表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETENITY00  作者: Aret
4章・・・不調和
101/113

99話・・・シヴィルノ・戦闘2

作品を読みにきていただき感謝です!

土煙が舞う中、エンキは部下の名前を叫ぶ。しかし、二名の部下からの返事はない。


「ローラ、ユーリ、どこだ!ゲホ!」


咳き込むと、吐血する。今にも崩れ落ちて、地面に倒れたかった。だが、軍人としてのプライドが許さない。死ぬまでたち続けろと。

砂埃が落ち着き始めると、捜していた部下達が見える。


「おい、二人共、しっかりしろ!」


ローラとユーリは気絶していた。二人共、頭を打ったのだろう。そして、四肢が骨折しているのが解る。あの腕に摺り潰されていないだけ幸運だったのかもしれない。


「部下の二人は殺し損ねちゃった…とかじゃなくて、アンタを倒して捕まえた後に、目の前で、ちゃんと、しっかりと部下が死ぬ瞬間を見せつけてやるんだ。どう?素敵でしょう?」


建物の上から、クロノがクスクスと笑い見下してくる。


「もう魔力をくれる部下はいないよ」


「クロノ、どうやって捕まえようか?」


「鬼ごっこにする?」


「それ、楽しそう!」


エンキは、二人の状態を確認する。そして双子がまだ二人に興味があるかを見極める。


「…捕まえてみろよ」


「当り前だろう!さぁ、鬼ごっこの時間だよ!」


走り出すと、双子はローラ達を無視してエンキ目掛けて駆けてくる。予想は当たった。このまま双子をおびき寄せればローラ達の安全は確保される。


(気絶から早く目覚めろよ…!)


背後から双子の笑い声が背中にビシビシと伝わる。


「アハハハハ!鬼ごっこ楽しいねぇ。あと十秒で捕まえられなかったらアンタの部下の所へ戻ろうか。そうしたらどうする?アイオ」


「殺しちゃおうよ、クロノ。きっと悔いると思う、自分が逃げたせいで部下を見殺しにしたことを」


「いい案だね。じゃあ、そうしようか」


ふざけたことをしやがって。そうエンキは腹を立て、走るのを止めて振り返る。


「そうはさせるかよ、クソガキ共が!」


「三人でも手一杯だったのに一人でやるつもり?」アイオが不気味に笑う。


「部下思いだね…自分を犠牲にするなんて、なんて素晴らしい隊長なのだろう!」


残り少ない魔力でどう戦う。節約して勝てる相手じゃないことは解っている。相打ち覚悟でエンキが剣を握りしめたその時だった。


「エンキ大尉を勝手に殉職させんじゃねぇよ!」


「足りないのなら、私達が加勢します!」


エンキの前に現れたのは、ブレイズとクレア王女だった。


「なっ!?ブレイズ、どういうことだ!王女を連れて早く大佐の所へ!」


「これは私が懇願したのです。さぁ、早く攻撃を」


クレアはエンキの剣に触れると、栄養剤のようにドクドクと魔力が伝わって来る。

そう。クレアは戦闘こそ出来ないが、魔力量はシアをも上回っていた。土属性の彼女が木属性のエンキに着けば、また戦えるとブレイズは考えた。まぁ、最初はシアを連れて来る手はずだったのだが、クレアの曲がらない希望で連れてきたのだ。


「ごちゃごちゃ五月蠅いなぁ!でもソイル様から王女も殺せって命令が出ているから探す手間が省けたよ!」


またもや同じ策で来るようで、双子は銃に手を添える。


「クレア、持ってエンキ大尉を援護しろ!」


「は、はい!」


ブレイズは銃をクレアに投げつけた。それを慌てて広い上げ、クレアは地面に向かい引き金を引く。


「この国を守って見せる、お父様…お母様の為にも!」


エンキの足元がぐわりと盛り上がる。土が溢れ、豊かな物である香りが鼻を掠める。


「王女、恩に切ります!続きをやるぞ、ガキ共!」


エンキは再び龍の頭部を八頭生やし攻撃を仕掛ける。しかし今回はそれだけではない。ブレイズがこちらに向かってくるのだ。


「クロノ、どうしよう!」


「大丈夫、この腕には勝てないよ」


「無属性だろうと関係ねぇんだよ!」


豪快に剣を回し、炎の鳥が翼を開き、双子に突進してくる。


「無駄だ!」


「いけええええ!」


無属性の腕と火属性の技がぶつかった瞬間、相殺が成立し爆風が起き、瓦礫や街を更に破壊していく。しかし、ただ壊れただけではない。


「熱い!熱いよ、クロノ!」


「クソ…たれがぁ!」


双子は爆発の影響で重度の熱傷を負っていた。


「まだ終わっていないぞ!」


目の前には、龍の頭部が迫っていた。



口の中に閉じ込められたクロノとアイオは焦っていた。


「クロノ、クロノ。苦しいよ」


「大丈夫、今助けるから」


そう言っても、もう魔力は少ない。いや、無いに等しい。このままでは二人共死ぬ運命が待っている。


「…アイオ、アイオは俺の事忘れないでくれる?」


「忘れないよ。死ぬ時も一緒だか、あああああああああああああああああ!」


アイオが激痛に耐えられず断末魔を叫ぶ。


「アイオ!」


「痛い!痛い痛い痛い痛い、痛い!クロノ、助けて」


げぼっと、アイオが吐血する。肋骨からもバキバキと音が聞こえる。まだ、舌の上にいるクロノが、次の番だろう。


「アイオ、手を伸ばして!」


嫌だ


「手…動かない」


嫌だ、嫌だ


「大丈夫!必ず助かるから!お父様に直してもらおう、そうしたらまた一緒に過ごそう」


嫌だ、もう嫌だ。こんなこと二度と御免だ。

ふらふらと手を伸ばすアイオを掴み取ると、力業で上まで引き上げる。


「ッ?!アイオ!」


アイオの下半身は潰れ、両足は膝から下が無かった。腹に枝が刺さったのか、内臓が飛び出し続けている。


「アイオ、アイオ、そんな!」


僕が育てた…!僕だけのアイオ!そんな、嘘だ、殺されたくない、殺していいのは、俺だけだ!



一方、エンキ達は静かになった龍の頭部を見て緊張の面持ちでいた。

……

………


「来る」


エンキの一言でブレイズは龍の頭部ごと破壊しようと技を出す。しかし、攻撃が届く前に、頭部は木っ端みじんとなった。


「よくも、よくもアイオを殺したな」


手や口にべったりと赤い血液が着き、怒り狂った目をしたクロノが現れる。抱きしめていながら貪るのは…アイオの死体だった。


「お前等のせいでアイオが死んだ!お前等のせいだああああ!」


クロノから黒い靄が全身を包み、素顔を見えなくする。ゲリラ訓練の時に、リアムに起きた現象と似ている、もしかしたら同じだったかもしれない。


(クソ!あれにはブラッドも手古摺ったんだぞ!王女を守りながら、戦えるのか?!)


「迷いは捨ててください!私は貴方の後ろでサポートします!」


「王女、しかし!」


「大尉、今は勝つことが優先でしょう!」


ブレイズが笑う姿に、まだ入隊した手の頃の自分が重なる。無鉄砲で、前線に出たがりの、ひよっこだった。だが、敵を倒すことに、鎮圧させたときの使命を果たした瞬間、市民を守り抜いた時の感情。今まで忘れていた。あの頃は、守るために全力を尽くしていた。


「ブレイズ、王女!俺に力を貸せ!」


「おうよ!」


「…!はい!」


エンキは八頭の龍を三頭に絞り、魔力分散が少なくなるようにコントロールする。そしてその三頭には、クレアから送られる魔力が血液循環のように、ドクドクと魔力を吸い上げる。ブレイズも外側から火災旋風を起こし、逃げ道を塞いでいく。


「アイオヲ、マタ殺されタ!」


一頭の龍がクロノを食おうと頭上から攻めるが、あと一歩のところでクロノから鉄槌を食らい破壊される。


「ドウだ!オ前タチを殺シて、マタ…またぁあああ!」


辛うじて自我があるようだった。しかし同情などしない。エンキの龍はまた再生し、クロノを噛み殺す、或いは摺り潰し殺そうと躍起になり追い立てる。


「シツコイんだヨォオオオ!」


クロノが襲い掛かる龍を拳で破壊しようとした時だった。


「は…?」


右腕が、無くなっている。


「何?ドウシテ?!ハッ、あの女か!」


手品の正体はクレアだった。エンキが攻撃を仕掛ける際、一頭にクレアの魔力を他二頭よりも多く供給しているのだ。そのお陰で魔力クラスはエンキ側が強くなり、エンキは魔力不足をカバーでき、クレアの緻密な魔力量供給に助けられながらも戦闘を維持できていた。さらにはブレイズだ。ブレイズは龍の背を駆け抜け、攻撃を仕掛けてくる。飛び道具として火の雨がクロノを襲う。


「熱い、熱イ!クソ、クソ!」


「ブレイズ!」


「了解!」


三頭だった龍が、一頭の龍に統一される。そしてブレイズは自ら龍の口へ落ちていく。


「ブレイズ様?!」クレアが心配の声を上げる。


「信じてください、王女。止めを刺すぞおお!」


エンキの迫力に、クレアは自然と手が動き、地面に魔力を供給していた。そして、龍の胴体がみるみるマグマのような色味が刺し、そして

龍が口を開けると、炎が吐かれる。クロノの周りは炎の海と化し、火が体に移り熱傷で苦しんでいる。


「イヤだ、嫌だ、死にたくない!死んだら、もうアイオと会えない!」


焼き尽くされるなか、クロノは生まれた頃を思い出していた。

試験管から代用子宮、円形型のカプセルの中で生まれ、育った。同時に生まれたのがクロノとアイオだった。怒りやすくて、悪ガキなアイオが煩わしかったけど、たった一人の兄弟だから。アイオのために妥協して、アイオの機嫌を見て操作したこともあった。どれも、今となっては過去のこと。

新しいアイオの調教を任せてもらい、大人しいアイオの性格にすることに成功した。アイオは自分達が同時に生まれた双子だと信じ、純粋にクロエを慕った。どっちもアイオだ。クローンなんだから。でも、クロノにとってはさっきまで隣にいた大人しいアイオは代理品なのだ。代わりのおもちゃを、大事にして最期まで過ごそうとしていたのに。


「アイオ…」


炎の煙のせいで、呼吸がしにくくなる。


(俺が死んだら、地獄でアイオと会えるのかな…それなら、死ぬのも悪くないな)


意識が遠のく。その時だ。

空間移動装置が目の前に現れる。そして、そこから出てきたのは――レンだった。

ブレイズはレンの特徴や性格をリアムから聞いていた。だが、この時ブレイズは彼女がレンだとは一ミリも思わなかった。聞いていた印象と真逆の女が現れたのだから。


「クロノ。ナノス様が撤退せよとのことです」


もう、クロノを覆う黒い靄は無い。息も絶え絶えに呟く。


「ここで、死にたい」


「ナノス様のご意思を変える訳にはいきません」


レンはクロノの首根っこを掴むと、そのまま引きずりこみ、裂けていた空間が元通りに戻る。

静まり返る戦場に、クレアは初めての戦闘で、終わったことに安堵したのか、または緊張が解けたのか地面に座り込んでしまった。


「やったの…ですか?」


ドサッとエンキが仰向けに倒れる。


「大尉!」


「エンキ様、大丈夫ですか?!」


「あぁ…久しぶりに、無茶したぜ」


豪快に笑うエンキに、ブレイズとクレアもついつられて笑ってしまう。


「ユーリ先輩達の所に戻りましょう。で、回収したらモルガン大佐がいる飛行艦へ。クレアも。解ったな?」

「はい、勿論そのつもりでおりますよ」


ブレイズはエンキに肩を貸し、ユーリ達が倒れている場所へと向かい始めた。



一方、マノンとシアはソイルと対峙するためにブラッド班と合流しようと街中を走っていた。


「また隠し通路から戻れば追手も気づかずに入れるはずです」


「ありがとう、シア。また危険な目に合わせて」


「いえ。私の本来の役目ですから」


「案内が終わったら、モルガン大佐が待つ飛行艦へ向かって。いいね」


「はい。…正直悔しいです。これくらいしかお役に立てなくて」


シアが下唇を噛む。そんな彼女の横顔を、マノンはどう言葉を掛ければいいのかあぐねていた。

数十分前のことだ。

エンキがピンチだと悟ったブレイズが木属性と相性の良い土属性のシアと戦闘に向かおうとしたところからだ。その会話を遮ったのがクレアだった。


「魔力量は、私の方が上です。タンクとしてなら、後方から援護できます」


「クレア様!危険すぎます!ここは私が向かいます」


「シア、最善を尽くしたいの。守れる可能性が高い方を選んで」


「クレア様…」


正直、クレアの方が役割としては最適だった。城で教わった練習がクレアに合っていたのか、戦闘経験が無いにもかかわらずB++。シアはB+。


「お父様の仇を…人の手を借りてでもいいから取りたいの」


「…解りました」


「ありがとう、シア。いつもわがままを聞いてくれてありがとう」


クレアは、シアを抱きしめた。


「話は決まったな」


「はい」


「いいか?銃は撃った後の反動が来るからひっくり返らないようにな」


「承知しております」


こうしてクレアとブレイズはエンキ達の方へ向かったのだ。

そして残ったマノンは、ソイルと対峙するために城へ向かうことにしたのだった。


「私のわがままも聞いてくれてありがとう」


「マノン様のお父上もソイルに殺されたと聞いたら…無視できません」


「シアは。どうしてクレアの影武者になったの?」


そう尋ねても、シアは走る足を止めなかった。


「私は孤児です。顔立ちが似ていることから大臣家の養子になり影武者として、護衛として育てられました。だから、クレア様を守る以外の人生が考えられないのです」


「シア…」


「さ、着きましたよ」


先程逃げ道とした地下通路に繋がる隠し扉の前に立つ。


「シア。ティアマテッタに着いたら沢山話をしよう。友人として」


「マノン様…ありがとうございます。ご武運を」


「ちゃんと逃げるんだよ」


マノンが扉を潜る。シアは笑顔で見送った。


「どうか…神様、クレア様を、マノン様をお守り下さい」


祈りを捧げると、シアは言われた通り国外で待つモルガンの下へ走り出した。



「こちらシレノ、エリア二三の鎮圧化成功しました」


『了解。引き続き頼む』


「はい」


モルガンに無線で報告する。


「ふぅ…。一人でやるのも骨が折れるな」


リアムにカッコつけた手前、デモを起こしている住民を温和に解決するべく奮闘していた。二年前なら力業で住民を押さえつけていたであろう。だけどそれじゃあ住民の心までは落ち着かせることが出来ない。シレノは住民が本来の正常さを取り戻すまで声を張り上げ、脅し、鎮圧していった。反乱していた住民は心が挫け、今では大人しく地べたに座り項垂れている。


(あともう少しで終わる)


次のエリア鎮圧へ向かう時だった。雷がピシャッと落ちる。辺りは悲鳴を上げ、騒然とする。


「なんだ?!」


驚き、土煙が上がる中、目を凝らす。

目の前の空間が歪んでいる気がした。


「今すぐ避難しろ!」


シレノの言っている言葉を理解するのに、民間人は時間がかかる。周りは不思議そうに首を傾げる。


「落雷で火事だ!」


そう叫ぶと人々はやっと理解し逃げ惑い始める。


「風が吹く方へ逃げるんだ!」


時空が歪んでいると思ったのは正しかった。ここに居るだけで肌の産毛が立つ。時空の裂け目から歩き出てきた人物に、シレノは眼を見開く。


「良き戦士として成長したようだな、シレノ」


「コア…!」


シレノが剣を構える。

コアが時空の裂け目から現れると、さらに人々が混乱の渦に陥る。


「まさか再び会うことになるとは思わなかったぞ」


「俺もそう思ったよ…」


姿を現す。父を殺した張本人が。もう、十二年以上も前だろうか。それよりも前?そんなことどうでもいい。今シレノには復讐のチャンスが巡ってきているのだから。思わず笑みが零れる。


「ここで会ったってことは神様がくれたチャンスってことだよね。お前を殺すために今日まで生きてきた」


「嬉しい言葉だ!あの日、お前を最高の戦士にする前にダビンに感づかれたからな。シレノ。お前がどれだけ強くなったか見せてみろ!」


「俺はお前に惹かれたことが人生最大の黒歴史だよ!」


シレノが剣を地面に突きつけると龍が出現し、翼を広げ、空洞から響くような雄叫びを上げる。さらに狼の群れを出現させ、コアに突っ走っていく。一匹がコアの腕に噛みつけば、他の狼等も襲い掛かる。しかしコアの腕力を舐めてはいけない。腕を振り回せば、狼等はキャンと鳴き投げ飛ばされる。


「まだだ!」


上空を飛行していた龍が口から鋭利に尖った樹木の破片を浴びせる。

しかしコアの大剣が、身を守る盾にもなりなかなか命中とは行かない。シレノはコアが防御に徹しているのをいい事に、自らも樹木が降る中に突撃しコアの致命傷を狙い、剣を振るおうと走る。樹木の雨の中、器用に避けながら。


「自身の分身ともいえる龍、狼をよくここまで扱うな。だが甘い!」


剣がコアの首を掠めそうになったとき、大剣が瞬時に間に入り防御される。


「ッチ!」


「シレノ。俺への復讐心で本来の戦いが出来ていないんじゃないか?」


「人の分析してる暇があんなら自分の心配しろ!」


背後から狼の群れがコアを襲う。うち一匹が、コアの首に噛みつくことに成功する。


「ふむ…怒りの中上手くコントロールは出来るようだな」


コアは大きく体を回転させると噛みついていた狼を振り払い、シレノごと吹き飛ばすほどの腕力と力を見せつける。


(クソ!冷静にならないといけないのに頭に血が上って怒りが独り歩きし過ぎて何も考えられねぇ)


腹の底からぐつぐつとマグマが燃える様な感覚。殺したい感情。憎しみの感情。全てが混ざり気持ち悪い。


――「マシューの事なんだけど」


こんな時に、ゾーイから相談された記憶が蘇る。


「マシュー君がどうかしたの?」


それは一年前くらいだろうか。たまたまゾーイと休憩時間が重なり、グラウンドの日陰で休んでいたときの事だった。


「…生き急いでいるっていうか、強くなろうと必死な気がして…。いつか仲間のために命を落とすんじゃないかって心配なの」


「気のせい…とは言えないね」


「特に、ブラッド大尉と何かあるとよく爪を齧るのよ。これって一種の自傷行為に入るのかしら」


「多分…?」


「こんなストレス発散方法なんていけないわよね」


「いけないね」


――「どうにかしないと…」


冷静になるには――


シレノはポケットから小型ナイフを取り出すと、二の腕に突き刺した。この行動には、コアも驚いた。

痛みが体中に急激に走る。そして傷口がジンジンと痛み出す。不思議だった。痛みで怒りが引いていく気がした。


「ッ痛…!」


「何を馬鹿げたことをしている。そんなことをしてもどうにもならんぞ」


「たとえ一時的な事でも…お前を殺すためならそれでもいい」


痛みを消すように、深呼吸をすると、シレノは剣を指揮棒のように前へ掲げる。


「行くぞ!」


また狼等がコアに向かい走り出す。そして地面からは根が生え、狼と共闘するようにコアに向かい急激に成長する。狼がコアを噛み殺そうと致命傷を狙おうと動き回る。そこを邪魔せずに木の根が急所を刺そうとうねうねとうねり、さらにコアの動きを封じようと囲っていく。コアが大剣で振り払っても根は再生していく。


(逃げ場がないなら上から)


コアが大木を生やし上逃れると、龍に乗ったシレノが待ち構えていた。


「上に逃げても無駄だ!」


「ほう…少しはまともになってきたようだな」


シレノがコアに飛び掛かり、二人は落下する。そしてまた狼と根が構える未曾有の中へ戻っていく。


「お前をここで殺す!」


シレノが更なる攻撃を開始する。鳥の巣のように枝が重なりあい出来た壁が逃げ道を塞ぐ。


「お前がその気なら、俺もするまでだ!」


コアも、同じように棘が生えた枝を出現させ、行き場をどんどんと縮めていく。


「どっちが最初に死ぬか耐久しようぜ、コア!」


「望むところだ、シレノ!」



モルガンの所に、ブレイズ達が無事到着していた。

ユーリとローラは医療班に手当を受けている。エンキ達はモルガンに報告している最中だった。


「クローンの双子…入隊試験の時に紛れ込んでいた奴だろう。他にはいたか?」


「はい。時空の裂け目から回収される際に女が現れました」


「時空の裂け目が現れたのか?!これは…もしかすると…援軍が来ているかもしれないぞ。ドローンに確認させろ」


モルガンの指示で、情報収集班がドローンで隈なく援軍を捜す。


「ところで、その女とはどのような風貌だった?」


エンキとブレイズは顔を見合わせると、言い辛そうに口が重くなる。察したクレアが代わりに説明する。


「金髪なので金属性で、まるで…自分が女性として武器になることが解っているような風貌でした。品があるようで、だけど娼婦のような…口調は崩れてなくて、なんというか…」


「そうか。ありがとう」


モルガンは嫌な予感がしていた。クローン四姉妹なら、クレアが抱くような印象はないはずだ。そうなると、ナノスの新しい部下なのか。それとも…二年前に捕虜として捕まっている、所在不明のレン・ラードナーなのか…。


原作/ARET

原案/paletteΔ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ