どう思うかは分からない
「レイリア、僕は別にお前を責めている訳じゃないよ。お前もと言っただろ?」
レイリアは躊躇いながらドミニクに尋ねた。
「お兄様も‥エディを見つけたって事?」
「そうだ。僕もエドゥアルド殿の存在を知った。正確には探り当てたといった所かな。‥レイリアはエドゥアルド殿をエディと呼んでいるんだね」
ついエディと呼んでしまった事に気が付くとレイリアは赤くなった。
ドミニクはそれを見て満足げに微笑んでいる。
「レイリアはエドゥアルド殿をどう思っているんだい?」
「えっ!?どうって‥‥お気の毒だと思うわ」
「そういう意味じゃない。異性としてどう思っているのかっていう意味だ」
「‥‥そんな事急に言われても困るわ。どうして突然そんな事聞くの?」
「大切な事なんだよ。レイリアの今後を決める上で、レイリアがどうしたら幸せになれるのか考えるのは僕の役目だ。だからレイリアの気持ちを知りたいんだ」
「‥私の気持ち‥‥は、まだ良く分からないの。ただ、今言えるのは‥エディの側にいると胸が痛くなったり、落ち着かない気持ちになったりするって事だけ」
「では、ジョアン殿下に対してはどう思う?」
「えっ!?今度はジョアン‥殿下?う〜ん‥やっぱり分からないわ。案外話の分かる方だとは思うけど」
「そうか。うん、レイリアの気持ちは良く分かった」
「えっ!?これだけで分かったの?私でも分からないのに?」
ドミニクはニコニコしながら頷いた。
「お兄様には‥やっぱり敵わないわ。私以上に私の事が分かるのね」
「レイリア、アマリアに聞いてみるといいよ。レイリアがエドゥアルド殿に感じている気持ちが何なのかをね。本当は他に大事な話をしようと思ったんだけど、もう少し様子を見てから話すよ。お前が記憶を取り戻す為に、どうしたらいいかも考えなければいけないしね」
「‥‥あのねお兄様、私は‥記憶を取り戻すのが怖いの。思い出したいのだけど、何だかとても怖くて‥」
「うん。お前にはとても辛くて怖い事なんだと思う。それでもお前は取り戻すべきだと僕は思うんだ。今のお前なら乗り越えられると信じているよ。一緒に方法を考えよう」
「お兄様が一緒なら、なんだか大丈夫な気がしてきたわ」
レイリアは立ち上がってドミニクの横に座ると、ドミニクの肩に頭を乗せて目を閉じた。
ドミニクは黙ってレイリアの頭を撫でながら、この役目を譲る時が来たなと感じていた。
午前中休んだ分、午後はいつも以上にみっちり講義で埋められていた。
ドミニクは声を荒げて怒ったりしない変わりに、しっかりお仕置きはするタイプである。
講義の間中レイリアの頭の中には、ルイスの声で「とりあえずお達者で」が響き渡っていた。
レイリアが必死に予定をこなしている頃、マンソン侯爵は人を集めていた。
シモンからの報告では、ミゲルが窃盗を働いた相手はバルコスの姫君で、相手が相手なだけに王宮の地下牢へ投獄されているという事だった。
このままでは極刑も免れないだろうと言うシモンに、マンソン侯爵は怒りに任せて花瓶を投げ付け
「さっさと面会を取り付けて来い!!」
と言って王宮へ向かわせた。
その後シモンだけでは心許ないと思った侯爵は、密かに刺客を王宮へ送り込もうと、金で人殺しを請け負う輩を集め始めたのだ。
足が着いても簡単に切り捨てられる様、身元のはっきりしない輩ばかり集めたのだが、使えそうなのは元傭兵という経歴の2人だけだった。
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