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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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対面

レイリア達が先に進むと、国王直属の近衛騎士団がズラリと並ぶ輪が広がって、その中心にはドミニクと威厳に満ちた長身の男性が立っていた。

男性は大公と同じ位の年齢で、オセアノでは他に身に付ける事の許されない、王家の紋章入りのマントを片方の肩にかけている。

この男性は紛れもなくオセアノ国王エルナン・オセアノスなのだ。

ドミニクは一早くレイリア達に気付き、すぐさま二人に駆け寄った。


「レイリア、無事か?」

「お兄様!」

飛び付いてきたレイリアを受け止めて、ドミニクはギュッと抱きしめた。

「良かった。しばらくは目を覚まさないかと思った」

「あのねお兄様、私達にとっての神に会ったの」

「うん。僕にもはっきり見えた。言葉では言い表せない美しさだったよ。でもその話は後にしようか。まずはオセアノ国王に挨拶をしなければね」

「ではドミニク殿、リアを父上に紹介する役は私に譲って貰えるかい?」

「もちろんです。でもエドゥアルド殿、貴方も早く休まなければ。まだ完全に回復していないというのに、夜通し馬を跳ばしたせいで顔色が悪い」

確かにドミニクの言う通り、エディの顔色は青白かった。

「たいした事ないよ。リアという特効薬があるからね。側にいるだけで回復する」

「エディったら!そんな顔色でふざけないで!私はいいからちゃんと休んで!」

「私はいつだって真面目だよ。リアが側にいてくれたらそれでいい」

「またそんな事を言うんだから。お兄様も何とか言って!」

「僕は馬に蹴られてなんとやらにはなりたくないな。でもエドゥアルド殿に倒れられでもしたら、ジョアン殿下に殴られそうだ。話が済んだらきちんと休んで下さいよ」

「わかったよ。ジョアンには我儘を言って心配させてしまったからね。さて、それでは父上の元へ行こう」

三人はオセアノ国王の前へ進み、エドゥアルドがレイリアの手を引いて紹介を始めた。


「父上、こちらがバルコスの姫君で、私の命の恩人です」

レイリアはドレスの裾を軽く持ち上げて屈むと、正式な挨拶の姿勢をとった。

皮肉にも、こんな所でオセアノで受けた講義の成果を披露する機会がやって来るとは思わなかったが、受けておいて良かったとつくづく思う。

そこはアマリアに感謝だ。

「レイリア・バルコスと申します。国王陛下にはご尊顔を拝しまして、大変光栄に存じます」


ふー!緊張するわね。

言い慣れない言葉だったけど、何とか噛まずに言えて良かった!

どれどれ国王陛下のお顔を拝見‥‥


レイリアがチラリと国王の顔を見ると、国王はとても驚いた顔をしていた。

「父上?」

「あ、ああ、バルコスの姫君だね。そう畏まらず普段通りに話しておくれ。しかし驚いたな‥‥。姫君は母君によく似ている。一瞬昔に戻った様な錯覚に陥ったよ」

国王はそう言って懐かしむ様に目を細めた。

深い青色の瞳はエディと同じ色をしている。


口元と顎の形はエディで、意志の強そうな目元はジョアンかしら?

こうして見ると確かに親子だわね。


ドミニクは横に並んでレイリアに説明を始める。

「レイリア、我々の母上は昔王都の学園に通っていて、そこで陛下や父上と一緒に学んだんだよ。だから陛下は母上の事をよくご存知だ」

「そうだったのですか。よく言われますが、そんなに母と似ています?」

「そっくりという訳ではないが、その活き活きとした表情は母君の物だね。姫君は伸び伸びと育った様だ。姫君といいドミニク殿といい、大公は私と違って子供達を上手く育てた。私は息子達にその様な表情をさせた事がない。全く、いつまで経っても私は大公に敵わない」

「えと、あの、父は結構ふざけた人ですよ?」

「それが曲者なのだ。飄々としている様に見えて、彼は驚く程抜け目がない。ああ、こんな所で立ち話もなんだな。続きは馬車の中で話そう。ファビオ、後始末は第1小隊に任せて我等は王都へ戻るぞ!」

「はっ!ご命令通りに!」

近衛騎士団隊長は部下に指示を出し、直ちに隊列を整えた。


国王の馬車には四人で乗る事になった。

四人とはいえ、さすがに国王専用の馬車は中が広く、ゆったりと座る事が出来る。

これを一人で使っているとは、なんとも贅沢な事だなぁと、レイリアはつくづく大国との生活レベルの差を感じていた。

「レイリア、馬車で移動だがダメになったらすぐ言うんだよ」

「お兄様にはまだ言っていなかったわね。私は記憶を取り戻したの。だからもう大丈夫よ」

「なんだって!それはいつ?」

「ここへ来る途中よ。妖精王は今回の事を引き起こす為に記憶を戻したみたい。あ、それからバルコスにはもう金鉱脈は存在しないわ。全て妖精王の計画通りなの」

「どういう事だい?詳しく話してごらん、その説明ではさっぱりだ。申し訳ございません陛下、エドゥアルド殿、少し妹から事情を聞いても?」

「いや、それこそ私がここへ立ち寄った理由だ。話して貰えないか姫君、一体何が起こったのかを」

「はい。陛下には私や兄が妖精の血を引いているという事をご理解頂いた上で、お聞き頂けたらと思います」

レイリアはそう言って光の中で何が起こったのかを全て話した。


「あの光の柱を目の当たりにしなかったら、姫君の話はとても信じられなかっただろう。成る程、人ならざる者の力か。そして妖精の血とは‥。どうりで大公は他と違っていた訳だ」

「いえ、父は普通にふざけた人ですよ?」

「いやレイリア、父上はあれで中々策士なんだ。僕もよく騙される」

「フフフ‥‥相変わらず曲者だな。そう、彼は誰よりも頭が切れるのに、それを上手く隠している。だから私は昔から彼には敵わない。美しく賢く、そしてあざとい。私がどんなに努力しても、彼はいつも上を行く。ドミニク殿、彼に勝てるのは君くらいだな。若い頃は君の様に美しい若者だったよ」

「ええっ!?エディどうしよう!お兄様は将来あんな風になるの?」

「いや、あんな風にって、リアはお父上に対して厳しいね」

「だっていつもダジャレや親父ギャグばっかり言ってるんですもの。陛下の言う様なイメージは全然なのよ。まるで別人の話を聞いている様だわ」

「レイリアの前では父上は甘い父親なんだよ。片親だから寂しいと思わせない様にね。確かにダジャレはいただけないが‥」

「彼は愛情の深い男だ。だから君達の母君は彼を選んだのだよ。それが私には羨ましく、憧れでもあった」

「あの、陛下、よけれは聞かせて頂けませんか?父や母の学園時代の話を」

「そうだね‥‥いい機会だから話すとしよう。エドゥアルドにも聞かせるべき事だから‥‥」

国王は暫く目を閉じて、ゆっくりと話し始めた。

読んで頂いてありがとうございます。

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