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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
166/175

【その後】ハナ歌ってやつ

「わーたしはペードロ、ペドロ♪」

そう、俺の名前はペドロ。

なぜかジョアン殿下に気に入られて、普段は殿下の書類運びなんかをやっているが、本業は密偵だ。

ああ、そんな事より気になるのはハナ歌の方か。

別に歌が好きとかそういう事じゃないけど、どうせ仕事をやるなら楽しい方がいいだろ?

だからどこかで聞いた歌を口ずさんでみたって訳だ。

それに、密偵って仕事は基本無口だ。

まあ、本業でのストレスを発散しているって話さ。

おっと!歌っていたら、いつの間にか執務室の前だった。

廊下はいいけど、さすがに執務室では歌えないよな。

はい、顔を引き締めるーからの、いかにも仕事やってましたアピールで入室だ。


「旦‥ジョアン殿下、エンリケ様からの書類を、お持ち致しました」

「ああ。ホド‥ペドロ、ご苦労だった」

「いやいや殿下、その間違え方は無理がありますって。ホセやホアンは別の仕事で、一昨日からいないんですから」

「‥バレたか。でもお前も旦那と呼ぼうとしただろう?別にいいんだぞ、旦那でも」

「そこはちゃんとしとかないと、一応けじめってやつですよ。殿下だってホドロが呼びやすいなら、ホドロでいいですよ」

「いいや、たまにちょっと間違える所を、私は気に入っているのだ」

「はあ、まあ殿下が気に入っているなら、それでいいですけどね。それじゃあ出来上がった書類を頂いて行きます」

「いや、待てペドロ、さっきの歌は何の歌だ?」

「えっ!?歌って‥アレ聞こえていたんですか?」

「自慢じゃないが、私は地獄耳なのだ。お前がやけに楽しそうに歌うから、気になってな。アレは何の歌なんだ?」

「何のって言われても答えようがないです。どこかで聞いた覚えがある歌を、適当に歌っていただけですから。要はハナ歌ってやつですよ。ハナ歌ってのは大体そういうもんですよ」

「なるほど‥そういう物なのか。私はハナ歌という物を、口ずさんだ事がないからな」

「えっ!?それはビックリ!そんな人いるんですか?」

「ここにいる。そんなにおかしいか?」

う〜ん、これは返答に困るな。

殿下は変に真面目だし、意外と素直だ。

ここで「おかしいです」と言えば、ハナ歌の練習をし兼ねない。

ハナ歌を口ずさんで王宮の廊下を歩く殿下を、見てみたい気はするが、家臣に見られたら困るよな。

きっと皆んな対応に困る筈だ。


「中にはそういう人もいるんじゃないですかね?」

うん、我ながら上手い答え方だ。

困った時はファジーな返事が一番ってのは、大人だからね、それなりに学んでいるさ。

「中には‥とは、どの中なのだ?」

うおいっ!なんでそこ突っ込んで聞いて来るかな?

う〜ん、仕方がない、奥の手を出すか。


「俺に聞くよりエレナ様に聞かれた方がいいと思いますよ。ほら、俺と違って学があるんで、上手く説明してくれるだろうし、庶民の生活にも詳しいですからね。いや〜殿下が羨ましいや!あんないい奥さん貰ったんですから!」

「そうか、それならエレナに聞くとしよう。確かにお前の言う通り、エレナはいい「奥さん」だからな」

やっぱ困った時のエレナ様だ。

ジョアン殿下にはこれに限る。

まっ、これ以上質問される前に、さっさとここから退散だな。


「それじゃあ殿下、この書類を配達して来ます。あ、エレナ様によろしく言って下さい」

「ああ。頼んだぞ」

執務室の扉を出て、再び俺はハナ歌を口ずさむ。

するとどうだろう、執務室の中からさっき俺が口ずさんだ、ハナ歌が聞こえて来るんだからビックリだ。

しかも名前はホドロだった。

まあ、それは別にいいけどさ、なんか殿下って‥俺の事大好きだよね!?


俺の名前はペドロ。

なぜかジョアン殿下に気に入られて、普段は殿下の書類運びなんかをやっているが、本業は密偵だ。

そして時々ホドロと呼ばれる。

読んで頂いてありがとうございます。

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