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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
149/175

混沌

ルイスからの連絡を受けたエンリケは、密かに第2第3小隊の隊長を呼び、アフォンソ翼、ホアキン翼、それから全ての門の守りを固める指示を出した。

レイリアとドミニクも第1小隊の制服に着替え、ホアキン翼の例の部屋の隣室で待機している。

そして深夜に差し掛かる頃、遂にエディが隣室へ入った。

隊長を始め隊員達の顔付きは変わり、隣室の気配をジッと伺っている。

隊長から事前に聞いた話だが、待機している隊員達は足音を聞き分け、人数を割り出す訓練を受けているという事だ。

その為レイリアは音を立てない様、息をするのにも気を使った。

ただ、心臓のドキドキだけは止められなかった。


エディが隣室に入ってから暫く経つと、隊員の1人が手で合図を送って来た。

その手は最初に2人と報せ、ホッとしたのも束の間、少し時間が空いてから5人と報せて来たのだ。

待機していた隊員達かと隊長が身振り手振りで尋ねると、隊員は勢いよく首を振る。

やはり危惧していた通り、別の刺客が送り込まれていた様だ。


『レイリア危ない!印が危ない!』


突然現れた妖精が、レイリアの周りをクルクルと回る。

レイリアがドミニクの腕をギュッと掴んで、妖精の訪れを報せると、ドミニクは隊長を見て深く頷いた。

隊長もそれを見て頷き、同時に隊員達へ手を上げると、隊員達は慎重に扉を開けて、腰から抜いた剣を手に、隣室へ突撃を開始した。

灯りの消えた真っ暗な室内では、金属のぶつかり合う音や、数人の呼吸音が聞こえる。

最早敵も味方も分からない状態だ。

あれ程事前に対策を練ったにも関わらず、何故刺客が現れたのか、何故ここまで侵入出来たのか、分からない事だらけだが、今はエディを探すのが先だ。

レイリアは妖精の飛んで行く方向を確認すると、ドミニクの耳元で方向を伝えた。


「お兄様、10時の方向よ!」

「分かった。レイリアはこの部屋から出るんだ。状況が悪過ぎる!」

「分かったわ!」

言われた通りレイリアは、部屋を出て隣室へ逃れた。

ドミニクは振り下ろされた剣をヒラリと交わして、少しずつレイリアの言った方向へ近付いて行く。

敵か味方か分からない状態で、無闇に相手を斬り付ける訳にはいかない。

そこでドミニクは体術を使って、相手を気絶させる事にした。

神経を研ぎ澄ませて呼吸を整えると、ヒュッという空を切る音や、荒々しい呼吸音がすぐ側に感じる。

それをヒラリと交わして、回転しながら回し蹴りを繰り出すと、相手はその反動で何かにぶつかった。

少し離れた所で呻き声が聞こえて、その後ろからまた空を切る音が聞こえる。


くそっ!これじゃあ埒があかない!

こう暗くては身動きが取れないし、相手も闇雲に斬り付けて来る。

仕方がない、あまり使いたくはないのだが、アレを使うしかないな。


「エドゥアルド殿、息を止めて下さい!!」

ドミニクはそう叫んでポケットから小瓶を取り出すと、部屋の真ん中辺りを狙って投げ付けた。

「全員動くな!!」

その叫び声と共に、今迄鳴り響いていた金属のぶつかり合う音や、人々の足音がピタリと止んだ。

ドミニクは素早く袖を鼻と口に当てると、もう一度叫んだ。


「エドゥアルド殿、早く外へ!」

10時の方向から人影が動く気配がすると、扉へ向かって走って行く。

ドミニクもすぐその後を追って、部屋の外へ逃れた。

部屋の外には先に出た人影が立っている。

廊下に灯された蝋燭の灯りから、それがエディである事が確認出来て、ドミニクはホッと息を吐いた。


「ドミニク殿、今のは‥?」

「あれはバルコスに咲く花から作った『妖精の雫』という物です。非常に催眠効果が高いので、迂闊に吸い込むと数日は抜けません。それより、貴方は隣室へ行って、しっかり鍵をかけて待機していて下さい。中でレイリアが待っています」

「しかし、ドミニク殿はどこへ?」

「僕は助けを呼んで来ます。ターゲットは貴方なので、まずは貴方の安全を確保しないと!部屋の彼等は動けない筈ですが、他にもいる可能性がありますからね。何故こうなったのか、確認しないといけません」

「ああ、どうやら‥裏切者がいた様だ‥」

エディはそう言うと、ドミニクに促されるまま隣室に入って、しっかりと鍵をかけた。

それを確認した後ドミニクは、ルイスのいる筈のアフォンソ翼へ向かった。

ホアキン翼の入口には、待機していた筈の第1小隊の隊員達が倒れている。

彼等は全員、眠らされていた。

読んで頂いてありがとうございます。

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