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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
9/175

想い人は行方不明

やっと王太子の登場です。


オセアノの王宮、王太子の執務室では、オセアノ王太子ジョアン・オセアノスが書類の山を忙しく処理している。

国王不在の中、代理としていつも以上にやる事が山積みだ。

ノックもなしに執務室の扉が開くと、ジョアンの右腕で幼馴染みでもあるエンリケが入って来た。

「殿下、ミドラスの動向を探っていた部下から、新たな情報が入りました」

ジョアンは手を止めエンリケを見る。

「報告してくれ」

エンリケは部下からの報告書を読み上げた。

ミドラスがバルコスとの国境付近に、兵を集結させている事。

それらはバルコスに対する圧力で、今の所出兵する様子はないという事。

バルコス大公は姫君の身の安全をはかる為、オセアノへ出発させた事。


「報告は以上ですが、こちらの出方としましてはどうしますか?」

「引き続きミドラスの動向を探ってくれ。父上も私も戦争は避けたい。だからバルコスの姫君を受け入れる事にしたのだ」

「了解しました。その様に指示します。それから別件での調査ですが、やはり殿下が言った特徴を持つ娘は、ブラガンサ辺境伯領にはいないそうです。領民の話では、特徴からいってバルコス人ではないかとの事ですが」

「バルコス人だと!?」

「はい。バルコス人は全体的に色素の薄い民だと聞きます。妖精との繋がりも強く、容姿の優れた者が多い、穏やかな民だとも」

「‥‥バルコスか‥。それならばなんらかの事情により、あの場所へ来られなかったとも考えられる。しかしバルコスか。調査は可能か?」

「ミドラスの脅威がありますから、オセアノ人が目立った行動をして、ミドラスを刺激しても良くないとは思います。しかしどうしてもと言うのであれば、諜報員を送りますが?」

「どうしてもだ。どうしても探してくれ」

「‥分かりました。早速手配します。それで、ここからは幼馴染みとして発言する許可を頂きたいのですが?」

「許可も何も、私はむしろ幼馴染みとして話して貰いたい。堅苦しい態度を崩さないのはエンリケ、君だろ?」

「仕事に私情を挟みたくないからです。だが今回のバルコスの姫君に出した条件は、私情を挟まずにはいられない!ジョアン、君は間違ってる!あの条件は人の道に外れている!」

「私は私の想う相手に誠実でありたいだけだ」

「君は真面目で実直だが、少々頭の固い所がある。君が考える誠実という事柄が、他の人を傷付ける事になるとは考えられないのか?」

「私は周囲の望む期待通りに、バルコスの姫君には応えられない。変に期待をされるよりは、最初から期待すら出来ない状況の方が、姫君にとっても良い筈だ。私が応えない代わりに、姫君の待遇はより良い物としよう」

「‥‥君は君に群がる女性陣と、姫君を同等の枠に入れて考えている。何も知らない姫君は、逃れた先で追いやられるのだ。だが僕が何を言っても君は聞き入れないだろう」

「その通りだ。私はあの娘以外、心を砕く事は出来ない」

「君の言う娘は未だ発見出来ていない。それに、もう10年も前に一度会っただけの相手だろ?このまま発見出来なかったらどうするつもりだ?」

「見つけてみせるさ。必ず!」


エンリケは溜息を吐き、ポリポリと頭を掻いた。

ジョアンは容姿もさる事ながら、大国の王太子に相応しく文武両道に優れ、又その為の努力も文句一つ言わずにやってきた。

それだけの優良物件であるが故に、嫌という程女性に追いかけられ、女性に対して嫌悪感を持っている。

その反動で、幼い頃たった一度会っただけの娘に執着しているのではないかとエンリケは思う。

ジョアンは頑固な所があり、一度決めた事は中々曲げない。

誠実と言えば聞こえはいいが、姫君も他の女性と同じ扱いにするのは、余りにも不誠実ではないか。

エンリケはジョアンの代わりに、姫君に心を砕く事を惜しまないと決めた。

もし、娘が見つからなければ、ジョアンはこの先どうする気だろうか‥‥

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 想い人と嫁が同一人物という奇跡に彼が気付くまでの展開が楽しみです。(相手は記憶喪失なのも美味しい(笑)。)
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