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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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初仕事

農園で待っていると少し遅れてルイス達が到着し、そこから更に遅れて第1小隊がリカルド達を護送して来た。

エディは国王陛下とドミニクに何やら相談をして、それが終わると国王は一足先にドミニクと共に発って行った。


「ねえエディ、陛下とお兄様はどうして先に行ってしまったの?」

「ああ、ここに来るまでに考えていた事があってね、お二人も同意してくれたから、先に戻ってジョアンに報せて貰う事にしたのだよ」

「考えていた事?」

「うん。正攻法ではマンソンも尻尾を出さないから、少し油断して貰おうと思ってね」

エディは少し悪戯っぽく笑ってそう言ったが、レイリアには何を言っているのかさっぱり分からない。

頭の上に?を浮かべて首を捻ると、エディは唇でレイリアの頰を掠め耳元で囁いた。


「ちょっとした嘘をマンソンに信じて貰うんだよ。まあ見ていて。私の復帰後初仕事だ」

レイリアはカッと熱くなるのを隠す様に、ブンブンと勢いよく頷いている。

エディはそれを嬉しそうに見つめながら、レイリアの手を引いて軽食を摂り終えたルイス達の元へ行った。

「ルイス殿、すまないがシモンとミゲルを呼んで貰えないか?早急に進めたい計画があってね」

ルイスは心得ましたとばかりに、すぐさま二人を連れて来た。


「さてと、ミゲルはここでもう暫く身を隠している必要があるね。シモン、ミゲルの身に着けている物で、誰でも一目でミゲルだと分かる様な物はあるかな?」

「身に着けている物ですか?そういえば昔父が渡した、我が家の紋章入りのペンダントを持っていた筈‥って、何処へ行こうとしているのです義兄上!」

ミゲルはそろりそろりと少しずつ後ろへ下がっている。

「い、いや、私はここへ残るのだろう?だから宿舎へ行こうとだな、気を利かせているつもりなのだ」

「いつもながら気を利かせる方向が間違っていますね。大方ペンダントを渡すのが惜しくなったのでしょう?さっさと渡さないと、お尻の虫刺されをくすぐりますよ!」

「なんて酷い弟だ!12箇所も刺されているんだぞ!」

「何箇所かは知りませんが、義兄上と馬を二人乗りして来ましたから、痒いというのは知っています。鞍の上でお尻をモゾモゾしているのを見せられた、こっちの身にもなって下さい。笑い過ぎて落馬する所でしたよ!」


「うん、ちょっと二人共落ち着こうか。ルイス殿、いつもこの調子かい?」

レイリアとルイスは吹き出すのを堪えている。

イネスも口元を隠して小刻みに体を震わせていた。

「ブックック!失礼しました。そうですね、僕が知る限りはこんな調子です。おいミゲル!こちらはジョアン殿下の兄君、エドゥアルド殿下だぞ!その殿下の言う事を聞けないのか?」

「ヒェッ!?で、殿下!?」

「申し訳ありません!道すがら義兄には説明したのですが、虫刺されに気を取られて聞いていなかった様です。何と言いますか、義兄は頭がアレなんで」

「シモン、何て言い草だ!殿下の御前で失礼だぞ!いやはや殿下、愚弟がとんだ失礼を!」

「私が愚弟なら義兄上は愚愚愚愚愚兄ですよ。全く、権力には弱いのですからね。さっさとペンダントを渡して下さい」

ミゲルは何か言おうとしたがルイスに睨まれ、首からペンダントを外してシモンに渡した。


「これは証拠としてマンソン侯爵に渡そう。後は‥そうだな、ミゲルのシャツが要るね。それと動物の血は用意出来るかな?」

皆エディが何をしようとしているのか分からず、首を捻っている。

ルイスは好奇心剥き出しでエディに尋ねた。

「血ですか?厨房ならあるかもしれませんが、何に使うのです?」

「血で濡らした剣でミゲルのシャツを切るのだよ。出来るだけ腕に覚えのある者に頼みたいのだが、ルイス殿、誰がいいかな?」

「それなら僕がやりますよ。一応僕もドミニク兄さんに剣は習っていますから、腕には自信があります!」

「うん、それなら間違いない。では君に頼もう。ミゲルはシャツを持って来てくれ。出来るだけくたびれた物がいいな。君は王宮の地下牢へ投獄されていたんだからね。シモンは厨房で動物の血を探して来てくれ。準備が出来たら始めよう」

「「「はい!」」」

「エディ、なんとな〜く私にも分かって来た様な気がするわ」

「分かって来たかい?それではもう一つ準備をしよう。連中を使わなければ意味が無いからね。二人が用意をしている間に交渉に行こうか」

「ええ。ルイス、イネス、貴方達も分かった?」

「私は何となくで、まだ良く分かりません」

「僕はもう分かったよ。こういう計画は大好物だからね!」


ルイスはそう言って楽しそうに笑った。

レイリアはその顔を良く知っている。


この顔は‥悪だくみをする時の顔だわ!

読んで頂いてありがとうございます。

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