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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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独占とその裏の意味

「ジョアン貴方、姫君を離して差し上げたら?私達はもうお友達ですから、貴方の心配する様な事はありませんわよ」

レイリアが思っていた事をイザベラが代弁してくれた。

ジョアンは改めて自分が今している事に気付いたらしく、急に真っ赤になった。

えっ!?ちょっと待って、なんで赤くなるの?

こっちまで恥ずかしくなるじゃない。

レイリアも吊られて赤くなった。

それでもまだ離そうとはしないジョアンから、イザベラはベリッとレイリアを引き剥がした。


「ドサクサに紛れて姫君を独占しようとするなんて、中々やる様になったわね、ジョアン。まあいいわ。姫君とはこれからもっと親交を深めるつもりだから、今は許して差し上げるわ」

イザベラの口調は先程とは打って変わって馴れ馴れしくなっている。

「イザベラ様、先程から殿下の事をお名前で呼んでおられますが、お2人はどういった関係なんですか?」

「姫君、私の事はどうかイザベラと!そして出来れば姫君のお名前を呼ぶ許可を頂けますか?」

「イザベラ、許可など必要ありません。お友達なんですから、遠慮なくレイリアと呼んで下さい」

「もう!トキメキますわ!イザベラって呼んで頂いたわよジョアン!ああ、私とジョアンの関係ですね?まあ、幼馴染みみたいな物です。詳しくはジョアンから」

まだ赤い顔のジョアンは、突然振られたがすぐ説明してくれた。

「イザベラは兄上の母方の従妹にあたる。それで、幼い頃よりよく顔を合わせていたのだ」


‥ああ、ポンバルってどこかで聞いた事があると思ったら、エディのお母様の実家だったのね。

と、いう事は瀕死のエディを保護したのも、イザベラの家って事になるのね。


「それだけだと説明不十分よジョアン。レ、レイリア、キャ〜呼んじゃった!コホン、えー私は亡きエドゥアルド殿下の従妹で、許嫁でもありましたの。ですから、子供の頃よく王宮へ足を運んだものです。ジョアンとはその頃からの付き合いですわ。エドゥアルド殿下に纏わり付いていましたから」

「えっ‥‥!?」

レイリアはイザベラの発した単語に、一瞬言葉を失った。

許嫁‥‥

‥‥エディは王太子だったのだから、許嫁がいてもおかしくないわ。

おかしいのは私。

なぜかとても動揺している‥‥。


「レイリア?どうかしましたか?」

突然黙り込んだレイリアを、イザベラが不思議そうに覗き込む。

「あ、いえ、何でもありませんわ。‥亡きエドゥアルド殿下の許嫁‥だったという事でしたわね。それで幼馴染みの様な関係でいらしたと。ですからお2人は仲がよろしいんですね」

イザベラはニッコリ笑って

「ええ」

と頷いた。


「まあ、許嫁といっても、実際には友達となんら変わりなかった。子供の頃にそんな事は理解出来んしな」

やっと顔色が戻ったジョアンが口を開く。

「あら、エドゥアルド殿下は理解されていましたわ。それに、私が許嫁になった意味もね。まあ残念ながらお亡くなりになられて、私は一部の貴族達から傷物扱いで、20歳になるというのに嫁ぎ先も見つかりませんが。どこかの一族の根回しのお陰で」

イザベラは結構重い話をサラッと言ってのけた。


あ、なんだか辛い話をさせてしまったみたいね。

ちょっと話題を変えてみよう。

「イザベラは20歳になりますの?私と二つ違いで兄よりは一つ下になりますね」

「お兄様と仰いますと、ドミニク殿下でしたよね?非の打ち所がないと評判の。‥ウチの殿下と違って」

「まあ!オセアノの方にそんな風に言って頂けるなんて光栄ですわ!自慢ではありませんが、兄は私にとって世界一なんです!」

興奮するレイリアにイザベラはうっとりと目を細め、ウズウズとしている。

「イザベラ、姫君に抱きつこうとしているだろ?それにさっきポソッと呟いたのを聞き逃さなかったぞ」

「地獄耳は嫌われますわよ。ただでさえ根暗なのに」

「相変わらず私には辛辣だな。姫君、何度も言うが、この通り性格に難がある人だが、頼りにはなるので我慢してくれ」

「言い返したわね?ジョアンの癖に言い返したわね?」

「そうだ。姫君にはこの後予定が詰まっている。いつまでも我々の都合に付き合わせる訳にはいくまい?」

「そうだったわ!レイリアごめんなさいね。私達のつまらない言い合いに付き合わせて。また改めて伺いますので、どうぞ講義に向かって下さい」

レイリアはホッとした。

この2人のやり取りは見ていて楽しいのだが、講義の時間も迫っていたので、どう切り出そうか考えていたのだ。

「それでは遠慮なく。イザベラ、またお会いしましょう」

「もちろんですわ!近いうち必ず!」

レイリアは慌てて部屋を出て行った。


部屋に残ったイザベラとジョアンは、レイリアの姿がすっかり見えなくなると、真顔になった。

「さてジョアン、分かっていると思うけど、私が来た理由はもう一つあるわ」

「ああ、分かっている」

「エドゥアルドの様子はどうなの?」

「相変わらずだ。まだ解毒薬は見つからない」

「そう。手紙ではそういう事を聞いてもエドゥアルドは誤魔化すから、実際会って確かめないととは思っていたんだけど。会う事は可能?」

「今日は大丈夫だ。だがあまり長い時間は兄上の負担になるから、手短に済ませてくれ」

「相変わらず貴方もレイリア同様、兄上が一番なのね。‥‥レイリアといえばジョアン、貴方どういうつもり?」

「何がだ?」

「レイリアが好きなんでしょう?」

「ばっ、馬鹿な事を言うな!何を根拠にそんな馬鹿な事を!」

「自分で認めていない訳ね。そういう性格だったわ。あのね、貴方の言動は貴方を良く知っている者からすればダダ漏れよ!今までだったら絶対に女性を私から奪って抱きしめるなんて事、あり得なかったんだから!」

「あれはピンチを救っただけだ。好きとかそういう事ではない」

「まあ、認めないなら逆に好都合だわ。はっきり言っておきますけど、レイリアは貴方には渡さない!」

「また私が独占してるとかそういう事か?」

「そうではないわ。私が独占するからとかそういう事でもない。強いて言うなら至宝の為に渡さない。それだけ」

「時々何を言っているのか分からない時があるが、今のが一番分からなかったぞ」

「分からないならいいわ。自覚する前に諦めてくれれば、それでいいの。エドゥアルドには今から会える?」

「ああ。案内する」

ジョアンとイザベラはレイリアが出て行ったのとは別方向へ歩いて行った。

複雑な王宮の建物には、様々なしかけも施されている。

2人の姿はいつの間にか消えていた。


読んで頂いてありがとうございます。

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