表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
49/175

訪問者

翌日の午前中、レイリアはダンスのレッスンを受けていた。

体を動かすのは得意なので、楽しんでレッスンを受けていたのだが、一曲だけステップに苦戦を強いられ、どうしても上手くいかず、講師から「一旦休憩を入れましょう」と提案されて、小休止を取っていた。

リズムが取りにくいのよね。

それから‥タイミングよ!

それさえ掴めれば上手く行くと思うんだけど。

レイリアが改善すべき点を洗い出していると、レッスン場に突然ジョアンが入って来た。


「で、殿下、どうされましたか?」

講師のソウザ先生は、ジョアンの突然の訪問に驚きを隠せない。

「私に気にせず続けてくれ。姫君のレッスンが順調か様子を見に来た」

「それが、一曲だけ行き詰まっておりまして、小休止を取っている所なのです」

「行き詰まっているとはどの曲だ?私が相手を務めて問題ないか?」

「おお!勿論です!殿下のダンスは一流ですから、姫君も私より踊り易いでしょう」

突然の訪問に加えて思わぬ展開に、レイリアは少し戸惑ったが、お手並み拝見とばかりに受けて立つ事にした。


「姫君、私が相手だが我慢してくれるか?」

「私に一流の相手が務まるかしら?お手並み拝見ね」

ジョアンはニッコリと笑いかけ、レイリアの手を取ると踊る前のポーズを取った。

伴奏者がピアノを弾いて音楽が流れ出すと、ジョアンは流れる様に軽やかに踊り始める。

「そこで左足を前へ」

言われるままステップを踏むと、自然とタイミング良く足が前に出た。

あれ程苦戦していたのが嘘の様だ。

「驚いたわ!貴方本当に上手なのね。それにリードも上手くて踊り易いわ」

「ダンスは得意ではあるのだが、それが貴女の力になれたのなら、得意で良かったと思う」

少し照れながらジョアンは微笑んだ。

ソウザ先生も満足げに頷いている。

アマリアの代わりに着いて来た女官は、壁際で頰を紅潮させて、ホォっと感嘆の溜息を吐いていた。


曲が終わるとその場にいた全員が拍手を送った。

「殿下、ご指導ありがとうございます。それに、とても楽しかったわ」

「貴女に楽しんで貰えたなら、私も嬉しい。ああそうだ!元々これを伝えに来たのだ。後で貴女に紹介したい人物がいる。昼食の席に同席させるつもりだが構わないか?」

「え?ええ。構いませんけど、どの様な方なのでしょう?」

「貴女の話し相手にどうかと思ってな、とても気さくな令嬢を呼んであるのだ。彼女なら貴女とも話が合うのではないかと思う」

「まあ!それは楽しみですわ!オセアノでは友人がいなくて寂しかったのです。とても嬉しいですわ」

レイリアが微笑むと、ジョアンはほんのり頬を染めて照れ臭そうに笑った。

壁際にいた女官はその様子を見て目を丸くしている。

「殿下は姫君に思いを寄せられている様だ」

その日の内にこの噂が王宮中に広まった。


レイリアがレッスンを終えて、礼儀作法の講義を受けている頃、王宮には一台の馬車が停まった。

馬車の前には侍従が控えている。

中からは艶やかな赤毛をハーフアップで纏めた、意思の強そうな美女が降りて来た。

侍従はその美女をホアキン翼のサロンに案内すると、お茶を用意してもてなし

「まだ時間には大分早いので、暫くこちらでお過ごし下さい」

と言ってその場を離れた。

暫く後にエンリケが美女の元を訪れる。

「イザベラ嬢、急な打診をお引き受け頂き、ありがとうございます。しかし、随分とお早いお着きですね?」

「お出迎えご苦労様エンリケ殿。久しぶりの王宮ですもの、情報収集をしておきたかったの」

「情報収集ですか?」

「ええ。自分の目で確認する前に、姫君がどんなお人柄なのか知っておくべきでしょ?なんといっても殿下直々に打診を頂いたのですから。でもまあ、今少し情報を集めた限りでは、あの殿下が随分と変わられた様ね。特に‥姫君の前では」

「はい!相変わらずお耳がお早い!私も喜ばしい事だと思っております。姫君との対面は昼食の席を用意しておりますが、よろしいですか?」

「ええ。‥‥楽しみだわ‥‥」

美女はニッコリと大輪の花の様な笑顔を浮かべてみせた。


相変わらず真意の読めない方だ。

殿下に協力的なのかは分からないな。

エンリケは笑顔を浮かべながら、腹の底でそう考えていた。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ