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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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ライバル出現

ジョアンとイザベラは、エルナン翼へ繋がる渡り廊下の前に出ていた。

ジョアンはイザベラの前を歩き、エルナン翼の回廊へと進んで行く。

そして2人で隠し扉を潜ると、エドゥアルドの部屋の前に出た。

ジョアンが扉をノックすると、中から微かに声が聞こえる。

2人は扉を開けて中へ入った。


「エドゥアルド!顔を見に来たわ!」

イザベラはそう言ってベッドの横に進み、勧められる前にベッド横の椅子に座った。

「久しぶりだね従妹殿。君は変わってないな」

エドゥアルドは穏やかに返すと、イザベラに微笑んだ。

「エド、今日はいくらか顔色が良さそうだね。でも無理はしないでくれよ。イザベラ、くれぐれもエドを疲れさせない様に!私はすぐ戻らなければならないんだ」

「分かっているわよ。ジョアン、貴方はもう戻って結構だわ。ここまでの案内に感謝します。ご機嫌よう!」

ジョアンは何か言いかけたが、渋々部屋を出て行った。


「ジョアンは私の事になると過保護で困るよ。話したくらいでは疲れない。一応密かに鍛えてはいるんだ」

イザベラは目を丸くしてからハァーと溜息を吐いた。

「困った人ねエドゥアルド。それで余計に調子を崩しては寝込んで来たというのに。5年前王宮へ密かに移したのは、ジョアンたっての願いもあるけど、王宮なら人の目があるからおいそれとそういう事が出来ないという狙いもあっての事よ。貴方には一体何が効くのかしら?まあ、私は貴方に一番効く薬を知っているけど」

「‥‥それで、会った印象はどうだった?」

「どストライクよ!」

「そうだろう。君の好みはよく分かっているからな」

「私のというか、私達の好みはそっくりですものね。従妹とはいえ、好みが被り過ぎて嫌になるわ。大丈夫、私が彼女を守ってみせるから。貴方は安心して私に任せなさい」

「君には頼りっぱなしだ。許嫁の事といい、今回の事といい」

「ポンバルの者にとっての貴方は、我が身を犠牲にしても守るべき存在よ。だから当たり前の事をしているだけだし、そういう風に育てられたわ。それに、ポンバル家はまだ貴方の復帰を諦めていないの」

「病持ちで一度死んだ者の事など、誰にも認められやしない。ましてや私は望んでいないし、ジョアンという立派な存在がいるじゃないか」

「それでもポンバルの血を持つ王族は貴方だけなのよエドゥアルド。貴方が望む望まないは関係ないの。だから何としてでも貴方の身分を取り戻してみせる。これがポンバル家の意思よ。私も一員として、意思に逆らう事はない」

「私の望みは君に頼んだ彼女の幸せだけだ。彼女が安全で幸せであればそれでいい」

イザベラはまじまじとエドゥアルドを見ながら言った。

「ふぅん。彼女が幸せならねぇ‥。他の男の物になってもそんな事が言えるのかしら?案外近くに狙っている人はいるんだけど」

「‥イザベラ、何が言いたい?」

イザベラは少し勿体ぶってから、話し始めた。


「今日王宮に着いて、最初に聞いた噂は"殿下は姫君に想いを寄せられている様だ"って噂だったわ。それを確かめる為に彼女にちょっかいを出したら、なんとあの女嫌いのジョアンが、必死に彼女を守ろうとして、腕の中にすっぽり包み込んだの。本人無意識のうちに抱きしめていたのね。それを気付かせてやったら、真っ赤になっちゃって!ウフフフ‥思い出したら可笑しくなったわ」

「‥‥笑えないな。ジョアンが‥リアを‥なんて‥」

「本人は認めていないけどね。まあ、私は渡さないって宣言しておいたわ。だから貴方は無理をしないで、人前へ出られるくらいには回復しなさい。後はポンバル家が何とか陛下に働きかけるから。そうしないと勝負も出来ないじゃないの」

「陛下は私を認めないよ。私が生きていては国民に嘘を言った事になる。それにジョアンには本人が望んでいないにも関わらず、マンソン一族が後盾として付いているからね。万が一私の存在が認められたとしても、また私が狙われるのを陛下は恐れているんだ」

「ポンバル家は必ず貴方を守るわ!もうマンソン一族の好きにはさせない。それにあれは王妃がやった事よ。証拠さえ掴めばマンソンを排除出来るのよ!」

「証拠となる薬が手に入れば、私はとっくに元通りだったさ。簡単ではないからこの通りだ。ポンバル家を危険な目に合わせるのは、私の本意ではないよ」

「エドゥアルド、時には戦う事もしないと、本当に欲しい物は手に入らないわ。私達はもう覚悟が出来ているの。このまま貴方は指を咥えて、彼女をジョアンに攫われるのを見ているつもり?」

「‥‥‥」

「まあいいわ。一番のライバルはジョアンじゃないから。貴方にも勝ち目はないかもね」

「‥‥誰なんだ?そのライバルって言うのは?」

「教えてあげない。貴方が舞台に上がる気になるまでは、内緒にしておくわ」

イザベラは意味深に笑った。


「君は内心楽しんでいるね?」

「さあ?少なくとも冷静な貴方が、彼女の事になると冷静でいられなくなるのは、新鮮だと思っているわ」

「君は人を好きになった事がないからそんな事を言うんだ。だがそれは私の許嫁などにされたせいだね。いずれ関係を解消する予定だったとはいえ、君にはその機会を与えてやれなかったんだから」

「気にしないでよ。許嫁っていう立場は情報収集には役立ったわ。それに与えられる物ではないと思うし、まだこれからそういう機会が訪れる可能性だってあるわ。まあ、貴方は対象外だけど」

エドゥアルドはフッと軽く笑った。

「お互いに好みが似過ぎているからね。‥‥愛らしかっただろう?」

「ええ!それはもう、思わず抱きしめたくらいよ!驚かせてしまったけど、お友達になれたの。貴方の分もたっぷり可愛がるから安心して」

「私を差し置いて可愛がっていいとは言っていない」

「独占欲まで似ているわね私達は。この赤毛といい、ポンバル家の特徴が良く出ているわ」

「で、ライバルとは誰だ?」

「フフフ‥焦りなさいなエドゥアルド。舞台に立ったら教えてあげる。さて、私はそろそろ帰らないとジョアンに文句を言われてしまうわ。また来るわね!」

「ああ。で、誰だ?」

「オッホッホホホ!面白いわ!ご機嫌ようエドゥアルド!」

イザベラは言うだけ言うとさっさと部屋から出て行ってしまった。


エドゥアルドは暫く悶々とする事になるのだが、イザベラの言ったライバルがドミニクであるとは知る由もなかった。


読んで頂いてありがとうございます。

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