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「止めなさい、我が娘。余たちを守ってくれた神族という少年に何を言い出す?」

「父上! しかし!」


 声が聞こえた途端、フォーカス以外エルフの衛兵たち全員が膝を立てて頭を下げた。

 ボクも見様見真似でやると、お母さんが横に落ちた。

 お母さんは気絶しているかのように白目をむいて動かない。


「隣にいるのも神族なのか?」


 貫禄のある声の主がお母さんを見てボクに訊いてきた。


 貫禄のある声の人は、頭に王冠らしきものを被っている。

 緑を基調としている上下の服装、所々に黄金色のボタンなどの装飾がある。

 何故か、フォーカスと同じで脚にはツルを巻いている。


 何処かで見たことがある人だなと思いながら、ボクは問いに答えた。


「はい、ボクの母です。ところであなた様がここに……?」

「どうして余の名前で呼ばないのか理由を申してみよ。神族なら知っていそうなのに、其方は知らぬということはなかろう。もし知らぬというなら、分かっているな……?」


 殺気を放ちながらフォーカスのお父さんは聞いてきた。

 エルフの衛兵たちが槍を取り出している。

 ここでボクは先程フォーカスがお父さんと言ったことを思い出す。


 うん、待てよ。

 フォーカスがお父さんって言ったよな?

 だったら、英雄シーフでいいんだよな。


 フォーカスのお父さんであることでボクは、彼女がよく言っていた自慢話を思い出した。

 疑いの目で周りに見られていることに気付いて、咄嗟にボクは言い直した。


「いえ、失礼いたしました、エルフの英雄ソーフ様。あなた様の伝説は耳に入っております。ですが、直接お目にかかったことはありませんでしたので……」


 ソーフ様は現在のエルフの長である。

 フーゴさんと一緒に冒険をしたこともあるらしい。

 エルフは人間と違って何十倍も生きるので、有り得ない話ではない。


 などボクが思い出していると、ソーフ様は険しい顔をしていたが、名前を聞くだけで警戒を解いたのか分からないが笑った。


「魔族が出ている以上、本当のことを言っているのかを見切られねばならぬからな。念の為に確認を取った。すまぬな」


 ソーフ様の警戒は少し解かれたようだと、ボクが勝手に思うと少し安堵した。

 すると、フォーカスが指さしてくる。


「お父様! コイツです! コイツが……」


 ソーフ様がフォーカスの頭を撫でる。

 刹那、ボクは魔法で彼女が眠らせてしまった。

 フォーカスが眠ったような顔をしていると、ソーフ様が衛兵の一人を呼んだ。


「この娘は最近、変な夢を見ているそうなので疲れているようだ。誰か、馬車に入れておいてくれないか?」


 ボクは魔法で起こそうか迷ったが、魔族のことを忘れていたので後ろを見ながら告げた。


「あ! そういえば、魔族を捕まえたのでした。早く拘束していただけませんか?」

「そのことなら心配するでない。もう余が殺してある。だから魔法を解いてもよいぞ」


 見てみると、本当に殺されていた。

 いつの間に、と思いながらボクは膝を立てて頭を下げる。


「ソーフ様、発言してもよろしいでしょうか?」

「よい、申してみよ」


 即座にボクは頭を上げてソーフ様の顔を見て意見した。


「どうして殺したのですか? 拷問するなど情報を手に入れる方法はあったのではないでしょうか?」

「其方、名は何という?」


 名前を言っていなかったことを思い出し、ボクは言おうとしたが一部の衛兵たちが臨海体制に入っていることに気付く。

 ゆっくり息を吸って吐いたボクは、言葉を慎重に選びんで言葉を発する。


「答える前にお願いしたいことがございます」

「ふむ。なんだ」


 頭を下げてボクははっきりと言明した。


「衛兵がいない場所でお話しができないでしょうか?」


 すると、エルフの衛兵たちが一斉に襲い掛かってくる。

 ボクは目に見えないほど薄い炎の槍を幾つも空中に作って対処しようとした。

 だがその前に――。


「待て! 其方の要望を聞こうではないか。だから、少年、矛を収めてくれぬか?」

「王よ! 発言をお許しください!」


 周りのエルフたちは、ボクが作った槍の手前で時が止まったかのように動かない。


 胸に勲章をつけているエルフのリーダーがシーフ様の前に現れて、膝を立てて発言をした。

 シーフ様は首を振ると、リーダーが続けて言う。


「エルフの兵が、この軍にこの神族に負けるとでも……」

「ああ、思っている」


 しばらくリーダーが黙る。

 次の瞬間、ボクを睨んできた。

 すぐにシーフ様に目線を戻すと、王様がボクを指差す。


「其方には少年の魔法が見えたか?」

「……? 王よ! おっしゃっている意味が……」

「もうよい! 其方は下がれ!」


 リーダーは渋々元いた場所に下がる。

 シーフ様はボクに提案をしてきた。


「少年、見苦しいところを見せた。ここでは話は出来ないから、城に招待しよう。私の部屋で話すのはどうだろうか?」

「はい! ありがとうございます」


 ボクは頭を下げて言うと、シーフ様が衛兵たちに告げた。


「神族の二人を客として城に招待する。いいな?」


 こうして正式にボクたちはエルフたちの村ハージに向かうことになった。

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