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こじらせ王太子と約束の姫君  作者: 栗須まり
第1部
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複雑な心境

コンコンと躊躇いがちに叩かれたノックにエディが返事を返すと、ルイスとイネスがおずおずと入って来た。

「あー‥‥コホン、お取り込み中の所申し訳ありませんが、準備が整いましたので報せて来いと言われまして‥」

ほんのりピンク色の頰をしたルイスが、チラリとレイリアを見て下を向く。

どうやら直視出来ない様で、それを察したイネスが続いて口を挟んだ。

「あ、あの、国王陛下もお二人をお待ちです。まだ積もる話もお有りでしょうが、陛下をお待たせするのは良くないかと」

「報せてくれてありがとう。それでは父上の元へ向かうとしよう。リア、君は父上と会うのは初めてだね?」

「ええ。‥何だか緊張するわね」

「大丈夫だよ。父上は君と話したいと言っていた。それに私も一緒だから、何も心配しないで」

レイリアはコクンと頷き、エディに手を引かれ立ち上がった。


四人が小屋を出ると、国王直属の近衛騎士が

二人、国王の元まで案内役兼護衛として先導してくれた。

四人は案内役の後に着いて歩き始める。

するとエディと並んで歩くレイリアの袖を、ルイスはツンと軽く引っ張り、ヒソヒソと話しかけてきた。

「レイリア、僕には何が何だかよく分からないけど、君はエドゥアルド殿下と恋人同士って事?」

「な、な、何よ急に!こ、恋人って!!」

「え?違うの?実はさっき聞こえたんだよね‥‥」

「あ、悪趣味だわね!恋人っていうか、えっと、何て言ったらいいのかしら‥?ああもう!身内に話すのがこんなに恥ずかしいとは思わなかったわ!」

するとエディがクスクスと笑い出して、ルイスに話し始めた。

「ブラガンサ殿、私は君の従兄妹殿を愛おしく思っている。もう10年も前からね。そしてさっきやっと彼女は、私の気持ちを受け入れてくれたのだよ。まあ、まだ彼女は私を恋人と認めてはくれないが」

「み、認めてなくないわ!えっと、ルイスに言うのが恥ずかしいってだけなの。何ていうか‥‥ねえルイス?」

「僕に振るなよ!全く、僕だって照れ臭いよ。ただ、それならどうしても‥言わなきゃいけない事がある」

「何よ」

「エドゥアルド殿下、レイリアはお転婆で、この通りレディらしさのかけらもありません。加えて鈍感で人の好意に気付かなかったり、ムードをぶち壊したりするのが得意で‥」

「ちょ、ちょっとルイス!どうしてもって、私の悪口じゃないの!」

「最後まで聞いて判断するんだね。とにかく、こんなレイリアですが、僕にとっては大切な従兄妹なのです。ですから殿下、一つ約束をして下さい。絶対にレイリアを裏切ったり哀しませたりせず大切にすると」

「‥‥ブラガンサ殿、君に誓おう。彼女が私を嫌っても、私の気持ちが変わる事はない。私の幸せは彼女が隣にいてこそだ。これからは彼女に幸せだと思って貰える様、精一杯努力するよ。その為には君の助けも必要なのだが、力を貸して貰えるだろうか?」

「もちろんです。僕の事はルイスと呼んで下さい。ふつつか者のレイリアですが、飽きる事は無いと思いますので、どうかよろしくお願いします」

「ルイス、まるで花嫁の父みたいなセリフだけど一言余計よ。でも、ありがとう。オセアノに来てからルイスのお陰で乗り越えて来たんですもの。感謝してるわ」

「君はエドゥアルド殿下にだけは、絶対に足を出してはいけないよ!いい?分かった?」

「出さないわよ!もう!ルイスったらまるでアマリアみたいね。でもエディに危害を加える相手がいたら、足が出るかもしれないわ」

「ハァ。やっぱりレイリアはレイリアだ。殿下、苦労しますよ。本当にいいんですかレイリアで?」

「うん。リア以外は考えられない。でも足は出させない様、気を付けないといけないかな。リアに怪我をさせたくないからね」

「うっ‥‥そう言われると‥はい、足を出さない様気を付けます」

「成る程!殿下の方が一枚上手ですね。これなら心配する必要無いかな。うん!」

そう言ってルイスはどこか寂しそうに笑った。


森の入り口に近付くと、複数の人や馬車や馬が見えて来た。

「殿下とレイリアは先に行って下さい。僕はイネス嬢の乗る馬車を確認したいので」

「ああ、それではルイス殿、また後で改めて話をしよう。リア、行こうか」

そう言って差し出されたエディの手をレイリアが取ると、後ろからルイスが呟いた。

「レイリア、幸せになりなよ」

後ろにいるのでルイスの表情は見られなかったが、レイリアは胸が熱くなってエディの手をギュッと握った。


イネスは黙って大人しく着いて来たが、二人になると躊躇いながら話しかけてきた。

「あの、ブラガンサ様、私の思い違いかもしれませんが、ブラガンサ様はレイリア様に従兄妹以上の感情をお持ちなのではないでしょうか?」

「‥‥君には本当に感心させられるよ。何ていうか‥鋭いよね。まあ、確かにそうかもしれないと思っていたかな。憧れみたいな感情というか‥僕に一番近い女の子だったからね」

「‥お寂しいと感じていらっしゃるのですね」

「そうだね。何だか知らないうちに遠くへ行ってしまった様な気がするよ」

「ブラガンサ様はお優しいのですね。ご自分のお気持ちを隠されて、レイリア様の幸せを願う事が出来るのですから」

「いや、僕は優しくなんかないよ。見込みが無いから早々に諦めていただけさ。そのくせドミニク兄さんが自分の事を"私"って言い始めた時、レイリアが"僕って言ってくれ"とせがんだのを覚えていて真似してみたりとか、結構往生際が悪かったんだけどね」

「私は‥やっぱりブラガンサ様はお優しいのだと思います。レイリア様の為に出来る事を、やっていらっしゃるのですから」

「ルイス」

「はい?」

「ルイスと、そう呼んでくれないか?君にはそう呼ばれたい」

「‥ルイス様ですか?」

「うん。ありがとうイネス嬢。こんな風に言ってくれる人が側にいて、僕は幸運だよ。まあでも、とばっちりで一緒に攫われた君には、幸運とは言えない状況だけどね」

そう言ってルイスは空を眺めながら笑った。

さっきとは違って晴々とした表情を見せたルイスに、イネスは少しだけ安堵した。

読んで頂いてありがとうごさいます。

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