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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
132/175

待つしかない

王宮中を駆けずり回り、ルイスを探し回っていたエンリケは、沈んだ面持ちで執務室へ戻って来た。

「エドゥアルド殿下‥申し訳ありません!部下にも手分けして探させましたが、どうやらブラガンサ殿は、王都へ出掛けてしまった様です」

「なんだって!では、リアも王都へ行ったのか?」

「いいえ、それが‥本当にブラガンサ殿かと言われますと、そうとは言い切れない人物が、一人で森側の出口から出て行ったと、警備の者は言っておりました。不自然な眉毛に、似合わな過ぎる髭の、思わず笑ってしまう様な顔だったそうです。ただ、背格好と髪色からブラガンサ殿ではないかと」

「不自然な眉毛に、似合わな過ぎる髭?変装をしていたという事かい?」

「ええ。おそらく」

不自然な眉毛に髭‥そして変装‥

イザベラにはその変装に、覚えがあった。


「多分それは"君は誰?実は僕"セットではないかしら?以前市場で、ルイス様が購入している所を見たもの。ほら、エドゥアルド、レイリアが貴方の御守りを買った時よ。確か‥ミゲルを捕まえる時に役立ったと言っていたわ!」

「では‥やはりルイス殿本人としか考えられないな‥。という事は、リアは一人で王宮にいるのか!?」

「いや、エドゥアルド殿、流石にレイリアでも、一人で行動する程無謀ではないよ。絶対見付からない場所にいると連絡が来たんだ、安全だと思える誰かと一緒に、行動しているのだと思う。それにルイスが離れたという事は、それ程信頼出来る相手だという事でしょう。やる事は無茶苦茶だが、案外変に計画的だったりするんだレイリアは。全く‥困った妹だよ」

「安全だと思える誰か‥‥。参ったな、そう言われても思い当たる人物が、父上位しか思い浮かばない。エンリケ、王宮を回って、何か普段と変わった点は無かったか?」

「変わった点‥ですか?特には思い当たりません。あるとすれば、珍しく第1小隊隊長が、書庫で調べ物をしていた位ですね。そういえば見習いの少年を連れていましたが、中々の感性の持ち主でした。サルダスを猿っぽいとは、キラリと光るセンスを持っていましたよ」

イザベラはまた始まったと呆れ顔をしたが、ドミニクは後半を聞いて顔色を変えた。


「エンリケ殿、今何と?」

「ですから、第1小隊隊長が書庫で調べ物をしていたと‥」

「いや、後半の部分だ。サルダスを何と言ったのかな?」

「ああ、そっちですか。ニックネームがカステーニョだと隊長が言うので、ソバカスに因んでサルダスにした方がいいと、アドバイスをしたのですよ。そうしたら、サルダスは猿っぽいから、カステーニョがいいと言いましてね。お陰で名作が浮かんで来たのですよ!聞きますか?」

「いや、それで十分だ。第1小隊隊長か‥盲点だったな。猿とは、いかにもレイリアが言いそうな言葉だ。エドゥアルド殿、レイリアはお転婆が過ぎて、ルイスや村の少年達を負かしては、猿と言われていたのです。ですから、猿という言葉には、敏感なんですよ」

「では、隊長の連れていた少年が、リアであったと?」

「僕の勘が正しければ、おそらく‥」

ドミニクが言い終わる前に、エディは立ち上がって執務室の扉に向かった。


「エドゥアルド殿、待って下さい!貴方が行っては駄目です!」

「何故だい?リアの居場所が分かったんだ!連れ戻さなければ!」

「今貴方が行って騒ぎになれば、レイリアだとバレてしまう可能性があります。何と言っても貴方は、レイリアを前にして冷静ではいられない」

「では、どうすればいいと?」

「戻って来るのを待ちましょう。きっと、すぐ戻るつもりだと思いますよ。幸い隊長ならば護衛としても申し分ないですし、多分ルイスもそれが分かっていて預けたのでしょう。まあ、ルイスを責めるつもりは無いですが。昔からルイスは、レイリアに振り回されて、とばっちりに遭う損な役回りなのですよ。可哀想に‥」

「しかしそう言われても‥。ドミニク殿は、どうしてそんなに冷静でいられるんだい?」

「さっきまでは心配していました。ですが、居場所が分かれば、何とでもなります。こうでなければ、レイリアの兄は務まりませんよ。何だかんだ滅茶苦茶に行動しているくせに、何故か上手くいくのがレイリアです。あの子は祝福を持つ者ですからね」

「祝福か‥‥。それのお陰でリアに会えたのだったな‥。分かったよ、ドミニク殿の言う通り、リアの戻りを待つとしよう。だが居場所が分かった以上、このままにしておくつもりは無い。エンリケ、リカルドを呼んでリアを見張らせてくれ!」

「はい!行って参ります!」

エンリケは慌てて執務室を飛び出して行った。

エディはソファへ移動すると、ドミニクとイザベラを座らせた。


「そういえばエドゥアルド、貴方体は?随分顔色が良くなったけど?」

「言ってなかったね。実はルイにマンソン邸から解毒剤を盗ませて、やっと完治したのだよ。ミゲルに情報提供して貰ってね」

「ええっ!!バレなかったの?」

「きちんと偽物を置いて、すり替えて来たから大丈夫だ。尤も解毒剤は万が一の為に用意した物で、実際はよっぽどの事がない限り、使う事はなかったのだからね。マンソンが使うのはもっぱら毒の方だ。それも敵とみなした相手に‥」

「ではエドゥアルド殿、貴方はもう健康体なのですね?」

「うん。色々と心配をかけたがもう大丈夫だ。そして迎え撃つ準備も着々と進んでいる。今ルイが薬の入手ルートを掴んで、証拠のサインを手に入れた。リカルドは私の暗殺を請け負った振りをして、マンソンと連絡を取っている。ただ、厄介なのはマルグリット嬢だ。リカルドが言うには、暗殺者を手引きする要員がいて、タイミング的に彼女しか考えられないのだが、どうも行動が伴わないのだよ。マンソンもその要員が言う事を聞かないと、激怒しているらしい」

「そう。分かったわ。マルグリット様の事は私に任せて!いい案が浮かんだのよ」

「「いい案?」」

「お茶会に招待するのよ。マナーにうるさいご婦人方も大勢呼んで。あの礼儀作法なら、間違いなく顰蹙を買うでしょうね。悪い噂という物は、広がるのが早い物よ。直ぐにマンソンの耳に入って、きっとこう言われるわ『やるべき事だけやって、さっさと戻って来い!』ってね」

「しかし、君とのやり取りを見る限り、招待を受けるとは到底思えないのだが?」

ドミニクもエディの意見に同意して、横で頷いている。

だがイザベラは自信たっぷりに笑いながら、チラリとドミニクを見た。

「私にはドミニク様という、餌があるのを忘れないで。それに、私は謝罪を兼ねて、お茶会に招待すると言うつもりよ。プライドの高いあの方なら、必ずやって来る筈だわ。自尊心を満たす為にね」

「僕は‥またこの格好をするのかな?」

「そうですわね‥状況次第によりますわ。ああ、そうと決まったら、準備に取り掛からなければ!エドゥアルド、私達は一旦帰るわ!ごめんなさいね、レイリアの事お願いするわ」

「すまないエドゥアルド殿、妹が面倒をかけてしまって‥。ああ、そうだ!貴方は印持ちだから、強く念じてみるといい。導きが引き合わせてくれるだろう」

「印持ち?どういう事だい?」

「さあ、帰りますわよドミニク様!ではエドゥアルド、お願いね!」

イザベラはドミニクを引っ張って、慌しく帰って行った。


「導きが引き合わせる‥?成る程ね‥。流石妖精の血を引く殿下だな。やってみる価値はありそうだ」

1人残った執務室で、エディはそう呟いていた。

読んで頂いてありがとうございます。

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