15.その日の彼女と彼女
今回はシャオ視点で。
その日の夜、シャオは一人は山丘の先端で佇んでいた。
「はぁ…負けたのね…」
自分の人生の中で引き分けることはあれど、"負け"という感覚は初めての感覚であった。
当たり前ではある。私たちの生業は、自らの命を賭して相手の命を奪う事。
ましてや梁山泊になるという事は、上から順に単純に負け続けなかった者達が名乗るもの。
負けるということは、死ぬ事として生きてきた。
だけど何故だろう、不思議と気分は晴れやかである。
思い浮かぶのは、アタシを負かしたアイツの顔。
最初はただのへらへらした奴かと思ったけど、相対するとすぐに分かる。
人を殺す目つき。スッと深く落ちていくような表情。
それがまたあの顔つきに似合ってるものだから、思い返す胸が熱くなってくる。
「なんか変な感じ、誰かに興味を持つなんて。」
理屈は分かっている。自分より強い男がいた。そんな奴に口説かれた。
自分から吹っ掛けたこととは言え、自分が女だと強く実感する。
こんなにもあっさり誰かに心を開いてしまいたいと思った自分に。
そしてそんな奴について行ってみたいと思った自分に。
そうして何度目か分からない、火照った体を鎮めるような不思議と心地いいため息をついた折、
後方から小さく静かな響きながら、不思議と聞き取れる声が響いた。
「こんなところに負け犬がいる……」
「はぁ!?誰よ失礼な奴!」
確認するまでもなく声の正体は分かった。
隣の里で梁山泊に入るであろう奴。
アタシがただの一度も勝てなかった奴。もちろん負けてもないけど。
何考えてるのか分からないけど、こうやってちょっかいかけてくる奴。
赤なのかピンクなのかよくわからない髪で、いつもボケっとした顔の奴。
名前はニュウって奴。まぁ……強い奴。
「あっさり負けて結婚の約束したらしい雑魚はどこ…?」
「…へぇ?奇遇ね?そんな雑魚にまだ勝ててない雑魚をアタシも探してるの。」
無言の時間が続く。
「…それで?そんなに強いの…?」
「アンタも戦えば分かるわよ。剛も柔もあんなに使える奴、今の梁山泊でもアタシは知らない。」
「へぇ…それで惚れたんだ?…………チョロい」
「最後の方よく聞こえなかったわぁ!!もう一回はっきり言ってもらえる!!」
「別に聞こえなかったのならいい…。……かっこよかったの?」
「まぁね。それなりよ。って!アンタも手出すんじゃないわよ!」
「それは会ってみないと分からない…。でも興味はある…。」
「アンタ益々いい度胸ね。いいわ。今ここで決着をつけましょう。」
「別に構わない…。あ…でもお腹すいたから帰る……。」
そう言うとニュウはあっさりと踵を返した。
「はぁ!?ッほんっとに勝手なヤツ!」
毒気が抜かれたアタシは、ますます深いため息をついた。
まぁいい。今日は本当に機嫌がいい。
今は次会う時のアイツの顔を思い受けべるだけで心が熱くなる。
そんなことを考えていたら、不思議と夜は更けていった。
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