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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
71/175

選ぶとは限らない

「‥‥私に力を与えた事と言ったが、それはどういう事なんだドミニク殿?」

エドゥアルドは立ち上がり、ドミニクに詰め寄る。

ゆっくりと目を開けるとエドゥアルドを真っ直ぐ見つめて、ドミニクは口を開いた。

「母は命がけでレイリアを守りました。お陰でレイリアは無傷でしたが、折れた骨が肺や内臓を傷付け、母は亡くなりました。事故直後レイリアは気を失っていたそうです。そして目を開けると、既に冷たくなった母に抱きしめられ、父に発見されるまで動けず震えていたそうです。ピンク色の髪のバルコスは、荒地に口付けて命を与えた。同じ髪色を持つレイリアも同じ事が出来るかもしれないと思い、迷わず母に口付けました。ですがレイリアは知らなかったのです。既にエドゥアルド殿に与え、それが一度しか使えないという事を。発見されるまでの間、それを思い知るには十分な時間がありました。そしてレイリアは自分自身を責め、その現実に蓋をする事で自我を保ちました。子供の身には荷が重すぎたのでしょう。救出後3日間高熱を出して寝込んだのですから」

「‥‥‥‥」


「父は発見直後レイリアに言ったそうです。母を蘇らせてくれないかと。レイリアは出来ないと言い、意識を失いました。父も僕もまだ子供だから出来なかったのだとばかり思っていたのですが、ここに来てエドゥアルド殿の話を聞き、やっと分かりました。僕には妖精を見る力はありませんが、話を聞いているうちにその時の映像を見る事が出来るのです。常にではありませんが」

「私に力を与えた事で母君を救えなかったのだな‥‥そのせいでレイリアは記憶を封印したとは思いもしなかった」

「母は救えませんでしたが、貴方を救ったのです。でもその事をレイリアも僕も、そして父も知りませんでした。その為父はレイリアには生命再生能力があると、オセアノとミドラスに伝えたのです。オセアノ国王は喜んで迎えたいと言いましたが、ミドラス皇帝はバルコスの金にしか興味を示しませんでした。そこで父はもう一つの秘密を両国へ伝えました。その秘密を知ったミドラスは、レイリアを手に入れない限り、バルコスに手出し出来ない事を知ったのです」

「「もう一つの秘密?」」

「ええ。ですが今日はもう大分遅いので、また明日続きを話すとしましょう。エドゥアルド殿の体も心配ですし」


ドミニクの言葉にイザベラはハッとしてエドゥアルドを見た。

「そういえばエドゥアルド貴方、この10年で一番顔色がいいわ。どういう事かしら?」

エドゥアルドは言われて初めて気付いた様だ。

「実はアントニオ博士が試作品として調合した解毒剤を服用してみたんだ。そのせいか今日は寝付かず勉強まで出来る様になった」

「えっ!?それじゃあ貴方‥」

「まだ分からない。どんな副作用が現れるかもね。でも必ず良くなってみせるとレイリアに言ったんだ。だから私はとりあえず試せる物は何でも試すつもりだよ」

ドミニクはその言葉に頷くと、自分の考えを語った。


「エドゥアルド殿、貴方はレイリアを望んでくれているのですね。それなら早く体を治してレイリアの前に堂々と立てる様にならなければなりません。記憶が無い以上、レイリアが貴方を選ぶとは限らないのだから。それに、レイリアを望むのは貴方だけではないという事も、王宮に着いた時聞いた噂で知りました」

エドゥアルドはサッと顔色を変え、チラリとイザベラを見た。

「‥ジョアンの事を言っているのかいドミニク殿?」

「そうです。ですが僕はジョアン殿下にはいい印象を持っていないので、出来ればレイリアには貴方を選んで欲しいと思っています」

「いい印象を持っていないとは何故なんだい?」

「ご存知ないのですか?ジョアン殿下の出した十項目の話を?」

「十項目?」

「ああ、やっぱりご存知なかったのですね。レイリアは最初ジョアン殿下の元へ嫁ぐ予定でした。ところがジョアン殿下は難色を示し、国王陛下が不在の中勝手に十項目の条件を付けてレイリアを仮の婚約者として蔑ろに扱ったのです。まあ、レイリアが暴れたお陰で十項目は撤回された様ですが。でも僕はあの理不尽な条件を出した事を許せないし、手の平を返す様に今度はレイリアを望むというのは納得出来ないのです」

「‥イザベラ、私は聞いていないぞ。十項目とはどんな内容なんだ?」

「私だって貴方に呼ばれるまでレイリアの事を良く知らなかったのよ。知る訳ないじゃない!」

「ジョアン殿下に直接聞いてみるといいでしょう。まあ考え様によってはあの条件のせいで、レイリアは貴方と再会する事が出来たのですが」

「蔑ろに‥と言ったね?とかくジョアンは余計な事を考えがちだ。貴方の言う様に、ジョアンに聞いてみるとしよう」

「そうして下さい。とにかく今夜はもう遅い。イザベラ嬢、我々は戻るとしよう」

「ええ。また明日来るわエドゥアルド。レイリアじゃなくて残念だろうけど」

イザベラがからかう様に言うと、エドゥアルドも負けずに言い返した。

「君は嬉しそうだなイザベラ。トキメキとやらが止まらないんじゃなかったのか?」

「何で蒸し返すのよ!せっかく考えない様にしていたのに!もう!ドミニク様さっさと戻りましょう。半病人は口だけすっかり元通りだわ!」

ドミニクはクスクス笑いながら、エドゥアルドに挨拶をしてイザベラと一緒に戻っていった。


エドゥアルドはドミニクから聞いた事を頭の中で整理して、最初に言われた"決断"について考えた。


記憶が無い以上レイリアが選ぶとは限らない‥か。

確かにその通りだ。

でも私は‥レイリアが他の人、例えジョアンであっても、誰かの物になるのは嫌なのだ。

一度は諦めようとしたが、どうしても諦め切れなかった。

私はやはり、決断すべきなのだろうな‥

読んで頂いてありがとうございます。

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