表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
13/175

仏の顔も三度まで

「着きましたよ。降りて下さい」

ミゲルの声でアマリアが腰を上げる。

アマリアは今、とても機嫌が悪い。

さっき馬車を取りに来たミゲルに「ババア」と呼ばれたからだ。

ここに着くまでの間、ずっとミゲルの文句を言っていた。

レイリアもミゲルの態度には少々腹を立てていたので、迷わずアマリアに同意した。


「なんですか!!ここは!?」

アマリアが大声で叫ぶ。

「森の家ですよ。殿下は貴方方を森の家へ案内せよと仰いました。私は指示に従ったまで」

何を騒いでいるのかと、レイリアも馬車を降りる。

すると目の前には小さな小屋が建っていた。

森の管理人辺りが使う小屋だろう。


「殿下は離宮と仰いました。あなたの目にはこれが離宮に見えますか?」

レイリアは怒りが沸々と込み上げてきたが、平静を装ってミゲルに問う。

「おや!バルコス辺りの方が離宮と小屋の区別がつくのですか?」

ミゲルはニヤニヤしながら、完全に馬鹿にした口調でレイリアに答えた。

「ああ、荷解きは自分達でやって下さいね。私は暇じゃないんで。そこのおばさんはそういうの得意そうだし」

更にミゲルは傲慢な物言いをし、馬車に繋いでいた馬を外した。

「何をしているの!?」

「何って?一頭は私が帰るのに必要だし、もう一頭はここに置いたってしょうがないから離してるのさ。あんた達どうせここから出られないだろ?十項目とやらで」

ミゲルは敬語を使うのはやめたようだ。

プツンとレイリアの中で何かが切れた。


「ミゲル!ちょっとこっちへ来なさい!」

「は?なんだよ偉そうに!弱小国の姫君ふぜいが!知らないなら教えてやるよ。あんたみたいな女は腐るほど殿下に寄って来るんだ。優秀な私はそいつらを排除する為に選ばれたエリートだ!」

「へぇ〜そういう扱い。事は急を要するので、国王不在のこの国に、きちんとした取り決めも無く、殿下の言いなりになってやって来た訳だけど、こういう扱いをする人なんだ。よーく分かったわ。私も我慢する必要が無いって事がね!」

「は?」

ミゲルの右耳に空気を切るシュッという音がした。

次の瞬間右頬に激痛が走り、目の前にチカチカと星が舞う。

バランスを崩したミゲルは、思わず後ろに尻餅を着いた。

何が起こったのか分からず、呆然とするミゲルの首にレイリアは光る物を押し付ける。

「その減らず口を二度と聞けない様に、首を落としてあげましょうか?」

チラリとミゲルが首元を見ると、銀色に鈍く輝く短剣が押し付けられていた。

「ひっ‥!!」

「さっきから黙って聞いていれば、くだらない事をペラペラと!お前みたいな男がエリートだと?この国の将来もたかが知れてるわ!!帰って王太子に伝えなさい!!こちらこそアンタなんかお断りだってね!アンタなんかと結婚するくらいなら、ミドラス皇帝の側室になった方が百倍もマシだわ!一言一句間違えずに必ず伝えなさい!!」

レイリアの手に力が入り、ミゲルの首から一筋血が流れる。

ミゲルは真っ青になって何度も頷いた。


レイリアが手を離すと、ミゲルは転がりながらレイリアの元を逃れた。

四つん這いになって赤ん坊がハイハイする様に進んでいる。

どうやら腰を抜かしている様だ。

更に追い討ちをかけるように、レイリアはミゲルの向かおうとしている先に短剣を投げた。

目の前にブスリと短剣が突き刺さり、ミゲルは悲鳴を上げながら走って逃げて行った。


パチパチパチパチ!

振り返るとアマリアが拍手をしている。

「姫様!大変お見事でした。私は初めて姫様がお転婆で良かったと思いました!」

「‥勝手に体が動いていたわ。やり過ぎたかしら?」

「いいえ!!あの男にはあんなもんじゃ足りません!!腕の一本でも折ってやれば良かったんですよ」

「それは流石に私の力じゃ無理だわ。でも流石に我慢の限界だったの。さっきの発言といい、この扱いといい、よくあんな男に案内させたわね」

「同感です。これは戻って抗議するべきです!まずはルイス様に相談しましょう。幸い馬もあります‥あっ!!」

「えっ!?ちょっと、待って待って!!」

ミゲルは最悪の仕事をしていった。

馬車に繋がれていた二頭の馬は、いつの間にか馬車から離れて、好きな方向へと走って行ってしまった。

「‥最悪だわ‥‥」

「‥同感です‥‥」


片道10キロを歩いて行くには、陽が傾き始めた今からでは無理だ。

レイリア達は仕方なく、小屋の中で夜を明かす事にした。


読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ