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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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出かけましょう

イザベラという人は、驚く程パワフルで行動力のある人だ。

昨日初顔合わせをしたばかりだというのに、今日早速朝から現れてレイリアに言ったのだ。

「一緒に出かけましょうレイリア!今日は全て講義をお休みにしたわ。せっかくお友達になったのだから、貴女に王都を案内しなきゃ!」

講義が全てお休みになった事は勿論だが、王都を案内してくれるというイザベラの申し出に、レイリアはとても喜んだ。


「どこか見てみたいという希望はある?」

イザベラに聞かれてレイリアは、う〜んと唸りながら考えた。

名所旧跡は外せないし、色々なお店も見てみたい。

でも今日一日で全て回るには無理がある。

あえて候補に挙げるとしたら‥‥


「市場へ行ってみたいわ!」

「市場?市場ってあの市場よね?」

「ええ。オセアノの市場が見てみたいの。きっと沢山お店が出ているんでしょうね」

無邪気にはしゃぐレイリアを見て、イザベラは悶えた。

「はぁ〜んもう!トキメクわ!そんな顔されたら希望を叶えない訳にはいかないわね。では王都一大きいリベイラ市場へ行きましょう」

「やった!ありがとうイザベラ!」

はしゃぐレイリアの後ろでアマリアが咳払いをする。

ウォッフン!

「ハッ!ホホホ‥」

「申し訳ございません、イザベラ様。姫様はまだレディ教育を受けている最中でして、少々、いえ大分、いやかなり?いえとんでもなく規格外な所がございます。はしたな‥いえ困惑される様な行いをしてしまう事もございますが、どうかお許し下さい」

「アマリア、大袈裟に言い過ぎよ!そこまで酷く無いわ」

「これくらい大袈裟に言っておけば、何かあった時に驚かないで対応して下さるじゃないですか。姫様は規格外のびっくり箱ですからね」

イザベラは2人のやり取りを見て笑っている。

「ホホホ‥侍女殿貴女面白いわね。お名前は?」

「愛の伝道師、アマリアと申します!」

アマリアはドヤ顔で言い切った。

レイリアはジト目でアマリアを見ている。

「まあ!オッホホホホ!よろしくね伝道師さん。私はまだ恋を知らないの。貴女に御指南頂かなくちゃね」


イザベラの言葉にレイリアは驚いた。

「恋を知らない」

イザベラ程の美女が?

だってイザベラは、エディの‥‥

「イザベラ、今の‥本当に‥?」

「ええ。私は以前、亡きエドゥアルド殿下の許嫁だったでしょ?これは家同士の対抗意識によるものよ。私はまあ、何というか、スパイの様な役割を担っていたの。だから恋なんてしている暇は無かったわ。従兄の殿下にはこれっぽっちも魅力を感じなかったしね。似過ぎているから」

「似過ぎている?」

「そうよ。顔も好みも髪の色も良く似ているわ。自分と似た様な顔に恋したら、まるでナルシストじゃない?それに私は赤毛が好きじゃないの」

そう言ってイザベラはフフッと笑った。


イザベラの言葉を聞いて、ホッとしている自分にレイリアは困惑する。

ここの所たまに、経験した事の無い感情に支配されてしまう。

困った事にこの感情は、自分で制御しきれないのだ。

いったい何が原因なのかしら?

環境の変化?

うん、それのせいねきっと!


「赤毛が好きでは無いなら、姫様とタイプが被りませんね。姫様は赤毛が好きですから」

アマリアが自信たっぷりに言うと、レイリアはカッと赤くなった。

「べ、別に赤毛が特別好きという訳じゃないわ。あ、でもイザベラの髪は好き」

イザベラは頰を紅潮させて、体を震わせている。

「レイリア、そんな事を言ってはいけないわ。せっかく我慢しているというのに、抱きしめたくなってしまうわ。邪魔するジョアンもいない事だし」

その言葉をアマリアは聞き逃さなかった。

「邪魔ですか?殿下が邪魔をしたのですか?イザベラ様が姫様を抱きしめるのを?姫様ってば何も言わないから、まあ!そんな事があったなんて!」

「別に特別話す様な事じゃないわ。私を助けようとしてくれただけよ!」

「そう。しかも私からレイリアを引き剝がして、自分が抱きしめたのよ。アマリア貴女にはもう分かっているみたいね」

「ええ、ええ、勿論ですとも!この愛の伝道師の目は誤魔化せません!それにしても、急に積極的になりましたねぇ殿下も。やはり姫様、金髪も選択肢に入れてみますか?姫様さえその気になれば、何か色々丸く収まりそうですよ?」

「ダメよ!絶対にダメ!レイリアには赤毛を好きでいて貰わないと!」

イザベラの強い口調にレイリアとアマリアはポカンとしている。

「まあ!オホホ‥私ったら、レイリアを独占したくて、ついムキになってしまったわ。まあ、この話はこれくらいにして、レイリアの希望通り市場へ出かけましょう」

レイリアは頷き、ニコニコしながらイザベラの後を付いて行く。

アマリアは首を捻りながら、その後ろを歩いて行った。


先頭のイザベラは考えていた。

レイリアの気持ちをジョアンに向けてはいけない。

幸いジョアンはまだ気付いていないし、性格的に認めようとしないだろう。

私は恋を知らない。

いや、恋などしている暇は無い。

ポンバル家の者として、使命を全うしなければ。

唯一ポンバルの血を引く王族、ポンバルの至宝たるエドゥアルドを、表舞台に返り咲かせるのだ。

その為にもレイリアには、エドゥアルドの希望となって貰わなければならない。


子犬のように無邪気に後ろを歩くレイリアに笑顔を向けながら、イザベラはポンバル家の悲願を達成させる事だけを考えていた。

読んで頂いてありがとうございます。

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