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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
92/175

意表を突く

隣の部屋から複数の足音や叫び声、金属がぶつかり合う音が聞こえる。

「イネス!私の側へ!多分助けが来てくれたんだわ!」

レイリアがそう言うと、イネスは駆け寄りレイリアの隣に立った。

「えっ!?ズルいではないか!私はどうなる?腕は縛られたままだぞ!」

ミゲルは腕が使えないので、腹筋の力でなんとか立ち上がった。

それと同時にバン!と部屋の扉が開き、ルイが舌打ちをしながらチラリとレイリアを見ると、ミゲルの腕を掴み引っ張って行く。

開け放たれた扉の向こうには、オセアノ小隊の制服を着た隊員達と、リカルド達が揉み合っている様子が見える。

数ではオセアノが勝っているが、リカルド達は中々に手強い。

レイリアの方へ向かわせまいと、リカルドは必死に隊員達を薙ぎ払っている。


そんな中ルイはミゲルを盾に外へ逃れた。

「義兄上!何をやっているんです!ちゃっかり人質になるなんて、貴方らしくて笑えませんよ!」

剣を構えながらシモンはミゲルの後を追って叫んだ。

ボウガン要員は構えて撃とうとしたが、シモンはそれを制止する。

「シモン!やはりお前は私を愛しているのだな!早く助けてくれ!」

「どうしてそういう考えに至るんです?愛してはいません。残念だとは思っていますが」

「嘘を吐くな。私を思って助けに来てくれたのだろう?頼む!この方に金を渡して助けてくれ!」

「義兄上に払う金があったら、好物のプリンでも買いますよ。私が来たのは偶然です。あ、そこの義兄上を捕まえている人、気を付けた方がいいですよ。義兄上は残念な人ですから」

「オメェ達、こんな状況でふざけんナ!こいつが殺されてもいいのか?」

「ハァ‥本来ならどうぞと言いたい所なんですよ。本当に。ハァ残念だ」

「なっ!?シモン、私を見殺しにする気か?殺されたら覚えてろ!」

「義兄上、殺されたらそこまでです。覚えていられません」

「あげ足を取るなあげ足を!」

「だから残念だと言っているでしょう?いつものアレをやったらどうです?」

「ま、まさかアレをやれと?いやいやそれは出来ん!アレをやったら私の威厳が!」

「義兄上のどこに威厳があるんですか?威厳という言葉の価値が下がります。今更ですよ義兄上。アレをやれば助かるかもしれません」

「いやしかし、私は大人の男としてアレはさすがに‥」

「だからオメェ達ふざけんナって言ってるだろ!何なんだその緊張感の無さは!」

ルイは怒りのあまり声を荒げた。

するとシモンはフッと笑って、ミゲルに握った拳を見せ、パッと開いて合図を送った。

「うう‥‥なんて意地悪な義弟なんだ‥」

ブツブツ言いながらミゲルはルイに擦り寄ると、自分の中に溜まっていた物を一気に放出した。

「何だオメェ!急に擦り寄りやがって気持ちわリィ!‥‥ん?何だ?何だか生暖かいぞ?‥‥うわっ!!オメェ!!漏らしやがったな!!!!」

濡れたズボンを更に擦り寄せるミゲルから離れようと、ルイは掴んでいたミゲルの腕を離した。

その瞬間シモンはルイの背後に回り込み、剣の柄で後頭部を思いっきり殴り付ける。

「グゥッ!!ひ、卑怯な‥‥!!」

堪らずルイは膝を着き、そのまま前へ倒れ込んだ。

「人質を取るような人に、卑怯呼ばわりされるのは心外ですね。だから私は言ったでしょう?気を付けて下さいと。私の義兄上はとにかく残念なんですから」

「シモン!やはり私を愛しているのだな!」

ミゲルはシモンに体を擦り寄せようと近付いた。

「それ以上近寄ったら義兄上でも刺しますよ。私までお漏らしの餌食にしようとしてる事くらいお見通しです。そんな事より義兄上はこのまま真っ直ぐ走って、馬の番をしている味方の元へ行って下さい。ズボンの替えがあるかもしれないので」

「チッ!」

「ん?今舌打ちしませんでしたか?いいんですか?向こうの皆にお漏らしがバレても?」

「いや、舌打ちではない。ちょっと舌を鳴らしただけだ」

「それを舌打ちって言うんです。そんな事より、私は義兄上の相手をしている場合ではないのですよ!早くここから逃れて、ズボンでも履き替えて待っていて下さい」

「分かった。せめて縄を解いてくれ」

シモンはミゲルの腕の縄を解いて、その縄でルイを縛り上げた。

腕が自由になったミゲルは一目散に走って行く。

頭を殴られ意識朦朧としているルイは、気を失う前に一言呟いた。

「まさか‥大の大人が‥漏らすとは‥」

ガクリと頭を垂れ完全に意識を失ったルイに、シモンも一言呟いた。

「教えて差し上げましょう。義兄上は"まさかの男"なんですよ。ルイス殿のネーミングですがね」

そう呟いてから、少しだけ嬉しそうな笑顔を浮かべた。


そうしてミゲルを無事逃したシモンは、ルイをボウガン要員に任せて、混乱状態の小屋の中へ飛び込んで行った。

読んで頂いてありがとうございます。

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