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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
98/175

筋書きと利用

クスクスと笑っていたエディだったが、スッとレイリアの手を引いてベッドに座らせると、その隣に腰を下ろした。

「リア、先程ブラガンサ殿の言っていた事について説明するね」

「ええ。貴方が記憶を無くしたって言っていた件ね?」

「うん。父上が考えた設定で、埋葬された私の遺体は別人の物であり、本物の私は崖から落ちて記憶を無くして、君に助けられたという事になっている。そして私は君の知人に預けられ、君自身も事故で記憶を無くした為、私の存在は知られる事が無かったと、そういう設定なんだ」

「結構無理があるわね。貴方がここにいる事はどう説明するの?」

「君の知人から私の存在を聞いたドミニク殿が、記憶を取り戻しつつある私を連れて来てくれたという事にしたよ。そしてここで父上に再会して、父上が第一王子だと認めたという筋書きさ。まあ、多少出来過ぎた話の方が噂として広まり易い。噂に尾ひれが付いた方がマンソンも焦るだろうからね」

「エディは‥大丈夫なの?マンソン侯爵がどんな手を使って来るか分からないんでしょ?」

「どんな手を使ってでも、私を排除しようとするだろうね。でもそれこそこちらの望み通りなんだよ。私は言わば囮なのだから。ただ、一つだけ心配なのは君の事だ」

「私?私に手を出したって、マンソン侯爵は何の得にもならないわ?」

「いや、君は私の最大の弱点だ。それを知ったらきっとマンソンは、君を人質にして私を引きずり下ろそうと考えるかもしれないし、君を殺してマンソン一族の令嬢を、無理矢理娶らせようと画策するかもしれない。私はこの身を持ってマンソンの狡猾さと恐ろしさを知っているからね」

「えー!でも私は結構強いのよ!」

「おや?攫われたのはどこの姫君だい?」

「うっ‥‥だって、今回のは相手が悪過ぎたわ!まさかあんな手練れが王宮に入り込んでいるなんて、想像もしていなかったんだもの!」

「リア、君は私を心配して泣いてくれたよね?だとしたら私が君を心配する気持ちも分かるだろう?」

「‥‥‥はい。‥ごめんなさい」

レイリアはシュンとして肩を竦めた。

エディはその肩を抱いて引き寄せると、レイリアの頰にそっとキスを落として頭を撫でた。


「オセアノ王宮は君も知っての通り、度重なる増築によって迷路の様になっている。そして広大な面積が故に、どうしても穴が出来てしまうんだ。私が隠れて暮らすには都合が良かったが、逆に侵入者が入り込むのにも都合が良い。中から手引きする者がいれば尚更だ。今回君を攫った奴らは、中から手引きする協力者がいたから実行出来たんだよ」

「えっ!?オセアノ王宮内にミドラスのスパイがいたの?」

「いや、奴らがミドラスの刺客であった事に気付かず、自らの保身の為に手引きした者がいたんだよ。君と一緒に光に包まれている時、バルコスの金が消滅した事を私も知ったんだ。それを奴らに伝えたら、肩を落として素直に全部話してくれた。手引きした者はマンソンであったとね」

「なんですって!!マンソン侯爵が!?」

「うん。マンソンは薬を盗んだミゲルという男を密かに殺害する為に、奴らを金で雇ったんだ。焦る余りにいつもの冷静さを失っていたからね。金で使える足の着きにくい連中を集めて、中から選ばれたのが奴らだった。さっき来たシモンはマンソン一族だが、ブラガンサ殿の働きにより協力者になっている。彼がマンソンに"ミゲルは王宮の牢に入れられている"と嘘の情報を教えて、奴らは王宮に送り込まれたんだ。奴らにとっては渡りに船だったからね。利用しているつもりのマンソンを、逆に利用したという訳さ」

「なんて事!!それであの地下通路を知っていたのね‥‥。私は地下通路であの人達に捕まったのよ」

エディはもう一度レイリアの頰にキスをして、自分の肩にレイリアを寄りかからせた。


「今頃マンソンはいつまで経ってもミゲル殺害の報告が来ない事に、相当腹を立てているだろう。そこへ追い討ちをかける様に私が生還したら、きっと更に焦るだろうね。もうなりふり構わず私に向かって来る事は容易に想像出来る。私はそんな所に君を置きたくないんだ。もう二度と君を危険な目に合わせたくないし、他国の事情でこれ以上君を振り回してはいけない。だからリア、私の願いを聞いてくれるかい?」

「エディの願い?」

「そう。金鉱脈が無くなった以上、君がミドラスに狙われる理由が無くなった。だから今君にとって一番安全な場所はバルコスだ。リア、君はバルコスに戻るべきだ」

「えっ‥‥‥‥!?」


レイリアは突然エディから言われた事に、何と答えたらいいか分からなかった。

読んで頂いてありがとうございます。

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