魔眼を作ろうその1
さて、課題も終わったし新しいスキルでも作ろうかな。
別に春斗さんに頼まれているわけでもないけど、
前からやってみたい奴があるんだよな……
まぁゲームに熱中する程度には俺自身オタクだと思っている。
というか大学生にもなって絶賛厨二病がまだ治っていないのだ。
みなさんは一度はやった事があるだろうか?
妄想による自分だけのオリジナルの必殺技だ。
俺は妄想で技を使う事が頻繁にある重度の患者なのだ。
例えば映画を観た帰りとか、その登場人物のカッコいい技を見たらそれを妄想上の自分が使っていたりする。そんな痛い妄想の産物が俺の生活費になっているのだから人生は分からんものだ。
さて、脱線したが作ってみたいスキルだ。
もうここまで語れば同じ患者の諸君には分かってもらえるだろうか。
そう
――魔眼だ。
目の模様が変わりそこから発動するスキルというのは現状のアナスフィではなかったはず。だれもなぜやらないのか。
そういうスキルがないから?
それもある。
だから作るのだから。
でも一番の問題はそこじゃない。目に装備する武器なんてないのだ。
ゆえにそこの問題についてずっと考えていた。
そうだ。
英語の課題をギリギリ遅らせ春斗さんのイベントを生で見損ねる程度には悩んでいた。
まず目の装備について最初に考えたのは義眼だ。
それなら装備とも言えるのではないだろうか。
でもこれは結論からいって無理だった。
アナスフィはリアルスキンによるアバター製作をしている。
つまり義眼を作ろうと思ったら眼球が邪魔なのだ。
グロイ話だけどね。
アバターの欠損はバトル中のみ適応されるが常時欠損する事は出来ない。
仮に元々義眼を付けているプレイヤーがいれば話は違うだろうが、
それを探すつもりもない。
だって、俺自身が使えないなんてつまらないし。
だから、眼鏡かコンタクトの2種類という事になる。
ただ、魔眼特有?のエフェクトは絶対に入れたいから眼鏡はだめだ。
レンズ全体に映ってしまう。
―――――そこで考えたのはコンタクトを使うという事。
それが俺のたどり着いた結論だ。
では、ゲーム内でコンタクトを作る事は可能か?
視力に影響される必要はない。用は眼球にかぶせることが出来ればよいのだ。
これを解決するためまずはコンタクト作りから始めている。
「さて、試作5号はどんな様子かな?」
今俺はアナスフィゲーム内にあるヘイスシティに来ている。
アナスフィはメインで使うコロシアム以外に都市がいくつか存在している。
というよりこの都市がバカみたいにでかいのだ。
売り文句をそのまま言ってしまうとオーストラリアと同じ面積があるらしい。
え? 都市だけで? バカじゃないの? なんて最初は思った。
俺は数年前にこのゲームを始めたときほんきでそう思った。
都市区間は転送機を使っての移動になるが、
もちろんある程度のエリア事にサーバーを分けておりシームレスに繋がった都市ではないが、
それでも広大な場所である。
ちなみにこのゲームのメインはPvPではあるが、
クラフト目的で遊んでいる人もかなり多いのだ。
もちろんコロシアムに当てたクラフトが多いが、
単純に自分の家を思い通りに建築したり土地を購入しそこに木や川などを設置して遊んでいるプレイヤーもいる。
他のゲームと違いダンジョンのようなものはないため、
生産作業をしていれえばランクも上がり、
様々な素材をNPCから購入できるのだ。
これにより戦闘が苦手でもクラフト目的で始めるユーザーも多いとの事。
さて脱線してしまったが、
俺が向かっているのは俺の知り合いの生産職のプレイヤーだ。
主にアクセサリーを作っている男なのだが、
これが中々手先が器用で俺の発注を良く受けてくれる。
「あら、テイクじゃない? 待ってたわよ」
プレイヤーネーム エリザベス。
上半身をむき出しにした細マッチョの変態であり、俺の友人でもある。
ちなみにテイクとは俺のゲーム時の名前だ。
「エリー。さっそく見せてくれないか?」
俺はエリザベスの工房へ入りさっそく目当ての装備について質問した。
「あらいやね。もう少しお話しましょうよ」
「いや、早くみたいんだよ。ホレ、ハリーハリー」
もうせっかちねと妙に身体をクネクネさせながら手に収まる箱をインベトリより出現させ、それを手渡してきた。慎重に俺はその小箱を取り蓋を開ける。
その中には現実世界でもよく見るカラーコンタクトがあった。
「おぉー…………
これ装備扱い的にはどうなった?」
「アクセサリー系で登録してあるわ。
装備も問題なく出来たわね。あ、言っておくけど防御力なんてないわよ?」
俺は試しに装備してみた。ゲームでも自分の眼球に入れるのは勇気がいるな。
「うん、上手く装備できてるな。視界も特に変わってないし」
「まぁ、その辺は普通のコンタクトだからねぇ。
でもゲーム内で作るのは苦労したわぁ」
オーバーリアクションで泣きまねしているエリザベスを無視してコンタクトを外した。
「おし、これで大丈夫! 報酬はいつ通りでいいか?」
「ええ、今回はいつもの装備と違って苦労したから奮発してほしいわぁ」
「じゃあ、アーシェスに頼んでコロシアムの特待チケットを複数貰っておくよ」
「いやん、ありがとう!」
ええい、抱きつくな!!
俺はエリザベスの抱擁を避けた。
ここからは俺の出番だ。