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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
124/175

図々しいお願い

ポンバル邸を出てから暫く走ると、ブラガンサの馬車は王都の中心にある広場に入った。

「ルイス様、今日は随分と賑わっていますねぇ。お祭りでもあるんでしょうか?」

「ああ、今日はオセアノ全ての神殿で、子供達にお菓子を配る"シントラの恩恵の日"なんだよ。だから親子連れや子供達が多いだろう?」

「あらまあ、今日でしたか!懐かしいですねぇ。私も子供の頃よく貰いに行きましたよ。普段は滅多に神殿になんか行かなかったんですけど、この日だけは神殿をハシゴしました」

「アマリア、バチが当たるよ!ハッ!もしやレイリアの教育が上手くいかなかったのは、そのせいじゃないのか!?」

「何を言っているんですか。姫様を上手に教育出来る人がいたら、お目にかかりたいもんですよ!泥だらけで駆けずり回るのは日常茶飯事でしたし、木登りなんて何度言ってもやめませんでした。姫様はもう、お転婆の域を超えています。野生動物と同じですよ!」

「野生動物!!中々いい表現だね。第1小隊隊長の野獣といい勝負だ。隊長が熊ならレイリアは猿かな?」

「まあルイス様!なんてぴったりな表現を!さすがセンスがありますね」

2人はハッハッハと楽しそうに笑っている。

すると目の前の衣装箱からドン!と音が聞こえて来た。


「ん?今そこから音がしませんでしたか?」

「うん、何だか不気味だね。まさか本当に猿が入っていたりして」

「実は中身が気になって仕方がなかったんです。どうします?開けてみますか?」

「えー何か怖いな。猿が出て来たらどうする?」

「猿なんか用意出来る訳無いでしょうが。全く、ルイス様は意外とビビリなんですから!早く開けて下さいよ」

「そういうアマリアだって僕に開けさせようとして卑怯だよ!僕はビビリというより、用心深いんだ!」

「おや?知らなかったんですか?それをビビリと言うんです」

「なんだって?そんなに言うなら開けてみせるよ!いいかい、開けるよ?」

「はい、さっさと開けて下さい」

ルイスは恐る恐る衣装箱の留め金を外して、慎重に蓋を持ち上げた。

すると箱の中からガバッと何かが起き上がり、ルイスは尻餅を着いて思わず叫んだ。


「うわっ!!さ、猿!?」

「誰が猿よ、誰が!!

「えっ!?姫様!!」

「そうよ私よ!決して猿ではないわ!!」

箱の中から現れたレイリアは、腰に手を当てプンプン怒っている。

「全く油断も隙も無いわ!2人共私がいないと思って好きな事言ってくれるわね!」

ルイスは尻餅を着いたまま、口をあんぐり開けている。

アマリアはワナワナと震えながら、右手の人差し指でレイリアを指し、左手を腰に当てて立ち上がった。

「姫様!何をやっているんですか!!荷物などと言って、私を騙しましたね!」

「あら、荷物は荷物でしょ?嘘は言っていないわ」

シレッと言ってのけるレイリアに、ルイスも立ち直って言い返した。

「レイリア、自分が何をしているのか分かっているのか?君が戻ったらエドゥアルド殿下の計画が台無しになるんだぞ!」

「分かっているわよ。でも逆にルイスだって分かっているでしょ?私が大人しくただ守られているだけなんて、我慢出来る筈が無いって事を」

「全くああ言えばこう言うんだから!今日は恩恵の日で道が混んでいる。今から戻る訳にもいかないし、どうするつもりなんだよ?」

「それについては‥ルイス、お願いがあるの!」

「姫様、お願いなんて図々しい!姫様はどうにかして戻るべきです!どうにかは思い付きませんが」

「ほらね?今更戻る事は出来ないのよ。だからルイス、お願い!もちろん私もルイスの為に一肌脱ぐつもりよ」

「‥‥何だか嫌な予感しかしないけど、一応聞くだけ聞いてやるよ。まずはその一肌脱ぐって何の事だい?」

「そ・れ・は‥イネスの事よ。エディが言っていたわ。ルイスったら、イネスが気に入ったんですって?」

「な、何を言い出すんだ!」

「おや?ルイス様、そうだったんですか!それならそうと、先に言ってくれなくては!イネス様なら文句のつけようがありません。随分趣味が良くなりましたね。野生動物は捕獲が難しいですから、諦めて正解です」

「‥その事については、そっとしておいてくれないか?」

「もちろんそっと見守るつもりよ。でも2人になる機会を沢山作ってあげる事は出来るんじゃないかしら?私とアマリアが協力すれば、結構イケると思うんだけど。ねっ!アマリア?」

「お任せ下さい!そういうのは得意分野です!伊達に愛の伝道師を名乗っていませんからね」


フッフッフ‥狙い通りね!

このネタならアマリアも食い付くと思ったのよ。

後はルイスを上手く説得するだけだわ。


「‥それは置いといて、お願いってのを聞こうか?」

「え、えーと、私が攫われた時出動したのは第1小隊だったわね?」

「そうだけど、それが何?」

「だから色々な事情を知っているのは、第1小隊だけって事になるわ。陛下の近衛部隊は置いといて」

「まあそういう事になるね。第1小隊は特殊部隊だから守秘義務も完璧なんだ。隊長の趣味は別にして」

「そう!それよ!隊長がそっちの趣味だから安心だと思うのよねー。私が第1小隊に潜り込んでも」

「はぁ?何だって!?潜り込むって‥まさか第1小隊に身を隠すつもりなのか?」

「ええ。だからルイスには隊長と会わせて貰いたいの。交渉は自分でするから」

「嫌だね!僕の貞操の危機だ!」

「一緒に行けば大丈夫でしょ?どうせ戻れないんだから、私を送り返すにしても3日後よ?その間王宮の自分の部屋にいる訳にもいかないじゃない。だったら一番あり得ない場所で動く方がいいかと思って。第1小隊なら安全面もバッチリでしょ?」

「はぁ‥姫様はなんちゅう発想をするんでしょう。やっぱり私はバチが当たっているんですかねぇ‥」

「アマリア、私の性分だから諦めて。だってやっぱり私は、双方協力し合って壁を乗り越えたいもの。エディとはそういう関係性を築きたいから」

それを聞いてルイスは諦めた顔で、長い溜息を吐いた。


「こういう時のレイリアには、何を言っても聞かないんだよな。‥分かったよ、隊長に話を通す。その代わり絶対バレるなよ!」

「ありがとうルイス!!やっぱりルイスは面倒見がいいわね!イネスに良くアピールしておくわ!」

「だからそれは、そっとして置いてくれよ!」

「ルイス様、そっとして置いたら恋は始まりません!あれだけの器量良しですから、気付いたら他の殿方に攫われてた!なんて事も‥最近あったじゃありませんか?」

「うっ!そうやって傷口を抉らないでくれ。それよりレイリア、兄さんには何と言うつもりなんだい?今頃絶対怒っている筈だよ。考えただけで恐ろしい!」

「多分連れ戻しに来るわね。だから先に連絡だけしておこうと思って。アマリア、窓を開けてくれる?」

言われた通りアマリアが窓を開けると、レイリアは妖精を呼んで言伝を頼んだ。


「ごめんなさいお兄様。絶対見付からない場所にいるから心配しないで」


カツラを被って鏡を見つめるドミニクは、自分の格好と金色の文字を見て大きな溜息を吐いていた。

読んで頂いてありがとうございます。

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