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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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大アリです

レイリアとの再会を果たしたドミニクは、ルイスがいない事を不思議に思っていた。

そこでエンリケに尋ねてみたのだが、出かけているらしいがどこへ行ったのかは分からないと、なんとも煮え切らない返事が返って来た。

今日到着出来たのは自分でも予想外だったが、近々到着する事はルイスも十分承知していた筈だ。

あの律儀なルイスが出迎えに現れないという事は、余程外せない用事があったとしか思えない。


「お兄様?どうしてそんなにルイスが気になるの?せっかく久しぶりに会えたのに!」

レイリアはしきりにルイスの所在を気にするドミニクに、プゥッと頬を膨らませて不満を漏らす。

「あ、ああごめんよ。ちょっとルイスに話したい事があってね。レイリア、レディはふくれっ面をしない物だよ。イザベラ嬢に笑われてもいいのかい?」

「う、気を付けマス。お兄様ちょっと厳しくなったわね」

「僕と父上はレイリアに甘過ぎたって2人で反省したんだ。アマリアから聞いてないのかい?僕の望みはレイリアに立派なレディになって貰う事だって」

「ドミニク様、私はきちんと伝えましたよ。姫様は結構頑張っているんですが、ドミニク様の前だと甘えん坊になるんです。まあ、赤ちゃん返りみたいな物ですかね。姫様は筋金入りのブラコンですから」

「だって、お兄様は世界一なんですもの!それに‥‥やっぱりバルコスを離れて寂しかったの。色々あったし‥」

ドミニクはレイリアの表情が曇ったのを見ると、ふんわりと抱きしめて頰にキスをした。

「やっぱり僕は甘やかしてしまうね。お前にばかり辛い思いをさせてごめんよ。それに‥‥いや、何でもない」

ドミニクの腕に包まれて満足気に笑うレイリアを見ると、これから告げなければならない話をどう切り出すべきなのか迷った。


「ドミニク殿下、私は少し席を外しますが、誰か別の人間に王宮を案内させましょう」

エンリケの元へ部下が呼びに来たので、エンリケは慌ててドミニクに言った。

「ああ、僕の事は気にしないで。忙しいのに時間を取らせて悪かったねエンリケ殿」

レイリアの頭を撫でながら優しく微笑むドミニクに、エンリケはまたしてもトキメキを覚えた。


くっ!この方の近くにいるのは危険だ!

どうしてかポエマーへの道を選びそうになってしまう。

この笑顔は"ポエマー養成大作戦"だな。

うん。

満足の行くネーミングが出て来た。

調子を取り戻して来たぞ。


エンリケがそんな事を考えていると、アマリアが突然口を挟んだ。

「案内ならイザベラ様に頼んだらいかがでしょう?ここにいる誰よりもお詳しいでしょうし。姫様は王国史の講義の予定がありますからダメですよ」

「えーもう少しお兄様と一緒にいたいわ!」

「あらあら姫様、本当に赤ちゃん返りですか?そんな困ったちゃんだとドミニク様に愛想をつかされまちゅよ!」

「わ、分かったわ。イザベラ、お願い出来る?」

ポーッとしていたイザベラだったが、急に振られて慌てて答えた。

「え、ええ。私で良ければご案内しますわ」

「イザベラ嬢なら安心だ。私からもお願いします。それでは申し訳ございませんが、私は退席させて頂きます」

エンリケは急いでいたらしく、足早に去って行った。


「さあ、姫様も行きまちゅよ。言う事を聞いていい子ちゃんでちゅね〜」

「わ、分かったわよ!アマリア、その話し方気に入ったのね。気に入ったんでしょう?」

「正直に言うと気に入りました。というか、早くお2人のお子様を、こんな風にあやす日が来るといいなと思っています。ドミニク様ものんびりしていないで、早くお相手を見付けて下さいね。ではイザベラ様、胸キュンでご案内お願い致します」

アマリアは言うだけ言うと、レイリアを引っ張って出て行った。


急に2人にされて焦るイザベラに、ドミニクは申し訳なさそうに声をかけた。

「すまないねイザベラ嬢。本当にお願いしても良かったのかい?他に予定があったら僕など気にせず、そちらを優先させてくれて構わないよ」

「い、いいえ!何の予定もありませんわ!むしろご案内出来る事を光栄に思います」

それを聞いたドミニクはニッコリ笑って

「良かった!無理矢理僕を押し付けられたみたいで、気が引けていたんだ。それではお願いしますレディイザベラ」

と言って優雅に膝をついた。


ズキュン!とイザベラの胸を、何かに撃ち抜かれたような衝撃が走る。

何!?何なの?

このトキメキは‥‥もしかして‥

いえ、会ったばかりの方になんて、あり得ないわ!

この方があまりに眩しいから、光に当てられたのね。

私とした事が余計な事を考えている場合じゃないわ!

気を取り直したイザベラは、まずはホアキン翼から案内を始めた。


アマリアに引っ張られて歩くレイリアは、やけにアマリアが嬉しそうな事に気が付いた。

「アマリア?何かいい事でもあったの?」

「アリもアリ、大アリですよ!」

「蟻って、あの黒い行列を作って餌を運ぶ蟻?」

「姫様、そんなボケはいりません。私が浮かれる時なんて、大抵胸キュン絡みしかないじゃないですか」

「私は胸キュンしてないわよ?お兄様に会えてウキウキはしたけど」

「姫様ではありません。ウッフフフフ。楽しくなってきました。中々良い組み合わせが出来そうですよ。愛の伝道師としては腕が鳴りますね〜!」

1人浮かれるアマリアの思惑とは裏腹に、イザベラはトキメキを必死に抑え込んでいた。

読んで頂いてありがとうございます。

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