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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
76/175

解禁です

数日後の午後、レイリアがイザベラとホアキン翼でお茶を飲んでいると、そこへ突然ルイスがやって来た。

「あらルイスどうしたの?ちょうどお茶を飲み始めたばかりよ。ルイスも座って一緒に飲んだら?」

「ルイス様、今日はイザベラ様が美味しいクランベリータルトを焼いて下さったのですよ。まるでどこかで見ていたかの様なタイミングですね。今お茶を淹れますので、そこにお座り下さい」

「えっ!クランベリータルト!?座る座る!」

甘い物に目がないルイスは、タルトという言葉に飛びついた。

最近アマリアが仕入れたゴシップネタによると、王宮では"ルイスイーツ"と密かに呼ばれているそうだ。


「ところでルイス、突然どうしたの?何か用事があって来たんじゃないの?」

タルトを夢中で頬張るルイスは、レイリアに言われるまですっかり目的を忘れていた。

「あ!そうだった!僕は誘いに来たんだった!」

「誘い?何の誘いよ?」

「ドミニク兄さんが第3小隊の訓練に参加しているから、一緒に見に行こうと思ってさ。イザベラ嬢も見たいだろ?すっごくカッコいいんだ!」

突然振られたイザベラは、お茶にむせて咳き込んだ。

「わっ!イザベラ大丈夫?」

「ゴホッゴホッ‥‥だ、大丈夫ですわ。ルイス様、なぜ私が見たがっているなどと思いましたの?」

「え?だってドミニク兄さんは剣の達人だよ?見たくないなんて人いないと思って。僕やレイリアは何度も見て知っているけど、ドミニク兄さんには誰も勝てないんだ!」

レイリアとルイスは顔を見合わせて

「「そうだよね〜!!」」

と目を輝かせる。

「そ、そうでしたの。それなら遠目から見学させて頂きますわ」

「ええっ!近くで見ましょうよイザベラ!」

「いいえ、私は剣とかそういうのは少し苦手なのよ。遠くからでいいわ」

するとアマリアが頷きながら口を挟んだ。

「姫様、普通レディというのは野蛮な事を好んだりしませんよ。喜んで見に行くのは姫様くらいなもんです。ちなみに回し蹴りまで披露する、サービス精神に溢れた姫君も姫様くらいなもんです」

「うっ‥‥分かったわ。私も遠くから見学する」

「いいえ、レイリアは私に合わせなくていいの。近くで楽しんで」

「えっ!?いいの!?」

「ええ。私は見える所にいるわ」

「やった!」

イザベラは嬉しそうなレイリアの頭を撫でて微笑んだ。


「そういえばドミニク兄さんに買ったお土産はどうしたんだい?もう渡した?僕は色々と用事があったから、何を買ったか知らないんだけど」

「はっ!いけない、すっかり忘れていたわ!せっかくイザベラが選んでくれたのに、まだ渡していなかったわ!」

「それじゃあお土産はイザベラ嬢に渡して貰おうよ。勝者には美女の祝福が付き物さ」

「ルイス様、マーベラスです!ご立派になられて!」

「ルイス貴方、うまい事言うわね!エンリケ様なら"美女がお土産渡しちゃうぞ"とかタイトルつける所よ」

レイリア達はアッハッハと笑いながら、狼狽えるイザベラをよそに盛り上がっていた。


訓練場は競技場と同じ作りで、観客席も設置されている。

目立つ髪と容姿のドミニクは、遠目からでも一目で分かった。

イザベラは一番遠くの辛うじて見える席に座り、レイリア達は特別に許可を貰って、すぐ近くの席に座った。

どうやら模擬戦を行なっている様で、ドミニクは副隊長と剣を交えている。

相手の上段からの打ち込みをヒラリと交わすと、背後に回ったドミニクは、首の後ろに剣を押し当て、あっさりと勝利した。

普段は静かな訓練場は見学者で溢れ、ドミニクの勝利と共に黄色い声援が響き渡る。

「カッコいい〜!さすが兄さん!」

「やっぱりお兄様は世界一だわ!イザベラも見たかしら?」

「ここからじゃ遠くて分かりませんね。こんなに見学者がいるとは思いませんでしたよ」

「あ、あれイザベラ嬢だろ?なんか隣に男性が座ろうとしてるけど」

ルイスに言われてレイリアとアマリアはイザベラの座っている辺りを見た。

すると騎士服を着た若い男性がイザベラの隣に座り、親しげに話しかけている。


「イザベラの知り合いかしら?」

「いや違うだろう。イザベラ嬢は"オセアノの赤いバラ"と呼ばれる美女だからね。普段こういった場所には現れないから、チャンスとばかりに狙って来たんじゃないか?あしらい方も上手いから大丈夫だよ」

「だといいけど‥心配だわ。やっぱり私、イザベラの所へ行って来る!」

「まあまあ姫様、もう少し様子を見ましょうよ。ほら、ドミニク様の次の試合が始まりますよ!」

ドミニクは今度は隊長と試合を行う様だ。

副隊長の様な大技を出さない代わりに、隊長は細かく突きを繰り出して、ドミニクを近付けない様工夫している。

それをドミニクはヒラリヒラリとしなやかに交わして、クルリと回転すると隊長の剣を持つ手を柄で叩いた。

ガシャンという音と共に隊長の手から剣が落ちると、試合終了の旗が上がった。

今度は黄色い声援以外に、ワーというドミニクを讃える歓声が訓練場を包み込んだ。

「凄いや兄さん!!隊長でも全然歯が立たない!!」

「そりゃあお兄様だもの!あ、ねえルイス、さっきの男性試合そっちのけでイザベラに話しかけているわよ!なんかくっつきそうなくらい近くに寄っているし‥やっぱり私行って来るわ!」

「中々図々しい男の様ですね。姫様、行ってらっしゃいませ。得意技は解禁です」

「えっ!いいのアマリア?」

「ここは訓練場で武術を披露する場所です。ナンパなどという場違いな行いには、それ相応の罰を下しても問題ないでしょう」

「僕もアマリアに賛成だ。本当は僕が行くべきなんだけど、僕が行ったらまた変な噂を立てられて、イザベラ嬢に迷惑がかかるかもしれない。だからレイリアが行くのが一番いいね」

レイリアはニンマリと笑いながら、足首を回して立ち上がった。

「うん、絶好調!行って来るわね!」

「「行ってらっしゃい」」


レイリアは人混みを掻き分けながら、イザベラに向かって真っ直ぐ進んだ。

すると訓練場から観客席の塀を飛び越え、イザベラの前に走り寄る、プラチナブロンドの良く知る人物が目に飛び込んで来た。

「えっ!?あれって‥‥お兄様!!」

読んで頂いてありがとうございます。

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