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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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再会の喜びはトキメキと共に

レイリアは昨日約束した通り、イザベラの元を訪れていた。

イザベラは「正直に向き合いたい」という言葉通り、エディについて話し始めた。

「5年前にジョアンたっての希望で、エドゥアルドはポンバル家からエルナン翼に移ったの。私達もその方がいいと思い、賛成したわ。だってエドゥアルドってば無理をしてばかりいるんですもの!」

「無理って、体の事?」

「ええ。体調が悪くても剣の鍛錬をしていたのよ。夜中にこっそりと。誰が何を言っても聞かないものだから、心配したジョアンは王宮へ連れて行き自分で見張る事にしたの。それなのにエドゥアルドは未だにこっそりと鍛錬を続けているわ。本当に困った人。でも、そうね、レイリアがやめてって頼めばやめるかもしれないわね」

「‥私が頼んだからってやめるとは思えないわ」

「それはどうかしら?貴方が可愛くお願いすれば、言う事を聞いて大人しくすると思うんだけどねぇ。ウフフ」

「イザベラ!貴女からかってるでしょ?そういう所はエドゥアルド‥殿下と良く似ているわよ!」

「あら、私は大真面目よ。だってエドゥアルドは私に、慣れない王宮で大変だろうから、レイリアを助けてやってくれって手紙を寄越したんですもの。だからジョアンに貴女には話し相手が必要だって持ちかけたのよ。それから、貴女には特別な呼ばせ方をしているのも知っているわ。私の前では気を使わずに、いつもの呼び名で呼んで大丈夫よ」


「‥エディは、どうして昨日私の所へ来たの?」

「昨日あんな事があって、貴女は憔悴していたでしょ?私にはエドゥアルドに報告する義務があると思ったのよ。そうしたらどうしても自分の目で貴女の無事を確認したいって言うものですから、なんとかバレない様に連れ出したのよ。エドゥアルドの意思は尊重するべきだと思ったし」

「‥やり過ぎだわ。私なんか放っておけばいいのに。だってエディは誰にも存在を知られてはいけないんでしょ?私なんかの為に危険を冒す必要なんて無いのに」

「危険を冒してでも貴女に会いたかった。それが貴女に対するエドゥアルドの思いよ。私なんかって言い方は無しね。貴女だからこその行動なの。まあ、あんまり褒められた物じゃないけど」

「だって、私には分からないわ!エディは言ったの。昔、私に良く似た娘に会った事があって、私がそうであったらいいと思うって。でも私がそうである証拠なんてどこにも無いわ!エディは私に面影を重ねているだけなのよ。は、初恋の娘に」


イザベラは真剣な顔でレイリアに問いかけた。

「ねえレイリア、貴女は記憶が無いのよね?無理に思い出そうとしてはいけないと、医者から言われた事も知っているわ。でもそれは大切な人を失くしたばかりの子供の頃に下された診断でしょ?では大人になった今はどう?まだ悲しみから立ち直れない?」

「‥立ち直れてはいると思うわ。悲しいのは私だけじゃないって知っているから」

「それなら無理を承知でお願いするわ。どんなに辛くても、思い出す努力をして欲しいの。今私に言えるのはこれだけ。お願いよレイリア!どうか思い出して!」

「イザベラ‥!?」

「私に出来る事ならなんでもするわ。だから思い出す努力をして欲しいの」

イザベラの真剣な表情に、レイリアはどうしたらいいか分からなくなった。

「‥‥そう出来たらいいとは思うわ。でもどう努力すればいいのか分からないの」

「いいわ、一緒に考えましょう。さあ、今日はお話はここまでにして、貴女に特別なお客様が来ているから会いに行きましょう」

「特別なお客様?」

「ええ。さっき貴女が来る少し前に連絡が入ったの。私は初めて会うんだけど、貴女が良く知る人物よ」

「誰かしら?」

「それは会ってのお楽しみ!さ、行くわよ!」

レイリアは首を捻りながら、イザベラの後に着いていった。


応接室へ近付くと、アマリアの大きな声が聞こえる。

「ああ!久しぶりに見惚れてしまいましたよ!益々男振りが上がりましたね!」

「そんな風に褒めるのはアマリアだけさ。僕は女性に嫌われているからね」

「ドミニク殿下、それ本気で言ってます?」

「エンリケ殿、君も見ただろう?僕を見ると女性はみんな逃げてしまうんだ」

「まさか、天然なのか?これは危険だ!いいですかドミニク殿下、もし第一小隊の隊長に話しかけられたら、絶対に微笑まないで下さい。少しでも好印象を与えたが最後、新しい扉を開かされる危険性があります」

エンリケが真面目に話している最中、レイリアはたまらず走り出した。


「お兄様!!」

レイリアは勢いよくドミニクに飛び付いた。

ドミニクはよろめきもせず、レイリアをしっかりと抱き止め頭を撫でる。

細身に見えるが鍛えられたドミニクには、この程度の勢いはどうという事ない。

「レイリア、元気にしていたかい?毎日心配していたんだよ」

「元気よ!でもお兄様の顔を見たらもっと元気になったわ!」

「元気は結構だが、レイリアはレディの勉強をしているんじゃなかったのかい?レディは飛び付いたりしない物だよ。ほら、そちらの美しいレディを見てご覧。僕に紹介してくれないのかい?」

レイリアはしまった!と思い、慌ててイザベラの所へ行くと、手を引いてドミニクの前へ連れて来た。

「お友達のイザベラよ。明るくて楽しくて、お兄様の言う通り美しい人なの」

「イザベラ嬢か。初めまして、僕は兄のドミニクです。妹と友達になってくれて感謝します」

イザベラは固まったまま動かない。

「イザベラ?」

「あ、あら、私ったら!イザベラ・ポンバルと申します。ドミニク殿下にはお会い出来て光栄に思います。お噂は伺っておりましたが、あまりに眩い方で言葉を失いました」

するとドミニクはニッコリ笑ってイザベラに言った。

「眩いのは貴方の方だよイザベラ嬢。僕の事は殿下などと呼ばず、気楽に呼んで下さい。これからも妹をよろしくお願いします」

「ま、眩いなんて、そんな、私など!え、ええもちろんですわ!どうしましょうトキメキ過ぎて息が止まりそう!」


やられたな。

珍しく狼狽えるイザベラを見て、エンリケは思った。

さすがのイザベラ嬢もあの笑顔にはやられたな。

トキメキという言葉が漏れてしまっている。

きっと頭の中はポエムでいっぱいだろう。

しかしこの兄妹は天然過ぎる。

天然記念物並の天然だ。

暫く王宮は騒がしくなるぞ。


エンリケは自分もやられない様に、ドミニクから聞いた2人組の事を考える事にした。

読んで頂いてありがとうございます。

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