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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
89/175

北西へ

農場へ到着したドミニク達は、もう一つ起きた行方不明事件について頭を痛めていた。

ミゲルがいないと農場ではちょっとした騒ぎになっていたからだ。

「よりによってこんな時に何をやっているんだ!全く、どこに行ったんだ義兄上は!」

シモンは苦々しげにそう言うと、農場周囲を回りながら足跡等の痕跡を探っている。

ミゲルまでもが一緒に攫われているなど、誰も予想すらしていなかったので、単にミゲルが農場から逃げ出したと思われている様だ。

先を急ぎたいドミニク達は、シモンだけを残してレイリア追跡に向かおうという話をしていたのだが、エドゥアルドの元へ届いたメッセージを見ると、すぐ計画を変更した。

5人の刺客の後に3人となっていたからだ。

3人という人数はミゲル失踪と何らかの関係があるだろうと、ドミニクとルイスは判断した。


「急ぎ北西へ向かう。遅れるなよ!」

ドミニクは2人の従者にそう声をかけてから、エドゥアルドに声を押さえて話しかけた。

「少し顔色が悪い。大丈夫か‥エド‥」

「問題ないよ。私の事なら気にしないで‥下さい若様」

"若様"と呼ばれ少しくすぐったそうな顔をしたドミニクに、エドゥアルドは微笑んで大丈夫だと念を押す。

2人の従者はそれを見てヒソヒソと話し合っていた。

「あの若様が連れて来た赤毛の男は何者なんだろう?やけに若様が心配しているが?」

「俺も気になっていた。それにえらい男前で気品を感じるな。ひょっとして若様‥女にモテないなどと見当違いな考えから、別の道へ進んだのか?」

「バカ!若様に限ってそんな事はあり得ない!後ろの第1小隊隊長じゃあるまいし!見ろ、あの隊長のルイス様を見る顔を!」

隊長は濃い顔をほんのりピンク色に染めて、うっとりとルイスを見ている。

ルイスはシモンを盾にして、一生懸命視線から隠れていた。

「ルイス様も災難だな。俺達も念の為ケツには気を付けようぜ。いつ狙われるか分からんからな。俺は一応ケツに鉄板を仕込んでいる」

「下品だなお前は。安心しろ。絶対お前は狙われない。狙うとしたら若様かあの赤毛だろう」

「それじゃあ俺達は若様のケツも守らなければならないな!」

「だからケツから離れろケツから!」

つい大きな声で叫んでしまい、ドミニクが訝しげに聞いて来た。

「ケツがどうした?どこか打ったか?」

「い、いえ、若様のケツにしっかり着いていかないと!と2人で話していたんです」

「そうか。それじゃあ飛ばすからしっかり着いて来いよ!」

ドミニクは馬の腹を蹴ってスピードを上げていく。

エドゥアルドと2人の従者は、遅れない様馬を跳ばした。


シモンは深い溜息を吐きながら、ルイスの横で馬を跳ばしている。

「うちのバカ義兄が申し訳ありません。こんな時まで斜め上の行動を取るとは、呆れて物も言えません!」

「仕方がないよ、それがミゲルさ。やつは"まさかの男"だからね」

「そうですね。まさかここまでバカだとは‥‥。残念すぎます。ハァ‥残念だ」

心底残念そうなシモンに、ルイスは苦笑いをするしかなかった。

しかしミゲルまでもがレイリアと一緒に攫われた可能性がある以上、笑ってもいられない。

ここは気持ちが悪いのを我慢して、一肌脱ぐしかないだろう。

腕が立つのは殿下の折紙付きだ。

ルイスはそう決心して、第1小隊隊長に話しかけた。

「隊長、頼みますよ!必ずバルコスの姫君を救って下さい!貴方の勇姿が見られるのを楽しみにしています」

「ブラガンサ殿!貴方の頼みなら何があっても必ずその通りに致しましょう!なに、お任せ下さい。これでも"野獣"の通り名を持っていますからな!」

そう言って誇らしげに片手で胸を叩く隊長の胸元には、外したボタンの隙間から濃い胸毛が顔を出していた。


成る程、正に"野獣"だな。

後が恐いが、今は仕方ないだろう。


ルイスは冷や汗をかきながら、ドミニクの後を追ってローレの森を目指した。

読んで頂いてありがとうございます。

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