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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
39/175

そこは重要ではない

「なんだって!!本当にそれは間違いないのだな?」

「はい。バルコスの者が言っていました。名前も名乗りましたし、確かな情報です。ですから我々も急ぎ戻って参りました」

エンリケは諜報員として送った二人の部下から報告を受けている。

そこで驚愕の事実を聞かされたのだ。

「何という事だ‥まさか、まさか姫君だったなんて‥!!」

ジョアンの探していた娘はレイリアだった。

本来なら喜ぶべき所だろう。

しかし、エンリケの顔は曇っている。

「お前達はご苦労だった。私は急ぎ殿下に報告に行く」

そう言ってエンリケはジョアンの執務室へ向かった。


執務室には、いる筈のジョアンの姿が無い。

エンリケは苛立ちながら、仕方なくジョアンを待つ事にした。

指先でトントンと机を叩き、落ち着きなく近くの書類に目を通す。

さて、どうしてくれよう?

エンリケは今回のバカげたジョアンの条件を思い返して、無性に腹が立っていた。


暫くするとガチャという扉を開ける音と共に、ジョアンが中に入って来た。

「殿下、どちらへお出かけだったのですか?供の者も付けないで?」

ジョアンはエンリケから何やら殺気を感じて、一瞬狼狽えた。

「少し気晴らしにな、王宮内を歩いていたのだ。で、どうした?やけに殺気立っているな」

エンリケは長い溜息を吐くと、チロリと横目でジョアンを見た。

「殺気?ええ、そりゃあ殺したくもなりますよ。あまりにバカバカしくて!」

「何だ?何があったのだ?人払いまでして深刻な話か?」

エンリケは再び溜息を吐くと、ジョアンを睨み付けた。

「深刻に決まっている!君のバカさ加減を晒す訳にはいかないからな!」

珍しく声を荒げたエンリケに、ジョアンは驚き一瞬肩をビクっと浮かせた。

「私のバカさ加減?エンリケ、落ち着いて話そう。何があった?」

「これが落ち着いていられるか!いいか、よく聞け!君が蔑ろにしたバルコスの姫君こそ、君が探し求めていた初恋の娘だ!!自らのエゴで遠ざけようとした姫君に、今更どの面下げて"貴女こそ私の探していた人だ"などと言える?あ〜!!なんてバカバカしい!バカバカしい大賞があったら、間違いなく優勝だ!!」

「そんな大賞があるのか?」

「例えだ!!そこは重要じゃない!」

「しかしそう言われても、本当に姫君なのか?」

「間違いない!君の言った特徴を持つ娘は、バルコスの姫君以外いないんだ。バルコス人がそう言うのだから間違いない!」

ジョアンは今一つピンと来ない様子で、首を捻っている。


「で、どうするんだジョアン?君は姫君に完全に嫌われているんだぞ。今更好かれ様にも無理がある」

「いや、そこまで嫌われてはいないと思うのだが。ネクランとは言われたが」

「ネクランとは何だ?」

「いや、ほんの言葉遊びだ。気にするな」

「ジョアン、やけに冷静だな?私は苛立ちが収まらないぞ。今なら苛立ち大賞にノミネートされる自信がある」

「そんな大賞があるのか?」

「だから例えだ!!冗談抜きでこんな話は出来ん!」

「しかし姫君の顔も見ていないからな。確認しない事にはなんとも‥」

「それは確かに。姫君は頑なに誰かさんの十項目を貫こうとしておられる。ここはもう少し打ち解けて貰わねば、話も出来ないぞ」

二人はう〜んと首を捻って考えた。


暫く考えていると、エンリケが口を開いた。

「ジョアン、閃いたぞ!名付けて"ドキッ!ピクニックでお近付きになっちゃう"作戦だ!!」

「何だそのネーミングセンスは!悪いがエンリケ、ネーミングセンス大賞には登録すら叶わないだろうよ」

ジョアンは少し可哀想な物を見る目でエンリケを見た。

「いや、そこは重要ではない。‥残念ではあるが」

「残念なのか?まさかエンリケ‥本命はネーミングセンス大賞だったのか?」

「だからそこは重要ではない!まあ、ネーミングセンス大賞の出資者は私だが。こんな話をしている場合ではない。いいかジョアン、姫君はレディ教育でみっちり拘束されている。そろそろ気晴らしも必要だろう。そこで屋外の景色の良い場所へピクニックに誘うのだ。開放的な場所でなら、いくらか打ち解けてくれるだろう。何よりジョアン自らが姫君をもてなすというのが重要だ」

「そう上手くいくとは思えんのだが‥」

「死ぬ気でやれ!そうでなければ君は姫君に好かれる事は無い!私は今から準備を整える。明日出かけられるよう手配しよう」

エンリケは言うだけ言うと、早速準備に出かけた。


娘の正体が姫君だったって?

でも姫君は兄上が出会った娘の話をしても、他人の話の様に聞いていたぞ。

エンリケが間違った情報を仕入れてくるとは思えないが。


ジョアンは首を捻りながら、ピクニック大作戦に改名した。

読んで頂いてありがとうございます。

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