ルイスと喧嘩は日常茶飯事
「なんですって兄さん!そんな条件を出されたんですか!?」
「‥ああ‥」
「信じられない‥殿下がそんな条件を出すなんて‥‥」
「ルイス、オセアノ人のお前には悪いが、こんな条件を出す王太子では、大国オセアノの将来も明るくないな」
ドミニクは不愉快な様子を隠そうともせず、目の前の肉料理にフォークを突き刺した。
「あら、私はそんなに悪い条件だと思わないわ。むしろ良かったとさえ思ってるんだけど」
「レイリア、君は相変わらずだね。そんなあっけらかんと。物事をもっと深く考えられるのが大人というものだよ」
「ルイス、貴方も相変わらずね。知ったかぶりで嫌みな所は」
「あーコホン、僕はもう大人だから、そんな挑発には乗らないよ。昔だったらムキになって、君と勝負をした所だけどね」
「なによ!大人ぶっちゃって!私に敵わないから言い訳してるんじゃない?」
「ドミニク兄さん、僕は殿下の出した条件に賛成しかねるが、相手がレイリアなら致し方ないと思うよ。全然レディになっていない。野生の猿そのものだ」
「奇遇ね。私も"致し方ない"の部分は同感だわ。レディじゃないからこの条件は、私にとって都合がいいのよ!お生憎様!そんな事貴方に言われなくたって、十分分かっているわ」
始まった!とドミニクは思った。
いつもながらこの二人は相性が悪い。
「二人共、いい加減にしないか!ルイス、君はレイリアを怒らせる天才だな。レイリア、お前もルイスには常に挑発的だ。ルイスは王都までお前の案内役を買って出てくれたんだぞ。最初からこんな調子で、この先の旅が上手くいくとは思えない。僕は妹に失望したくないのだが?」
ドミニクに叱られシュンとなったレイリアは、俯きながら謝った。
「ご、ごめんなさいお兄様‥」
ルイスも同様だ。
「兄さんすみませんでした‥」
「君達二人はお互いに言いたい事をひと言我慢するんだな。それが出来ない様では、二人を大人として認める事は出来ない」
「「反省します‥‥」」
その後は二人共大人しく旅のルート確認や日数の打ち合わせをして、それぞれの部屋に入っていった。
やれやれ、先が思いやられる。
しかしルイスの言う事にも一理ある。
レイリアにはレディとしての教育をしっかり受けさせて来なかった。
もし、まともに公の場に出たら、レイリアは必ずボロを出すだろう。
父も僕もレイリアには少々甘くし過ぎた感がある。
二人を叱ったが、自分自身も反省するべきだとドミニクは思った。
オセアノで王太子妃教育に精を出してくれれば、少しはレディになってくれるかもしれない。
淡い期待をしながら、ドミニクも宿の部屋で眠りに就いた。
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