闇落ちスキル
大吾 Side
「大吾君、正直に言おうか」
どこか神妙な声をスマホ越しにしてくる春斗に大吾は思わず、
息を呑んだ。
「あぁ、ごめんなさい。
やっぱイメージあるから無理ですよね……」
「大吾君!!!
そういうの大好物なのでぜひ! お願いします!!」
「やっぱ! 春斗さんやで!!」
そんな馬鹿なやり取りを深夜にしている大吾であった。
大吾が住むアパートは壁が狭いため近隣住民に多大な迷惑を
掛けていることは容易に想像できた。
「でだ、まじめな話できるのかい?
イメージとかあるのかな?」
「実は試しに組み立ててるのがあるんですよ。
イメージとしてはスキル発動後に、装備の色味を黒、紫、赤をメインにしたものに
変更し、うっすら闇っぽいオーラでも纏わせようかと思ってます。
ちなみにこれ、短剣を闇落ちスキルにしたやつですので見てください」
そうしてPCから春斗宛てにひとつのムービーデータを送る。
これは魔眼スキルを作った後にすぐ勢いで作ったスキルの仮バージョンだ。
SCを用いて作ってみたが、これはまだ運営に申請は出せていない。
「どれどれ…………。
おぉー!!! やっぱり大吾君の作るスキルは面白いね!
これをアーシェスでやれば確かに面白い!」
春斗のいう面白いとはバトルが盛り上がるという意味が多分に含まれている。
それゆえ、スキルの見た目に極振りしても春斗は喜んでくれていた。
「――――ただ問題がありましてね」
「あぁ、なるほど。これオルスとフィーネの協力がいるんだね?」
そうだ。
これは言わば換装スキルの変化版なのである。
闇のオーラっぽい物で一度装備を纏い、その隙に装備を換装、
そしてオーラを継続して纏うという状況のままにする。
そうすれば闇落ちっぽいスキルの完成だ。
「うん、どうかな?」
「なるほどね、いつもは作ったスキルを嬉々として持ってくるのに、
どうして今回は事前にネタを話したのかと思ったよ。
うん、大丈夫。一回相談してみるね。
じゃあ、段取り取れたら全員で打ち合わせしようか。
いいね。なんだか楽しくなってきたな!」
春斗のテンションが上がってきているのが良く分かる大吾は、
せっかくなのでスキル効果について欲しいものがあるか聞く事にした。
「その場合スキルの効果はどういうのがいいですか?
それに合わせてこっちで代償は考えるので、
希望でいいから教えてほしいですね」
「そうだね。基本は聖なるオーラと同じでいいよ。
あれなら対した代償がないと思うけどどうかな?」
「聖なるオーラだけならそうでもないですが、
今回は換装スキルも併用するので、
多分使用後、以後バトル中は換装不可とか、
自動解除とかその辺で運営に打診してみようかと思います」
「なるほど、でもその程度なら全然許容範囲内だね。
さすがに魔眼スキル並みの代償が着くのはしんどいからね……」
「大丈夫ですよ。
あ、闇落ちスキル使用後はスキルの色味も全部変えるので、
それでいいですよね?」
「もちろんだ!」
「じゃあ、打ち合わせの日が決まったら教えてください。
平日は夜なら平気ですが、昼とかでしたら土日にして頂けると助かります」
「大丈夫だよ。その辺りはもちろん配慮するから安心してね」
「助かります。では連絡待ってますので!」
「OK,じゃあまた後でね」
そうして春斗と大吾の通話は終了した。
(新しいスキル! やっぱり作るのは楽しいな)
大吾はそう改めて思い、プレゼン用のスキル制作を進めることにした。
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