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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
117/175

作戦は綿密に

レイリア達が馬車を降りると、イザベラが10歳位の男の子と一緒に出迎えてくれた。

金髪に近い赤毛と、クリッとした金色の瞳の可愛い男の子で、レイリアを見た瞬間から、驚いた顔で目を丸くしている。


「イザベラ嬢、事情は聞いていると思うが、暫く厄介になるよ。迷惑をかけて申し訳ない」

ドミニクがそう言うと、イザベラは照れながら笑って男の子の肩に手を置いた。

「いえ、我が家は大歓迎ですわ。特にこの子は大喜びしていましたの。アンドレ、ご挨拶は?」

イザベラに言われて、男の子はパッとレイリアから目線を外した。

どうやら不躾であったと恥じている様で、ほんのりと頰がピンク色に染まっている。

「はじめまして!ポンバル家嫡男、アンドレと申します。この度はこの様なむさ苦しい場所へご滞在頂き、大変光栄に存じます。至らぬ点もございますが、どうぞごゆっくりお過ごし下さい」


しっかりとした挨拶をするアンドレにレイリアが関心していると、ドミニクは微笑みながら挨拶を返した。

「とてもしっかりとした挨拶が出来て、立派な紳士だね。はじめまして、僕はバルコスのドミニクと言うんだ。こんな格好で驚かせたかな?僕達の滞在は秘密で、変装をする必要があったんだよ」

アンドレは頷くとドミニクの微笑みを見て、恋する乙女の様なうっとりとした顔をしている。

それを見ていたアマリアは、レイリアを突いて耳元で叫んだ。


「出ました!人タラシ!やっぱり私が言った通り、ドミニク様はオーラダダ漏れですよ。眼鏡程度じゃ隠せませんって!」

「アマリア、分かったから耳元はやめて!あ、ごめんなさい、アンドレ君ね?私はバルコスのレイリアって言うの。急に押し掛けてごめんなさい」

「いえ、えっと‥バルコスの姫君ですね。お噂は伺っております。その節は姉が大変お世話になりまして」

アンドレはあまりレイリアを見ない様に、明後日の方向を向いて話している。

するとイザベラはすかさずアンドレの礼儀を注意した。


「アンドレ、きちんと姫君を見てお話しなさい!失礼ですよ」

「すみません、あまり見ては逆に失礼かと思いまして‥」

「あ、イザベラ大丈夫よ!でも私の格好、そんなに変かしら?似合わな過ぎて笑ってしまったけど」

「あら、私は気にしないわ。でも、何て言うか‥アレよね」

「やっぱりイザベラ様もそう思いますか。姫様、アレなんで早く着替えましょう」

「そこまで言われたらアレが気になって眠れないわ。いいわ、着替えたらじっくり聞かせて貰うから!」

「ではお部屋へ案内させるわね。着替えが済んだらお食事にしましょう」

イザベラはテキパキと指示を出して、使用人達を動かしている。

アンドレはドミニクを、ポンバル家のメイド頭はレイリア達を部屋まで案内してくれた。


部屋に入って着替えながら、レイリアは少し気になった事をアマリアに聞いてみた。

「ねえアマリア、ポンバル侯爵はお留守なのかしら?それに、侯爵夫人のお姿もなかったわ。まるでイザベラがこの家の女主人みたいだったわね」

「私が王宮で仕入れたネタでは、侯爵夫人はあまりお体が丈夫ではなく、領地でご静養なさっているそうですよ。侯爵様は今王宮へ行かれているので、明日には戻られると思いますが」

「そうだったの。じゃあ侯爵夫人の代わりにイザベラが切り盛りしている訳ね。それにしてもアンドレ君、可愛いのにしっかりしているわ。イザベラにあんな歳の離れた弟がいるとは知らなかった」

「姫様が言う様にポンバル家の女主人は、事実上イザベラ様が務めているそうですよ。アンドレ様もイザベラ様に育てられた様な物です。ですからイザベラ様はポンバル家第一主義なんですね」

「ああ、納得。それじゃあアンドレ君が大人になるまで、イザベラの縁談は進めにくいわね。どうした物かしら‥」

「姫様、イザベラ様の縁談って、もしや‥ドミニク様では?」

「おっ!さすがねアマリア!」

「私はこの道のプロですよ。昔から人様の恋愛模様を、物陰から観察して来た経験があります。今なら年季が入ってますから、プロ中のプロです」

「物陰からって、覗きじゃない!」

「人聞きが悪いですね、観察ですよ、観察。恋愛評論家として必要なプロセスです。そろそろ講演会でも開けるんじゃないかって位のレベルですから」

「まあいいわ。で、そのプロの目から見て、どう思う?」

「難しいと思いますよ。ドミニク様はあの通り、人タラシの割に自分に向けられる好意には鈍感ですし、イザベラ様はポンバル家に捕らわれていらっしゃるから、人に弱みを見せたがらない。加えてツンデレですからね。真っ直ぐなドミニク様には、素直にならないでしょうねぇ」

「さすがプロ!私もその通りだと思うわ!」

「いやでも、姫様の例がありますからね。私とした事が一番近くにいたのに、姫様がちゃっかり赤毛の貴公子と知り合っていたなんて、これっぽっちも気付けませんでした。一生の不覚です!」

「知り合っていたというか、思い出したというか‥。まあ、その話は明日でいいじゃない!とにかく、あの2人の仲を取り持つ作戦を立てましょう!」

「そういう事ならお任せ下さい!タイトルでも付けますか?エンリケ様風に"ドキッ!お二人をくっつけちゃうぞ大作戦!"とか?」

「ベタだけど"ラブラブ大作戦"にしましょうか。ルイスならもう一捻りするんでしょうけど」

「ルイス様なら‥"めぐり愛、紡ぎ愛"といった感じですかね?センスがありますから」

「アマリア、中々やるわね!韻を踏んでいるわ!」

「何が韻を踏んでいるんだって?」

レイリアとアマリアは一気に血の気が引いた。

いつの間にかドアの前にドミニクが立っていたからだ。


「お、お兄様!!いつからそこに?」

「センスがどうのって所からだよ。ノックをしても返事が無かったから、開けたら2人で盛り上がっていた。楽しそうなのは結構だが、食事を待たせる訳にはいかない。成長期の少年に食事を我慢しろとは言えないからね。準備が出来たのなら、行くよレイリア」

「は、はい!ふ〜!セーフだったわ」

「何が?」

「い、いえ、セーフ‥く、そうよ!制服の話で盛り上がってたの!ポンバル家のメイドの制服が可愛いって。ね、アマリア」

「はい!セーフくが可愛いと姫様が推していました!」

「ふぅん‥。まあいい、早く行こうか。アンドレ君がお腹を空かせているだろうからね」

「そ、そうね、つい盛り上がって悪ふざけをしてしまったわ」

ドミニクと並んで歩くレイリアは、上手く誤魔化せたと思って安堵している。

しかし昔からドミニクに悪だくみが通用した試しがない事を、レイリアはすっかり忘れていた。


悪ふざけ?悪だくみの間違いだろう。

レイリアのあの顔は、やましい事がある時の顔だ。


ドミニクは気付いていたが、敢えて言うのをやめておいた。

読んで頂いてありがとうございます。

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