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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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疎外そして独占!?

今日の昼食はホアキン翼でと言われ、レイリアはアマリアを連れてそちらへ向かった。

例の話し相手の令嬢とは、これから初顔合わせとなる。

ジョアンが"気さくな令嬢"と言っていた事から、楽しい人であって欲しい、仲良くなれたらいいな等と密かに期待を膨らませていた。

「姫様いいですか、いくら気さくな方とは言っても、お相手の令嬢はレディですよ!くれぐれもボロを出さない様十分に、十っっっ分に注意して下さいね」

「分かっているわよ。でも気さくな方なら少し位のポカなら許してくれるんじゃないかしら?」

「姫様のはポカなんて可愛いもんじゃありませんよ。ボロですよボロ!いえ、ボロより足を出さない様に!の方がいいかもしれません。姫様は経験が無いから分からないかもしれませんが、令嬢の中には冗談の中に、辛辣な嫌味を含んだ物言いをする方だっているんです。気さくな方とはいえ、実際のところ分かりませんからね。くれぐれも怒って回し蹴りなどしないで下さいよ!」

「でも、殿下が選んだ方でしょ?なら大丈夫よ。きっと」

「おや?随分殿下の株が上がりましたね?」

「誠実という面では信頼出来る方だって分かったからよ。深い意味は無いわ」

「フッフッフ‥そうですか」

アマリアは生暖かい目でレイリアを見たが、何か一人で納得した様で、それ以上は何も言わなかった。


昼食の為に用意された部屋は、小さい箱庭を真ん中に置いて、周りを囲むような作りの建物の一角にあった。

箱庭側が一面ガラス張りの為、外の景色と室内が一体化している様な錯覚に囚われる。

室内から緑を間近に感じながら、食事をしようという趣向の様だ。


レイリアが食事の席に案内されると、既にジョアンともう一人、赤毛の女性が座っていた。

女性はレイリアを見ると立ち上がり、ドレスの裾を持ち上げて軽く頭を下げた。

その優雅な所作に思わず見惚れたが、女性の容姿にはもっと惹きつけられた。

艶やかな赤毛に少し吊り上がった意思の強そうな琥珀色の瞳、形の良い鼻と薔薇色の唇は美女と呼ぶに相応しい。

「姫君、こちらが貴女に紹介したかったイザベラ嬢だ。気さくな方なので畏まらず接して欲しい」

ジョアンが紹介すると、イザベラは口を開いた。

「お初にお目にかかります。イザベラ・ポンバルと申します。姫君にお会い出来る事を楽しみにしておりました」

イザベラはそう言うと、ニッコリと笑った。

なぜかレイリアは自分に向けられたその笑顔に威圧感を覚え、笑顔と共に向けられた射抜く様な鋭い眼差しにも、どことなく居心地の悪さを感じた。


なんだろうこの感じ?

嫌われて‥いる?

ううん、初対面で嫌われてるってあり得ないわよね。

きっと気のせいよ。うん。

レイリアは自分の考えを打ち消して、イザベラに挨拶を返した。

「レイリア・バルコスです。私も楽しみにしておりました。オセアノには不慣れなので、色々教えて下さいね」

レイリアもニッコリと微笑むと、イザベラはすぐにレイリアから目線を外した。


あれ?

やっぱり私‥嫌われて‥

ううん、まだ挨拶をしただけじゃない。

気のせい気のせい‥

「挨拶はそれくらいで、座って食事にしよう」

ジョアンに言われレイリア達が座ると、それが合図だったらしく、次々と食事が運ばれて来た。


食事を始めて暫くすると、レイリアは最初からイザベラに感じていた違和感が、気のせいでは無かった事に気が付いた。

「姫君、この後の講義は何だ?」

「王国史と礼儀作法です」

「そうか。何か困っている事があったら、遠慮なく言ってくれ。私に出来る事なら力を貸そう」

レイリアがお礼を言おうとすると、すかさずイザベラが口を挟む。

「そういえば殿下、聞きまして?殿下のご学友のアフォンソ様の妹、ジョアニア様の婚約が決まりましたのよ」

「それは初耳だな。アフォンソは妹の縁談を早く纏めたいと言っておったから、喜んでいるだろう」

「ええ。それはもう大層喜んで、私がこちらに伺う事を知り、殿下にお伝えしてくれと言付かりましたの。殿下にも心配をして頂いたからと」

イザベラはレイリアの知らない話を長々と続ける。

さっきからずっとこんな調子で、ジョアンがレイリアに話題を振ると、割り込んで別の話題に変えてしまい、レイリアだけ蚊帳の外にされるのだ。


ハァ‥私、やっぱり嫌われていた様ね。

こうもあからさまに避けられると、腹が立つというよりむしろ清々しいわ。

いいわ、そっちがその気なら、会話なんて無理にしない!

食事に集中するのみよ!

それからレイリアは無言で黙々と食事を続けた。

時々ジョアンがレイリアに話題を振ろうとするが、イザベラによって全て妨げられる。

その状態はデザートが運ばれて来る前まで続き、さすがに居心地の悪さに耐えられなくなったレイリアは、デザートの前に口を開いた。


「私、講義の前に復習したい所がありますので、失礼ですがここで退席させて頂きます」

「いや、それならば私が力になるので、せめてデザートを楽しまないか姫君?」

「いえ、私にはイザベラ様の様な知識や教養がございませんので、より多くの努力が必要なのです。それに私などいてもいなくても同じ事。どうぞお2人でお楽しみ下さい」

やはり腹が立っていた様で、思わず嫌味が口からポロッと出てしまった。

アマリア、ボロじゃなくポロッとが出たわ!

足は踏み止まったけどね!

怒ってもいいでしょ?

こんな失礼な態度ってないわよ!


レイリアは立ち上がると、2人に背中を向けてその場を去ろうとした。

すると、意外な事にイザベラがレイリアを呼び止める。

今更何の用だとばかりにイザベラに向き直ると、イザベラは立ち上がりレイリアの前まで歩いて来た。

「何かご用ですか?先程から私にはご用など無い様に感じましたが?」

するとイザベラは頰を紅潮させ、いきなりレイリアを抱きしめた。

えっ??

何ですか?コノヒト?

レイリアが固まっていると、イザベラは抱きしめる腕に力を込めて、興奮気味に言った。

「ん〜もう!ダメだわ!我慢出来ない!可愛い!は〜本当に可愛い!」

焦ったジョアンが口を開く。

「イザベラ嬢!姫君が固まっている!離してあげなさい!全く貴女という人は!素直なのかそうでないのか、それとも捻くれているのか?」

「嫌よ!一目見て抱きしめたいって思ったんですから!確かに私は捻くれていますわ。殿下に姫君を独り占めされたくなかったんですもの」


ナニソレ?


「どうりでやたら私に絡んでくると思ったら、貴女が姫君を独占したかったと、そういう訳なのだな?」


いや、ナニソレ?


「だって、殿下の方が私より姫君との共通の話題が多いじゃない?殿下ばっかりズルいわ!」

「全く困った人だ。とにかく姫君を離してあげなさい」

ジョアンはイザベラの側へ行くと、レイリアを引き剥がした。

「嫌よ!私は姫君の話し相手よ!殿下には渡さないわ!」

イザベラも今度はジョアンからレイリアを奪おうとする。

するとジョアンは必死にレイリアを守ろうとして、レイリアをすっぽりと腕の中に包み込んだ。

「ダメだ!私だって姫君を渡さない!」


えーと、どうなっているんでしょう?この状態‥

私には抱きしめられている様に感じるんですが?

なぜこんな事に?

2人は子供の喧嘩の様に言い争っている。

さすがに見兼ねたレイリアは、口を挟んだ。

「あの〜言い争いは止めて、どういう事か説明してくれます?」

2人はハッとして、動きを止めた。

「ああ、貴女が一番困っているな。実はイザベラ嬢には困った癖があって、気に入った物を見ると抱きしめたり、独占したがったりするのだ。貴女を見て一目で気に入り、照れ隠しにそっぽを向いているうちはまだ良かったのだが、私を牽制する余り、貴女を会話から外してしまった。当然貴女は気分を悪くしただろう?」

「はぁ、その通りですが‥あの、殿下、離して頂けますか?」

「いや、ダメだ!イザベラ嬢の興奮が収まらないうちは危険だ」

「何ですか殿下!人を盛りのついた猫みたいに!姫君、私の行いを謝罪致しますわ。貴女を見て好みドストライク過ぎて、どうしていいか分からなくなりましたの。殿下の仰った通り、気に入り過ぎてつい姫君に嫌がらせとも取れる行いをしてしまいましたわ。申し訳ございません」

「はぁ、嫌われていた様ではなかったのですね。安心しました」

「嫌うだなんてとんでもない!もう!姫君の愛らしさと美しさに私はトキメキましたの!どうか仲良くして頂けますか?」

理由が分かったレイリアは、イザベラに微笑んでみせた。

「もちろんです。お友達になって下さい」

イザベラは悶えている。

「この通り気さくが過ぎる人なのだが、頼りにはなるので私からもお願いするよ」

ジョアンの声が頭の上から聞こえた。


イザベラ様って変わっているけど、上手くやれそうな気がするわ。

それにしてもジョアン、いい加減離してくれないかしら?

読んで頂いてありがとうございます。

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