれないし、十分後かもしれない。威力も解らない。狙撃していいのかもわからない。どこに仕掛けられている?心臓部分?足?氷漬けにしても銃弾が当たったら、止められるのか?恐怖がゾーイを襲う。


「ゾーイ、僕を信じて」


「マシュー…」


「イヤーズ」


マシューがスキルを発動する。市民が避難する声、足音。ゴーレムが氷漬けになり生命活動を停止する音。銃声の音。僅かに、針を通すような音が聞こえる。金属がぶつかり合うような音。

そもそも、土魔法だけで爆発するのは難しい。それこそ、火属性でなければ。


「臭い…もしかしたら発酵して爆発するかもしれない。そのゴーレムの中に殺傷能力の高い破片が入っているかも!」


「臭い?!ますます危ないじゃない!」


「だから、その金属音を頼りに僕が指示するからゾーイが撃つんだ、目印を。そうすればリアム君達がどうにかしてくれる。無属性の魔法で」


「…わかった。貴方を信じる」


「ありがとう。ドラゴン、もう少し下を滑空してほしい!」


マシューに言われ、ドラゴンは人々とぶつからないギリギリを跳び始める。


「マシューだけにかっこいいところ見せられるかよ。イヤーズ!」


マシュー程ではないが、リアムもイヤーズが使える。一人より二人で捜した方が圧倒的に早い。


「ねぇ、どこかから臭いがする!風上の方から!」マノンが叫ぶ。


ドラゴンが風上の方へ飛行する。すると、キンキンと音が強くなる。


「アイツだ!ゾーイ!」


「絶対に当ててやるわ」


ライフルを構え、マシューが指定したゴーレムに魔弾を放つ。それは見事辺り、運動機能を停止させる。


「リアム!」


「いっけぇええええええ!」


リアムはゾーイが印たゴーレムに無属性魔法の魔弾を撃ち込む。ゴーレムは魔力を吸い取られ土へと返る。それは確かに発酵した臭いで、中にはマキビシがびっしりと敷き詰められていた。


「あと二体!」


「四時の方向に一体!」


「了解!」


リアム達の必死さを見た市民たちが、また立ち上がる。


「臭いのするゴーレムを見つけるんだ!」


「こっちに臭いがする奴がいるぞ!」


「そいつだ、リアム君!」


市民たちが剣でゴーレムの行く手を阻む。自らの危険と引き換えに。


「もう大丈夫、退いてください!」


魔弾を放ち、土へと返す。今度は釘が入っていた。


「あと最後!」


リアムが叫ぶ。


「どこだ…どこにいる。なんで音がしない!」


「マシュー、最後の一体、見つけたわよ」


最後の一体…それは城内におり、箱を大事そうに抱えている。おそらく爆弾だろう。あれが本物の、火属性のエルドから渡っていたモノだったら、城事爆破させ被害を出すつもりなのだろう。


「リアム君!城内に爆弾がある!」


「わかったぜ!全部魔力吸い取ってやる!」


集中し、魔弾を撃つ。ゴーレムに命中するが爆弾だけが残る。ドラゴンからマリューとゾーイが城内へ降りる。箱には、火属性の魔法が掛けられていた。それを、ゾーイが魔弾を撃つと水にぬれて発火装置が湿気り、魔力が感じられなくなった。


「マシュー、ゾーイ…」


マノンが不安そうに呟く。


「終わった…」


マシューが、思わず腰を抜かした。その様子を見たマノンが、雄叫びを上げる。


「終わったよ、リアム!ブラッド大尉!」


「はは…もう、疲れた」


「緊張ものだな」


終わりを告げられると、市民はどっと歓喜に沸いた。


原作/ARET

原産/paletteΔ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ