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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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裏切りの夜明け

「あの日私は、いつもの様に寝る前に少しだけブランデーを呑んでベッドへ入った。一人寝が続いて中々寝付けなくなっていたからだ。あの頃カタリーナは悪阻が酷くてな、寝室は別にしていたのだよ。どういう訳かあの日は呑んだ後に眩暈がして、私はまるで意識を失うかの様に眠りに落ちていった」

「呑んだ後という事は‥‥まさかブランデーに何かを‥!?」

「その通りだ。後で調べさせたらブランデーを運んで来た女官が、その事を白状した。脅されて仕方なくやったのだとな。女官は誰に脅されたのかを言う前に、牢で密かに殺されてしまったよ。誰からの指示かは見当が付いていたが、証人がいないのではどうにもならない。何より全てが奴の計画通りに運んだ後で、私はその責任を取るしかなかった」

「やはり‥またマンソンですね?」

「そうだ。私は夜中に揺り起こされて、目を開けると隣には誰かがいたのだ。部屋中にはおかしな香りが充満しており、思うように体が動かせなかった。隣の誰かは女性で、カタリーナだと私に言った。私は女性の言いなりだった。朝酷い頭痛で目覚めると、隣には見知らぬ女性が眠っており、純潔を奪った証が残っていた。そして私に言ったのだ。"マンソンである私の純潔を奪ったからには、責任を取る他方法はありませんよ"とな」


「「「何て‥‥卑怯な!!」」」

「もちろん、私もそれには異議を唱えた。ところが大臣達は全員マンソンの言いなりで、皇妃として迎えろと迫ったのだ。そして決定的だったのは、その女性が身籠ったという事実であった。それを知った時のカタリーナの悲しみは、今でも瞼の裏に焼き付いておる。罠にかかったとはいえ裏切ったのは事実で、自分以外に私の子を産む者が現れたのだからな。私はそれ以来カタリーナに近付けなくなった。私が側にいれば胎教に障ると思ったからだ。そして月が満ちエドゥアルドが産まれて、やっとカタリーナは私に笑顔を見せてくれた。不実な夫であるこの私を、受け入れてくれたのだ。私は改めて彼女を生涯大切にすると誓ったよ。だから皇妃に迎えられた女性‥ジョアンナの元へは一度も通わず、その存在を無視していた。ところがカタリーナは‥‥日に日に弱り、ついにはお前を残して私の元から永遠に去ってしまった‥‥」

国王はその頃の事を思い出したのか、瞳を潤ませ下を向いた。


「父上‥‥」

「‥エディのお母様がなぜ亡くなったのかという事を、陛下はご存知なのですか?」

「あの時は分からなかった。しかしあまりにも不自然な弱り方であった為、密かに調査を進めたのだ。レイリア、君は何かを知っている様だね。おそらく‥ジョアンあたりかな?」

「はい。ジョアンは私に‥‥王妃様の秘密を話してくれました。10項目の条件を出すに至った訳を、説明する為に」

「そうか‥。それならばジョアンナがカタリーナに、マンソンの薬を使った事も知っているのだな‥‥。だから私はエドゥアルドを守る為に、ポンバル家の協力を得て令嬢を側に置いたのだ。次に狙われるのはエドゥアルドだという事は分かっていたから」

「ずっと疑問に思っていました。父上はなぜそこまで‥マンソンをのさばらせているのですか?」

「それは私の生い立ちが原因だ。私の母となっている先代王妃には、子供が出来なかった」

「えっ!?どういう事ですか父上?」

「私はな、先代国王の庶子なのだよ。子供の出来ない自分の代わりに、母は自分の侍女を先代に差し出して子供を産ませた。そして自分の子として育てたのだ。その時王弟を王太子に推す声が高く、私の産みの母の身分が低かった事から、母はマンソンに後ろ盾を依頼した。だから私は‥マンソンに何も言えないのだ。ただ、一つだけ言う事を聞かなかったのは、ポンバル家からカタリーナを娶った事だ。しかしそれすらもマンソンは、許そうとはしなかった」


「‥‥そうだったのですか‥。父上が王妃を疎ましく思っていた事は知っていましたが‥。でも、ジョアンには何の罪もありません!父上はジョアンに王妃を重ねていたのではないですか?ジョアンは私の大切な弟で、私と同じ父上の息子なのですよ?」

「分かっておる。だが既に私とジョアンの関係は、修復出来ない物になってしまった。お前の死の報せを聞いた時、私はジョアンに言ってしまったのだ。兄を殺したのはお前なのだと」

「そんな!だからジョアン‥殿下は、自分の事を罪人だと言っていたのですね‥‥」

「罪人だって!?ジョアンがそう言ったのかい?リア、話してくれないか?ジョアンが10項目の条件を出した訳を」

「レイリア、僕もそれは気になっていた。僕達はその訳を知るべきだと思うよ」

「‥‥分かりました。聞いた時とは状況が変わったもの。もう正直に話さなきゃダメよね」

国王も頷き、レイリアはジョアンの告白を話し始めた。


読んで頂いてありがとうございます。

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