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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
20/175

登場はメインの後で

ミゲルの発言に絶句していたジョアンだったが、すぐに気を取り直して口を開いた。

「お前を殴ったのは何人組だったのだミゲルよ?だんまりは許さぬ。包み隠さず全て話せ!それに姫君の滞在場所を小屋と言ったな?そんな所が何故姫君の滞在場所になるのだ?まさかその小屋を隠れ家にして、お前はミドラスと組んで姫君を拐かしたのか?」

(そうそう。もっとミドラスを意識して貰わないと困りますよ殿下)

「め、滅相もございません!ミドラスなどと、あってはならない事です!私を殴った‥いや、正確には何がどうなったのかはよく分かりませんが、とにかくこの様な顔にしたのははたった一人の人物です」

「もっとしっかり要点を言え。一体何故姫君を小屋へ案内したのだ?ミドラスと繋がっていないと言うならば、その様な場所へ姫君を案内する理由が分からぬ。それにその顔になった理由もな!私は包み隠さず全て話せと言った筈だ!」

ビクン!と一瞬体を浮かせたミゲルは、額から冷や汗を流して重い口を開いた。

「あの小屋以外、私は"森の家"と呼ぶに相応しい場所は無いと思いました。離宮というのはあの小屋の事だと思い、それなりに整えてあります。なのにお連れした姫君は苦言を呈しました。そこで私は、殿下に群がる女共を排除するのが私の役目だと述べたのです。すると姫君が近付き、訳の分からぬうちに私は殴られ、尻餅をついておりました。私は殿下のご意思を把握した上で、自らの判断に従ったまででございます。殿下は十項目という条件を付けてまで、姫君を疎ましく思っていらっしゃいましたので」


顔色を無くしたジョアンとエンリケの前に、カルロが走り出て床に伏せた。

弟のシモンはミゲルの後頭部を掴むと、力任せに床に押し付けた。

「坊っちゃまの行いは、坊っちゃまが単独で行った事であり、マンソン家と一切関わりのない事にございます。全ての責任は坊っちゃま一人が負います故、どうかマンソン家をお叱りにならぬ様、お願い申し上げます!!」

「な、何を言うカルロ!‥ったいな!離さんかシモン!兄に向かってなんて奴だ!」

「私は庶子故兄弟はいません。ましてやこんな残念な兄、願い下げです!まだ自分の置かれた状況が分からないとは!情けない!」

シモンはミゲルの顔面をグリグリと床に擦り付ける。

何かを言おうとしたミゲルは、モガモガと言葉にならない声を絞り出した。


ガックリと項垂れるジョアンは、カルロの肩に手を置いた。

「もういい。ミゲルに頼んだ私が浅はかであった。だが、ここまで浅慮な男であったとは‥」

その直後侍従が執務室へ飛び込んで来た。

「殿下!離宮より姫君が見つかったと報告が入りました!!」

全員が一斉に侍従の方を向く。

(中々いいタイミングだな。森番の爺さんはいい仕事をしてくれた。離宮の捜索隊にはある程度時間を置いてから見つけて貰う必要があった。手筈通り、捜査を撹乱してから小屋へ誘導した様だ。さて、頃合いかな。ついに出番が来たな)

ルイスはミゲルに向かって歩いて行き、シモンの手を緩めさせた。


「ミゲルよ、まだ説明は終わっていない。その首は何だ?何故包帯を巻いている?」

今度はミゲルを全員が見た。

「こ、これはその、尻餅をついた直後、姫君が短剣を押し付けてきたのです。その時刃先が私の首に食い込み、殺されそうになったのです。ですから私は命からがら逃げて来ました」

「それだけか?姫君は何も言わず短剣を押し付けただけか?私は姫君を良く知っている。理由もなく短剣を押し付ける訳がない!お前はまだ何か隠しているな?殿下は"包み隠さず全て話せ"と言った筈だが?」

「‥戻って殿下に伝えろと仰っておりました」

「何と伝えろと言ったのだ?」

「‥‥殿下などこちらからお断りだと。殿下と結婚するくらいなら、ミドラス皇帝の側室になった方が100倍もましだと、仰っておられました‥」


一同は静まり返る。

(殿下、貴方は何かを焦っていた様だ。軽く見ていた相手に、足をすくわれるという可能性を、失念していたのだからね。姫君がミドラスを選択肢に入れるとは、夢にも思わなかったのでしょうが)


重い空気に包まれた執務室で、ルイスは一人ほくそ笑んでいた。

読んで頂いてありがとうございます。

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