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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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御守りの効果

「全くもう!寝ぼけてるの?ねえ寝ぼけてるのレイリア?」

声のする方を見ると、エディの後ろに呆れた様な顔をしたルイスが立っている。

その横には涙目になったイネスの姿があった。


「私‥‥え?」

「やっぱり寝ぼけてるね。全く君らしいよ。感動的な場面なのに、台無しにするんだから!」

ルイスがやれやれと呆れた様に言う。

エディはまだレイリアの背中を摩り、心配そうに見つめている。

思考の追いつかないレイリアは、エディの倒れ込んだ時の状況を思い出して、いきなりエディのシャツに手をかけるとボタンを外し始めた。

「リ、リア、突然何を‥‥うわっ!」

バランスを崩してエディは後ろに倒れ込んだ。

「だって、エディ貴方おかしいわ!私は確かに見たのよ。貴方の胸に刺さった矢を。貴方は倒れて動かなかった。なのにどうして平気なの?」

困った顔のエディの後ろから、ルイスが焦って口を挟む。

「ちょ、ちょっとやめなよレイリア!こんな衆人監視の中ではしたない!アマリアが見たら大目玉だよ!いいの?僕は言っちゃうよ?アマリアに言っちゃうよ?」

「や、それはやめて!それだけは勘弁だわ!この世で最もウンザリする事の一つだもの!」

「じゃあ今すぐそれをやめるべきだ。今の君は誰が見たって、エドゥアルド殿下を襲っている様にしか見えないからね!」

そう言われてハタと手を止めた。

イネスは頬を赤らめて顔を手で覆っているし、この場所にいる全員がレイリアを見ている。

それに、今ルイスの口から出た言葉が気になった。

「え?ルイス、今貴方エディの事を何て言ったの?」

「ああ、エドゥアルド殿下って言った事?レイリアがおかしくなってる間に、なんと陛下がいらっしゃったんだ。今は捕まえた連中を連行する為、ドミニク兄さん達と一緒に森の入り口で指揮を執っていらっしゃる。陛下は宣言なさったよ。こちらにいらっしゃるのは、亡くなったと思われていたエドゥアルド殿下だって」

「へ、陛下?陛下ですって!?」

「そうだよ。レイリア、君も水臭いなぁ。エドゥアルド殿下が崖から落ちて記憶喪失になった時、助けたのは君なんだって?教えてくれたら協力したのに!」

「崖?それは‥どういう‥記憶喪失にって‥」


話が見えない。

一体どういう事?


レイリアが困っているとエディは起き上がり、フワッと抱き寄せ耳元で囁いた。

「リア、後で説明するから話を合わせて」

いきなりの至近距離にドキドキしながら、レイリアはコクリと頷いた。

目の前には、はだけたシャツから覗く、エディの胸がある。


ヒャー!!

確かにルイスが言う通り、これは"はしたない"行為だったわ!

殿方のシャツのボタンを外すなんて!


今更ながら真っ赤になって狼狽えるレイリアを見て、エディはクスッと笑いながら宝物を扱う様に優しく抱き上げた。

「ブラガンサ殿、リアはまだ目覚めたばかりで混乱している様だ。出立の準備が整うまで、小屋で休ませたいが構わないか?」

「もちろんです。それにその格好では流石に陛下に会わせられないので、ドレスに着替えた方がいいですね。イネス嬢、レイリアの着替えを手伝って貰えるかな?それから君も着替えた方がいいね。何というか‥ダブダブだし」

イネスは頷きながら、ダブダブのシャツとズボンを見てポッと頬を赤らめた。

「あ、えっと、その格好が似合わないとかそういうんじゃないよ!小柄で愛らしい君にはドレスの方が似合うと思うんだ」

ルイスの言葉に益々赤くなるイネスに、ルイスもつられて赤くなった。

まるで口説き文句の様なセリフを吐くルイスに、レイリアは思わず突っ込みたくなったが、エディに抱き上げられて赤くなっている状態では何も言えなかった。


「イネス嬢だったね?私はこちらの部屋にいるから、着替え終わったら教えてくれないか?少しリアに話したい事があるんだ」

「分かりました。急いで着替えを済ませます」

エディは隊長が机を振り回してめちゃくちゃになった部屋の中で、辛うじてまともな椅子を見つけ出すとその上に腰掛けた。

レイリアはイネスと2人、閉じ込められていた部屋で自分達が着ていた元のドレスに着替え始めた。

その間イネスが簡単に説明してくれたのは、レイリアから光の柱が飛び出して、皆が眩しさに目も開けられない中、なぜかドミニクだけは平気で敵を全て拘束したという事だった。


「あー‥お兄様は目を瞑っていても戦えるのよ。それと、やっぱり同じ血が流れているから平気だったんだと思うわ。お兄様は私には無い能力を持っているから」

レイリアにそう言われても、イネスにはバルコスの妖精の血筋の事は良く分からなかった。

「私には良く理解出来ませんが、ともかくドミニク殿下の活躍で危険は去りました。レイリア様、お体は大丈夫ですか?かなり長い間意識を無くしておられましたが?」

「心配かけてごめんなさいね。どこもなんとも無いから大丈夫よ。私はそんなに長く眠っていたの?」

「ええ。その間光の柱に包まれて、お姿を拝見する事が出来ませんでした。近くにいたエドゥアルド殿下も光に包まれていましたので、皆が亡くなったとばかり思っていました。ですが次第に光が消えていき、意識の無いレイリア様に呼びかけるエドゥアルド殿下が現れたのです」

「そこなのよ分からないのは。エディはどうして無事なのかしら?」

「ご本人に伺ってみるのが一番いいでしょう」

イネスはそう言うと、扉を開けてエディを招き入れ、小走りで小屋から出て行った。


「リア、少しは落ち着いた?体は大丈夫かい?」

「私の体より、エディ貴方よ!まるで何事も無かったみたいに動いているじゃない!!矢は?あの矢は一体どうなったの?」

「ああ、あの矢はね、君のお陰で刺さらずに済んだんだよ。君のくれた御守りが、私を守ってくれたんだ」

そう言ってエディはポケットから、穴の開いた犬の形のペンダントを取り出した。

「それって‥!!」

「うん。イザベラが渡してくれたんだ。君が選んでくれたんだろう?」

「ええ‥‥。でもまさかそれが‥‥」

「君はまた私の命を救ってくれたんだ。結構強い衝撃で仰向けに倒れてしまったが、私は君のお陰で無事だった」

「でも、手を取った時‥‥貴方の手は力無く落ちてしまったわ‥」

「あの時頭の中に声が響いて、体の自由が効かなくなった。動いてはいけない。君の為に必要な試練なのだと‥。不思議な響きの声だったよ」

「‥‥上手くやったって‥そういう事‥だったのね。私が‥どんなに‥‥‥!!」

「リア?」

レイリアはポロポロと涙を零して、声を上げて泣き始めた。

エディはレイリアを抱きしめ、背中を摩って頭に何度もキスを落とす。

「あの時も言いたかった。リア、泣かないでって。私は君に笑っていて欲しいのに、泣かせてばかりいる。心配ばかりかけて本当にごめんよ」

レイリアはエディのシャツにしがみつき、顔を埋めて思いきり泣いた。

「エディが‥エディが‥‥死んでしまったかと‥そう思って‥‥。やっと、やっと私は‥思い出せたのに‥!」

「思い出した?リア、記憶を取り戻したのかい?」

「ええ‥。全て‥思い出したの。貴方は‥知っていたのね?」

「うん。君が隠し部屋を訪れた時から、君が私の探していた女の子だと気付いていたよ。でも君には記憶が無いし、私には健康な体はおろか、1人の人間としての存在すら許されていなかった。そんな得体の知れない立場では、君に相応しくないと思い諦めようとしたんだ。だけどやっぱり、君だけは諦め切れ無かった。私はどうしようもないくらい、君の魂の輝きに惹かれてしまうんだ」

「私だって‥何も覚えていなくても、やっぱり貴方に惹かれたわ」

「リア、改めて言わせて欲しい。私は君を愛している。今迄もこれからも、この気持ちが変わる事はない」

エディの言葉にレイリアは真っ赤になり、恥ずかしくなって俯いた。

「リア?迷惑だった?顔を見せてはくれないのかい?」

「め、迷惑な訳ないわ!!ただこんな事言われたの初めてで、どんな顔したらいいか‥‥」

「どんな顔をしていても私には全てが愛おしいよ。迷惑でないなら、返事を聞かせてくれないか?」

「‥エディが‥死んでしまったと思った時、私の心は一度死んだと妖精王に言われたわ。愛する者を失って、強い衝撃を受けたから力が解放されたのだと。つまり、何が言いたいのかと言うと‥」

「うん。何が言いたいのかと言うと?」

「あ、愛‥‥意地悪だわエディ!!凄く恥ずかしくて言えないのに!」

「言って欲しいな。ここには私しかいないのだから、恥ずかしい事はないよ」

「あ、愛して‥い‥んっ!!」

レイリアが言い終える前に、エディはレイリアの唇に自身の唇を重ねた。

ゆでダコみたいに真っ赤になったレイリアは、悪戯っぽく笑うエディをキッと睨む。

「さ、最後まで言っていないわ!!」

「うん。ごめんね。嬉しくて待ち切れなかった。もう一度聞かせて」

「もう言わない!エディ意地悪なんだもの!」

「それなら言ってくれるまでキスをしようか?」

「ほ、本当に意地悪ね!でも‥‥生きていてくれて良かった。本当は‥真っ先に伝えたかったの。私は‥‥貴方の事をあ、愛しているわ!」

「リア‥!!」

エディはレイリアに顔を近付けると、今度はそっと唇を重ねた。

レイリアも今度は恥ずかしがらずに、きちんと目を閉じてそれに応えた。

台風19号の影響で、長い長い停電時間を過ごしていました。

電気って有り難いですね。

冷蔵庫の中のアイスは全てさようならです。

幸い他は無事でしたが、被害に遭われた皆様方に、少しでも明るい気分になって頂ける様なお話を、届けられたらいいなぁと思います。


呼んで頂いてありがとうございます。

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