だいすきなあなたへ
とつぜんのおてがみ、しつれいします。
わたしのことをおぼえていますか?
あなたは、まだちいさかつたころにわたしをひろい、たからものとよんでくれました。
わたしのことをたからものとよんでくれたのは、あなただけでした。
あのころのあなたは、まるでほうせきをみるかのようにわたしをみてくれていました。
おとうさんやおかあさん、おとなたちはみんな、わたしのことをたからものだとはおもつてくれませんでした。
わたしは、もともとたからものでもなんでもない、どこにでもあるものでした。
だけど、あなたがわたしをひろつて、たからものとよんでくれたとき、わたしはほんとうにうれしかつたのをおぼえています。
あなたが、わたしのことをじまんげにはなしてくれたこと、わたしのことをいちにちじゆうみつめてうれしそうにしていたこと、いまでもきのうのことのようにおもいだします。
ときがたつにつれ、あなたはわたしからきようみをなくしました。
しようじきとてもつらかつたのをおぼえています。
でも、それがいつかくることはかくごしていました。
それが、おとなになるということだと、わたしはしつていたからです。
あなたはいつしか、たくさんのともだちができて、がつこうにもいくようになつて、そしてりつぱなゆめをいだくようになりましたね。
そして、わたしのことをおもいだすことはなくなりましたね。
あれからどれくらいのじかんがたつたのでしようか。
あなたのおともだちは、いまもいつしよにあそんでくれていますか?
あなたは、いまもがんばつてべんきようしていますか?
あなたのゆめは、いまもかわつていませんか?
いまのあなたにとつて、たからものはなんですか?
もし、あなたがわたしのことをおもいだしてくれたら、あなたのたからものをみせてください。
そのたからものを、わたしにじまんしてください。
どんなものだとしても、あなたがたからものだというのなら、それはきつとすてきなものなのでしよう。
あなたはいま、どこでなにをしていますか?
わたしのことを、おぼえていますか?
―あなたのたからものより