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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
22/175

本番直前


ジョアン達3人が小屋へ辿り着くと、離宮の捜索隊は膝を折って頭を下げた。

その中の一人がジョアンの前に進み出て、深刻な表情で口を開く。

「殿下、我々の捜索が遅れた為に、この様な事態を引き起こし、大変申し訳ございません。姫君の無事は確認出来ました。ですが姫君は、旅の準備をせよと仰っておられます」

「旅の準備とは、どこか他へ移るという事か?」

「いいえ。姫君はミドラスへ向けて旅立つと、その要求が通るまで、小屋から一歩も動かないと仰って、扉を固く閉ざしております」

「‥‥時すでに遅しの方か。姫君との会話は可能だろうか?」

「分かりません。少なくとも先程までは、我々の問いかけに答えてくれました」

「‥そうか。状況は分かった。そなた達には苦労をかけた」

捜索隊は一斉に頭を下げて、待機の陣形を組んだ。


「殿下、先ずは私が姫君に問いかけをしてみます。殿下が受け入れられるかは、まだ分かりませんので」

エンリケはそう言って小屋の扉の前へ進むと、馬を跳ばして乱れた髪を整えた。

「いや、ヴェローゾ殿、貴方方では難しい。事態は深刻だ。身内の私が話をしてみる」

扉をノックしようとしたエンリケを制し、ルイスが前へ出た。

「申し訳ない。確かにブラガンサ殿の言う通りだ。ここはお願いしても良いだろうか?」

ルイスは頷き扉をノックした。

コン!ココン!


ギイっと少しだけ扉が開き、アマリアが半分だけ顔を出す。

「私だ。従妹殿にお会いしたい。中へ入れて貰えないか?」

アマリアは無言で頷き、ルイスを中に入れて扉を閉めた。

「アマリア、何か臭うが何の臭いだい?」

「タマネギです。私は"大袈裟に泣く侍女"ですから。ほら、こうやると涙が出ますよ」

アマリアが切ったタマネギの欠片を取り出し、ルイスの鼻先に近付けると、ルイスは露骨に嫌な顔をした。

「分かった、分かったから僕に近付けるのはやめてくれ。努力は認めるけど、臭いがキツイ」

「タマネギをバカにするもんじゃありませんよ。泣きながら血液サラサラです」

「いや、それはどうかと。一旦タマネギから離れてくれ」

その様子を見ていたレイリアは、少し呆れながら二人を諭す。

「二人共、扉から離れて話しましょう。聞かれたら台無しになるわ」

二人は頷き、レイリアが座っているミゲルが用意したソファに進んだ。


「さてルイス、首尾はどう?」

「上々だよ。ミドラスを何度も匂わせたから、本気で君がミドラスへ行くと思っている。殿下は僕に頭を下げて謝罪した。君にも頭を下げるだろう」

「一応反省はしているみたいね」

「君に謝罪を受け入れて貰う為なら、どんな条件でも受け入れるって。しっかり言質は取れたよ」

「うまく追い詰めたじゃない!まあこれだけ大騒ぎになったら、殿下一人で解決出来る問題では無くなったわね」

「君はその格好で更に追い詰めるつもりだろう?例の解説は必要かい?」

「もちろんよ。ルイスはフォローをお願い」

「任せとけって相棒!」

「それじゃあ入って貰いましょうか。アマリアも準備はいい?」

「姫様‥グスッ既に準備は出来てグスッ」

「あ、大丈夫みたいね」


ルイスは立って扉へ向かい、振り返って頷くと扉を開いた。

扉の側で待っていたエンリケは、中の姫君を見てギョッとした。

ジョアンは再び目にした姫君の姿に、ショックを隠しきれなかった。

読んで頂いてありがとうございます。

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