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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
21/175

後悔先に立たず


「‥‥姫君がそう仰るのは無理もない」

静まり返った執務室で、最初に口を開いたのはエンリケだった。

「とにかく、至急姫君の元へ向かわなければならない。これ以上の無礼は、ブラガンサ殿の仰った"最悪のパターン"になり得る。いや、時すでに遅しかもしれない。今我々に出来る事は、謝罪以外何も無い!」

エンリケはそう言うと、直ぐに馬の準備を言い付けた。

さっきから黙ったままのジョアンに、エンリケは厳しい口調で声をかける。

「殿下!呆けている場合ではありませんぞ!これは全て殿下の蒔いた種なのです!最悪のパターンを阻止する為にも、殿下には頭を下げて貰います!」

ジョアンはハッとして頷くと、ルイスの足元へ跪いた。

「ブラガンサ殿、今回の事は全て私の責任だ。先ずは貴殿に謝罪する。すまなかった」

ルイスの前で頭を下げる。

「臣下の私に頭を下げるという勇気は認めましょう。ですが果たして、姫君が謝罪を受け入れるでしょうか?それに殿下は、どう責任を取るおつもりですか?」

「姫君に謝罪を受け入れて貰う為ならば、どの様な条件も受け入れよう。私の出した条件は、余りにも馬鹿げた条件だった」

「ならば姫君にそう伝えて下さい。どうするかは姫君次第です」

「分かった。本当にすまなかった」


意外と素直だなと、ルイスは思った。

大国の王太子が臣下に頭を下げるなど、簡単に出来る事では無いのだが。

こんな事が出来るのならば、あの様な条件など出さず、最初からレイリアを受け入れていれば良かったのに。

殿下がああも頑なにこだわる想い人とは、いったい誰なのか?

少し調べてみる必要があるな。

殿下の行動には矛盾が多い。

とりあえず、今は様子を見よう。

言質は取った。

僕の役目は終わりだ。


さっきエンリケが言い付けた家来が戻って来ると、エンリケが執務室を見渡しながら言った。

「馬の準備が整いました!直ちに姫君の元へ向かいましょう!シモン、ミゲルはお前に任せる。とりあえず今は牢にでも入れておけ!」

「お任せ下さい。兄上に相応しい牢を用意致しましょう」

「なっ!?お前、さっきは兄などいないと!あれ程残念だと言ったくせに!」

また何やら騒ぎ出したミゲルを尻目に、一同はレイリア達のいる小屋へ急いだ。


一方のレイリアは、離宮の捜索隊を頑なに中には入れず、アマリアと共に小屋に引きこもっていた。

「姫様、それ、まだやります?」

「当然!見せつけてやるのよ。殿下の条件がどういう物かを」

「‥でも決め台詞とか、今イチ格好がつかない気が‥」

「いーのいーの。私達はジワジワとがモットーよ。この馬鹿げた格好で"あーやっちゃったな〜"と何度も思わせるのがいいのよ」

「思いますかね?私には痛い人にしか見えないんですけど」

「大丈夫!この格好は確認済みよ。最初の面会で、確かに殿下は動揺していたわ」

「あんまり痛い人過ぎて動揺したんじゃありませんかね?」

「大丈夫だってば!これでいいのよ。完成!」

レイリアは帽子とベールで、十項目第六"なるべく顔を見せない事"の準備をした。

「後は殿下の到着を待つだけ。ワガママ殿下にはこれで十分だわ。こんなワガママ言う人は、きっと一人っ子ね」

「姫様は一人っ子に対して偏見を持ち過ぎです!一人っ子に謝って下さい。それに王族の家系図くらい頭に入れて下さいよ。殿下は一人っ子ではありません」

「え?」

「殿下には腹違いの兄君がいます。亡くなりましたが」

「嘘っ!兄弟がいてあれ?」

「まあ、何というか、色々と複雑なんですよ。大国の王族という物は」

「それで考え方が歪んでるのかしら?どうかしてるなぁとは思ってたんだけど」

「そんな事を勉強していない姫様の方が、よっぽどどうかしてます。もっと厳しくする必要がありますね」

「藪蛇だったわ」

「何ですか?」

「ううん、何も。とにかく、アマリアの役目は"大袈裟に泣く侍女"だから、しっかりね」

「分かってますとも!迎え撃ちましょう」

まあ、アマリアに至っては、普段から大袈裟に泣く侍女なんだけど。

本人自覚がないのよね。

さて殿下、首を洗って待っていなさい!

あ、待っているのは私達か。

私って緊張感無いわねぇ。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通、こんな仕打ちをしたら部下の独断でも即断交即開戦レベルの事態だと思う。 この事件が広まったら他国は友好な外交はしなくなるだろうなぁ。
[一言] 面白いな。ミゲル並みの間違った行動をしている殿下という対比かー。
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