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第5話 ギルドショック

ギルドに案内されたと思ったら、中から殺気を感じたので、用心して中をのぞいた。そしたら、子供を助けに行くと言った男の声に呼応して、他の男達の叫び声。

内容から察するに、ギルド全体で子供の救助を行う特殊任務? 大勢という事は、立場の高い子供だろう。つまり、エルドールさん達だろう。

……これって、よく考えると俺が悪者に勘違いされる可能性高いよな。


「…止めた方がいいんじゃない?」

「私が中に入って事情を話してきます。お嬢様たちはここでお待ちを」


ライラ殿が中に入って説明してくれるらしいが平気だろうか? エルドールさんの家の騎士みたいだし、元冒険者という立場で考えれば妥当だけど…荒くれ者相手に大丈夫なのか?…いや、ライラ殿のステータスがそこそこ高いのは、門番の人たちと比較して分かったから…問題ないか。


「ライラ。お願いね」

「お嬢様! お任せください」


……ライラ殿が入った後は何やら、「増援だ!」とか「姐さん来た! これで勝つる!」とか、いろいろ聞こえるけど…静かになってきたな?途中、人を殴るような音や誰かが吐いたような音も聞こえたけど。


「お嬢様。どうやら皆分かってくれたようです」

「ライラ殿。顔に血がついていますよ?」

「おっと、すいませんアルト殿」


……殴って聞かせたのか!?それでいいのか、騎士!?ギルド所属の冒険者ってゲームの時でも荒くれ者ばかりだったけど…仮にも、この国の国民だろ!? まずは言葉で説得しろよ。人間は対話する生き物だろ!


「…エルドールさん。これでいいんですか?」

「ライラに関しては、冒険者の皆も納得してますから」

「というより、ライラの姐さんがここにいる時点で、頭がある程度回る奴なら、リースが無事だって気づくだろ。血の跡は、きっとバカな奴らのだな」

「ジョンの言う通りですね。気にするだけ無駄ですから、中に入りましょう」


…なんというか、ふつう殴ったら怒るもんだけど、ライラ殿が元冒険者だからなのか。  それとも、ライラ殿の忠誠心…というより、エルドールさん命を知っているからか。はたまた、他に理由があるのか分からんな?まあ、気にしても仕方ないし。中に入るか。

中に入って見えたのは、木製のカウンターとその後ろに帳簿と瓶が入った鍵付きのキャビネット……瓶がなければ、まるでレトロなホテルのフロントみたいだな。瓶があるせいで、少し診療所ぽいけど……後ろの扉は職員専用の仕事場かな?


「アルトさん。ここが、受付ですけど…すごく違う土地なら文字とか平気ですか?」

「えーと…大丈夫ですね。読めますよ」

「リースさん。こちらが凄腕の魔法使い様ですか?」

「そうです、ミンクさん」


……この世界に来て初めての獣人種か。タイプは…耳が短くて丸いな? イタチ系か?

あんま、ゲームのクオリティが高すぎたから感動できないな。大差が感じられん。ゲーム時代だと、獣人種は種族の特性上肉体に関係したステータスは普通の人間より高くなり、種族によっては魔法の得意・不得意な部分に偏りが出てくる。だから、中級者向けの種族なんだよな。イタチ系の獣人は、VITはそれほど高くならないが、DEXとSTRとAGIは高い。体も柔らかいうえ、音もなく走れるから、斥候職やアサシン向けなんだよな。それにしても、ミンクって名前なのに髪の毛色が灰褐色と黒と白?…これフェレットじゃん…ミンクじゃないじゃん!


「アルトさん。こちら、ギルドの受付でのミンクさんです」

「初めまして、ミンクと申します。ライラさんとリースさんから事情は伺いました。ギルドカードの再発行という事ですが、よろしいですか?」

「それでお願いします。といっても、ここの地方から大きく離れた土地にいたもので、以前のカードが有効かどうかも分からないのですが…」


まあ、2000年前のギルドカードが使えても出さんがな。冒険者のギルドランクを上げ直すのはめんどくさいが、いきなり身バレして自由に動けなくなるよりマシだ。国に仕えろとか下らないこと言ってきたら、王宮を吹っ飛ばしてでも逃げ出すがな。まあ、なんにしてもギルドカードは必須だ。この時代のギルドも過去のギルドの方針と違いがなければ、ギルド所属の冒険者は国境を超えるときの身分証明書代わりになるうえ、上位の冒険者になると、それこそ状況によっては貴族に匹敵する力を持つ。ランクを上げれば身バレしても問題ない。


「その場合ですと、再発行ではなく改めて登録という形なりますがよろしいですか?」

「ええ、構いません。身分証として使えるものなんですよね?」

「使えます。では、こちらにお名前と得意な武器等…職業をご記入ください」


…名前はアルトだけでいいか? 得意な武器ね…あえて言うなら杖と剣か?

後、職業は錬金術師っと…


「これでよろしいですか?」

「確認致します。名前はアルト様。得物は杖と剣。職業は…あのお間違いではないですか?」

「え? 何か間違っていましたか? 確かに、錬金術師と書いたはずですが?」

「え?」「は?」「なんですって?」


え? 何でエルドールさん達まで驚くの? というより、何でここの冒険者たちは憐みに満ちた視線を送ってくるんだ?一部は馬鹿にしたように見てくるし。一人の冒険者が前に出てきたけど……何でこんな見下したような表情なんだ、こいつは…


「はっ…錬金術師? 雑魚じゃねぇか!」

「おい。やめろ」

「うっせ。雑魚に雑魚って言って何が悪いんだよ?」


…よくそんなこと言えるな? 見ろ、ライラ殿の目つきが危険な領域に達しているぞ?

というより、ここの領主で公爵の家のご令嬢も同じ職業なのに馬鹿に出来るか?まともそうな冒険者が止めてくれてるのに…こいつライラ殿に処分されるんじゃなかろうか?

…近づいてきたけど、何となくこの手の馬鹿が言う事って予想がつくな。


「おい。てめえ!」

「何か御用ですか?」

「お前なんかにそんな杖はもったいないから俺に」

「吹っ飛べ」

「は? びゃぺ」


…とりあえず、スキルの正拳突き+スキル手加減で殺さない程度に殴ったけど、外まで吹っ飛んだな。位置を調整して、出入り口に向けて殴ったから、スイングドアだから壊さず済んだな。相手のやろうとしたことも強盗に近い行為だったし。問題ないよな?


「ミンクさん。この場合、私は何か罪に問われますか?」

「………」

「ミンクさん?」

「はひ!? えっと……罪にはなりませ」

「てめえ、よくも俺の仲間をっ!ぶっ殺してやる!!」

「ギっギルド内での強盗、殺しは犯罪です!」

「うっせえ!! だまれ、獣人女! 獣(くせ)

「スキル『乱打』!」

「ぐぼぇ!? がぴ!? ぐえ!!」

「吹き飛べ! 『掌打』!」


ギルドの受付嬢に対する暴言、ギルド内での強盗もしくは窃盗、さらに殺人未遂。これだけあれば、文句はないだろ。そう思った俺は、拳闘士職のスキル乱打を使用して、相手をしこたま殴り、掌打スキルで先ほど吹っ飛ばした阿呆と同じように外へ放り出した。一応、全部に手加減を乗せたから死んではいない。俺は罪に問われない…はず。


「えーと…アルトさん」

「何ですか、ミンクさん?」

「職業の詐称は一応罪になるので、今のうちに訂正をお願いします」

「何でだ!?」


詐称!? いつ詐称した!? 錬金術師って言ったよな!?あれか!?錬金術師だから魔法でぶっ飛ばせってことか!?そんなことしたら、手加減しても、全身火傷か凍傷か、打撲か、裂傷だぞ!


「拳闘士のスキルを錬金術師の方が使えるわけないじゃないですか?」

「はあ!?」

「え? 使えないですよね?」

「…使えますよ?」

「………え?」


え、何で驚くの?もしかしてミンクさん、ギルド職員なのに頭悪いのか?命がけの仕事に関係しているんだから、職業で覚えられるスキルについては勉強しておくべきだろ。仕方ない、知らないなら説明してあげるか。


「錬金術師は、戦闘系の最高位のジョブ関連のスキル以外は習得可能ですよ? もちろん、能力の大半は劣化してますから、専門職に遠く及びませんけど」

「……はあ!? そんな話初めて聞きましたよ!?」

「……嘘でしょ?」

「本当です!」


えー…これはマジか?いくら特殊職の錬金術師がそこまでメジャーではないとはいえ、知らないって……まさか。


「エルドールさん。貴女は錬金術以外って、何か使えるスキルありますか? 例えば、戦士系のスラッシュとか、魔法系のファイアーボールもしくは、アクアボール」

「それって、両方ともレベル1の各職業で最初に覚えるスキルですよね? 使えませんよ?」

「…あっれーー!? レベルが上がれば、使えるはずですよ? 少なくとも、エルドールさんのレベルって今は7ですから使えるはずですよ?」

「…私のレベルは6ですよ?」

「…上がってますよ? 今は7です」

「……ちょっと待ってください。ギルドカード確認します」


……もしかして、ステータスの変化がアナウンスされないのか? もしくは気づかないのか? アナウンスされないなら、鑑定必須じゃねえか!!?さっきからギルドの奴らを鑑定してるけど、鑑定のスキルレベルが何で50以下なんだよ!?LECでは、鑑定のスキルレベルの上限値は、肉体のレベルと2つのジョブレベルの合算値なる。だから、少なくともジョブレベルが100超えているなら、少なくとも200以上にはなるだろ!?


「本当に7でした。なんでわかったんですか?」

「…鑑定で分かりますよ? あと、鑑定し直したら、やっぱり俺が言ったのは使えますよ?」

「てことは、リースって魔法と戦技の両方が使えるのかよ!?」

「錬金術師にそこまでの力があったとは…さすがは、お嬢様です!」

「待ってください。アルト殿は劣化していると言っていました。どれぐらい劣化するんですか、アルト殿」


良いところに目をつけるなマルク君は。まあ、これからのパーティーの戦略に関わることだから、気が付くのは当然だな。脳筋のジョン君とエルドールさん命のライラ殿は例外としても……


「大体、ファイヤーボールなら…消費2倍で効率半分だから、実質4分の1程度かな? 戦技のスラッシュも同じだね」

「つ…使えないじゃないですか!? それ習得する意味あるんですか?」


エルドールさんもひどいな…俺も同じく錬金術師なのに。まあ、いくら何でもこれで本職と同格だったら、本職の存在意味がなくなるからな。


「エルドールさん。確かに、本職の方々がいると意味はありませんが、あくまで錬金術師の最大の特徴は錬金術です。つまり、他の技能は錬金術を上手く活用するためにあるんですよ。それに、魔法も戦技も鍛えれば本職に若干劣る程度にはなりますから」

「……アルトさんはどの程度使えるんですか?」

「私ですか?練習場などがあれば見せても構いませんが…ミンクさん、練習場などは近くにありますか?」


こんなところで魔法なんか使ったら、この建物が燃えてしまう。戦技だって、上位系の技になれば魔法に劣らない範囲を攻撃できるから、ここで試すわけにはいかない。


「ギルド内の練習場については、本人の技能確認とギルドに登録後のみ使えます。現在、アルトさんはギルドに加入しておりませんので、使うことはできません。それに、私は錬金術師の試験内容を把握してないのでどうすることも…」

「え? エルドールさんの時はどのようにしたんですか?」

「確かその時は、ギルマスが直々に見ていたので…」


ギルドマスターが直々に?ここの公爵の娘だから特別扱いか?それとも、錬金術のまともな知識を持っているのがギルマスだけなのか?それだとしたら悲しすぎるぞ。


「エルドールさん。どのような試験だったかお聞きしてもよろしいですか?」

「私の時は、渡された材料でポーションを作ることでした。一応、その時は錬金術で成功したんですけど。最低品質だったので、Fランクからでした」

「なるほど、作ったものの出来栄えなどでランクの変動があるんですね。分かりました」

「先ほど、ギルマスには連絡したので間もなく領主邸から戻ってくると思います」

「俺ならここにいるぞ」


ちょっとずつ強い奴が近づいてたのは気づいてたけど、ギルマスだったのか。一応、ちゃんと鑑定しておくか。


『名前:ラーク

種族:獣人種ウルフ:LV 169

バトルジョブ:剣士:LV 164

クラフトジョブ:鍛冶師:LV 10』


…やっとバトルジョブランク2かよ! エルドールさん達なんか、ジョブ名が変化しない錬金術師っていう例外除いたら、ランク0ばっかりだったけど…やっと、まともなのに会えた! てか、これでも2000年前のNPCのギルマスよりも1ランク下がってるけど…

てか、なんでクラフトジョブがこんなに低いのさ!?


「鑑定か? 俺のレベルが見えるってことは俺より強いな」

「…何の事でしょうか?」

「とぼけんな。なんとなくだが、見られた(・・・・)感じがした。つまり、俺よりレベルが高いってことだろ?」


この人…戦闘系の能力は高いな。今までの人たちと同じように鑑定したら気づいたみたいだ。次からは気を付けて鑑定しよう。


「…それよりも、試験は何をすればよろしいでしょうか?」

「…エルドールと同じだ。ミンク! 倉庫の中から、ポーションの材料を持って来い!」

「はい! 分かりました!」


声でかっ! それに、ミンクさん脚はや! それにしても、ポーションね…こっちで製作初めてだけど、魔力のコントロールは出来たし…作れるよな。


「お待たせしました。それでは、お願いします」

「…ここでですか? どこか別の場所でやるのでは?」

「ギルマスは持って来いって言っていましたから、ここでお願いします」

「…まあ、いいですけどね」


とりあえずいつも通り、魔力を流して解析して捏ね繰り回すか。

それにしても、錬金の時の反応はいちいち発光して眩しいな。製作の時にはこの反応をするけど、毎回だから慣れたけどな。さて、材料の等級はそこそこだから、簡単簡単。


「出来ましたよ。ポーションです」

「……エルドールとそこまで大きな差はないんだな」

「当たり前じゃないですか。同じ錬金術ですよ?」

「ミンク。等級は幾つだ?」

「えーっと……ぶふぅ!!?」


なんでいきなり吹いたんだ!? 何かおかしかった? …鑑定しても、ポーションだよな?


「ははははははは…ハイレア!!?」

「……何?」

「等級ハイレアのポーションです!!」

「…馬鹿な!!?」

「…ただのポーションのハイレアですよ? 何でそんなに驚くんですか?」

「素材の等級はアンコモンの清水とレアのヒール草ですよ!? どうして、ポーションの等級で最高のハイレアが出来るんですか! 普通なら、素材が両方ともハイレアでやっと出来る物なのに!」

「……作り手のスキルレベルが高ければ、素材が1ランクぐらいの差ならそれ、ひっくり返せますよ?」

「あなたは本職の薬職人じゃないでしょう!」

「……俺の友人なら、等級が最低から2番目のコモンでも、ハイレアに出来ますよ?」

「……はぅ」

「ちょ!? ミンクさん! しっかりしてください、ミンクさん」


…そこまでか!? 気絶するまでの事なのか!? いま俺がやった事なんて、薬職人なら、ハイポーションのレアが作れるようになる頃には普通に出来る事だぞ!? …まさか………


「エルドールさん。ハイポーションを作れる人ってこの町にいる?」

「…いるわけないじゃないですか! この町で作れるのは、ポーションのハイレアまでです!それも、素材を厳選した場合だけです!」

「……ガッデム!!」

「おまえ、何者だ!? どうして、本職の者でもそう簡単に作れないハイレアの物を錬金術師のお前が作れる!?」


ギルマスまで!?シャイーラ、どこが2000年前に追いついたんだよ!あんた、間違えて別世界に送り込んでくれたんじゃないだろうな!?

…俺にとっては別世界だった。


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